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ロピタルの定理よりテイラーの定理:不定形の極限を多項式で読む

大学入試の不定形の極限は、ロピタルの定理を使わなくても、0/0 に直してテイラーの定理(関数を多項式で近似する定理)を使うか、e^x を多項式で押さえる不等式に帰着させれば解けます。テイラーの定理を証明つきで確かめ、∞/∞・0·∞・∞−∞・1^∞ などの直し方、ロピタルの定理の落とし穴(使えない場合・誤用・堂々めぐり)、多項式で挟む不等式とはさみうちで極限を書く方法まで説明します。解答つきの演習問題14問。

目次
  1. 不定形の極限を何で解くか
  2. ロピタルの定理
  3. テイラーの定理:関数を多項式で近似する
  4. 「 より速く になる」を記号で書く
  5. の極限をテイラーで読む
  6. 以外の不定形
  7. ロピタルの定理の落とし穴
  8. 多項式で挟んで、はさみうちで書く
  9. どちらの定理が強いのか
  10. 演習問題
  11. 参考文献
この記事の要点
ロピタルの定理
0/00/0 や ∞/∞\infty/\infty の形の極限を、分子と分母を微分した f′/g′f'/g' の極限に置き換える定理です。f′/g′f'/g' の極限が存在しないときは何も教えてくれず、使うたびに条件を確かめる必要があります。
テイラーの定理
関数を「多項式+小さい誤差」に分ける定理です。0/00/0 の極限は、分子と分母が何次の速さで 00 に近づくかで決まり、何回でも微分できるふつうの関数なら、それは多項式の部分を見れば分かります。
ほかの不定形
∞/∞, 0⋅∞, ∞−∞, 1∞, 00, ∞0\infty/\infty,\ 0\cdot\infty,\ \infty-\infty,\ 1^\infty,\ 0^0,\ \infty^0 は、逆数・通分・対数・t=1/xt=1/x の置き換えで 0/00/0 に直せます。log⁡x\log x や exe^x の増え方を比べる極限は、exe^x をテイラー多項式で下から押さえる不等式で解けます。
不等式で書く
関数をテイラー多項式で挟む不等式は、微分だけで示せます。はさみうちと組み合わせると、極限値と誤差の大きさを同時に書けます。
注意
どちらかが強い定理というわけではありません。テイラーの定理にも「何次まで展開するか」という注意点があり、この記事ではそれも扱います。

定義・定理の下の「証明」は、開くとステップが並びます。もう少し詳しくは大学1年程度の補足で、開かずに読み進められます。最後に解答つきの演習問題があります。前提は数学IIIの微分(平均値の定理、sin⁡x\sin x・exe^x・log⁡x\log x の微分)と積分(部分積分)、はさみうちの原理です。

不定形の極限を何で解くか

x→0x\to0 のときの x−sin⁡xx3\dfrac{x-\sin x}{x^3} のように、分子も分母も 00 に近づく極限を 0/00/0 の不定形と呼びます。ほかに ∞/∞\infty/\infty、0⋅∞0\cdot\infty、∞−∞\infty-\infty、1∞1^\infty、000^0、∞0\infty^0 の形もあり、どれも形だけでは極限が決まりません。こうした極限を出す道具として、ロピタルの定理はよく知られています。正しい定理なので、条件を確かめて使えば、答案に書いて何の問題もありません。

この記事で比べたいのは、使ってよいかどうかではなく、どちらが便利で間違えにくいかです。

この記事の主張は次のとおりです。

  • 入試に出る不定形の極限のほとんどは、0/00/0 に直してテイラーの定理(関数を多項式で近似する定理)を使うか、exe^x をテイラー多項式で押さえる不等式に帰着させれば解けます。振動する関数を含むものなど、どちらでも扱えない極限は、はさみうちで直接見積もります。
  • テイラーのほうが分かることが多く、ロピタルのように定理の条件を毎回確かめなくて済みます。
  • テイラー多項式で挟む不等式は微分だけで示せるので、極限を厳密に書くこともすぐにできます。

同じ考えは、九州大学の野村隆昭さんの解説にもあります。ロピタルで極限を出して終わりにするより、テイラーの定理で「多項式+誤差」と見るほうがはるかによい、という内容です[1]。

ただし「テイラーのほうが定理として強い」わけではありません。これは最後の節で説明します。

ロピタルの定理

まず、ロピタルの定理を正確に書きます。参考書では条件が省かれがちですが、条件は1つも外せません。

定理1 ロピタルの定理

aa を含む開区間 II があり、関数 f,gf,g は II から aa を除いたところで微分可能で、そこでは g′(x)≠0g'(x)\neq0 とする。さらに

lim⁡x→af(x)=lim⁡x→ag(x)=0\lim_{x\to a}f(x)=\lim_{x\to a}g(x)=0lim⁡x→af(x)=lim⁡x→ag(x)=0\begin{aligned}\lim_{x\to a}f(x) &= \lim_{x\to a}g(x)\\&= 0\end{aligned}

とする。このとき、極限

lim⁡x→af′(x)g′(x)=L\lim_{x\to a}\frac{f'(x)}{g'(x)}=Llim⁡x→af′(x)g′(x)=L\begin{aligned}\lim_{x\to a}\frac{f'(x)}{g'(x)} &= L\end{aligned}

が存在するならば、次が成り立つ。

lim⁡x→af(x)g(x)=L\lim_{x\to a}\frac{f(x)}{g(x)}=Llim⁡x→af(x)g(x)=L\begin{aligned}\lim_{x\to a}\frac{f(x)}{g(x)} &= L\end{aligned}

x→∞x\to\infty の場合や ∞/∞\infty/\infty の形の場合にも、同じ形の定理があります。これは0/0 以外の不定形の節で扱います。

証明には、平均値の定理を2つの関数に広げたコーシーの平均値の定理を使います。

証明
  1. f(a)=g(a)=0f(a)=g(a)=0 と定め直すと、f,gf,g は II で連続になる。極限は x=ax=a での値によらないので、主張は変わらない。
  2. x∈Ix\in I、x≠ax\neq a を1つとる。aa と xx のあいだでコーシーの平均値の定理を使うと、aa と xx のあいだの cxc_x で次をみたすものがある。f(x)g(x)=f′(cx)g′(cx)\frac{f(x)}{g(x)}=\frac{f'(c_x)}{g'(c_x)}f(x)g(x)=f′(cx)g′(cx)\begin{aligned}\frac{f(x)}{g(x)} &= \frac{f'(c_x)}{g'(c_x)}\end{aligned}

    x>ax>a として [a,x][a,x] で考える(x<ax<a も同じ)。次の関数をおく。

    h(t)=f(x)g(t)−g(x)f(t)h(t)=f(x)g(t)-g(x)f(t)h(t)=f(x)g(t)−g(x)f(t)\begin{aligned}h(t) &= f(x)g(t)-g(x)f(t)\end{aligned}h(t)=f(x)g(t)=−g(x)f(t)\begin{aligned}h(t) &= f(x)g(t)\\&\phantom{=}{} -g(x)f(t)\end{aligned}

    f(a)=g(a)=0f(a)=g(a)=0 より h(a)=0h(a)=0、また h(x)=f(x)g(x)−g(x)f(x)=0h(x)=f(x)g(x)-g(x)f(x)=0 である。

    ロルの定理より h′(cx)=0h'(c_x)=0 となる cx∈(a,x)c_x\in(a,x) があり、次を得る。

    f(x)g′(cx)=g(x)f′(cx)f(x)g'(c_x)=g(x)f'(c_x)f(x)g′(cx)=g(x)f′(cx)\begin{aligned}f(x)g'(c_x) &= g(x)f'(c_x)\end{aligned}

    g′≠0g'\neq0 なので g′(cx)≠0g'(c_x)\neq0 である。また g(x)≠0g(x)\neq0 である。もし g(x)=0=g(a)g(x)=0=g(a) なら、ロルの定理から (a,x)(a,x) のどこかで g′=0g'=0 となり、仮定に反するからである。よって両辺を g(x)g′(cx)g(x)g'(c_x) で割ってよい。

  3. x→ax\to a のとき cxc_x は aa と xx のあいだにあるので cx→ac_x\to a である。仮定より右辺は LL に近づくので、左辺も LL に近づく。

例2 ロピタルの定理を2回使う

次の極限を求めます。

lim⁡x→0x−sin⁡xx3\lim_{x\to0}\frac{x-\sin x}{x^3}

ロピタルの定理は「f′/g′f'/g' の極限が存在するならば」という定理なので、極限が分かっている式から順に示していきます。

(i) 基本の極限 sin⁡x/x→1\sin x/x\to1 から、次が分かります。

sin⁡x6x=16⋅sin⁡xx ⟶ 16\frac{\sin x}{6x}=\frac16\cdot\frac{\sin x}{x}\ \longrightarrow\ \frac16sin⁡x6x=16⋅sin⁡xx⟶16\begin{aligned}\frac{\sin x}{6x} &= \frac16\cdot\frac{\sin x}{x}\\&\longrightarrow \frac16\end{aligned}

(ii) (1−cos⁡x)/(3x2)(1-\cos x)/(3x^2) は 0/00/0 の形で、x≠0x\neq0 では分母の微分 6x6x は 00 になりません。分子と分母を微分した sin⁡x/(6x)\sin x/(6x) は (i) より 1/61/6 に近づくので、定理1から次が言えます。

lim⁡x→01−cos⁡x3x2=16\lim_{x\to0}\frac{1-\cos x}{3x^2}=\frac16lim⁡x→01−cos⁡x3x2=16\begin{aligned}\lim_{x\to0}\frac{1-\cos x}{3x^2} &= \frac16\end{aligned}

(iii) (x−sin⁡x)/x3(x-\sin x)/x^3 も 0/00/0 の形で、x≠0x\neq0 では分母の微分 3x23x^2 は 00 になりません。分子と分母を微分した (1−cos⁡x)/(3x2)(1-\cos x)/(3x^2) は (ii) より 1/61/6 に近づくので、次が言えます。

lim⁡x→0x−sin⁡xx3=16\lim_{x\to0}\frac{x-\sin x}{x^3}=\frac16lim⁡x→0x−sin⁡xx3=16\begin{aligned}\lim_{x\to0}\frac{x-\sin x}{x^3} &= \frac16\end{aligned}

次のように等号でつなぐ書き方をよく見かけますが、答案としては誤りです。

lim⁡x→0x−sin⁡xx3=lim⁡x→01−cos⁡x3x2=lim⁡x→0sin⁡x6x=lim⁡x→0cos⁡x6=16\lim_{x\to0}\frac{x-\sin x}{x^3}=\lim_{x\to0}\frac{1-\cos x}{3x^2}=\lim_{x\to0}\frac{\sin x}{6x}=\lim_{x\to0}\frac{\cos x}{6}=\frac16lim⁡x→0x−sin⁡xx3=lim⁡x→01−cos⁡x3x2=lim⁡x→0sin⁡x6x=lim⁡x→0cos⁡x6=16\begin{aligned}\lim_{x\to0}\frac{x-\sin x}{x^3} &= \lim_{x\to0}\frac{1-\cos x}{3x^2}\\&= \lim_{x\to0}\frac{\sin x}{6x}\\&= \lim_{x\to0}\frac{\cos x}{6}\\&= \frac16\end{aligned}

誤りは論理の順序にあります。lim⁡A=lim⁡B\lim A=\lim B と書くと「両方の極限が存在して等しい」と主張したことになりますが、最初の等号を書いた時点では、右側の極限が存在するかはまだ示されていません。ロピタルの定理が保証するのは「右側の極限が存在すれば、左側も同じ極限をもつ」ことなので、右側の存在を先に示す必要があります。

また、3つ目の等号では sin⁡x/(6x)\sin x/(6x) にロピタルの定理を使っていますが、sin⁡x/x→1\sin x/x\to1 はすでに分かっているので、これは要らない遠回りです。sin⁡x/x→1\sin x/x\to1 そのものをロピタルの定理で示そうとすると、循環論法になります。

もう少し詳しくよくある「ロピタルの定理の証明」の誤り

次のような「証明」をよく見かけます[2]。f(a)=g(a)=0f(a)=g(a)=0 として

f(x)g(x)=f(x)−f(a)x−ag(x)−g(a)x−a ⟶ f′(a)g′(a)=lim⁡x→af′(x)g′(x)\frac{f(x)}{g(x)}=\frac{\dfrac{f(x)-f(a)}{x-a}}{\dfrac{g(x)-g(a)}{x-a}}\ \longrightarrow\ \frac{f'(a)}{g'(a)}=\lim_{x\to a}\frac{f'(x)}{g'(x)}f(x)g(x)=f(x)−f(a)x−ag(x)−g(a)x−a⟶f′(a)g′(a)=lim⁡x→af′(x)g′(x)\begin{aligned}\frac{f(x)}{g(x)} &= \frac{\dfrac{f(x)-f(a)}{x-a}}{\dfrac{g(x)-g(a)}{x-a}}\\&\longrightarrow \frac{f'(a)}{g'(a)}\\&= \lim_{x\to a}\frac{f'(x)}{g'(x)}\end{aligned}

途中の →f′(a)/g′(a)\to f'(a)/g'(a) までは、f′(a),g′(a)f'(a),g'(a) が存在して g′(a)≠0g'(a)\neq0 なら正しい計算です。しかしロピタルの定理は f,gf,g が aa で微分可能だとは仮定していません。また、最後の等号 f′(a)/g′(a)=lim⁡f′(x)/g′(x)f'(a)/g'(a)=\lim f'(x)/g'(x) は、f′,g′f',g' が aa で連続であることを仮定しない限り、根拠がありません(じつは成り立つのですが、それを示すにはロピタルの定理そのものが要ります)。

じつは、前半の正しい部分は「f,gf,g が aa で微分可能で f(a)=g(a)=0f(a)=g(a)=0、g′(a)≠0g'(a)\neq0 なら lim⁡f/g=f′(a)/g′(a)\lim f/g=f'(a)/g'(a)」という別の正しい命題の証明になっています。これは落とし穴の節の補足で、テイラーの方法の1次の場合として説明します。

テイラーの定理:関数を多項式で近似する

x=0x=0 の近くでは sin⁡x\sin x は xx とほぼ同じ値をとります。もっと近い多項式を探すと x−x3/6x-x^3/6、さらに近いのは x−x3/6+x5/120x-x^3/6+x^5/120 です。この係数は、00 での微分係数から決まります。

定義3 テイラー多項式

関数 ff が x=0x=0 の近くで nn 回微分可能なとき、次の多項式を ff の 00 での nn 次のテイラー多項式と呼ぶ。

Tn(x)=f(0)+f′(0) x+f′′(0)2!x2+⋯+f(n)(0)n!xn=∑k=0nf(k)(0)k!xkT_n(x)=f(0)+f'(0)\,x+\frac{f''(0)}{2!}x^2+\cdots+\frac{f^{(n)}(0)}{n!}x^n=\sum_{k=0}^{n}\frac{f^{(k)}(0)}{k!}x^kTn(x)=f(0)+f′(0) x+f′′(0)2!x2+⋯+f(n)(0)n!xn=∑k=0nf(k)(0)k!xk\begin{aligned}T_n(x) &= f(0)+f'(0)\,x+\frac{f''(0)}{2!}x^2+\cdots+\frac{f^{(n)}(0)}{n!}x^n\\&= \sum_{k=0}^{n}\frac{f^{(k)}(0)}{k!}x^k\end{aligned}Tn(x)=f(0)+f′(0) x+f′′(0)2!x2=+⋯+f(n)(0)n!xn=∑k=0nf(k)(0)k!xk\begin{aligned}T_n(x) &= f(0)+f'(0)\,x+\frac{f''(0)}{2!}x^2\\&\phantom{=}{} +\cdots+\frac{f^{(n)}(0)}{n!}x^n\\&= \sum_{k=0}^{n}\frac{f^{(k)}(0)}{k!}x^k\end{aligned}Tn(x)=f(0)+f′(0) x=+f′′(0)2!x2+⋯=+f(n)(0)n!xn=∑k=0nf(k)(0)k!xk\begin{aligned}T_n(x) &= f(0)+f'(0)\,x\\&\phantom{=}{} +\frac{f''(0)}{2!}x^2+\cdots\\&\phantom{=}{} +\frac{f^{(n)}(0)}{n!}x^n\\&= \sum_{k=0}^{n}\frac{f^{(k)}(0)}{k!}x^k\end{aligned}

係数を f(k)(0)/k!f^{(k)}(0)/k! にするのは、TnT_n を kk 回微分して x=0x=0 を入れると f(k)(0)f^{(k)}(0) になるようにするためです。たとえば x3x^3 を3回微分すると 3!=63!=6 になるので、x3x^3 の係数を f′′′(0)/6f'''(0)/6 にしておけば、3回微分したときに f′′′(0)f'''(0) が残ります。つまり TnT_n は「00 での値と nn 回までの微分係数が ff とすべて一致する多項式」です。

x=ax=a の近くで考えるときは、xkx^k を (x−a)k(x-a)^k に、f(k)(0)f^{(k)}(0) を f(k)(a)f^{(k)}(a) に置き換えます。

例4 sin⁡x\sin x のテイラー多項式

f(x)=sin⁡xf(x)=\sin x を微分すると cos⁡x, −sin⁡x, −cos⁡x, sin⁡x,…\cos x,\ -\sin x,\ -\cos x,\ \sin x,\dots と4回で元に戻ります。x=0x=0 を入れると 0,1,0,−1,0,1,…0,1,0,-1,0,1,\dots なので、偶数次の項は消えて、次のようになります。

T1(x)=T2(x)=xT3(x)=T4(x)=x−x36T5(x)=x−x36+x5120\begin{gathered} T_1(x)=T_2(x)=x\\ T_3(x)=T_4(x)=x-\frac{x^3}{6}\\ T_5(x)=x-\frac{x^3}{6}+\frac{x^5}{120}\end{gathered}T1(x)=T2(x)=xT3(x)=T4(x)=x−x36T5(x)=x−x36+x5120\begin{aligned}T_1(x) &= T_2(x)\\&= x\\[4pt]T_3(x) &= T_4(x)\\&= x-\frac{x^3}{6}\\[4pt]T_5(x) &= x-\frac{x^3}{6}+\frac{x^5}{120}\end{aligned}

例5 よく使う関数のテイラー多項式

同じように微分係数を計算すると、次のようになります。

ex: 1+x+x22+x36+⋯+xnn!(f(k)(0)=1)cos⁡x: 1−x22+x424(1,0,−1,0,1)log⁡(1+x): x−x22+x33(0,1,−1,2)tan⁡x: x+x33(0,1,0,2)\begin{aligned} &e^x:\ 1+x+\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{6}+\cdots+\frac{x^n}{n!}\\ &\qquad(f^{(k)}(0)=1)\\[4pt] &\cos x:\ 1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{24}\\ &\qquad(1,0,-1,0,1)\\[4pt] &\log(1+x):\ x-\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{3}\\ &\qquad(0,1,-1,2)\\[4pt] &\tan x:\ x+\frac{x^3}{3}\\ &\qquad(0,1,0,2) \end{aligned}

log⁡(1+x)\log(1+x) と tan⁡x\tan x の導関数は次のとおりです。

log⁡(1+x):f′=(1+x)−1f′′=−(1+x)−2f′′′=2(1+x)−3tan⁡x:f′=1+tan⁡2xf′′=2tan⁡x (1+tan⁡2x)f′′′=2(1+tan⁡2x)2+4tan⁡2x (1+tan⁡2x)\begin{aligned} &\log(1+x):\\ &\quad f'=(1+x)^{-1}\\ &\quad f''=-(1+x)^{-2}\\ &\quad f'''=2(1+x)^{-3}\\[4pt] &\tan x:\\ &\quad f'=1+\tan^2x\\ &\quad f''=2\tan x\,(1+\tan^2x)\\ &\quad f'''=2(1+\tan^2x)^2\\ &\qquad\quad+4\tan^2x\,(1+\tan^2x)\end{aligned}

x=0x=0 を入れると、log⁡(1+x)\log(1+x) の係数は 1, −1/2, 2/3!=1/31,\ -1/2,\ 2/3!=1/3、tan⁡x\tan x の x3x^3 の係数は f′′′(0)/3!=2/6=1/3f'''(0)/3!=2/6=1/3 です。

下の図で、次数を上げると TnT_n が sin⁡x\sin x にどれだけ近づくかを確かめられます。

∣x∣≤0.67|x|\le0.67
∣x∣≤1.44|x|\le1.44
∣x∣≤2.22|x|\le2.22
∣x∣≤3.00|x|\le3.00
∣x∣≤3.77|x|\le3.77
−2π-2\pi
−π-\pi
π\pi
2π2\pi
−2-2
−1-1
11
22
y=sin⁡xy=\sin x
xx

T1(x)=xT_1(x)=x。x=1x=1 での誤差は ∣sin⁡1−T1(1)∣=0.159|\sin1-T_1(1)|=0.159 です。誤差が 0.050.05 より小さいのは ∣x∣|x| がおよそ 0.670.67 までです。

T3(x)=x−x36T_3(x)=x-\dfrac{x^3}{6}。x=1x=1 での誤差は 0.008140.00814 です。誤差が 0.050.05 より小さい範囲は ∣x∣|x| がおよそ 1.441.44 までに広がります。

T5(x)=x−x36+x5120T_5(x)=x-\dfrac{x^3}{6}+\dfrac{x^5}{120}。x=1x=1 での誤差は 1.96×10−41.96\times10^{-4} です。誤差が 0.050.05 より小さい範囲は ∣x∣|x| がおよそ 2.222.22 までです。

T7(x)=T5(x)−x75040T_7(x)=T_5(x)-\dfrac{x^7}{5040}。x=1x=1 での誤差は 2.73×10−62.73\times10^{-6} です。誤差が 0.050.05 より小さい範囲は ∣x∣|x| がおよそ 3.003.00 までです。

T9(x)=T7(x)+x9362880T_9(x)=T_7(x)+\dfrac{x^9}{362880}。x=1x=1 での誤差は 2.49×10−82.49\times10^{-8} です。誤差が 0.050.05 より小さい範囲は ∣x∣|x| がおよそ 3.773.77 までです。

図1具体例y=sin⁡xy=\sin x(青)と、定義3のテイラー多項式 y=Tn(x)y=T_n(x)(橙)のグラフです。緑の帯は、両者の差が 0.050.05 より小さい範囲を表します。次数を上げると帯が広がります。どの次数でも、00 から離れると TnT_n は sin⁡x\sin x から離れていきます。

x=1x=1 での誤差は、どの次数でも「次の項」1/(n+2)!1/(n+2)! より小さくなっています。たとえば T3T_3 の誤差 0.008140.00814 は 1/5!=0.008331/5!=0.00833 より小さい値です。これが偶然でないことを示すのが、次の定理です。

定理6 テイラーの定理

関数 ff が、00 と xx を含む区間で n+1n+1 回微分可能とする。このとき、00 と xx のあいだの数 cc で次をみたすものがある。

f(x)=Tn(x)+f(n+1)(c)(n+1)! xn+1f(x)=T_n(x)+\frac{f^{(n+1)}(c)}{(n+1)!}\,x^{n+1}f(x)=Tn(x)+f(n+1)(c)(n+1)! xn+1\begin{aligned}f(x) &= T_n(x)+\frac{f^{(n+1)}(c)}{(n+1)!}\,x^{n+1}\end{aligned}f(x)=Tn(x)=+f(n+1)(c)(n+1)! xn+1\begin{aligned}f(x) &= T_n(x)\\&\phantom{=}{} +\frac{f^{(n+1)}(c)}{(n+1)!}\,x^{n+1}\end{aligned}

右辺の最後の項を剰余項と呼びます。形は Tn+1T_{n+1} の最後の項とほぼ同じで、f(n+1)(0)f^{(n+1)}(0) のかわりに途中の点 cc での値が入っています。n=0n=0 の場合は f(x)=f(0)+f′(c) xf(x)=f(0)+f'(c)\,x で、平均値の定理そのものです。

証明
  1. x=0x=0 なら f(0)=Tn(0)f(0)=T_n(0) なので成り立つ。以下 x≠0x\neq0 とし、f(x)=Tn(x)+Kxn+1f(x)=T_n(x)+Kx^{n+1} となるように定数 KK を決める。示すべきことは、K=f(n+1)(c)/(n+1)!K=f^{(n+1)}(c)/(n+1)! となる cc があることである。
  2. 次の tt の関数を考える。F(t)=f(x)−∑k=0nf(k)(t)k!(x−t)k−K(x−t)n+1F(t)=f(x)-\sum_{k=0}^{n}\frac{f^{(k)}(t)}{k!}(x-t)^k-K(x-t)^{n+1}F(t)=f(x)−∑k=0nf(k)(t)k!(x−t)k−K(x−t)n+1\begin{aligned}F(t) &= f(x)-\sum_{k=0}^{n}\frac{f^{(k)}(t)}{k!}(x-t)^k-K(x-t)^{n+1}\end{aligned}F(t)=f(x)−∑k=0nf(k)(t)k!(x−t)k=−K(x−t)n+1\begin{aligned}F(t) &= f(x)-\sum_{k=0}^{n}\frac{f^{(k)}(t)}{k!}(x-t)^k\\&\phantom{=}{} -K(x-t)^{n+1}\end{aligned}F(t)=f(x)=−∑k=0nf(k)(t)k!(x−t)k=−K(x−t)n+1\begin{aligned}F(t) &= f(x)\\&\phantom{=}{} -\sum_{k=0}^{n}\frac{f^{(k)}(t)}{k!}(x-t)^k\\&\phantom{=}{} -K(x-t)^{n+1}\end{aligned}F(0)=0F(0)=0(KK の決め方)、F(x)=f(x)−f(x)=0F(x)=f(x)-f(x)=0 である。

    t=0t=0 を入れると和は Tn(x)T_n(x) になるので、F(0)=f(x)−Tn(x)−Kxn+1=0F(0)=f(x)-T_n(x)-Kx^{n+1}=0。

    t=xt=x を入れると (x−t)k(x-t)^k は k≥1k\ge1 で 00 なので、和は k=0k=0 の項 f(x)f(x) だけが残り、F(x)=f(x)−f(x)−0=0F(x)=f(x)-f(x)-0=0。

  3. ロルの定理より、00 と xx のあいだに F′(c)=0F'(c)=0 となる cc がある。
  4. F′(t)F'(t) を計算すると、和の部分が隣どうし打ち消し合い、次のようになる。F′(t)=−f(n+1)(t)n!(x−t)n+K(n+1)(x−t)nF'(t)=-\frac{f^{(n+1)}(t)}{n!}(x-t)^n+K(n+1)(x-t)^nF′(t)=−f(n+1)(t)n!(x−t)n+K(n+1)(x−t)n\begin{aligned}F'(t) &= -\frac{f^{(n+1)}(t)}{n!}(x-t)^n+K(n+1)(x-t)^n\end{aligned}F′(t)=−f(n+1)(t)n!(x−t)n=+K(n+1)(x−t)n\begin{aligned}F'(t) &= -\frac{f^{(n+1)}(t)}{n!}(x-t)^n\\&\phantom{=}{} +K(n+1)(x-t)^n\end{aligned}

    kk 番目の項 f(k)(t)k!(x−t)k\dfrac{f^{(k)}(t)}{k!}(x-t)^k を tt で微分すると、積の微分で

    f(k+1)(t)k!(x−t)k−f(k)(t)(k−1)!(x−t)k−1(k≥1)\begin{aligned} &\frac{f^{(k+1)}(t)}{k!}(x-t)^k\\ &\quad-\frac{f^{(k)}(t)}{(k-1)!}(x-t)^{k-1}\quad(k\ge1) \end{aligned}

    となる(k=0k=0 の項の微分は f′(t)f'(t))。k=0,1,…,nk=0,1,\dots,n で足すと、kk 番目の前半と k+1k+1 番目の後半が打ち消し合い、k=nk=n の前半 f(n+1)(t)n!(x−t)n\dfrac{f^{(n+1)}(t)}{n!}(x-t)^n だけが残る。

    最後の項 −K(x−t)n+1-K(x-t)^{n+1} の微分は K(n+1)(x−t)nK(n+1)(x-t)^n である。

  5. F′(c)=0F'(c)=0 と (x−c)n≠0(x-c)^n\neq0 から、K(n+1)=f(n+1)(c)/n!K(n+1)=f^{(n+1)}(c)/n!、つまり次が成り立つ。K=f(n+1)(c)(n+1)!K=\frac{f^{(n+1)}(c)}{(n+1)!}K=f(n+1)(c)(n+1)!\begin{aligned}K &= \frac{f^{(n+1)}(c)}{(n+1)!}\end{aligned}

剰余項を積分で書く

剰余項は積分でも書けます。f(n+1)f^{(n+1)} が連続という少し強い仮定が要りますが、証明は部分積分を繰り返すだけで、ロルの定理を直接は使いません。

定理7 テイラーの定理(積分の剰余項)

関数 ff が、00 と xx を含む区間で n+1n+1 回微分可能で、f(n+1)f^{(n+1)} が連続とする。このとき次が成り立つ。

f(x)=Tn(x)+1n!∫0xf(n+1)(t) (x−t)n dt\begin{aligned} &f(x)=T_n(x)\\ &\quad+\frac1{n!}\int_0^x f^{(n+1)}(t)\,(x-t)^n\,dt\end{aligned}
証明
  1. n=0n=0 のときは、微分積分学の基本定理そのものである(f′f' が連続なので積分できる)。f(x)=f(0)+∫0xf′(t) dtf(x)=f(0)+\int_0^x f'(t)\,dtf(x)=f(0)+∫0xf′(t) dt\begin{aligned}f(x) &= f(0)+\int_0^x f'(t)\,dt\end{aligned}f(x)=f(0)=+∫0xf′(t) dt\begin{aligned}f(x) &= f(0)\\&\phantom{=}{} +\int_0^x f'(t)\,dt\end{aligned}
  2. n≥1n\ge1 とし、n−1n-1 のときの式が成り立つとする(f(n+1)f^{(n+1)} が存在するので f(n)f^{(n)} は連続で、n−1n-1 のときの仮定をみたす)。その剰余項を部分積分すると、次のようになる。1(n−1)!∫0xf(n)(t) (x−t)n−1 dt=f(n)(0)n!xn+1n!∫0xf(n+1)(t) (x−t)n dt\begin{aligned} &\frac1{(n-1)!}\int_0^x f^{(n)}(t)\,(x-t)^{n-1}\,dt\\ &\quad=\frac{f^{(n)}(0)}{n!}x^n\\ &\quad+\frac1{n!}\int_0^x f^{(n+1)}(t)\,(x-t)^n\,dt\end{aligned}

    (x−t)n−1(x-t)^{n-1} を −(x−t)nn-\dfrac{(x-t)^n}{n} の tt での微分とみて、部分積分する。

    ∫0xf(n)(t) (x−t)n−1 dt=[−f(n)(t) (x−t)nn]0x+∫0xf(n+1)(t) (x−t)nn dt=f(n)(0)nxn+1n∫0xf(n+1)(t) (x−t)n dt\begin{aligned} &\int_0^x f^{(n)}(t)\,(x-t)^{n-1}\,dt\\ &\quad=\left[-f^{(n)}(t)\,\frac{(x-t)^n}{n}\right]_0^x\\ &\qquad+\int_0^x f^{(n+1)}(t)\,\frac{(x-t)^n}{n}\,dt\\ &\quad=\frac{f^{(n)}(0)}{n}x^n\\ &\qquad+\frac1n\int_0^x f^{(n+1)}(t)\,(x-t)^n\,dt\end{aligned}

    t=xt=x では (x−t)n=0(x-t)^n=0 なので、括弧の値は t=0t=0 の側だけが残る。両辺を (n−1)!(n-1)! で割ればよい。

  3. n−1n-1 のときの式の剰余項をこの右辺で置き換えると、Tn−1(x)+f(n)(0)n!xn=Tn(x)T_{n-1}(x)+\dfrac{f^{(n)}(0)}{n!}x^n=T_n(x) なので、nn のときの式になる。

この形からも、定理6と同じ見積もりが出ます。00 と xx のあいだで ∣f(n+1)∣≤M|f^{(n+1)}|\le M なら、次のようになります。

∣1n!∫0xf(n+1)(t) (x−t)n dt∣≤Mn!∣∫0x∣x−t∣n dt∣=M(n+1)!∣x∣n+1\begin{aligned} &\left|\frac1{n!}\int_0^x f^{(n+1)}(t)\,(x-t)^n\,dt\right|\\ &\quad\le\frac{M}{n!}\left|\int_0^x |x-t|^n\,dt\right|\\ &\quad=\frac{M}{(n+1)!}|x|^{n+1}\end{aligned}

定理6(ラグランジュの形)は f(n+1)f^{(n+1)} の連続性を仮定しないぶん一般的ですが、どこにあるか分からない点 cc が出てきます。積分の形は仮定が強いかわりに、剰余項が1つの式として決まっていて、符号や大きさを直接調べられます。

たとえば f(x)=exf(x)=e^x では f(n+1)(t)=et>0f^{(n+1)}(t)=e^t>0 なので、x>0x>0 なら剰余項は正で、ex>Tn(x)e^x>T_n(x) がすぐに分かります(後の命題22)。入試に出る関数(多項式、sin⁡x, cos⁡x, ex, log⁡x, tan⁡x\sin x,\ \cos x,\ e^x,\ \log x,\ \tan x とその組み合わせ)は、定義域の中で何回でも微分できて導関数も連続なので、この仮定で困ることはありません。

例8 sin⁡x\sin x の誤差の見積もり

sin⁡x\sin x に n=4n=4 で定理6を使います。T4(x)=x−x3/6T_4(x)=x-x^3/6、f(5)(x)=cos⁡xf^{(5)}(x)=\cos x で ∣cos⁡c∣≤1|\cos c|\le1 なので、

∣sin⁡x−(x−x36)∣=∣cos⁡c∣120∣x∣5≤∣x∣5120\left|\sin x-\left(x-\frac{x^3}{6}\right)\right|=\frac{|\cos c|}{120}|x|^5\le\frac{|x|^5}{120}∣sin⁡x−(x−x36)∣=∣cos⁡c∣120∣x∣5≤∣x∣5120\begin{aligned}\left|\sin x-\left(x-\frac{x^3}{6}\right)\right| &= \frac{|\cos c|}{120}|x|^5\\&\le \frac{|x|^5}{120}\end{aligned}

x=0.5x=0.5 で、右辺と実際の誤差を比べると次のようになり、ほぼ同じ大きさです。

0.55120=0.000260…sin⁡0.5−(0.5−0.1256)=0.479426−0.479167=0.000259\begin{aligned} &\frac{0.5^5}{120}=0.000260\ldots\\[4pt] &\sin0.5-\left(0.5-\frac{0.125}{6}\right)\\ &\quad=0.479426-0.479167\\ &\quad=0.000259\end{aligned}

「xnx^n より速く 00 になる」を記号で書く

極限の計算では、剰余項の正確な値は要りません。「xnx^n と比べてどれだけ小さいか」だけが分かれば十分です。そのための記号を用意します。

定義9 ランダウの記号 oo

x→0x\to0 のとき r(x)xn→0\dfrac{r(x)}{x^n}\to0 となる関数 r(x)r(x) を、まとめて o(xn)o(x^n) と書く(「スモールオー xnx^n」と読む)。式の中の o(xn)o(x^n) は「そういう関数のどれか1つ」を表す。

例10 oo の具体例

(1) x3=o(x2)x^3=o(x^2)。x3/x2=x→0x^3/x^2=x\to0 だからです。同じように、m>nm>n なら xm=o(xn)x^m=o(x^n) です。

(2) sin⁡x−x=o(x2)\sin x-x=o(x^2)。例8と同じ見積もりで ∣sin⁡x−x∣≤∣x∣3/6|\sin x-x|\le|x|^3/6 なので、次のようになるからです。

∣sin⁡x−xx2∣≤∣x∣6 ⟶ 0\left|\frac{\sin x-x}{x^2}\right|\le\frac{|x|}{6}\ \longrightarrow\ 0∣sin⁡x−xx2∣≤∣x∣6⟶0\begin{aligned}\left|\frac{\sin x-x}{x^2}\right| &\le \frac{|x|}{6}\\&\longrightarrow 0\end{aligned}

(3) x2sin⁡1x=o(x)x^2\sin\dfrac1x=o(x)。∣x2sin⁡(1/x)/x∣≤∣x∣→0|x^2\sin(1/x)/x|\le|x|\to0 だからです。この関数は x→0x\to0 で激しく振動しますが、xx より速く 00 に近づきます。

oo の計算は、次の規則でほぼ足ります。

命題11 oo の計算規則

m,nm,n を 00 以上の整数、CC を定数、b(x)b(x) を 00 の近くで有界な関数とする。x→0x\to0 のとき、次が成り立つ。

(1)o(xn)+o(xn)=o(xn)(1)C⋅o(xn)=o(xn)(2)xm⋅o(xn)=o(xm+n)(2)o(xm)⋅o(xn)=o(xm+n)(3)o(xm)=o(xn)(m>n)(4)b(x)⋅o(xn)=o(xn)\begin{aligned} &\text{(1)}\quad o(x^n)+o(x^n)=o(x^n)\\ &\phantom{\text{(1)}}\quad C\cdot o(x^n)=o(x^n)\\ &\text{(2)}\quad x^m\cdot o(x^n)=o(x^{m+n})\\ &\phantom{\text{(2)}}\quad o(x^m)\cdot o(x^n)=o(x^{m+n})\\ &\text{(3)}\quad o(x^m)=o(x^n)\qquad(m>n)\\ &\text{(4)}\quad b(x)\cdot o(x^n)=o(x^n)\end{aligned}

(3) は「xmx^m より速く 00 になるものは、xmx^m より遅く 00 になる xnx^n よりも速く 00 になる」という意味である。

証明
  1. (1) r1/xn→0r_1/x^n\to0、r2/xn→0r_2/x^n\to0 なら (r1+r2)/xn→0(r_1+r_2)/x^n\to0、Cr1/xn→0Cr_1/x^n\to0 である。
  2. (2) xmr/xm+n=r/xn→0x^mr/x^{m+n}=r/x^n\to0。また r1r2/xm+n=(r1/xm)(r2/xn)→0r_1r_2/x^{m+n}=(r_1/x^m)(r_2/x^n)\to0 である。
  3. (3) r/xn=(r/xm)⋅xm−n→0⋅0=0r/x^n=(r/x^m)\cdot x^{m-n}\to0\cdot0=0 である。
  4. (4) ∣b∣≤M|b|\le M なら ∣br/xn∣≤M∣r/xn∣→0|br/x^n|\le M|r/x^n|\to0 である。

o(xn)o(x^n) は特定の関数ではないので、o(x3)−o(x3)o(x^3)-o(x^3) は 00 ではなく o(x3)o(x^3) であることに注意してください。ここを取り違えると、次の節の「展開が足りない」失敗につながります。

この記号を使うと、テイラーの定理は極限の計算に使いやすい形になります。

命題12 テイラー展開

ff が 00 の近くで n+1n+1 回微分可能で、f(n+1)f^{(n+1)} が 00 の近くで有界ならば、x→0x\to0 のとき

f(x)=Tn(x)+o(xn)f(x)=T_n(x)+o(x^n)f(x)=Tn(x)+o(xn)\begin{aligned}f(x) &= T_n(x)+o(x^n)\end{aligned}
証明
  1. 00 の近くで ∣f(n+1)∣≤M|f^{(n+1)}|\le M とする。定理6より次が成り立つ。∣f(x)−Tn(x)∣≤M(n+1)!∣x∣n+1|f(x)-T_n(x)|\le\frac{M}{(n+1)!}|x|^{n+1}∣f(x)−Tn(x)∣≤M(n+1)!∣x∣n+1\begin{aligned}|f(x)-T_n(x)| &\le \frac{M}{(n+1)!}|x|^{n+1}\end{aligned}
  2. 両辺を ∣x∣n|x|^n で割ると次のようになるので、f(x)−Tn(x)=o(xn)f(x)-T_n(x)=o(x^n) である。∣f(x)−Tn(x)xn∣≤M(n+1)!∣x∣ ⟶ 0\left|\frac{f(x)-T_n(x)}{x^n}\right|\le\frac{M}{(n+1)!}|x|\ \longrightarrow\ 0∣f(x)−Tn(x)xn∣≤M(n+1)!∣x∣⟶0\begin{aligned}\left|\frac{f(x)-T_n(x)}{x^n}\right| &\le \frac{M}{(n+1)!}|x|\\&\longrightarrow 0\end{aligned}

sin⁡x, cos⁡x, ex, log⁡(1+x), tan⁡x\sin x,\ \cos x,\ e^x,\ \log(1+x),\ \tan x は何回でも微分でき、導関数は 00 の近くで連続なので有界です。よって例4・例5から、x→0x\to0 で次が成り立ちます。この記事ではこの5つを何度も使います。

sin⁡x=x−x36+x5120+o(x5)cos⁡x=1−x22+x424+o(x4)ex=1+x+x22+x36+o(x3)log⁡(1+x)=x−x22+x33+o(x3)tan⁡x=x+x33+o(x3)\begin{aligned} \sin x&=x-\frac{x^3}{6}+\frac{x^5}{120}+o(x^5)\\ \cos x&=1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{24}+o(x^4)\\ e^x&=1+x+\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{6}+o(x^3)\\ \log(1+x)&=x-\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{3}+o(x^3)\\ \tan x&=x+\frac{x^3}{3}+o(x^3)\end{aligned}

次数の低いところで止めてもかまいません。たとえば命題11の (3) から sin⁡x=x−x3/6+o(x3)\sin x=x-x^3/6+o(x^3) とも書けます。

また、xx のところに 00 に近づく式を入れてもよいです。たとえば u=−x2/2u=-x^2/2 とおくと eu=1+u+u2/2+o(u2)e^u=1+u+u^2/2+o(u^2) です。x≠0x\neq0 では u≠0u\neq0 で、u2/x4=1/4u^2/x^4=1/4 なので o(u2)=o(x4)o(u^2)=o(x^4) となり、次が分かります。

e−x2/2=1−x22+x48+o(x4)e^{-x^2/2}=1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{8}+o(x^4)e−x2/2=1−x22+x48+o(x4)\begin{aligned}e^{-x^2/2} &= 1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{8}+o(x^4)\end{aligned}e−x2/2=1−x22+x48=+o(x4)\begin{aligned}e^{-x^2/2} &= 1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{8}\\&\phantom{=}{} +o(x^4)\end{aligned}

0/00/0 の極限をテイラーで読む

0/00/0 の極限で問われているのは、「分子と分母が、それぞれ何次の速さで 00 に近づくか」です。テイラー展開で、それが直接読み取れます。

定理13 テイラーの定理で 0/00/0 の極限を出す

f,gf,g は aa の近くで n+1n+1 回微分可能で、f(n+1),g(n+1)f^{(n+1)},g^{(n+1)} は aa の近くで有界とする。k=0,1,…,n−1k=0,1,\dots,n-1 で f(k)(a)=g(k)(a)=0f^{(k)}(a)=g^{(k)}(a)=0、かつ g(n)(a)≠0g^{(n)}(a)\neq0 ならば、

lim⁡x→af(x)g(x)=f(n)(a)g(n)(a)\lim_{x\to a}\frac{f(x)}{g(x)}=\frac{f^{(n)}(a)}{g^{(n)}(a)}lim⁡x→af(x)g(x)=f(n)(a)g(n)(a)\begin{aligned}\lim_{x\to a}\frac{f(x)}{g(x)} &= \frac{f^{(n)}(a)}{g^{(n)}(a)}\end{aligned}
証明
  1. h=x−ah=x-a とおく。命題12を aa のまわりで使うと、n−1n-1 次までの係数が 00 なので、次のようになる。f(x)=f(n)(a)n!hn+o(hn)g(x)=g(n)(a)n!hn+o(hn)\begin{gathered} f(x)=\frac{f^{(n)}(a)}{n!}h^n+o(h^n)\\ g(x)=\frac{g^{(n)}(a)}{n!}h^n+o(h^n)\end{gathered}f(x)=f(n)(a)n!hn+o(hn)g(x)=g(n)(a)n!hn+o(hn)\begin{aligned}f(x) &= \frac{f^{(n)}(a)}{n!}h^n+o(h^n)\\[4pt]g(x) &= \frac{g^{(n)}(a)}{n!}h^n+o(h^n)\end{aligned}
  2. g(x)/hn→g(n)(a)/n!≠0g(x)/h^n\to g^{(n)}(a)/n!\neq0 なので、aa の近く(x≠ax\neq a)で g(x)≠0g(x)\neq0 である。分子と分母を hnh^n で割ると、次のようになる。f(x)g(x)=f(n)(a)/n!+o(hn)/hng(n)(a)/n!+o(hn)/hn\frac{f(x)}{g(x)}=\frac{f^{(n)}(a)/n!+o(h^n)/h^n}{g^{(n)}(a)/n!+o(h^n)/h^n}f(x)g(x)=f(n)(a)/n!+o(hn)/hng(n)(a)/n!+o(hn)/hn\begin{aligned}\frac{f(x)}{g(x)} &= \frac{f^{(n)}(a)/n!+o(h^n)/h^n}{g^{(n)}(a)/n!+o(h^n)/h^n}\end{aligned}
  3. h→0h\to0 のとき o(hn)/hn→0o(h^n)/h^n\to0 で、分母の極限 g(n)(a)/n!g^{(n)}(a)/n! は 00 でないので、極限は f(n)(a)/g(n)(a)f^{(n)}(a)/g^{(n)}(a) である。

この定理は、ロピタルの定理を nn 回使った結果と同じ値を出します。違うのは、定理の仮定(sin⁡x\sin x や exe^x などを組み合わせた関数なら、自動的にみたされます)のもとで、確かめることが「aa での微分係数」だけで済む点です。f′/g′f'/g' の極限が存在するか、途中で分母の微分が 00 にならないか、を気にする必要はありません。

実際の計算では、微分係数を求めるより、前の節の5つの展開を組み合わせるほうが速くなります。

例14 x−sin⁡xx3\dfrac{x-\sin x}{x^3}

分母が x3x^3 なので、分子を x3x^3 の項まで展開します。

x−sin⁡x=x−(x−x36+o(x3))=x36+o(x3)x−sin⁡xx3=16+o(x3)x3 ⟶ 16\begin{gathered} x-\sin x=x-\left(x-\frac{x^3}{6}+o(x^3)\right)=\frac{x^3}{6}+o(x^3)\\ \frac{x-\sin x}{x^3}=\frac16+\frac{o(x^3)}{x^3}\ \longrightarrow\ \frac16\end{gathered}x−sin⁡x=x−(x−x36+o(x3))=x36+o(x3)x−sin⁡xx3=16+o(x3)x3⟶16\begin{aligned}x-\sin x &= x-\left(x-\frac{x^3}{6}+o(x^3)\right)\\&= \frac{x^3}{6}+o(x^3)\\[4pt]\frac{x-\sin x}{x^3} &= \frac16+\frac{o(x^3)}{x^3}\\&\longrightarrow \frac16\end{aligned}x−sin⁡x=x=−(x−x36+o(x3))=x36+o(x3)x−sin⁡xx3=16+o(x3)x3⟶16\begin{aligned}x-\sin x &= x\\&\phantom{=}{} -\left(x-\frac{x^3}{6}+o(x^3)\right)\\&= \frac{x^3}{6}+o(x^3)\\[4pt]\frac{x-\sin x}{x^3} &= \frac16+\frac{o(x^3)}{x^3}\\&\longrightarrow \frac16\end{aligned}

ロピタルの定理を2回使った例2と同じ答えが、1行で出ます。しかも「分子は x3/6x^3/6 とほぼ同じ大きさ」という、極限値以上のことも分かります。

テイラーの方法で注意することは、何次まで展開するかだけです。足りないと答えが決まりません。

例15 展開が足りないと失敗する tan⁡x−sin⁡xx3\dfrac{\tan x-\sin x}{x^3}

1次までで止めて tan⁡x=x+o(x)\tan x=x+o(x)、sin⁡x=x+o(x)\sin x=x+o(x) とすると、分子は o(x)−o(x)=o(x)o(x)-o(x)=o(x) になります。これは「xx より速く 00 になる」としか言っておらず、x3x^3 で割った極限は分かりません。「分子は x−x=0x-x=0 だから極限は 00」とするのは誤りです。

分母に合わせて3次まで展開すると、答えが決まります。

tan⁡x−sin⁡x=(x+x33)−(x−x36)+o(x3)=x32+o(x3)lim⁡x→0tan⁡x−sin⁡xx3=12\begin{gathered} \tan x-\sin x=\left(x+\frac{x^3}{3}\right)-\left(x-\frac{x^3}{6}\right)+o(x^3)=\frac{x^3}{2}+o(x^3)\\ \lim_{x\to0}\frac{\tan x-\sin x}{x^3}=\frac12\end{gathered}tan⁡x−sin⁡x=(x+x33)−(x−x36)+o(x3)=x32+o(x3)lim⁡x→0tan⁡x−sin⁡xx3=12\begin{aligned}\tan x-\sin x &= \left(x+\frac{x^3}{3}\right)-\left(x-\frac{x^3}{6}\right)+o(x^3)\\&= \frac{x^3}{2}+o(x^3)\\[4pt]\lim_{x\to0}\frac{\tan x-\sin x}{x^3} &= \frac12\end{aligned}tan⁡x−sin⁡x=(x+x33)=−(x−x36)=+o(x3)=x32+o(x3)lim⁡x→0tan⁡x−sin⁡xx3=12\begin{aligned}\tan x-\sin x &= \left(x+\frac{x^3}{3}\right)\\&\phantom{=}{} -\left(x-\frac{x^3}{6}\right)\\&\phantom{=}{} +o(x^3)\\&= \frac{x^3}{2}+o(x^3)\\[4pt]\lim_{x\to0}\frac{\tan x-\sin x}{x^3} &= \frac12\end{aligned}

目安は「分母の最初の項の次数まで、分子を展開する」です。展開してみて分子が o(xn)o(x^n) だけになったら、次数が足りないので、もう1つ先まで展開し直します。

例16 ロピタルでは計算が膨らむ 1sin⁡2x−1x2\dfrac1{\sin^2x}-\dfrac1{x^2}

通分すると次の式になります。

1sin⁡2x−1x2=x2−sin⁡2xx2sin⁡2x\frac1{\sin^2x}-\frac1{x^2}=\frac{x^2-\sin^2x}{x^2\sin^2x}1sin⁡2x−1x2=x2−sin⁡2xx2sin⁡2x\begin{aligned}\frac1{\sin^2x}-\frac1{x^2} &= \frac{x^2-\sin^2x}{x^2\sin^2x}\end{aligned}

分母は x2⋅(x+o(x))2=x4+o(x4)x^2\cdot(x+o(x))^2=x^4+o(x^4) なので、分子を x4x^4 まで展開します。

sin⁡2x=(x−x36+o(x3))2=x2−x43+o(x4)x2−sin⁡2x=x43+o(x4)\begin{gathered} \sin^2x=\left(x-\frac{x^3}{6}+o(x^3)\right)^2=x^2-\frac{x^4}{3}+o(x^4)\\ x^2-\sin^2x=\frac{x^4}{3}+o(x^4)\end{gathered}sin⁡2x=(x−x36+o(x3))2=x2−x43+o(x4)x2−sin⁡2x=x43+o(x4)\begin{aligned}\sin^2x &= \left(x-\frac{x^3}{6}+o(x^3)\right)^2\\&= x^2-\frac{x^4}{3}+o(x^4)\\[4pt]x^2-\sin^2x &= \frac{x^4}{3}+o(x^4)\end{aligned} 1sin⁡2x−1x2=x4/3+o(x4)x4+o(x4)=1/3+o(x4)/x41+o(x4)/x4 ⟶ 13\frac1{\sin^2x}-\frac1{x^2}=\frac{x^4/3+o(x^4)}{x^4+o(x^4)}=\frac{1/3+o(x^4)/x^4}{1+o(x^4)/x^4}\ \longrightarrow\ \frac131sin⁡2x−1x2=x4/3+o(x4)x4+o(x4)=1/3+o(x4)/x41+o(x4)/x4⟶13\begin{aligned}\frac1{\sin^2x}-\frac1{x^2} &= \frac{x^4/3+o(x^4)}{x^4+o(x^4)}\\&= \frac{1/3+o(x^4)/x^4}{1+o(x^4)/x^4}\\&\longrightarrow \frac13\end{aligned}

ロピタルの定理で解くと、分子と分母を4回微分することになります。1回目だけでも分母は (x2sin⁡2x)′=2xsin⁡2x+x2sin⁡2x(x^2\sin^2x)'=2x\sin^2x+x^2\sin2x で、回を重ねるごとに項が増えていきます。

例17 定数を決める問題

次の極限が有限の値になるように定数 a,ba,b を決め、その値を求めます。

lim⁡x→0sin⁡x−ax−bx3x5\lim_{x\to0}\frac{\sin x-ax-bx^3}{x^5}

分子を5次まで展開すると、次のようになります。

sin⁡x−ax−bx3=(1−a) x+(−16−b)x3+x5120+o(x5)\begin{aligned} &\sin x-ax-bx^3\\ &\quad=(1-a)\,x+\left(-\frac16-b\right)x^3\\ &\qquad+\frac{x^5}{120}+o(x^5)\end{aligned}

x5x^5 で割ると (1−a)/x4(1-a)/x^4 と (−1/6−b)/x2(-1/6-b)/x^2 の項が出ます。1−a≠01-a\neq0 なら、ほかの項より大きく発散する (1−a)/x4(1-a)/x^4 のせいで全体が発散します。a=1a=1 のもとで −1/6−b≠0-1/6-b\neq0 なら、今度は (−1/6−b)/x2(-1/6-b)/x^2 の項で発散します。よって a=1, b=−1/6a=1,\ b=-1/6 で、極限値は 1/1201/120 です。

0/00/0 以外の不定形

不定形は 0/00/0 のほかに、∞/∞\infty/\infty、0⋅∞0\cdot\infty、∞−∞\infty-\infty、1∞1^\infty、000^0、∞0\infty^0 があります。「不定」というのは、形だけでは極限が決まらないという意味です。たとえば x→+0x\to+0 のとき、同じ 0⋅∞0\cdot\infty の形でも x⋅1x=1x\cdot\dfrac1x=1、x2⋅1x→0x^2\cdot\dfrac1x\to0、x⋅1x2→∞x\cdot\dfrac1{x^2}\to\infty と、結果はばらばらです。

この節では、ロピタルの定理の ∞/∞\infty/\infty の場合を正確に書いたあと、多くの場合は 0/00/0 に直してテイラー展開するか、exe^x を多項式で押さえる不等式に帰着させれば解けることを見ます。振動する関数を含むものは、落とし穴の節のようにはさみうちで扱います。

ロピタルの定理(∞/∞\infty/\infty の場合)

定理18 ロピタルの定理(∞/∞\infty/\infty の場合)

aa を含む開区間 II があり、関数 f,gf,g は II から aa を除いたところで微分可能で、そこでは g′(x)≠0g'(x)\neq0 とする。さらに ∣g(x)∣→∞|g(x)|\to\infty(x→ax\to a)とする。このとき、極限

lim⁡x→af′(x)g′(x)=L\lim_{x\to a}\frac{f'(x)}{g'(x)}=Llim⁡x→af′(x)g′(x)=L\begin{aligned}\lim_{x\to a}\frac{f'(x)}{g'(x)} &= L\end{aligned}

が存在するならば、次が成り立つ。

lim⁡x→af(x)g(x)=L\lim_{x\to a}\frac{f(x)}{g(x)}=Llim⁡x→af(x)g(x)=L\begin{aligned}\lim_{x\to a}\frac{f(x)}{g(x)} &= L\end{aligned}

仮定にあるのは分母が発散することだけで、分子 ff が発散することは要りません。証明は 0/00/0 の場合より込み入っていて、ε\varepsilon を使う大学1年程度の議論になります。

証明
  1. x→a+0x\to a+0 の場合を示す(x→a−0x\to a-0 も同じで、両方が言えれば x→ax\to a の極限になる)。正の数 ε\varepsilon を任意にとる。仮定より、次をみたす y∈Iy\in I(y>ay>a)がとれる。この yy を固定する。a<t<y ⟹ ∣f′(t)g′(t)−L∣<εa<t<y\ \Longrightarrow\ \left|\frac{f'(t)}{g'(t)}-L\right|<\varepsilona<t<y⟹∣f′(t)g′(t)−L∣<ε\begin{aligned}a &< t\\&< y\\&\Longrightarrow \left|\frac{f'(t)}{g'(t)}-L\right|\\&< \varepsilon\end{aligned}
  2. a<x<ya<x<y とする。[x,y][x,y] でコーシーの平均値の定理を使うと、x<c<yx<c<y をみたす cc で次をみたすものがあり、この値と LL の差は ε\varepsilon より小さい。f(x)−f(y)g(x)−g(y)=f′(c)g′(c)\frac{f(x)-f(y)}{g(x)-g(y)}=\frac{f'(c)}{g'(c)}f(x)−f(y)g(x)−g(y)=f′(c)g′(c)\begin{aligned}\frac{f(x)-f(y)}{g(x)-g(y)} &= \frac{f'(c)}{g'(c)}\end{aligned}

    分母の g(x)−g(y)g(x)-g(y) は 00 でない。もし g(x)=g(y)g(x)=g(y) なら、ロルの定理から (x,y)(x,y) のどこかで g′=0g'=0 となり、仮定に反するからである。

  3. ∣g(x)∣→∞|g(x)|\to\infty なので、xx を aa に十分近くとれば g(x)≠0g(x)\neq0 で、次の式が成り立つ(右辺を展開すると左辺になる)。f(x)g(x)−L=(f(x)−f(y)g(x)−g(y)−L)×(1−g(y)g(x))+f(y)−Lg(y)g(x)\begin{aligned} &\frac{f(x)}{g(x)}-L\\ &\quad=\left(\frac{f(x)-f(y)}{g(x)-g(y)}-L\right)\\ &\qquad\times\left(1-\frac{g(y)}{g(x)}\right)\\ &\qquad+\frac{f(y)-Lg(y)}{g(x)}\end{aligned}
  4. yy は固定してあるので、x→a+0x\to a+0 で g(y)/g(x)→0g(y)/g(x)\to0、(f(y)−Lg(y))/g(x)→0(f(y)-Lg(y))/g(x)\to0 である。よって xx を aa に十分近くとると、次のようになる。∣1−g(y)g(x)∣<2∣f(y)−Lg(y)g(x)∣<ε\begin{gathered} \left|1-\frac{g(y)}{g(x)}\right|<2\\ \left|\frac{f(y)-Lg(y)}{g(x)}\right|<\varepsilon\end{gathered}∣1−g(y)g(x)∣<2∣f(y)−Lg(y)g(x)∣<ε\begin{aligned}\left|1-\frac{g(y)}{g(x)}\right| &< 2\\[4pt]\left|\frac{f(y)-Lg(y)}{g(x)}\right| &< \varepsilon\end{aligned}
  5. 前の3つのステップから、xx を aa に十分近くとると次が成り立つ。ε\varepsilon は任意なので、f(x)/g(x)→Lf(x)/g(x)\to L である。∣f(x)g(x)−L∣<ε⋅2+ε=3ε\left|\frac{f(x)}{g(x)}-L\right|<\varepsilon\cdot2+\varepsilon=3\varepsilon∣f(x)g(x)−L∣<ε⋅2+ε=3ε\begin{aligned}\left|\frac{f(x)}{g(x)}-L\right| &< \varepsilon\cdot2+\varepsilon\\&= 3\varepsilon\end{aligned}

x→a+0x\to a+0 のような片側の極限でも、同じ証明で同じことが成り立ちます(定理1も同じです)。

x→∞x\to\infty の場合は、t=1/xt=1/x とおいて t→+0t\to+0 の場合に直せます。F(t)=f(1/t)F(t)=f(1/t)、G(t)=g(1/t)G(t)=g(1/t) とおくと、合成関数の微分で次のようになります。

F′(t)=−f′(1/t)t2G′(t)=−g′(1/t)t2F′(t)G′(t)=f′(1/t)g′(1/t)\begin{gathered} F'(t)=-\frac{f'(1/t)}{t^2}\\ G'(t)=-\frac{g'(1/t)}{t^2}\\ \frac{F'(t)}{G'(t)}=\frac{f'(1/t)}{g'(1/t)}\end{gathered}F′(t)=−f′(1/t)t2G′(t)=−g′(1/t)t2F′(t)G′(t)=f′(1/t)g′(1/t)\begin{aligned}F'(t) &= -\frac{f'(1/t)}{t^2}\\[4pt]G'(t) &= -\frac{g'(1/t)}{t^2}\\[4pt]\frac{F'(t)}{G'(t)} &= \frac{f'(1/t)}{g'(1/t)}\end{aligned}

よって、t→+0t\to+0 の片側の極限についての定理1・定理18から、次が言えます。xx が十分大きいところで f,gf,g が微分可能で g′(x)≠0g'(x)\neq0 とし、f,g→0f,g\to0 または ∣g∣→∞|g|\to\infty(x→∞x\to\infty)とします。このとき、x→∞x\to\infty で f′/g′→Lf'/g'\to L なら f/g→Lf/g\to L です。条件はやはり1つも外せません(落とし穴の節のシュトルツの例)。

0/00/0 に直す

どの不定形も、式を変形すれば 0/00/0 の形になります。直し方は次のとおりです。

形直し方例
x→∞x\to\inftyt=1/xt=1/x とおいて t→+0t\to+0 にする例21
∞/∞\infty/\inftyfg=1/g1/f\dfrac fg=\dfrac{1/g}{1/f} と逆数にする例19
0⋅∞0\cdot\inftyfg=f1/gfg=\dfrac{f}{1/g} と分数にする演習問題の問題36
∞−∞\infty-\infty通分する、有理化する、くくり出す例16、例21
1∞, 00, ∞01^\infty,\ 0^0,\ \infty^0fg=eglog⁡ff^g=e^{g\log f} として、指数 glog⁡fg\log f(0⋅∞0\cdot\infty の形)を調べる例20

0/00/0 に直したあとは、前の節と同じくテイラー展開で分子と分母の次数を比べます。

例19 x→π2x\to\dfrac\pi2 で ∞/∞\infty/\infty になる tan⁡xtan⁡3x\dfrac{\tan x}{\tan3x}

h=x−π/2h=x-\pi/2 とおくと h→0h\to0 です。tan⁡(π/2+h)=−1/tan⁡h\tan(\pi/2+h)=-1/\tan h と、tan⁡\tan の周期が π\pi であることから、次のようになります。

tan⁡x=−1tan⁡htan⁡3x=tan⁡(3π2+3h)=tan⁡(π2+3h)=−1tan⁡3h\begin{gathered} \tan x=-\frac1{\tan h}\\ \tan3x=\tan\left(\frac{3\pi}2+3h\right)=\tan\left(\frac\pi2+3h\right)=-\frac1{\tan3h}\end{gathered}tan⁡x=−1tan⁡htan⁡3x=tan⁡(3π2+3h)=tan⁡(π2+3h)=−1tan⁡3h\begin{aligned}\tan x &= -\frac1{\tan h}\\[4pt]\tan3x &= \tan\left(\frac{3\pi}2+3h\right)\\&= \tan\left(\frac\pi2+3h\right)\\&= -\frac1{\tan3h}\end{aligned}

よって逆数の比になり、次のように求まります。

tan⁡xtan⁡3x=tan⁡3htan⁡h=3h+o(h)h+o(h) ⟶ 3\frac{\tan x}{\tan3x}=\frac{\tan3h}{\tan h}=\frac{3h+o(h)}{h+o(h)}\ \longrightarrow\ 3tan⁡xtan⁡3x=tan⁡3htan⁡h=3h+o(h)h+o(h)⟶3\begin{aligned}\frac{\tan x}{\tan3x} &= \frac{\tan3h}{\tan h}\\&= \frac{3h+o(h)}{h+o(h)}\\&\longrightarrow 3\end{aligned}

定理18をそのまま使うと、分子と分母を微分した比は次の式で、今度は 0/00/0 の形になり、さらに微分を続けることになります。

1/cos⁡2x3/cos⁡23x=cos⁡23x3cos⁡2x\frac{1/\cos^2x}{3/\cos^23x}=\frac{\cos^23x}{3\cos^2x}1/cos⁡2x3/cos⁡23x=cos⁡23x3cos⁡2x\begin{aligned}\frac{1/\cos^2x}{3/\cos^23x} &= \frac{\cos^23x}{3\cos^2x}\end{aligned}

例20 x→0x\to0 で 1∞1^\infty になる (cos⁡x)1/x2(\cos x)^{1/x^2}

00 の近くで cos⁡x>0\cos x>0 なので、次のように書けます。指数の (log⁡cos⁡x)/x2(\log\cos x)/x^2 を調べます。

(cos⁡x)1/x2=e(log⁡cos⁡x)/x2(\cos x)^{1/x^2}=e^{(\log\cos x)/x^2}(cos⁡x)1/x2=e(log⁡cos⁡x)/x2\begin{aligned}(\cos x)^{1/x^2} &= e^{(\log\cos x)/x^2}\end{aligned}

u=cos⁡x−1u=\cos x-1 とおくと u=−x2/2+o(x2)u=-x^2/2+o(x^2) です。log⁡(1+u)=u+o(u)\log(1+u)=u+o(u) で、0<∣x∣<2π0<|x|<2\pi では u≠0u\neq0、また u/x2→−1/2u/x^2\to-1/2 なので o(u)=o(x2)o(u)=o(x^2) です。よって次のようになります。

log⁡cos⁡x=log⁡(1+u)=−x22+o(x2)log⁡cos⁡xx2 ⟶ −12\begin{gathered} \log\cos x=\log(1+u)=-\frac{x^2}{2}+o(x^2)\\ \frac{\log\cos x}{x^2}\ \longrightarrow\ -\frac12\end{gathered}log⁡cos⁡x=log⁡(1+u)=−x22+o(x2)log⁡cos⁡xx2⟶−12\begin{aligned}\log\cos x &= \log(1+u)\\&= -\frac{x^2}{2}+o(x^2)\\[4pt]\frac{\log\cos x}{x^2} &\longrightarrow -\frac12\end{aligned}

指数関数は連続なので、極限は e−1/2=1/ee^{-1/2}=1/\sqrt e です。

例21 x→∞x\to\infty で ∞−∞\infty-\infty になる x−x2log⁡(1+1x)x-x^2\log\left(1+\dfrac1x\right)

t=1/xt=1/x とおくと t→+0t\to+0 で、通分すると 0/00/0 の形になります。

x−x2log⁡(1+1x)=1t−log⁡(1+t)t2=t−log⁡(1+t)t2\begin{aligned} &x-x^2\log\left(1+\frac1x\right)\\ &\quad=\frac1t-\frac{\log(1+t)}{t^2}\\ &\quad=\frac{t-\log(1+t)}{t^2}\end{aligned}

log⁡(1+t)=t−t2/2+o(t2)\log(1+t)=t-t^2/2+o(t^2) より、次のようになります。

t−log⁡(1+t)t2=t2/2+o(t2)t2 ⟶ 12\frac{t-\log(1+t)}{t^2}=\frac{t^2/2+o(t^2)}{t^2}\ \longrightarrow\ \frac12t−log⁡(1+t)t2=t2/2+o(t2)t2⟶12\begin{aligned}\frac{t-\log(1+t)}{t^2} &= \frac{t^2/2+o(t^2)}{t^2}\\&\longrightarrow \frac12\end{aligned}

対数と指数の増え方を比べる

t=1/xt=1/x の置き換えで 00 のまわりの展開に持ち込めるのは、式が sin⁡, cos⁡, log⁡(1+⋅)\sin,\ \cos,\ \log(1+\cdot) のように 00 のまわりで展開できる関数で書けるときです。exe^x は e1/te^{1/t}、log⁡x\log x は −log⁡t-\log t になり、どちらも t=0t=0 のまわりでテイラー展開できません。

log⁡xx\dfrac{\log x}{x} や xlog⁡xx\log x のように、対数・べき・指数の増え方を比べる極限は、次の不等式に帰着させます。この不等式は exe^x のテイラー多項式でできているので、使っている考えはやはり「多項式で近似する」ことです。

命題22 exe^x を多項式で下から押さえる

x>0x>0 と n≥0n\ge0 について、次が成り立つ。

ex>1+x+x22!+⋯+xnn!e^x>1+x+\frac{x^2}{2!}+\cdots+\frac{x^n}{n!}ex>1+x+x22!+⋯+xnn!\begin{aligned}e^x &> 1+x+\frac{x^2}{2!}+\cdots+\frac{x^n}{n!}\end{aligned}ex>1+x+x22!+⋯>+xnn!\begin{aligned}e^x &> 1+x+\frac{x^2}{2!}+\cdots\\&\phantom{>}{} +\frac{x^n}{n!}\end{aligned}

とくに ex>xn+1/(n+1)!e^x>x^{n+1}/(n+1)! なので、次が成り立つ。

lim⁡x→∞xnex=0\lim_{x\to\infty}\frac{x^n}{e^x}=0lim⁡x→∞xnex=0\begin{aligned}\lim_{x\to\infty}\frac{x^n}{e^x} &= 0\end{aligned}
証明
  1. n=0n=0 では ex>1e^x>1(x>0x>0)で成り立つ。
  2. n−1n-1 で成り立つとし、次の関数をおく。h(x)=ex−∑k=0nxkk!h′(x)=ex−∑k=0n−1xkk!\begin{gathered} h(x)=e^x-\sum_{k=0}^{n}\frac{x^k}{k!}\\ h'(x)=e^x-\sum_{k=0}^{n-1}\frac{x^k}{k!}\end{gathered}h(x)=ex−∑k=0nxkk!h′(x)=ex−∑k=0n−1xkk!\begin{aligned}h(x) &= e^x-\sum_{k=0}^{n}\frac{x^k}{k!}\\[4pt]h'(x) &= e^x-\sum_{k=0}^{n-1}\frac{x^k}{k!}\end{aligned}仮定より x>0x>0 で h′(x)>0h'(x)>0、また h(0)=0h(0)=0 なので、x>0x>0 で h(x)>0h(x)>0。
  3. n+1n+1 のときの不等式で、右辺の和の項はすべて正なので ex>xn+1/(n+1)!e^x>x^{n+1}/(n+1)!。よって次が成り立つ。0<xnex<(n+1)!x ⟶ 00<\frac{x^n}{e^x}<\frac{(n+1)!}{x}\ \longrightarrow\ 00<xnex<(n+1)!x⟶0\begin{aligned}0 &< \frac{x^n}{e^x}\\&< \frac{(n+1)!}{x}\\&\longrightarrow 0\end{aligned}

命題23 対数・べき・指数の増え方

a>0a>0 とし、mm を正の整数とする。

(1)  lim⁡x→∞(log⁡x)mxa=0(2)  lim⁡x→+0xa(log⁡x)m=0\begin{gathered} \text{(1)}\ \ \lim_{x\to\infty}\frac{(\log x)^m}{x^a}=0\\ \text{(2)}\ \ \lim_{x\to+0}x^a(\log x)^m=0\end{gathered}(1)  lim⁡x→∞(log⁡x)mxa=0(2)  lim⁡x→+0xa(log⁡x)m=0\begin{aligned}\text{(1)}\ \ \lim_{x\to\infty}\frac{(\log x)^m}{x^a} &= 0\\[4pt]\text{(2)}\ \ \lim_{x\to+0}x^a(\log x)^m &= 0\end{aligned}
証明
  1. (1) u=alog⁡xu=a\log x とおくと、x→∞x\to\infty と u→∞u\to\infty が対応し、xa=eux^a=e^u、(log⁡x)m=(u/a)m(\log x)^m=(u/a)^m である。命題22で n=mn=m とすると、次が分かる。(log⁡x)mxa=1am⋅umeu ⟶ 0\frac{(\log x)^m}{x^a}=\frac1{a^m}\cdot\frac{u^m}{e^u}\ \longrightarrow\ 0(log⁡x)mxa=1am⋅umeu⟶0\begin{aligned}\frac{(\log x)^m}{x^a} &= \frac1{a^m}\cdot\frac{u^m}{e^u}\\&\longrightarrow 0\end{aligned}
  2. (2) x=1/yx=1/y とおくと、x→+0x\to+0 と y→∞y\to\infty が対応し、log⁡x=−log⁡y\log x=-\log y なので、(1) から次が分かる。∣xa(log⁡x)m∣=(log⁡y)mya ⟶ 0\left|x^a(\log x)^m\right|=\frac{(\log y)^m}{y^a}\ \longrightarrow\ 0∣xa(log⁡x)m∣=(log⁡y)mya⟶0\begin{aligned}\left|x^a(\log x)^m\right| &= \frac{(\log y)^m}{y^a}\\&\longrightarrow 0\end{aligned}

たとえば (1) で m=a=1m=a=1 とすると (log⁡x)/x→0(\log x)/x\to0、(2) で m=a=1m=a=1 とすると xlog⁡x→0x\log x\to0 です。ロピタルの定理でも求められますが、(log⁡x)m/xa(\log x)^m/x^a では分子と分母を微分するたびに log⁡x\log x の次数が1つ下がるだけなので、定理18を mm 回使い、そのたびに条件を確かめることになります。

ロピタルの定理の落とし穴

ロピタルの定理そのものは正しい定理です。問題は、条件を確かめずに使いやすいことと、使えないときに何も分からないことです。よく起きる失敗を、テイラー(または直接の見積もり)と並べます。

0/00/0 でなくなったのに使い続ける

lim⁡x→01−cos⁡xx2+x\displaystyle\lim_{x\to0}\frac{1-\cos x}{x^2+x} で、分子と分母を2回微分すると次のようになります(分子と分母を微分する操作を ⇝\rightsquigarrow で表します)。

1−cos⁡xx2+x ⇝ sin⁡x2x+1 ⇝ cos⁡x2 → 12\frac{1-\cos x}{x^2+x}\ \rightsquigarrow\ \frac{\sin x}{2x+1}\ \rightsquigarrow\ \frac{\cos x}{2}\ \to\ \frac121−cos⁡xx2+x⇝sin⁡x2x+1⇝cos⁡x2→12\begin{aligned}\frac{1-\cos x}{x^2+x} &\rightsquigarrow \frac{\sin x}{2x+1}\\&\rightsquigarrow \frac{\cos x}{2}\\&\to \frac12\end{aligned}

2回目の微分は誤りです。sin⁡x/(2x+1)\sin x/(2x+1) は x→0x\to0 で 0/10/1 の形なので、そのまま 00 が答えです。テイラーで見ると、分子は x2/2+o(x2)x^2/2+o(x^2)、分母は x+x2x+x^2 で、分子のほうが1次速く 00 に近づくことが一目で分かります。

f′/g′f'/g' の極限がないと、何も分からない

定理1は「f′/g′f'/g' の極限が存在すれば」という定理です。存在しないときは、f/gf/g の極限について何も言いません。f/gf/g の極限は存在することもあります。

例24 x→∞x\to\infty のときの x+sin⁡xx\dfrac{x+\sin x}{x}

分子と分母を微分すると (1+cos⁡x)/1(1+\cos x)/1 で、これは 00 と 22 のあいだを振動し続け、極限をもちません。一方、もとの式は

x+sin⁡xx=1+sin⁡xx∣sin⁡xx∣≤1x→0\begin{gathered} \frac{x+\sin x}{x}=1+\frac{\sin x}{x}\\ \left|\frac{\sin x}{x}\right|\le\frac1x\to0 \end{gathered}x+sin⁡xx=1+sin⁡xx∣sin⁡xx∣≤1x→0\begin{aligned}\frac{x+\sin x}{x} &= 1+\frac{\sin x}{x}\\[4pt]\left|\frac{\sin x}{x}\right| &\le \frac1x\\&\to 0\end{aligned}

なので、極限は 11 です。

1010
2020
3030
4040
11
22
y=x+sin⁡xxy=\dfrac{x+\sin x}{x}
y=(x+sin⁡x)′(x)′=1+cos⁡xy=\dfrac{(x+\sin x)'}{(x)'}=1+\cos x
xx
図2具体例例24のグラフです。x+sin⁡xx\dfrac{x+\sin x}{x}(青)は 11 に近づきますが、分子と分母を微分した 1+cos⁡x1+\cos x(橙)は振動を続けます。ロピタルの定理は、橙が収束するときにだけ青の極限を教えてくれます。

例25 x→0x\to0 のときの x2sin⁡(1/x)sin⁡x\dfrac{x^2\sin(1/x)}{\sin x}

分子を微分すると次の式になります。

(x2sin⁡1x)′=2xsin⁡1x−cos⁡1x\left(x^2\sin\frac1x\right)'=2x\sin\frac1x-\cos\frac1x(x2sin⁡1x)′=2xsin⁡1x−cos⁡1x\begin{aligned}\left(x^2\sin\frac1x\right)' &= 2x\sin\frac1x-\cos\frac1x\end{aligned}

cos⁡(1/x)\cos(1/x) が −1-1 と 11 のあいだを振動するので、f′/g′f'/g' は極限をもちません。一方、例10(3) より分子は o(x)o(x)、分母は sin⁡x=x+o(x)\sin x=x+o(x) なので、

x2sin⁡(1/x)sin⁡x=o(x)/x1+o(x)/x ⟶ 01=0\frac{x^2\sin(1/x)}{\sin x}=\frac{o(x)/x}{1+o(x)/x}\ \longrightarrow\ \frac{0}{1}=0x2sin⁡(1/x)sin⁡x=o(x)/x1+o(x)/x⟶01=0\begin{aligned}\frac{x^2\sin(1/x)}{\sin x} &= \frac{o(x)/x}{1+o(x)/x}\\&\longrightarrow \frac{0}{1}\\&= 0\end{aligned}
もう少し詳しく1次の場合は、aa で微分可能なだけでよい

例25の分子 f(x)=x2sin⁡(1/x)f(x)=x^2\sin(1/x)(f(0)=0f(0)=0)は、x=0x=0 で1回は微分できます(f′(0)=lim⁡xsin⁡(1/x)=0f'(0)=\lim x\sin(1/x)=0)が、f′f' は 00 で連続でなく、2回は微分できません。それでも定理13の n=1n=1 の場合と同じ結論が成り立ちます。

理由は、aa で微分可能であることが、そのまま f(x)=f(a)+f′(a)(x−a)+o(x−a)f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)+o(x-a) を意味するからです。実際、微分係数の定義から

f(x)−f(a)−f′(a)(x−a)x−a=f(x)−f(a)x−a−f′(a) ⟶ 0\begin{aligned} &\frac{f(x)-f(a)-f'(a)(x-a)}{x-a}\\ &\quad=\frac{f(x)-f(a)}{x-a}-f'(a)\ \longrightarrow\ 0\end{aligned}

そのため、f(a)=g(a)=0f(a)=g(a)=0、g′(a)≠0g'(a)\neq0 なら、f,gf,g が aa で微分可能というだけで lim⁡f/g=f′(a)/g′(a)\lim f/g=f'(a)/g'(a) が言えます。ロピタルの定理の節の「よくある誤り」の前半は、この正しい命題の証明になっています。

堂々めぐりになる

x→∞x\to\infty のときの x2+1x\dfrac{\sqrt{x^2+1}}{x}(∞/∞\infty/\infty)で分子と分母を微分すると、次のようになります。

x2+1x ⇝ x/x2+11=xx2+1 ⇝ 1x/x2+1=x2+1x\frac{\sqrt{x^2+1}}{x}\ \rightsquigarrow\ \frac{x/\sqrt{x^2+1}}{1}=\frac{x}{\sqrt{x^2+1}}\ \rightsquigarrow\ \frac{1}{x/\sqrt{x^2+1}}=\frac{\sqrt{x^2+1}}{x}x2+1x⇝x/x2+11=xx2+1⇝1x/x2+1=x2+1x\begin{aligned}\frac{\sqrt{x^2+1}}{x} &\rightsquigarrow \frac{x/\sqrt{x^2+1}}{1}\\&= \frac{x}{\sqrt{x^2+1}}\\&\rightsquigarrow \frac{1}{x/\sqrt{x^2+1}}\\&= \frac{\sqrt{x^2+1}}{x}\end{aligned}

2回で元の式に戻り、何回使っても終わりません。分母の xx を根号の中に入れれば、1+1/x2→1\sqrt{1+1/x^2}\to1 とすぐに分かります。

sin⁡x/x→1\sin x/x\to1 に使うと循環論法になる

次の計算は、論理が循環しています。

lim⁡x→0sin⁡xx=lim⁡x→0cos⁡x1=1\lim_{x\to0}\frac{\sin x}{x}=\lim_{x\to0}\frac{\cos x}{1}=1lim⁡x→0sin⁡xx=lim⁡x→0cos⁡x1=1\begin{aligned}\lim_{x\to0}\frac{\sin x}{x} &= \lim_{x\to0}\frac{\cos x}{1}\\&= 1\end{aligned}

(sin⁡x)′=cos⁡x(\sin x)'=\cos x を教科書で示すときに、この極限そのものを使っているからです。

これはテイラーでも同じです。sin⁡x=x+o(x)\sin x=x+o(x) は sin⁡\sin の微分から出しているので、sin⁡x/x→1\sin x/x\to1 の証明には使えません。この極限は、扇形の面積を比べる不等式 sin⁡x<x<tan⁡x\sin x<x<\tan x(0<x<π/20<x<\pi/2)とはさみうちで示す、出発点の極限です。テイラーにもこの弱点があることは覚えておいてください。

もう少し詳しく条件「g′≠0g'\neq0」を外すと成り立たない例

ロピタルの定理の条件「g′(x)≠0g'(x)\neq0」は、省いて書かれることがあります。しかしこの条件がないと、定理は成り立ちません。定理18を x→∞x\to\infty に置き換えた場合(∞/∞\infty/\infty の節)について、シュトルツによる次の例が知られています[1]。

f(x)=x+sin⁡xcos⁡xg(x)=esin⁡xf(x)\begin{gathered} f(x)=x+\sin x\cos x\\ g(x)=e^{\sin x}f(x)\end{gathered}f(x)=x+sin⁡xcos⁡xg(x)=esin⁡xf(x)\begin{aligned}f(x) &= x+\sin x\cos x\\[4pt]g(x) &= e^{\sin x}f(x)\end{aligned}

x→∞x\to\infty で f,gf,g はどちらも ∞\infty に発散します。微分すると次のようになります。

f′(x)=2cos⁡2xg′(x)=esin⁡xcos⁡x (f(x)+2cos⁡x)\begin{gathered} f'(x)=2\cos^2x\\ g'(x)=e^{\sin x}\cos x\,\bigl(f(x)+2\cos x\bigr)\end{gathered}f′(x)=2cos⁡2xg′(x)=esin⁡xcos⁡x (f(x)+2cos⁡x)\begin{aligned}f'(x) &= 2\cos^2x\\[4pt]g'(x) &= e^{\sin x}\cos x\,\bigl(f(x)+2\cos x\bigr)\end{aligned}

cos⁡x\cos x を約分すると、次のようになります。

f′(x)g′(x)=2cos⁡xesin⁡x (f(x)+2cos⁡x) ⟶ 0\frac{f'(x)}{g'(x)}=\frac{2\cos x}{e^{\sin x}\,(f(x)+2\cos x)}\ \longrightarrow\ 0f′(x)g′(x)=2cos⁡xesin⁡x (f(x)+2cos⁡x)⟶0\begin{aligned}\frac{f'(x)}{g'(x)} &= \frac{2\cos x}{e^{\sin x}\,(f(x)+2\cos x)}\\&\longrightarrow 0\end{aligned}

ところが f/g=e−sin⁡xf/g=e^{-\sin x} は e−1e^{-1} と ee のあいだを振動し、極限をもちません。g′g' は cos⁡x=0\cos x=0 となる点で 00 になり、条件をみたしていないのです。約分した cos⁡x\cos x が、ちょうどそこに隠れています。

多項式で挟んで、はさみうちで書く

答案には、前の節のように oo の記号を使った展開をそのまま書いてかまいません。もう1つの書き方として、関数をテイラー多項式で挟む不等式を示し、はさみうちで極限を出す方法があります。

この書き方は、テイラーの定理を引用せずに微分だけで完結し、誤差がどれだけかも具体的な式で分かります。sin⁡x\sin x で見てみます。

命題26 sin⁡x\sin x を多項式で挟む

x>0x>0 のとき、次が成り立つ。

x−x36<sin⁡x<x−x36+x5120sin⁡x<x\begin{gathered} x-\frac{x^3}{6}<\sin x<x-\frac{x^3}{6}+\frac{x^5}{120}\\ \sin x<x\end{gathered}x−x36<sin⁡x<x−x36+x5120sin⁡x<x\begin{aligned}x-\frac{x^3}{6} &< \sin x\\&< x-\frac{x^3}{6}+\frac{x^5}{120}\\[4pt]\sin x &< x\end{aligned}
証明
  1. g1(x)=x−sin⁡xg_1(x)=x-\sin x とおく。g1′(x)=1−cos⁡x≥0g_1'(x)=1-\cos x\ge0 で、等号は x=2π,4π,…x=2\pi,4\pi,\dots だけなので g1g_1 は増加する。g1(0)=0g_1(0)=0 より x>0x>0 で sin⁡x<x\sin x<x。
  2. g2(x)=cos⁡x−1+x22g_2(x)=\cos x-1+\dfrac{x^2}{2} とおく。g2′(x)=x−sin⁡x>0g_2'(x)=x-\sin x>0(前のステップ)と g2(0)=0g_2(0)=0 より、x>0x>0 で次が成り立つ。cos⁡x>1−x22\cos x>1-\frac{x^2}{2}cos⁡x>1−x22\begin{aligned}\cos x &> 1-\frac{x^2}{2}\end{aligned}
  3. g3(x)=sin⁡x−x+x36g_3(x)=\sin x-x+\dfrac{x^3}{6} とおく。g3′(x)=g2(x)>0g_3'(x)=g_2(x)>0 と g3(0)=0g_3(0)=0 より、x>0x>0 で次が成り立つ。sin⁡x>x−x36\sin x>x-\frac{x^3}{6}sin⁡x>x−x36\begin{aligned}\sin x &> x-\frac{x^3}{6}\end{aligned}
  4. g4(x)=1−x22+x424−cos⁡xg_4(x)=1-\dfrac{x^2}{2}+\dfrac{x^4}{24}-\cos x とおく。g4′(x)=g3(x)>0g_4'(x)=g_3(x)>0 と g4(0)=0g_4(0)=0 より、x>0x>0 で次が成り立つ。cos⁡x<1−x22+x424\cos x<1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{24}cos⁡x<1−x22+x424\begin{aligned}\cos x &< 1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{24}\end{aligned}
  5. g5(x)=x−x36+x5120−sin⁡xg_5(x)=x-\dfrac{x^3}{6}+\dfrac{x^5}{120}-\sin x とおく。g5′(x)=g4(x)>0g_5'(x)=g_4(x)>0 と g5(0)=0g_5(0)=0 より、x>0x>0 で次が成り立つ。sin⁡x<x−x36+x5120\sin x<x-\frac{x^3}{6}+\frac{x^5}{120}sin⁡x<x−x36+x5120\begin{aligned}\sin x &< x-\frac{x^3}{6}+\frac{x^5}{120}\end{aligned}

各ステップは「微分すると1つ前の不等式になる関数」を作っています。微分するたびにテイラー多項式の項が1つずつ減るので、この連鎖が組めるのです。sin⁡x\sin x の場合のテイラーの定理を、微分だけで証明し直していることになります。

同じ形の不等式は、微分のかわりに積分でも導けます。x>0x>0 とします。t≥0t\ge0 で cos⁡t≤1\cos t\le1 を tt について 00 から xx まで積分すると sin⁡x≤x\sin x\le x、それをまた積分すると 1−cos⁡x≤x2/21-\cos x\le x^2/2、という具合に1つずつ次数が上がっていきます(各段は、xx を tt に書きかえた不等式を 00 から xx まで積分して得ます)。0<t<2π0<t<2\pi では cos⁡t<1\cos t<1 なので、等号のない形も同じように出ます(00 以上で恒等的に 00 でない連続関数の積分は正)。

cos⁡x≤1 ⟹ sin⁡x≤x ⟹ 1−cos⁡x≤x22 ⟹ x−sin⁡x≤x36 ⟹ ⋯\cos x\le1\ \Longrightarrow\ \sin x\le x\ \Longrightarrow\ 1-\cos x\le\frac{x^2}{2}\ \Longrightarrow\ x-\sin x\le\frac{x^3}{6}\ \Longrightarrow\ \cdotscos⁡x≤1⟹sin⁡x≤x⟹1−cos⁡x≤x22⟹x−sin⁡x≤x36⟹⋯\begin{aligned}\cos x &\le 1\\&\Longrightarrow \sin x\\&\le x\\&\Longrightarrow 1-\cos x\\&\le \frac{x^2}{2}\\&\Longrightarrow x-\sin x\\&\le \frac{x^3}{6}\\&\Longrightarrow \cdots\end{aligned}

これは定理7(積分の剰余項)を、具体的な関数で1段ずつ書いたものです。記事の命題を引かずに書けるので、入試の答案ではこの書き方が使いやすく、演習問題の「答案の例:不等式で挟む」もこの書き方で書いています。

例27 不等式で挟んで x−sin⁡xx3→16\dfrac{x-\sin x}{x^3}\to\dfrac16

x>0x>0 のとき、命題26から次が成り立ちます。

x36−x5120<x−sin⁡x<x36\frac{x^3}{6}-\frac{x^5}{120}<x-\sin x<\frac{x^3}{6}x36−x5120<x−sin⁡x<x36\begin{aligned}\frac{x^3}{6}-\frac{x^5}{120} &< x-\sin x\\&< \frac{x^3}{6}\end{aligned}

x3x^3 で割ると、次のようになります。

16−x2120<x−sin⁡xx3<16\frac16-\frac{x^2}{120}<\frac{x-\sin x}{x^3}<\frac1616−x2120<x−sin⁡xx3<16\begin{aligned}\frac16-\frac{x^2}{120} &< \frac{x-\sin x}{x^3}\\&< \frac16\end{aligned}

x→+0x\to+0 で両端が 1/61/6 に近づくので、はさみうちの原理により極限は 1/61/6 です。(x−sin⁡x)/x3(x-\sin x)/x^3 は xx を −x-x にしても値が変わらない(偶関数な)ので、x→−0x\to-0 でも同じです。

−3-3
−2-2
−1-1
11
22
33
0.10.1
0.150.15
y=16y=\dfrac16
y=16−x2120y=\dfrac16-\dfrac{x^2}{120}
y=x−sin⁡xx3y=\dfrac{x-\sin x}{x^3}
xx
図3具体例例27のはさみうちの図です。y=x−sin⁡xx3y=\dfrac{x-\sin x}{x^3}(青)は、y=16y=\dfrac16 と y=16−x2120y=\dfrac16-\dfrac{x^2}{120}(緑の線)のあいだにあります。縦軸は 0.0750.075 から始めて拡大しています。x=0x=0 では式が定義されないので白丸にしています。

テイラーの方法で極限を書く手順は、次のとおりです。

  1. 0/00/0 の形でなければ、0/00/0 に直す。対数や指数の増え方を比べる極限なら、命題23に帰着させる。
  2. テイラー展開で、極限値と、何次まで展開すれば足りるかを見当づける。
  3. oo の記号を使った展開のまま書くか、その次数のテイラー多項式で挟む不等式を微分で示す。
  4. 不等式で書いたときは、はさみうちの原理で極限を出す。1次で済む極限なら、微分係数の定義の形に直すだけでもよい(例:ex−1x→(ex)′∣x=0=1\dfrac{e^x-1}{x}\to(e^x)'\big|_{x=0}=1)。

どちらの定理が強いのか

ここまで読むと、テイラーの定理のほうが強い定理に見えるかもしれません。しかし、そうではありません。ロピタルの定理を何回か使うと、テイラーの定理のペアノの剰余の形が示せます。これは「ff が aa で nn 回微分可能なら、x→ax\to a で次が成り立つ」というものです。

f(x)=∑k=0nf(k)(a)k!(x−a)k+o((x−a)n)f(x)=\sum_{k=0}^{n}\frac{f^{(k)}(a)}{k!}(x-a)^k+o\left((x-a)^n\right)f(x)=∑k=0nf(k)(a)k!(x−a)k+o((x−a)n)\begin{aligned}f(x) &= \sum_{k=0}^{n}\frac{f^{(k)}(a)}{k!}(x-a)^k+o\left((x-a)^n\right)\end{aligned}f(x)=∑k=0nf(k)(a)k!(x−a)k=+o((x−a)n)\begin{aligned}f(x) &= \sum_{k=0}^{n}\frac{f^{(k)}(a)}{k!}(x-a)^k\\&\phantom{=}{} +o\left((x-a)^n\right)\end{aligned}

一方でロピタルの定理は、f,gf,g が aa で微分できない場合も含めて、f′/g′f'/g' の極限から f/gf/g の極限を出す定理で、テイラーの方法がそのまま使えない場面もカバーします。

2025年には、実数を一般の順序体に広げて考えると、ロピタルの定理も、このペアノの剰余の形のテイラーの定理も、それぞれ上限の存在(実数の連続性)と同値になることを示した論文が出ています[3]。この意味でも、どちらかが強い定理というわけではありません。

違いは、極限の計算に使ったときの使い勝手にあります。

ロピタルの定理テイラーの方法
確かめること毎回、0/00/0 か、g′≠0g'\neq0 か、f′/g′f'/g' の極限が存在するか何次まで展開すれば足りるか
分かること極限値だけ分子・分母が何次の速さで 00 になるか(極限値とその先の項)
使えないときf′/g′f'/g' の極限がなければ何も分からない次数が足りなければ、もう1つ先まで展開すればよい(展開できる関数なら)
x→∞x\to\infty、∞/∞\infty/\infty定理18と t=1/xt=1/x の置き換えで使える(条件の確認は 0/00/0 と同じ)t=1/xt=1/x や逆数で 0/00/0 に直す。対数・指数の増え方の比較は命題23を使う
誤差の大きさ分からない剰余項や多項式の不等式で、具体的な式で分かる

入試に出る不定形の極限は、ほとんどが「0/00/0 に直してテイラー展開する」か「命題23に帰着させる」かで解けます。そうでないもの(例24のように振動する関数を含むもの)は、どちらの定理にも頼らず、はさみうちで直接見積もります。

演習問題

見出しには、不定形の種類と、難しさの目安(★の数)を書いています。解き方は2つ付けています。

  • 「答案の例:テイラー展開」は、テイラーの定理を既知の定理として使う答案です。sin⁡x, cos⁡x, ex, log⁡(1+x), tan⁡x\sin x,\ \cos x,\ e^x,\ \log(1+x),\ \tan x の x→0x\to0 での展開(oo の記号)や、ラグランジュの剰余項を答案にそのまま書きます。大学で習う定理でも、正しい定理なので入試の答案に使ってかまいません。
  • 「答案の例:不等式で挟む」は、必要な不等式を部分積分や「不等式を 00 から xx まで積分していく」ことでその場で導き、はさみうちの原理と sin⁡x/x→1\sin x/x\to1、(ex−1)/x→1(e^x-1)/x\to1 のような基本の極限で極限を出す答案です。多くの問題では、誤差の大きさも式で分かります。

どちらの答案も、この記事の命題は引きません(本番では記事の命題は引けないためです)。テイラー展開を使うまでもない問題には「解答」だけを、不等式を示す問題には「不等式で挟む」答案だけを付けています。ほかの問題の答案で導いた不等式を使う箇所には「答案では、この導き方も書く」と注記しています。本番では、その導き方も答案に書いてください。

問題28 0/00/0 の不定形 ★

次の極限を求めよ。

lim⁡x→0ex−1−xx2\lim_{x\to0}\frac{e^x-1-x}{x^2}
答案の例:テイラー展開
  1. 分母が x2x^2 なので、テイラーの定理による x→0x\to0 での展開 ex=1+x+x2/2+o(x2)e^x=1+x+x^2/2+o(x^2) を使う。分子は x2/2+o(x2)x^2/2+o(x^2) である。
  2. x2x^2 で割って、極限は次のとおりである。ex−1−xx2=12+o(x2)x2 ⟶ 12\frac{e^x-1-x}{x^2}=\frac12+\frac{o(x^2)}{x^2}\ \longrightarrow\ \frac12ex−1−xx2=12+o(x2)x2⟶12\begin{aligned}\frac{e^x-1-x}{x^2} &= \frac12+\frac{o(x^2)}{x^2}\\&\longrightarrow \frac12\end{aligned}
答案の例:不等式で挟む
  1. 部分積分により、次が成り立つ。∫0x(x−t)et dt=[(x−t)et]0x+∫0xet dt=−x+(ex−1)=ex−1−x\int_0^x(x-t)e^t\,dt=\Bigl[(x-t)e^t\Bigr]_0^x+\int_0^xe^t\,dt=-x+(e^x-1)=e^x-1-x∫0x(x−t)et dt=[(x−t)et]0x+∫0xet dt=−x+(ex−1)=ex−1−x\begin{aligned}\int_0^x(x-t)e^t\,dt &= \Bigl[(x-t)e^t\Bigr]_0^x+\int_0^xe^t\,dt\\&= -x+(e^x-1)\\&= e^x-1-x\end{aligned}∫0x(x−t)et dt=[(x−t)et]0x=+∫0xet dt=−x+(ex−1)=ex−1−x\begin{aligned}\int_0^x(x-t)e^t\,dt &= \Bigl[(x-t)e^t\Bigr]_0^x\\&\phantom{=}{} +\int_0^xe^t\,dt\\&= -x+(e^x-1)\\&= e^x-1-x\end{aligned}
  2. x>0x>0 のとき、0≤t≤x0\le t\le x で 1≤et≤ex1\le e^t\le e^x、x−t≥0x-t\ge0 で、∫0x(x−t) dt=x2/2\int_0^x(x-t)\,dt=x^2/2 なので、次が成り立つ。x22≤ex−1−x≤exx22\frac{x^2}{2}\le e^x-1-x\le\frac{e^x x^2}{2}x22≤ex−1−x≤exx22\begin{aligned}\frac{x^2}{2} &\le e^x-1-x\\&\le \frac{e^x x^2}{2}\end{aligned}
  3. x<0x<0 のとき、左辺の積分は ∫x0(t−x)et dt\int_x^0(t-x)e^t\,dt と書ける。x≤t≤0x\le t\le0 で ex≤et≤1e^x\le e^t\le1、t−x≥0t-x\ge0 で、∫x0(t−x) dt=x2/2\int_x^0(t-x)\,dt=x^2/2 なので、次が成り立つ。exx22≤ex−1−x≤x22\frac{e^x x^2}{2}\le e^x-1-x\le\frac{x^2}{2}exx22≤ex−1−x≤x22\begin{aligned}\frac{e^x x^2}{2} &\le e^x-1-x\\&\le \frac{x^2}{2}\end{aligned}
  4. どちらの場合も (ex−1−x)/x2(e^x-1-x)/x^2 は 1/21/2 と ex/2e^x/2 のあいだにある。x→0x\to0 で ex/2→1/2e^x/2\to1/2 なので、はさみうちの原理により極限は 1/21/2 である。

問題29 0/00/0 の不定形 ★★

次の極限を求めよ。

lim⁡x→0x−sin⁡xx−tan⁡x\lim_{x\to0}\frac{x-\sin x}{x-\tan x}
答案の例:テイラー展開
  1. テイラーの定理による x→0x\to0 での展開 sin⁡x=x−x3/6+o(x3)\sin x=x-x^3/6+o(x^3)、tan⁡x=x+x3/3+o(x3)\tan x=x+x^3/3+o(x^3) を使う。1次の項は分子・分母とも消えるので、3次まで展開すると次のようになる。x−sin⁡x=x36+o(x3)x−tan⁡x=−x33+o(x3)\begin{gathered} x-\sin x=\frac{x^3}{6}+o(x^3)\\ x-\tan x=-\frac{x^3}{3}+o(x^3)\end{gathered}x−sin⁡x=x36+o(x3)x−tan⁡x=−x33+o(x3)\begin{aligned}x-\sin x &= \frac{x^3}{6}+o(x^3)\\[4pt]x-\tan x &= -\frac{x^3}{3}+o(x^3)\end{aligned}
  2. 分子と分母を x3x^3 で割ると、極限は次のとおりである。1/6+o(x3)/x3−1/3+o(x3)/x3 ⟶ 1/6−1/3=−12\frac{1/6+o(x^3)/x^3}{-1/3+o(x^3)/x^3}\ \longrightarrow\ \frac{1/6}{-1/3}=-\frac121/6+o(x3)/x3−1/3+o(x3)/x3⟶1/6−1/3=−12\begin{aligned}\frac{1/6+o(x^3)/x^3}{-1/3+o(x^3)/x^3} &\longrightarrow \frac{1/6}{-1/3}\\&= -\frac12\end{aligned}
答案の例:不等式で挟む
  1. x>0x>0 とする。t≥0t\ge0 で cos⁡t≤1\cos t\le1 である。これを tt について 00 から xx まで積分すると sin⁡x≤x\sin x\le x を得る(∫0xcos⁡t dt=sin⁡x\int_0^x\cos t\,dt=\sin x、∫0xsin⁡t dt=1−cos⁡x\int_0^x\sin t\,dt=1-\cos x)。得た不等式を同じように積分することを繰り返すと、x>0x>0 で次が順に成り立つ。1−cos⁡x≤x22sin⁡x≥x−x361−cos⁡x≥x22−x424sin⁡x≤x−x36+x5120\begin{gathered} 1-\cos x\le\frac{x^2}{2}\\ \sin x\ge x-\frac{x^3}{6}\\ 1-\cos x\ge\frac{x^2}{2}-\frac{x^4}{24}\\ \sin x\le x-\frac{x^3}{6}+\frac{x^5}{120}\end{gathered}1−cos⁡x≤x22sin⁡x≥x−x361−cos⁡x≥x22−x424sin⁡x≤x−x36+x5120\begin{aligned}1-\cos x &\le \frac{x^2}{2}\\[4pt]\sin x &\ge x-\frac{x^3}{6}\\[4pt]1-\cos x &\ge \frac{x^2}{2}-\frac{x^4}{24}\\[4pt]\sin x &\le x-\frac{x^3}{6}+\frac{x^5}{120}\end{aligned}とくに次が成り立つ。x36−x5120≤x−sin⁡x≤x36\frac{x^3}{6}-\frac{x^5}{120}\le x-\sin x\le\frac{x^3}{6}x36−x5120≤x−sin⁡x≤x36\begin{aligned}\frac{x^3}{6}-\frac{x^5}{120} &\le x-\sin x\\&\le \frac{x^3}{6}\end{aligned}
  2. 0<x<π/20<x<\pi/2 とする。(tan⁡t)′=1+tan⁡2t(\tan t)'=1+\tan^2t より、次が成り立つ。tan⁡x−x=∫0xtan⁡2t dt\tan x-x=\int_0^x\tan^2t\,dttan⁡x−x=∫0xtan⁡2t dt\begin{aligned}\tan x-x &= \int_0^x\tan^2t\,dt\end{aligned}被積分関数は 00 以上なので tan⁡t≥t\tan t\ge t(0≤t<π/20\le t<\pi/2)、よって tan⁡2t≥t2\tan^2t\ge t^2 である。また 0≤t≤x0\le t\le x では、前のステップの sin⁡t≤t\sin t\le t と、cos⁡\cos が減少することから 0≤tan⁡t=sin⁡t/cos⁡t≤t/cos⁡x0\le\tan t=\sin t/\cos t\le t/\cos x である。これらを積分して、次を得る。x33≤tan⁡x−x≤x33cos⁡2x\frac{x^3}{3}\le\tan x-x\le\frac{x^3}{3\cos^2x}x33≤tan⁡x−x≤x33cos⁡2x\begin{aligned}\frac{x^3}{3} &\le \tan x-x\\&\le \frac{x^3}{3\cos^2x}\end{aligned}
  3. 2つの不等式から、0<x<π/20<x<\pi/2 で次が成り立つ。x→+0x\to+0 で両端は 1/21/2 に近づくので、はさみうちの原理により (x−sin⁡x)/(tan⁡x−x)→1/2(x-\sin x)/(\tan x-x)\to1/2 で、(x−sin⁡x)/(x−tan⁡x)(x-\sin x)/(x-\tan x) はその −1-1 倍なので −1/2-1/2 に近づく。(12−x240)cos⁡2x≤x−sin⁡xtan⁡x−x≤12\left(\frac12-\frac{x^2}{40}\right)\cos^2x\le\frac{x-\sin x}{\tan x-x}\le\frac12(12−x240)cos⁡2x≤x−sin⁡xtan⁡x−x≤12\begin{aligned}\left(\frac12-\frac{x^2}{40}\right)\cos^2x &\le \frac{x-\sin x}{\tan x-x}\\&\le \frac12\end{aligned}
  4. 分子と分母はどちらも奇関数なので、式は偶関数で、x→−0x\to-0 でも同じである。極限は −1/2-1/2 である。

問題30 ∞−∞\infty-\infty の不定形 ★★

次の極限を求めよ。

lim⁡x→0(1x−1log⁡(1+x))\lim_{x\to0}\left(\frac1x-\frac1{\log(1+x)}\right)
答案の例:テイラー展開
  1. 通分すると次の式になる。1x−1log⁡(1+x)=log⁡(1+x)−xxlog⁡(1+x)\frac1x-\frac1{\log(1+x)}=\frac{\log(1+x)-x}{x\log(1+x)}1x−1log⁡(1+x)=log⁡(1+x)−xxlog⁡(1+x)\begin{aligned}\frac1x-\frac1{\log(1+x)} &= \frac{\log(1+x)-x}{x\log(1+x)}\end{aligned}
  2. テイラーの定理による x→0x\to0 での展開 log⁡(1+x)=x−x2/2+o(x2)\log(1+x)=x-x^2/2+o(x^2) を使う。分母は x⋅(x+o(x))=x2+o(x2)x\cdot(x+o(x))=x^2+o(x^2)、分子は log⁡(1+x)−x=−x2/2+o(x2)\log(1+x)-x=-x^2/2+o(x^2) である。
  3. 分子と分母を x2x^2 で割ると、極限は次のとおりである。−1/2+o(x2)/x21+o(x2)/x2 ⟶ −12\frac{-1/2+o(x^2)/x^2}{1+o(x^2)/x^2}\ \longrightarrow\ -\frac12−1/2+o(x2)/x21+o(x2)/x2⟶−12\begin{aligned}\frac{-1/2+o(x^2)/x^2}{1+o(x^2)/x^2} &\longrightarrow -\frac12\end{aligned}
答案の例:不等式で挟む
  1. 1/(1+t)1/(1+t) を積分すると log⁡(1+t)\log(1+t) なので、次が成り立つ。x−log⁡(1+x)=∫0x(1−11+t)dt=∫0xt1+t dt\begin{aligned} &x-\log(1+x)\\ &\quad=\int_0^x\left(1-\frac1{1+t}\right)dt\\ &\quad=\int_0^x\frac{t}{1+t}\,dt\end{aligned}
  2. x>0x>0 のとき、0≤t≤x0\le t\le x で t/(1+x)≤t/(1+t)≤tt/(1+x)\le t/(1+t)\le t なので、積分して次を得る。x22(1+x)≤x−log⁡(1+x)≤x22\frac{x^2}{2(1+x)}\le x-\log(1+x)\le\frac{x^2}{2}x22(1+x)≤x−log⁡(1+x)≤x22\begin{aligned}\frac{x^2}{2(1+x)} &\le x-\log(1+x)\\&\le \frac{x^2}{2}\end{aligned}−1<x<0-1<x<0 のときは、積分を ∫x0(−t)/(1+t) dt\int_x^0(-t)/(1+t)\,dt と書き、x≤t≤0x\le t\le0 で −t≤−t/(1+t)≤−t/(1+x)-t\le-t/(1+t)\le-t/(1+x) を使うと、不等号の向きが逆の同じ不等式を得る。
  3. どちらの場合も (x−log⁡(1+x))/x2(x-\log(1+x))/x^2 は 1/21/2 と 1/(2(1+x))1/(2(1+x)) のあいだにあるので、はさみうちの原理により 1/21/2 に近づく。
  4. 次のように変形する。1x−1log⁡(1+x)=−x−log⁡(1+x)x2⋅xlog⁡(1+x)\begin{aligned} &\frac1x-\frac1{\log(1+x)}\\ &\quad=-\frac{x-\log(1+x)}{x^2}\\ &\qquad\cdot\frac{x}{\log(1+x)}\end{aligned}log⁡(1+x)/x→1\log(1+x)/x\to1(log⁡\log の 11 での微分係数)なので、その逆数の x/log⁡(1+x)x/\log(1+x) も 11 に近づく。よって極限は −1/2⋅1=−1/2-1/2\cdot1=-1/2 である。

問題31 0/00/0 の不定形 ★★

次の極限を求めよ。

lim⁡x→0cos⁡x−e−x2/2x4\lim_{x\to0}\frac{\cos x-e^{-x^2/2}}{x^4}
答案の例:テイラー展開
  1. テイラーの定理より、x→0x\to0 で次が成り立つ。cos⁡x=1−x22+x424+o(x4)\cos x=1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{24}+o(x^4)cos⁡x=1−x22+x424+o(x4)\begin{aligned}\cos x &= 1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{24}+o(x^4)\end{aligned}cos⁡x=1−x22+x424=+o(x4)\begin{aligned}\cos x &= 1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{24}\\&\phantom{=}{} +o(x^4)\end{aligned}
  2. テイラーの定理による u→0u\to0 での展開 eu=1+u+u2/2+o(u2)e^u=1+u+u^2/2+o(u^2) に u=−x2/2u=-x^2/2 を入れると、次のようになる。e−x2/2=1−x22+x48+o(x4)e^{-x^2/2}=1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{8}+o(x^4)e−x2/2=1−x22+x48+o(x4)\begin{aligned}e^{-x^2/2} &= 1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{8}+o(x^4)\end{aligned}e−x2/2=1−x22+x48=+o(x4)\begin{aligned}e^{-x^2/2} &= 1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{8}\\&\phantom{=}{} +o(x^4)\end{aligned}

    u2/2=x4/8u^2/2=x^4/8 である。x≠0x\neq0 では u≠0u\neq0 なので、次のように o(u2)=o(x4)o(u^2)=o(x^4) が分かる。

    o(u2)x4=o(u2)u2⋅u2x4=o(u2)u2⋅14 ⟶ 0\frac{o(u^2)}{x^4}=\frac{o(u^2)}{u^2}\cdot\frac{u^2}{x^4}=\frac{o(u^2)}{u^2}\cdot\frac14\ \longrightarrow\ 0o(u2)x4=o(u2)u2⋅u2x4=o(u2)u2⋅14⟶0\begin{aligned}\frac{o(u^2)}{x^4} &= \frac{o(u^2)}{u^2}\cdot\frac{u^2}{x^4}\\&= \frac{o(u^2)}{u^2}\cdot\frac14\\&\longrightarrow 0\end{aligned}
  3. 分子は次のようになるので、極限は −1/12-1/12 である。cos⁡x−e−x2/2=(124−18)x4+o(x4)=−x412+o(x4)\cos x-e^{-x^2/2}=\left(\frac1{24}-\frac18\right)x^4+o(x^4)=-\frac{x^4}{12}+o(x^4)cos⁡x−e−x2/2=(124−18)x4+o(x4)=−x412+o(x4)\begin{aligned}\cos x-e^{-x^2/2} &= \left(\frac1{24}-\frac18\right)x^4+o(x^4)\\&= -\frac{x^4}{12}+o(x^4)\end{aligned}cos⁡x−e−x2/2=(124−18)x4=+o(x4)=−x412+o(x4)\begin{aligned}\cos x-e^{-x^2/2} &= \left(\frac1{24}-\frac18\right)x^4\\&\phantom{=}{} +o(x^4)\\&= -\frac{x^4}{12}+o(x^4)\end{aligned}
答案の例:不等式で挟む
  1. x>0x>0 とする。t≥0t\ge0 で cos⁡t≤1\cos t\le1 である。これを tt について 00 から xx まで積分すると sin⁡x≤x\sin x\le x を得る(∫0xcos⁡t dt=sin⁡x\int_0^x\cos t\,dt=\sin x、∫0xsin⁡t dt=1−cos⁡x\int_0^x\sin t\,dt=1-\cos x)。得た不等式を同じように積分することを繰り返すと、x>0x>0 で次が順に成り立つ。sin⁡x≤xcos⁡x≥1−x22sin⁡x≥x−x36cos⁡x≤1−x22+x424sin⁡x≤x−x36+x5120cos⁡x≥1−x22+x424−x6720\begin{gathered} \sin x\le x\qquad \cos x\ge1-\frac{x^2}{2}\qquad \sin x\ge x-\frac{x^3}{6}\\ \cos x\le1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{24}\qquad \sin x\le x-\frac{x^3}{6}+\frac{x^5}{120}\qquad \cos x\ge1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{24}-\frac{x^6}{720}\end{gathered}sin⁡x≤xcos⁡x≥1−x22sin⁡x≥x−x36cos⁡x≤1−x22+x424sin⁡x≤x−x36+x5120cos⁡x≥1−x22+x424−x6720\begin{gathered}\sin x\le x\\\cos x\ge1-\frac{x^2}{2}\\\sin x\ge x-\frac{x^3}{6}\\\cos x\le1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{24}\\\sin x\le x-\frac{x^3}{6}+\frac{x^5}{120}\\\cos x\ge1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{24}-\frac{x^6}{720}\end{gathered}sin⁡x≤xcos⁡x≥1−x22sin⁡x≥x−x36cos⁡x≤1−x22+x424sin⁡x≤x−x36+x5120cos⁡x≥1−x22+x424−x6720\begin{aligned}\sin x &\le x\\[4pt]\cos x &\ge 1-\frac{x^2}{2}\\[4pt]\sin x &\ge x-\frac{x^3}{6}\\[4pt]\cos x &\le 1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{24}\\[4pt]\sin x &\le x-\frac{x^3}{6}+\frac{x^5}{120}\\[4pt]\cos x &\ge 1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{24}-\frac{x^6}{720}\end{aligned}cos⁡x≤1−x2/2+x4/24\cos x\le1-x^2/2+x^4/24 と cos⁡x≥1−x2/2+x4/24−x6/720\cos x\ge1-x^2/2+x^4/24-x^6/720 は両辺とも偶関数なので、x<0x<0 でも成り立つ。
  2. u≤0u\le0 とする。s≤0s\le0 で es≤1e^s\le1 である。これを ss について uu から 00 まで積分すると(∫u0es ds=1−eu\int_u^0e^s\,ds=1-e^u)eu≥1+ue^u\ge1+u、それをまた積分することを繰り返すと、次を得る。1+u+u22+u36≤eu≤1+u+u221+u+\frac{u^2}{2}+\frac{u^3}{6}\le e^u\le1+u+\frac{u^2}{2}1+u+u22+u36≤eu≤1+u+u22\begin{aligned}1+u+\frac{u^2}{2}+\frac{u^3}{6} &\le e^u\\&\le 1+u+\frac{u^2}{2}\end{aligned}u=−x2/2u=-x^2/2 を入れると、次のようになる。1−x22+x48−x648≤e−x2/2≤1−x22+x481-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{8}-\frac{x^6}{48}\le e^{-x^2/2}\le1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{8}1−x22+x48−x648≤e−x2/2≤1−x22+x48\begin{aligned}1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{8}-\frac{x^6}{48} &\le e^{-x^2/2}\\&\le 1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{8}\end{aligned}
  3. 2つを引き算して x4x^4 で割ると、次が成り立つ。両端は −1/12-1/12 に近づくので、はさみうちの原理により極限は −1/12-1/12 である。−112−x2720≤cos⁡x−e−x2/2x4≤−112+x248-\frac1{12}-\frac{x^2}{720}\le\frac{\cos x-e^{-x^2/2}}{x^4}\le-\frac1{12}+\frac{x^2}{48}−112−x2720≤cos⁡x−e−x2/2x4≤−112+x248\begin{aligned}-\frac1{12}-\frac{x^2}{720} &\le \frac{\cos x-e^{-x^2/2}}{x^4}\\&\le -\frac1{12}+\frac{x^2}{48}\end{aligned}

問題32 0/00/0 の不定形 ★★

次の極限が有限の値になるように定数 a,ba,b を定め、そのときの極限値を求めよ。

lim⁡x→0cos⁡x−a−bx2x4\lim_{x\to0}\frac{\cos x-a-bx^2}{x^4}
答案の例:テイラー展開
  1. テイラーの定理による cos⁡x\cos x の展開を使って、分子を4次まで展開すると、次のようになる。cos⁡x−a−bx2=(1−a)+(−12−b)x2+x424+o(x4)\begin{aligned} &\cos x-a-bx^2\\ &\quad=(1-a)+\left(-\frac12-b\right)x^2\\ &\qquad+\frac{x^4}{24}+o(x^4)\end{aligned}
  2. x4x^4 で割ると (1−a)/x4(1-a)/x^4 と (−1/2−b)/x2(-1/2-b)/x^2 の項が残る。極限が有限になるには、どちらの係数も 00 でなければならないので、a=1a=1、b=−1/2b=-1/2 である。

    1−a≠01-a\neq0 なら、ほかの項は (1−a)/x4(1-a)/x^4 と比べて小さく、全体が発散する。同じように a=1a=1 のもとで −1/2−b≠0-1/2-b\neq0 なら、(−1/2−b)/x2(-1/2-b)/x^2 の項で発散する。

  3. このとき極限値は 1/241/24 である。
答案の例:不等式で挟む
  1. 極限が有限の値 LL をもつとする。cos⁡x−a−bx2=x4⋅cos⁡x−a−bx2x4→0⋅L=0\cos x-a-bx^2=x^4\cdot\dfrac{\cos x-a-bx^2}{x^4}\to0\cdot L=0 で、左辺は 1−a1-a に近づくので、a=1a=1 である。
  2. 同じように cos⁡x−1−bx2x2=x2⋅cos⁡x−1−bx2x4→0\dfrac{\cos x-1-bx^2}{x^2}=x^2\cdot\dfrac{\cos x-1-bx^2}{x^4}\to0 である。一方、基本の極限 sin⁡θ/θ→1\sin\theta/\theta\to1 から次が分かる。cos⁡x−1x2=−2sin⁡2(x/2)x2=−12(sin⁡(x/2)x/2)2 ⟶ −12\frac{\cos x-1}{x^2}=-\frac{2\sin^2(x/2)}{x^2}=-\frac12\left(\frac{\sin(x/2)}{x/2}\right)^2\ \longrightarrow\ -\frac12cos⁡x−1x2=−2sin⁡2(x/2)x2=−12(sin⁡(x/2)x/2)2⟶−12\begin{aligned}\frac{\cos x-1}{x^2} &= -\frac{2\sin^2(x/2)}{x^2}\\&= -\frac12\left(\frac{\sin(x/2)}{x/2}\right)^2\\&\longrightarrow -\frac12\end{aligned}よって (cos⁡x−1−bx2)/x2=(cos⁡x−1)/x2−b→−1/2−b(\cos x-1-bx^2)/x^2=(\cos x-1)/x^2-b\to-1/2-b で、これが 00 なので b=−1/2b=-1/2 である。
  3. 逆に a=1a=1、b=−1/2b=-1/2 のとき、問題31の答案の例と同じく cos⁡t≤1\cos t\le1 から積分を繰り返して得る次の不等式(x≠0x\neq0。答案では、この導き方も書く)を x4x^4 で割ると、はさみうちの原理により極限は 1/241/24 である。1−x22+x424−x6720≤cos⁡x≤1−x22+x424\begin{aligned} &1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{24}-\frac{x^6}{720}\\ &\quad\le\cos x\le1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{24}\end{aligned}

問題33 0/00/0 の不定形 ★★

次の計算のどこが誤りかを指摘し、正しい極限値を求めよ。

lim⁡x→0ex−1x2+3x=lim⁡x→0ex2x+3=lim⁡x→0ex2=12\lim_{x\to0}\frac{e^x-1}{x^2+3x}=\lim_{x\to0}\frac{e^x}{2x+3}=\lim_{x\to0}\frac{e^x}{2}=\frac12lim⁡x→0ex−1x2+3x=lim⁡x→0ex2x+3=lim⁡x→0ex2=12\begin{aligned}\lim_{x\to0}\frac{e^x-1}{x^2+3x} &= \lim_{x\to0}\frac{e^x}{2x+3}\\&= \lim_{x\to0}\frac{e^x}{2}\\&= \frac12\end{aligned}
解答
  1. 1回目の微分は条件をみたしている(0/00/0 の形で、分母の微分 2x+32x+3 は 00 の近くで 00 にならない)。ただし等号でつなぐなら、右側の極限が存在することを先に示す必要がある(ロピタルの定理が保証するのは、右側の極限が存在すれば左側も同じ極限をもつことだけだから)。ここでは ex/(2x+3)→1/3e^x/(2x+3)\to1/3 なので、1つ目の等号は結果として成り立つ。
  2. 2つ目の等号が誤り。ex/(2x+3)e^x/(2x+3) は x→0x\to0 で 1/31/3 に近づく式で、0/00/0 の形ではないので、ロピタルの定理は使えない。
  3. 正しい極限値は 1/31/3 である。基本の極限 (ex−1)/x→1(e^x-1)/x\to1 を使うと、次のようになる。ex−1x2+3x=ex−1x⋅1x+3 ⟶ 1⋅13=13\frac{e^x-1}{x^2+3x}=\frac{e^x-1}{x}\cdot\frac1{x+3}\ \longrightarrow\ 1\cdot\frac13=\frac13ex−1x2+3x=ex−1x⋅1x+3⟶1⋅13=13\begin{aligned}\frac{e^x-1}{x^2+3x} &= \frac{e^x-1}{x}\cdot\frac1{x+3}\\&\longrightarrow 1\cdot\frac13\\&= \frac13\end{aligned}

問題34 ∞/∞\infty/\infty の不定形 ★★

次の極限にロピタルの定理を使うとどうなるかを説明し、極限値を求めよ。

lim⁡x→∞x−sin⁡xx+sin⁡x\lim_{x\to\infty}\frac{x-\sin x}{x+\sin x}
解答
  1. 分子と分母を微分すると次の式になる。1−cos⁡x1+cos⁡x\frac{1-\cos x}{1+\cos x}分母の 1+cos⁡x1+\cos x は x=π,3π,…x=\pi,3\pi,\dots で 00 になる。g′≠0g'\neq0 の条件をみたさず、しかも x=2π,4π,…x=2\pi,4\pi,\dots では 00、xx が π\pi の奇数倍に近づくと発散するので、f′/g′f'/g' の極限はない。ロピタルの定理からは何も分からない。
  2. 分子と分母を xx で割ると、∣(sin⁡x)/x∣≤1/x→0|(\sin x)/x|\le1/x\to0 なので次のようになる。極限は 11 である。x−sin⁡xx+sin⁡x=1−(sin⁡x)/x1+(sin⁡x)/x ⟶ 1−01+0=1\frac{x-\sin x}{x+\sin x}=\frac{1-(\sin x)/x}{1+(\sin x)/x}\ \longrightarrow\ \frac{1-0}{1+0}=1x−sin⁡xx+sin⁡x=1−(sin⁡x)/x1+(sin⁡x)/x⟶1−01+0=1\begin{aligned}\frac{x-\sin x}{x+\sin x} &= \frac{1-(\sin x)/x}{1+(\sin x)/x}\\&\longrightarrow \frac{1-0}{1+0}\\&= 1\end{aligned}

問題35 ∞/∞\infty/\infty の不定形 ★

次の極限を求めよ。

lim⁡x→∞(log⁡x)3x\lim_{x\to\infty}\frac{(\log x)^3}{x}
答案の例:テイラー展開
  1. x=eux=e^u とおくと、x→∞x\to\infty と u→∞u\to\infty が対応し、(log⁡x)3/x=u3/eu(\log x)^3/x=u^3/e^u である。
  2. u>0u>0 とする。eue^u に3次までのテイラーの定理(ラグランジュの剰余項)を使うと、0<c<u0<c<u をみたす cc で次が成り立つ。eu=1+u+u22+u36+ec24u4>u424e^u=1+u+\frac{u^2}{2}+\frac{u^3}{6}+\frac{e^c}{24}u^4>\frac{u^4}{24}eu=1+u+u22+u36+ec24u4>u424\begin{aligned}e^u &= 1+u+\frac{u^2}{2}+\frac{u^3}{6}+\frac{e^c}{24}u^4\\&> \frac{u^4}{24}\end{aligned}eu=1+u+u22+u36=+ec24u4>u424\begin{aligned}e^u &= 1+u+\frac{u^2}{2}+\frac{u^3}{6}\\&\phantom{=}{} +\frac{e^c}{24}u^4\\&> \frac{u^4}{24}\end{aligned}
  3. よって 0<u3/eu<24/u→00<u^3/e^u<24/u\to0 なので、はさみうちの原理により極限は 00 である。
答案の例:不等式で挟む
  1. x=eux=e^u とおくと、x→∞x\to\infty と u→∞u\to\infty が対応し、(log⁡x)3/x=u3/eu(\log x)^3/x=u^3/e^u である。
  2. u>0u>0 とする。s≥0s\ge0 で es≥1e^s\ge1 である。これを 00 から uu まで積分すると(∫0ues ds=eu−1\int_0^ue^s\,ds=e^u-1)eu≥1+ue^u\ge1+u、それをまた積分することをあと3回繰り返すと、次を得る。eu≥1+u+u22+u36+u424>u424e^u\ge1+u+\frac{u^2}{2}+\frac{u^3}{6}+\frac{u^4}{24}>\frac{u^4}{24}eu≥1+u+u22+u36+u424>u424\begin{aligned}e^u &\ge 1+u+\frac{u^2}{2}+\frac{u^3}{6}+\frac{u^4}{24}\\&> \frac{u^4}{24}\end{aligned}eu≥1+u+u22+u36≥+u424>u424\begin{aligned}e^u &\ge 1+u+\frac{u^2}{2}+\frac{u^3}{6}\\&\phantom{\ge}{} +\frac{u^4}{24}\\&> \frac{u^4}{24}\end{aligned}
  3. よって 0<u3/eu<24/u→00<u^3/e^u<24/u\to0 なので、はさみうちの原理により極限は 00 である。

ロピタルの定理で解くと、分子と分母を微分した比は 3(log⁡x)2/x3(\log x)^2/x で、また ∞/∞\infty/\infty の形になります。log⁡x\log x の次数が1つずつ下がるだけなので3回使うことになり、そのたびに条件を確かめる必要があります。

問題36 ∞⋅0\infty\cdot0 の不定形 ★★

次の極限を求めよ。

lim⁡x→∞x3(sin⁡1x−tan⁡1x)\lim_{x\to\infty}x^3\left(\sin\frac1x-\tan\frac1x\right)
答案の例:テイラー展開
  1. t=1/xt=1/x とおくと t→+0t\to+0 で、求める式は次の 0/00/0 の形になる。x3(sin⁡1x−tan⁡1x)=sin⁡t−tan⁡tt3\begin{aligned} &x^3\left(\sin\frac1x-\tan\frac1x\right)\\ &\quad=\frac{\sin t-\tan t}{t^3}\end{aligned}
  2. テイラーの定理による t→0t\to0 での展開を使うと、次のようになる。よって極限は −1/2-1/2 である。sin⁡t−tan⁡t=(t−t36)−(t+t33)+o(t3)=−t32+o(t3)\sin t-\tan t=\left(t-\frac{t^3}{6}\right)-\left(t+\frac{t^3}{3}\right)+o(t^3)=-\frac{t^3}{2}+o(t^3)sin⁡t−tan⁡t=(t−t36)−(t+t33)+o(t3)=−t32+o(t3)\begin{aligned}\sin t-\tan t &= \left(t-\frac{t^3}{6}\right)-\left(t+\frac{t^3}{3}\right)+o(t^3)\\&= -\frac{t^3}{2}+o(t^3)\end{aligned}sin⁡t−tan⁡t=(t−t36)=−(t+t33)=+o(t3)=−t32+o(t3)\begin{aligned}\sin t-\tan t &= \left(t-\frac{t^3}{6}\right)\\&\phantom{=}{} -\left(t+\frac{t^3}{3}\right)\\&\phantom{=}{} +o(t^3)\\&= -\frac{t^3}{2}+o(t^3)\end{aligned}
答案の例:不等式で挟む
  1. t=1/xt=1/x とおくと t→+0t\to+0 で、求める式は次のようになる。x3(sin⁡1x−tan⁡1x)=−(tan⁡t−t)+(t−sin⁡t)t3\begin{aligned} &x^3\left(\sin\frac1x-\tan\frac1x\right)\\ &\quad=-\frac{(\tan t-t)+(t-\sin t)}{t^3}\end{aligned}
  2. 問題29の答案の例と同じく、cos⁡s≤1\cos s\le1 を積分していく方法と tan⁡t−t=∫0ttan⁡2s ds\tan t-t=\int_0^t\tan^2s\,ds から、0<t<π/20<t<\pi/2 で次が成り立つ(答案では、この導き方も書く)。t36−t5120≤t−sin⁡t≤t36t33≤tan⁡t−t≤t33cos⁡2t\begin{gathered} \frac{t^3}{6}-\frac{t^5}{120}\le t-\sin t\le\frac{t^3}{6}\\ \frac{t^3}{3}\le\tan t-t\le\frac{t^3}{3\cos^2t}\end{gathered}t36−t5120≤t−sin⁡t≤t36t33≤tan⁡t−t≤t33cos⁡2t\begin{aligned}\frac{t^3}{6}-\frac{t^5}{120} &\le t-\sin t\\&\le \frac{t^3}{6}\\[4pt]\frac{t^3}{3} &\le \tan t-t\\&\le \frac{t^3}{3\cos^2t}\end{aligned}
  3. 足して t3t^3 で割ると、次が成り立つ。両端は 1/21/2 に近づくので、はさみうちの原理により求める極限は −1/2-1/2 である。12−t2120≤(tan⁡t−t)+(t−sin⁡t)t3≤13cos⁡2t+16\begin{aligned} &\frac12-\frac{t^2}{120}\\ &\quad\le\frac{(\tan t-t)+(t-\sin t)}{t^3}\\ &\quad\le\frac1{3\cos^2t}+\frac16\end{aligned}

問題37 0/00/0 の不定形を不等式で挟む ★★

(1) x>0x>0 のとき、次を示せ。

1−x22+x424−x6720<cos⁡x<1−x22+x424\begin{aligned} &1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{24}-\frac{x^6}{720}\\ &\quad<\cos x<1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{24}\end{aligned}

(2) 次の極限を求めよ。

lim⁡x→0cos⁡x−1+x2/2x4\lim_{x\to0}\frac{\cos x-1+x^2/2}{x^4}
答案の例:不等式で挟む
  1. (1) x>0x>0 とする。t>0t>0 で cos⁡t≤1\cos t\le1 で、等号は t=2π,4π,…t=2\pi,4\pi,\dots だけである。00 以上で恒等的に 00 でない連続関数の積分は正なので、1−cos⁡t1-\cos t を 00 から xx まで積分して x−sin⁡x>0x-\sin x>0 を得る(∫0xcos⁡t dt=sin⁡x\int_0^x\cos t\,dt=\sin x、∫0xsin⁡t dt=1−cos⁡x\int_0^x\sin t\,dt=1-\cos x)。
  2. 得た不等式は t>0t>0 で等号なしに成り立つので、同じように 00 から xx まで積分することを繰り返すと、x>0x>0 で次が順に成り立つ。cos⁡x>1−x22sin⁡x>x−x36cos⁡x<1−x22+x424sin⁡x<x−x36+x5120cos⁡x>1−x22+x424−x6720\begin{gathered} \cos x>1-\frac{x^2}{2}\qquad \sin x>x-\frac{x^3}{6}\\ \cos x<1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{24}\qquad \sin x<x-\frac{x^3}{6}+\frac{x^5}{120}\qquad \cos x>1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{24}-\frac{x^6}{720}\end{gathered}cos⁡x>1−x22sin⁡x>x−x36cos⁡x<1−x22+x424sin⁡x<x−x36+x5120cos⁡x>1−x22+x424−x6720\begin{gathered}\cos x>1-\frac{x^2}{2}\\\sin x>x-\frac{x^3}{6}\\\cos x<1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{24}\\\sin x<x-\frac{x^3}{6}+\frac{x^5}{120}\\\cos x>1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{24}-\frac{x^6}{720}\end{gathered}cos⁡x>1−x22sin⁡x>x−x36cos⁡x<1−x22+x424sin⁡x<x−x36+x5120cos⁡x>1−x22+x424−x6720\begin{aligned}\cos x &> 1-\frac{x^2}{2}\\[4pt]\sin x &> x-\frac{x^3}{6}\\[4pt]\cos x &< 1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{24}\\[4pt]\sin x &< x-\frac{x^3}{6}+\frac{x^5}{120}\\[4pt]\cos x &> 1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{24}-\frac{x^6}{720}\end{aligned}3番目と5番目の cos⁡x\cos x の不等式が、示すべき不等式である。
  3. (2) (1) の各辺から 1−x2/21-x^2/2 を引いて x4x^4 で割ると、x>0x>0 で次が成り立つ。124−x2720<cos⁡x−1+x2/2x4<124\frac1{24}-\frac{x^2}{720}<\frac{\cos x-1+x^2/2}{x^4}<\frac1{24}124−x2720<cos⁡x−1+x2/2x4<124\begin{aligned}\frac1{24}-\frac{x^2}{720} &< \frac{\cos x-1+x^2/2}{x^4}\\&< \frac1{24}\end{aligned}
  4. はさみうちの原理で x→+0x\to+0 の極限は 1/241/24。式は偶関数なので x→−0x\to-0 でも同じで、極限は 1/241/24 である。

問題38 000^0 の不定形 ★★

次の極限を求めよ。

lim⁡x→+0xx\lim_{x\to+0}x^x
答案の例:テイラー展開
  1. xx=exlog⁡xx^x=e^{x\log x} なので、xlog⁡xx\log x の極限を調べる。x=e−tx=e^{-t} とおくと、x→+0x\to+0 と t→∞t\to\infty が対応し、xlog⁡x=−te−t=−t/etx\log x=-te^{-t}=-t/e^t である。
  2. t>0t>0 のとき、テイラーの定理(ラグランジュの剰余項)より et=1+t+ect2/2>t2/2e^t=1+t+e^ct^2/2>t^2/2(0<c<t0<c<t)なので、0<t/et<2/t→00<t/e^t<2/t\to0。よって xlog⁡x→0x\log x\to0 である。
  3. 指数関数は連続なので、xx=exlog⁡x→e0=1x^x=e^{x\log x}\to e^0=1 である。
答案の例:不等式で挟む
  1. xx=exlog⁡xx^x=e^{x\log x} である。x=e−tx=e^{-t} とおくと、x→+0x\to+0 と t→∞t\to\infty が対応し、xlog⁡x=−t/etx\log x=-t/e^t である。
  2. t>0t>0 のとき、s≥0s\ge0 で es≥1e^s\ge1 を 00 から tt まで2回積分していくと et≥1+t+t2/2>t2/2e^t\ge1+t+t^2/2>t^2/2 なので、0<t/et<2/t→00<t/e^t<2/t\to0。はさみうちの原理により xlog⁡x→0x\log x\to0 である。
  3. 指数関数は連続なので、xx=exlog⁡x→e0=1x^x=e^{x\log x}\to e^0=1 である。

問題39 1∞1^\infty の不定形 ★★

次の極限を求めよ。

lim⁡x→0(sin⁡xx)1/x2\lim_{x\to0}\left(\frac{\sin x}{x}\right)^{1/x^2}
答案の例:テイラー展開
  1. 00 の近くで (sin⁡x)/x>0(\sin x)/x>0 なので、次のように書ける。vv の極限を調べる。(sin⁡xx)1/x2=evv=1x2log⁡sin⁡xx\begin{gathered} \left(\frac{\sin x}{x}\right)^{1/x^2}=e^{v}\\ v=\frac1{x^2}\log\frac{\sin x}{x}\end{gathered}(sin⁡xx)1/x2=evv=1x2log⁡sin⁡xx\begin{aligned}\left(\frac{\sin x}{x}\right)^{1/x^2} &= e^{v}\\[4pt]v &= \frac1{x^2}\log\frac{\sin x}{x}\end{aligned}
  2. テイラーの定理による展開 sin⁡x=x−x3/6+o(x3)\sin x=x-x^3/6+o(x^3) を xx で割ると、次のようになる。sin⁡xx=1+uu=−x26+o(x2)\begin{gathered} \frac{\sin x}{x}=1+u\\ u=-\frac{x^2}{6}+o(x^2)\end{gathered}sin⁡xx=1+uu=−x26+o(x2)\begin{aligned}\frac{\sin x}{x} &= 1+u\\[4pt]u &= -\frac{x^2}{6}+o(x^2)\end{aligned}
  3. u→0u\to0 での展開 log⁡(1+u)=u+o(u)\log(1+u)=u+o(u) で、u/x2→−1/6u/x^2\to-1/6 から o(u)=o(x2)o(u)=o(x^2) なので、次のようになる。log⁡sin⁡xx=−x26+o(x2)v ⟶ −16\begin{gathered} \log\frac{\sin x}{x}=-\frac{x^2}{6}+o(x^2)\\ v\ \longrightarrow\ -\frac16\end{gathered}log⁡sin⁡xx=−x26+o(x2)v⟶−16\begin{aligned}\log\frac{\sin x}{x} &= -\frac{x^2}{6}+o(x^2)\\[4pt]v &\longrightarrow -\frac16\end{aligned}

    0<∣x∣<π0<|x|<\pi では sin⁡x≠x\sin x\neq x なので u≠0u\neq0 である。よって、次から o(u)=o(x2)o(u)=o(x^2) が分かる。

    o(u)x2=o(u)u⋅ux2 ⟶ 0⋅(−16)=0\frac{o(u)}{x^2}=\frac{o(u)}{u}\cdot\frac{u}{x^2}\ \longrightarrow\ 0\cdot\left(-\frac16\right)=0o(u)x2=o(u)u⋅ux2⟶0⋅(−16)=0\begin{aligned}\frac{o(u)}{x^2} &= \frac{o(u)}{u}\cdot\frac{u}{x^2}\\&\longrightarrow 0\cdot\left(-\frac16\right)\\&= 0\end{aligned}
  4. eve^v は vv について連続なので、極限は e−1/6e^{-1/6} である。
答案の例:不等式で挟む
  1. 問題29の答案の例と同じく cos⁡t≤1\cos t\le1 から積分を繰り返すと、x>0x>0 で x−x3/6≤sin⁡x≤x−x3/6+x5/120x-x^3/6\le\sin x\le x-x^3/6+x^5/120 を得る(答案では、この導き方も書く)。y=sin⁡x/xy=\sin x/x とおくと、0<∣x∣<π0<|x|<\pi で y>0y>0 なので (sin⁡x/x)1/x2=e(log⁡y)/x2(\sin x/x)^{1/x^2}=e^{(\log y)/x^2} と書ける。0<x<π0<x<\pi では次が成り立つ。1−x26≤y≤1−x26+x41201-\frac{x^2}{6}\le y\le1-\frac{x^2}{6}+\frac{x^4}{120}1−x26≤y≤1−x26+x4120\begin{aligned}1-\frac{x^2}{6} &\le y\\&\le 1-\frac{x^2}{6}+\frac{x^4}{120}\end{aligned}
  2. y>0y>0 について log⁡y=∫1ydss\log y=\int_1^y\dfrac{ds}{s} で、1/s1/s は 11 と 1/y1/y のあいだにあるので、次が成り立つ(y<1y<1 でも同じ)。y−1y≤log⁡y≤y−1\frac{y-1}{y}\le\log y\le y-1y−1y≤log⁡y≤y−1\begin{aligned}\frac{y-1}{y} &\le \log y\\&\le y-1\end{aligned}
  3. ステップ1の不等式から y−1≥−x2/6y-1\ge-x^2/6、y−1≤−x2/6+x4/120y-1\le-x^2/6+x^4/120 なので、次が成り立つ。−16y≤log⁡yx2≤−16+x2120-\frac1{6y}\le\frac{\log y}{x^2}\le-\frac16+\frac{x^2}{120}−16y≤log⁡yx2≤−16+x2120\begin{aligned}-\frac1{6y} &\le \frac{\log y}{x^2}\\&\le -\frac16+\frac{x^2}{120}\end{aligned}
  4. x→+0x\to+0 で y=sin⁡x/x→1y=\sin x/x\to1 なので、両端は −1/6-1/6 に近づき、(log⁡y)/x2→−1/6(\log y)/x^2\to-1/6 である。式は偶関数なので x→−0x\to-0 でも同じである。指数関数は連続なので、極限は e−1/6e^{-1/6} である。

問題40 ∞0\infty^0 の不定形 ★★

次の極限を求めよ。

lim⁡x→∞(ex+x)1/x\lim_{x\to\infty}\left(e^x+x\right)^{1/x}
答案の例:テイラー展開
  1. 次のように書ける。(ex+x)1/x=evv=log⁡(ex+x)x\begin{gathered} \left(e^x+x\right)^{1/x}=e^{v}\\ v=\frac{\log(e^x+x)}{x}\end{gathered}(ex+x)1/x=evv=log⁡(ex+x)x\begin{aligned}\left(e^x+x\right)^{1/x} &= e^{v}\\[4pt]v &= \frac{\log(e^x+x)}{x}\end{aligned}
  2. ex+x=ex(1+xe−x)e^x+x=e^x\left(1+xe^{-x}\right) なので、次のようになる。v=x+log⁡(1+xe−x)x=1+log⁡(1+xe−x)xv=\frac{x+\log\left(1+xe^{-x}\right)}{x}=1+\frac{\log\left(1+xe^{-x}\right)}{x}v=x+log⁡(1+xe−x)x=1+log⁡(1+xe−x)x\begin{aligned}v &= \frac{x+\log\left(1+xe^{-x}\right)}{x}\\&= 1+\frac{\log\left(1+xe^{-x}\right)}{x}\end{aligned}
  3. x>0x>0 のとき、テイラーの定理(ラグランジュの剰余項)より ex=1+x+ecx2/2>x2/2e^x=1+x+e^cx^2/2>x^2/2(0<c<x0<c<x)なので、0<xe−x<2/x→00<xe^{-x}<2/x\to0 である。よって、log⁡(1+xe−x)→0\log\left(1+xe^{-x}\right)\to0 である。これを発散する xx で割るので、最後の項は 00 に近づき、v→1v\to1 である。
  4. 極限は e1=ee^1=e である。
答案の例:不等式で挟む
  1. x>0x>0 のとき、次のように書ける。(ex+x)1/x=evv=log⁡(ex+x)x=1+log⁡(1+xe−x)x\begin{gathered} \left(e^x+x\right)^{1/x}=e^{v}\\ v=\frac{\log(e^x+x)}{x}=1+\frac{\log\left(1+xe^{-x}\right)}{x}\end{gathered}(ex+x)1/x=evv=log⁡(ex+x)x=1+log⁡(1+xe−x)x\begin{aligned}\left(e^x+x\right)^{1/x} &= e^{v}\\[4pt]v &= \frac{\log(e^x+x)}{x}\\&= 1+\frac{\log\left(1+xe^{-x}\right)}{x}\end{aligned}
  2. w>0w>0 について log⁡(1+w)=∫0wds1+s\log(1+w)=\int_0^w\dfrac{ds}{1+s} で、被積分関数は 00 より大きく 11 以下なので、0<log⁡(1+w)≤w0<\log(1+w)\le w である。w=xe−xw=xe^{-x} とすると次が成り立ち、はさみうちの原理により v→1v\to1 である。0<log⁡(1+xe−x)x≤e−x ⟶ 00<\frac{\log\left(1+xe^{-x}\right)}{x}\le e^{-x}\ \longrightarrow\ 00<log⁡(1+xe−x)x≤e−x⟶0\begin{aligned}0 &< \frac{\log\left(1+xe^{-x}\right)}{x}\\&\le e^{-x}\\&\longrightarrow 0\end{aligned}
  3. 指数関数は連続なので、極限は ee である。

問題41 1∞1^\infty を含む ∞⋅0\infty\cdot0 の不定形 ★★★

次の極限を求めよ。

lim⁡x→∞x{(1+1x)x−e}\lim_{x\to\infty}x\left\{\left(1+\frac1x\right)^x-e\right\}
答案の例:テイラー展開
  1. t=1/xt=1/x とおくと t→+0t\to+0 で、求める式は次のようになる。x{(1+1x)x−e}=(1+t)1/t−et\begin{aligned} &x\left\{\left(1+\frac1x\right)^x-e\right\}\\ &\quad=\frac{(1+t)^{1/t}-e}{t}\end{aligned}
  2. (1+t)1/t=elog⁡(1+t)/t(1+t)^{1/t}=e^{\log(1+t)/t} である。テイラーの定理による展開 log⁡(1+t)=t−t2/2+o(t2)\log(1+t)=t-t^2/2+o(t^2) を tt で割ると、次のようになる。log⁡(1+t)t=1−t2+o(t)\frac{\log(1+t)}{t}=1-\frac t2+o(t)log⁡(1+t)t=1−t2+o(t)\begin{aligned}\frac{\log(1+t)}{t} &= 1-\frac t2+o(t)\end{aligned}
  3. よって (1+t)1/t=e⋅eu(1+t)^{1/t}=e\cdot e^{u}、u=−t/2+o(t)u=-t/2+o(t) と書ける。u→0u\to0 での展開 eu=1+u+o(u)e^u=1+u+o(u) と o(u)=o(t)o(u)=o(t) から、次のようになる。(1+t)1/t=e(1−t2)+o(t)(1+t)^{1/t}=e\left(1-\frac t2\right)+o(t)(1+t)1/t=e(1−t2)+o(t)\begin{aligned}(1+t)^{1/t} &= e\left(1-\frac t2\right)+o(t)\end{aligned}

    t>0t>0 では log⁡(1+t)<t\log(1+t)<t なので u<0u<0、とくに u≠0u\neq0 である。u/t=−1/2+o(t)/t→−1/2u/t=-1/2+o(t)/t\to-1/2 なので、次から o(u)=o(t)o(u)=o(t) が分かる。

    o(u)t=o(u)u⋅ut ⟶ 0⋅(−12)=0\frac{o(u)}{t}=\frac{o(u)}{u}\cdot\frac ut\ \longrightarrow\ 0\cdot\left(-\frac12\right)=0o(u)t=o(u)u⋅ut⟶0⋅(−12)=0\begin{aligned}\frac{o(u)}{t} &= \frac{o(u)}{u}\cdot\frac ut\\&\longrightarrow 0\cdot\left(-\frac12\right)\\&= 0\end{aligned}
  4. よって次のようになり、極限は −e/2-e/2 である。(1+t)1/t−et=−e2+o(t)t ⟶ −e2\frac{(1+t)^{1/t}-e}{t}=-\frac e2+\frac{o(t)}{t}\ \longrightarrow\ -\frac e2(1+t)1/t−et=−e2+o(t)t⟶−e2\begin{aligned}\frac{(1+t)^{1/t}-e}{t} &= -\frac e2+\frac{o(t)}{t}\\&\longrightarrow -\frac e2\end{aligned}
答案の例:不等式で挟む
  1. t=1/xt=1/x とおくと t→+0t\to+0 で、求める式は ((1+t)1/t−e)/t\left((1+t)^{1/t}-e\right)/t になる。
  2. s≥0s\ge0 で次が成り立つ(それぞれの差は s2/(1+s)≥0s^2/(1+s)\ge0、s3/(1+s)≥0s^3/(1+s)\ge0)。00 から tt まで積分すると、次を得る。1−s≤11+s≤1−s+s2t−t22≤log⁡(1+t)≤t−t22+t33\begin{gathered} 1-s\le\frac1{1+s}\le1-s+s^2\\ t-\frac{t^2}{2}\le\log(1+t)\le t-\frac{t^2}{2}+\frac{t^3}{3}\end{gathered}1−s≤11+s≤1−s+s2t−t22≤log⁡(1+t)≤t−t22+t33\begin{aligned}1-s &\le \frac1{1+s}\\&\le 1-s+s^2\\[4pt]t-\frac{t^2}{2} &\le \log(1+t)\\&\le t-\frac{t^2}{2}+\frac{t^3}{3}\end{aligned}
  3. d=log⁡(1+t)/t−1d=\log(1+t)/t-1 とおくと、−t/2≤d≤−t/2+t2/3-t/2\le d\le-t/2+t^2/3 である。よって d→0d\to0、d/t→−1/2d/t\to-1/2 で、0<t<3/20<t<3/2 では d<0d<0(とくに d≠0d\neq0)である。
  4. (1+t)1/t=e1+d(1+t)^{1/t}=e^{1+d} なので、次のように変形できる。基本の極限 (eh−1)/h→1(e^h-1)/h\to1(h→0h\to0)から、極限は e⋅1⋅(−1/2)=−e/2e\cdot1\cdot(-1/2)=-e/2 である。(1+t)1/t−et=e⋅ed−1d⋅dt\frac{(1+t)^{1/t}-e}{t}=e\cdot\frac{e^d-1}{d}\cdot\frac dt(1+t)1/t−et=e⋅ed−1d⋅dt\begin{aligned}\frac{(1+t)^{1/t}-e}{t} &= e\cdot\frac{e^d-1}{d}\cdot\frac dt\end{aligned}

最後の問題をロピタルの定理で解こうとすると、次の (1+t)1/t(1+t)^{1/t} の微分が出てきて、その先でもう一度 0/00/0 の極限を解くことになります。

((1+t)1/t)′=(1+t)1/t(1t(1+t)−log⁡(1+t)t2)\begin{aligned} \left((1+t)^{1/t}\right)'&=(1+t)^{1/t}\biggl(\frac{1}{t(1+t)}\\ &\qquad-\frac{\log(1+t)}{t^2}\biggr)\end{aligned}

テイラーの方法なら、展開を2つつなぐだけで済みます。

参考文献

  1. 野村隆昭, 「微積は計算だけ?」(特集「微分積分の質問箱」), 著者のウェブページで公開.
  2. 大竹真一, 「この定理,使っていいですか???」, 啓林館『先生方のための徹底入試対策講座』第96回.
  3. M. Grant, K. Hambrook, A. Rusterholtz, L'Hôpital's Rule is Equivalent to the Least Upper Bound Property, arXiv:2505.23092, 2025.