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AI数学単発記事

OpenAIのAIが証明した「周期タイル予想は3次元で偽」:平行移動で敷き詰められるのに、周期的には並べられないタイル

回転も裏返しもせず、平行移動だけで空間を埋めるタイルは、必ず周期的にも並べられるのか。1次元・2次元のマス目では正しいこの周期タイル予想に、OpenAIのモデルが3次元で反例を作りました。タイルと周期の定義をマス目の図で確かめ、2023年の帽子タイルとの違い、数独のような規則と敷き詰めの方程式を使う構成の仕組みを、動かせる図で解説します。

目次
  1. 周期タイル予想が3次元で否定された
  2. 平行移動だけで敷き詰める
  3. 周期的な敷き詰め
  4. 周期タイル予想
  5. 今回の定理
  6. 反例の作り方
  7. どこまで確かなのか
  8. 残された問題
  9. 参考文献
この記事の要点
問題
1つの形を、回したり裏返したりせず、平行移動だけで並べて空間を隙間なく埋めます。埋められる形なら、同じ模様をくり返す「周期的な」並べ方も必ずあるだろう、というのが周期タイル予想です。
これまで
マス目の世界では、1次元と2次元で予想は正しいことが証明されていました。2022年にグリーンフェルドとタオが反例を作りましたが、その次元は具体的な値が示されておらず、非常に大きなものでした。
今回
OpenAIのモデルが書いた論文が、3次元のマス目 Z3\mathbb{Z}^3 で反例を作りました。小さな立方体を貼り合わせた立体にすると、3次元の空間 R3\mathbb{R}^3 でも反例になります。マス目では、3は反例がありうる最小の次元です。
帽子タイルとの違い
2023年の「帽子」のタイルは、回転と裏返しを使って平面を埋める話です。今回は平行移動だけで、問うのは「周期的な並べ方が1つでもあるか」です。
確かさ
主定理と、「マス目 Zd\mathbb{Z}^d では3次元が最小」という主張は、Leanで形式化され、リポジトリの照合の対象になっています。論文は査読前のプレプリントです。

この記事で読む論文

A translational tile with no fully periodic tiling in dimension three

OpenAI 2026年9月23日付 プレプリント(査読前) PDF 466KB

PDFは2026年10月9日にGitHubから取得した版のコピーで、Apache License 2.0(全文)に従って掲載しています。修正版が出た場合は、GitHubのほうが新しくなります。

定義・命題の下の「証明」は、開くとステップが並びます。もう少し詳しくは大学1〜2年程度の数学の補足、専門的な話は論文の中身に踏み込む補足です。どちらも開かずに読み進められます。図のうち5つは、ボタンやマスのクリックで動かせます。

周期タイル予想が3次元で否定された

2026年10月6日、OpenAIは未公開の社内モデルが書いた数学の論文をGitHubのリポジトリ openai/math で公開しました[1]。その一覧の155番が、この記事で読む「A translational tile with no fully periodic tiling in dimension three」です[2]。

論文の主張は、3次元のマス目に、平行移動だけで隙間なく敷き詰められるのに、周期的な敷き詰め方が1つもない「タイル」がある、というものです。これは周期タイル予想と呼ばれる予想の反例になります。

この記事では、まず「平行移動だけで敷き詰める」「周期的」の意味を、マス目の図で確かめます。次に予想の歴史と、1次元・2次元では予想が正しい理由を見ます。最後に、論文が反例を作る仕組みを、数独のような規則と「敷き詰めの方程式」を使って順に説明します。

この論文は、10月7日付の修正・取り下げには含まれていません。リポジトリの更新は修正と取り下げの記録にまとめています。

平行移動だけで敷き詰める

この記事では、マス目を整数の組の集合 Zd\mathbb{Z}^d で表します。2次元なら Z2={(x,y):x,y∈Z}\mathbb{Z}^2=\{(x,y):x,y\in\mathbb{Z}\} で、点 (x,y)(x,y) を、左下の角が (x,y)(x,y) にある1辺1の正方形のマスだと思います。マスを有限個集めたものがタイルの候補です。

タイルを置くとき、使ってよい動かし方は平行移動だけです。タイル FF をベクトル aa だけずらしたものを a+F={a+f:f∈F}a+F=\{a+f:f\in F\} と書きます。

定義1 タイルと敷き詰め [2, §1]

GG をアーベル群(この記事では Zd\mathbb{Z}^d や Z2×Z/q\mathbb{Z}^2\times\mathbb{Z}/q)、F⊆GF\subseteq G を空でない有限集合、A⊆GA\subseteq G とする。GG のどの元 gg も、a∈Aa\in A と f∈Ff\in F を使って g=a+fg=a+f とただ1通りに書けるとき、

A⊕F=GA\oplus F=GA⊕F=G\begin{aligned}A\oplus F &= G\end{aligned}

と書き、AA を FF による敷き詰め(の平行移動の集合)と呼ぶ。そのような AA が1つでもあるとき、FF をタイル(平行移動のタイル)と呼ぶ。

「ただ1通りに書ける」は、ずらしたタイル a+Fa+F(a∈Aa\in A)が GG を重なりなく、隙間なく覆うという意味です。「書ける」が隙間のなさ、「ただ1通り」が重なりのなさに当たります。

例2 1次元の敷き詰め

(1) F={0,1}F=\{0,1\} は A=2Z={…,−2,0,2,4,… }A=2\mathbb{Z}=\{\dots,-2,0,2,4,\dots\} で Z\mathbb{Z} を敷き詰める。整数 gg は g=2k+0g=2k+0(偶数)か g=2k+1g=2k+1(奇数)のどちらか一方の形にただ1通りに書ける。

(2) 離れた2マス F={0,2}F=\{0,2\} もタイルである。A={0,1}+4ZA=\{0,1\}+4\mathbb{Z} とすると

A+F={0,1}+{0,2}+4Z={0,1,2,3}+4Z=ZA+F=\{0,1\}+\{0,2\}+4\mathbb{Z}=\{0,1,2,3\}+4\mathbb{Z}=\mathbb{Z}A+F={0,1}+{0,2}+4Z={0,1,2,3}+4Z=Z\begin{aligned}A+F &= \{0,1\}+\{0,2\}+4\mathbb{Z}\\&= \{0,1,2,3\}+4\mathbb{Z}\\&= \mathbb{Z}\end{aligned}A+F={0,1}+{0,2}=+4Z={0,1,2,3}+4Z=Z\begin{aligned}A+F &= \{0,1\}+\{0,2\}\\&\phantom{=}{} +4\mathbb{Z}\\&= \{0,1,2,3\}+4\mathbb{Z}\\&= \mathbb{Z}\end{aligned}

で、{0,1}+{0,2}={0,2,1,3}\{0,1\}+\{0,2\}=\{0,2,1,3\} の4つの和はすべて違うので、書き方はただ1通りになる。

例の (2) のように、タイルはつながっている必要はありません。今回の論文のタイルも有限個のマスの集まりで、つながっているとは主張されていません[2, §1]。

下の図で、2次元のタイルとその敷き詰めの例を切り替えられます。ドミノ(2マス)、L字(3マス)、T字(4マス)、十字(5マス)はどれも、ずらし方の集合 AA を「2本のベクトルの整数係数の組み合わせ全体」にとって敷き詰められます。

ドミノ(2マス):周期 (2,0)(2,0)(赤)と (1,1)(1,1)(黒)。黒い点の集合 A={ i (2,0)+j (1,1):i,j∈Z }A=\{\,i\,(2,0)+j\,(1,1) : i,j\in\mathbb{Z}\,\} が平行移動の集合です。

図1具体例タイル FF の平行移動 a+Fa+F を色分けして並べた図です。黒い点が a∈Aa\in A の位置(タイルの (0,0)(0,0) のマス)で、赤と黒の矢印が敷き詰めの周期を表します。どのタイルでも、描いた 15×815\times8 マスの各マスがちょうど1回覆われることを、生成時に確かめています。

「離れた2マス」は、{(0,0),(2,0)}\{(0,0),(2,0)\} のことです。このタイルは、2本のベクトルの組み合わせ全体だけでは敷き詰められません。点を (1,0)(1,0) ずらした組も加え、格子の2つの「ずれた写し」を合わせた集合で敷き詰めています。

周期的な敷き詰め

図1の敷き詰めは、どれも同じ模様のくり返しです。たとえばドミノの敷き詰めは、(2,0)(2,0) ずらしても (1,1)(1,1) ずらしても、自分自身に重なります。この性質を一般の群で定義します。

定義3 完全に周期的 [2, §1]

A⊆GA\subseteq G が完全に周期的であるとは、有限指数の部分群 Λ≤G\Lambda\le G があって、すべての λ∈Λ\lambda\in\Lambda で A+λ=AA+\lambda=A となることをいう。敷き詰め A⊕F=GA\oplus F=G が完全に周期的とは、AA が完全に周期的なことをいう。

論文はこの性質を単に「periodic」とも書いていますが、この記事では1方向だけの周期と区別するため「完全に周期的」と呼びます。

Zd\mathbb{Z}^d では、有限指数という条件は次のように言い換えられます。

命題4 Zd\mathbb{Z}^d の有限指数の部分群

部分群 Λ≤Zd\Lambda\le\mathbb{Z}^d について、次の2つは同値である。

(1) Λ\Lambda は有限指数である(剰余群 Zd/Λ\mathbb{Z}^d/\Lambda が有限)。
(2) ある整数 k≥1k\ge1 があって、kZd={(kx1,…,kxd)}⊆Λk\mathbb{Z}^d=\{(kx_1,\dots,kx_d)\}\subseteq\Lambda。

証明
  1. (1) から (2) を示す。kk を剰余群 Zd/Λ\mathbb{Z}^d/\Lambda の位数とすると、ラグランジュの定理から、この群のどの元も kk 倍すると 00 になる。

    有限群の元 xx の位数は群の位数 kk を割り切るので、kx=0kx=0 である。これを Zd\mathbb{Z}^d に戻すと、どの v∈Zdv\in\mathbb{Z}^d でも kv∈Λkv\in\Lambda ということになる。

  2. よって kZd={kv:v∈Zd}⊆Λk\mathbb{Z}^d=\{kv:v\in\mathbb{Z}^d\}\subseteq\Lambda である。
  3. (2) から (1) を示す。kZd⊆Λk\mathbb{Z}^d\subseteq\Lambda なら、Zd/Λ\mathbb{Z}^d/\Lambda は Zd/kZd\mathbb{Z}^d/k\mathbb{Z}^d の像である。後者は kdk^d 個の元からなるので、Zd/Λ\mathbb{Z}^d/\Lambda も有限である。

したがって A⊆ZdA\subseteq\mathbb{Z}^d が完全に周期的であることは、ある kk について、各座標の方向に kk ずらしても AA が変わらないことと同じです。つまり AA は、k×⋯×kk\times\cdots\times k の箱の中の模様をすべての方向にくり返したものです。

例5 ドミノの周期

図1のドミノの敷き詰めは Λ={i(2,0)+j(1,1)}\Lambda=\{i(2,0)+j(1,1)\} で不変である。(0,2)=2⋅(1,1)−(2,0)∈Λ(0,2)=2\cdot(1,1)-(2,0)\in\Lambda なので 2Z2⊆Λ2\mathbb{Z}^2\subseteq\Lambda となり、k=2k=2 でとれる。Z2/Λ\mathbb{Z}^2/\Lambda の元は Λ\Lambda と (1,0)+Λ(1,0)+\Lambda の2つで、指数は 22 である。

タイルと敷き詰めは別のもの

同じタイルでも、周期的な敷き詰めと、そうでない敷き詰めの両方がありえます。論文の序文も、タイルと個々の敷き詰めの区別が欠かせないと書いています[2, §1]。ドミノで確かめます。

ずらし(下の行から):0 0 0 0 0 0 0

図2具体例横向きのドミノを並べた行を積み重ねた敷き詰めです。行をクリックすると、その行だけが1マス横にずれます。どの行をどうずらしても、敷き詰めのままです。「1行おきにずらす」とレンガ積み(図1のドミノ)になります。

行 yy のずらし sy∈{0,1}s_y\in\{0,1\} を自由に選ぶと、次の集合 AA はどれも敷き詰めです。

A={(2k+sy, y):k,y∈Z}A=\{(2k+s_y,\,y):k,y\in\mathbb{Z}\}A={(2k+sy, y):k,y∈Z}\begin{aligned}A &= \{(2k+s_y,\,y):k,y\in\mathbb{Z}\}\end{aligned}

各行がドミノで隙間なく埋まるので、全体も埋まります。

命題6 完全に周期的でないドミノの敷き詰め

∣y∣|y| が平方数(0,1,4,9,…0,1,4,9,\dots)のとき sy=1s_y=1、それ以外のとき sy=0s_y=0 とする。このとき上の AA はドミノの敷き詰めだが、完全に周期的ではない。

証明
  1. 完全に周期的だと仮定すると、命題4から、ある k≥1k\ge1 で A+(0,k)=AA+(0,k)=A となる。これは、すべての yy で sy+k=sys_{y+k}=s_y ということである。

    点 (2j+sy, y)(2j+s_y,\,y) を (0,k)(0,k) ずらした (2j+sy, y+k)(2j+s_y,\,y+k) が AA に入るのは、2j+sy≡sy+k(mod2)2j+s_y\equiv s_{y+k}\pmod 2 のとき、つまり sy=sy+ks_y=s_{y+k} のときである。

  2. 一方、k2<k2+k<(k+1)2k^2<k^2+k<(k+1)^2 なので k2+kk^2+k は平方数でない。行 k2k^2 と行 k2+kk^2+k で sk2=1s_{k^2}=1、sk2+k=0s_{k^2+k}=0 となり、前のステップと矛盾する。

この敷き詰めにも、横方向の周期 (2,0)(2,0) は残っています。1方向の周期はあるが、完全に周期的ではない、という状態です。今回の論文が否定するのは「完全に周期的な敷き詰め」の存在で、1方向の周期まですべてなくなるとは主張していません[2, §1]。

もう少し詳しく「周期的」の2つの意味

グリーンフェルドとタオは、文献によって「周期的」の意味が違うことに注意を促しています[3, Remark 1.1]。この記事と論文の意味(有限指数の部分群で不変)に対し、非周期的な秩序の分野では、0でないベクトル1本で不変なことを「周期的」と呼ぶことがあります。グリーンフェルドとタオは後者を「1-周期的」(one-periodic)と呼んでいます。

上の命題の敷き詰め(平方数の行だけずらしたもの)は、前者の意味では周期的でなく、後者の意味では周期的です。ただし同じ注意によれば、2次元以下では「どの敷き詰めも周期的でない」という性質に限っては、2つの意味で差が出ないことが知られています。

周期タイル予想

図2のように、周期的でない敷き詰めは簡単に作れます。そこで問いを「どの敷き詰めも周期的か」ではなく、「周期的な敷き詰めが少なくとも1つあるか」にします。

予想7 周期タイル予想 [3, Conjecture 1.2, 1.3; 4, p.346]

(1) Zd\mathbb{Z}^d の空でない有限集合 FF がタイルなら、FF による完全に周期的な敷き詰めがある。

(2) Rd\mathbb{R}^d の有界で測度が正の可測集合 Ω\Omega が、平行移動で(零集合を除いて)Rd\mathbb{R}^d を敷き詰めるなら、平行移動の集合が 格子 で不変な敷き詰めがある。

グリーンフェルドとタオは、(1) をスタイン(1974年)、グリュンバウムとシェパード(1987年)、ラガリアスとワン(1996年)に、(2) を後の2つに帰しています[3, §1.1]。今回の論文は、ユークリッド空間での形をラガリアスとワンの論文から引いています[2, §1]。

(2) の「零集合を除いて」は、隣り合うタイルの境界(面積や体積が0の部分)の重なりは数えない、という意味です。単位立方体を並べると境界の面は2つの立方体に共有されますが、それは重なりとみなしません。

これまでに分かっていたこと

年場所分かったこと
1977Z\mathbb{Z}ニューマン:有限タイルによる Z\mathbb{Z} の敷き詰めは、どれも周期的[5]
1991–93R2\mathbb{R}^2円板と同相なタイルでは (2) が成り立つ[3, §1.1]
1991–96R\mathbb{R}レプティンとミュラー、ラガリアスとワン:(2) が d=1d=1 で成り立つ[6,4](グリーンフェルドとタオの整理による)
2016Z2\mathbb{Z}^2バタチャリア:(1) が d=2d=2 で成り立つ(arXiv。論文誌は2020年)[7]
2020Z2\mathbb{Z}^2グリーンフェルドとタオ:(1) の d=2d=2 の別証明と、敷き詰めの構造の精密化(arXiv。論文誌は2021年)[8]
2022Zd\mathbb{Z}^d、Rd\mathbb{R}^dグリーンフェルドとタオ:十分大きな dd で (1)(2) とも反例がある(arXiv。論文誌は2024年)[3]
2026年9月Z3\mathbb{Z}^3、R3\mathbb{R}^3OpenAI(今回):d=3d=3 で (1)(2) とも反例がある[2]

1990年代の項目は、グリーンフェルドとタオの論文の整理(§1.1)に従っています[3, §1.1]。凸なタイルではすべての次元で (2) が成り立つことも知られています。

グリーンフェルドとタオの反例は、まず Z2×G0\mathbb{Z}^2\times G_0(G0G_0 は有限なアーベル群で、位数が2のべき)で作られ、そこから十分大きな次元に移されました。彼らは、構成から出てくる次元は原理的には計算できるが、最適化はしておらず「非常に大きい」と書いています[3, §1.2]。

1次元・2次元では予想は正しい

マス目の世界で d=1,2d=1,2 では予想が正しいので、反例は d≥3d\ge3 でしか作れません。今回の反例は d=3d=3 なので、マス目ではこれが最小の次元です[2, §1]。

2次元のバタチャリアの証明には、エルゴード理論が使われています。1次元なら、鳩の巣原理だけで周期的な敷き詰めを作れます。

命題8 1次元では周期的な敷き詰めがある

Z\mathbb{Z} の空でない有限集合 FF がタイルなら、FF による完全に周期的な敷き詰めがある。

証明
  1. 平行移動して min⁡F=0\min F=0 とし、D=max⁡F+1D=\max F+1 とおく。敷き詰め A⊕F=ZA\oplus F=\mathbb{Z} を1つとる。点 zz を覆うタイル a+Fa+F は z−D<a≤zz-D<a\le z の範囲にある。
  2. 各整数 xx に、長さ DD の窓の様子 S(x)={i∈{0,…,D−1}:x−i∈A}S(x)=\{i\in\{0,\dots,D-1\}:x-i\in A\} を対応させる。S(x)S(x) は 2D2^D 通りしかないので、x<yx<y で S(x)=S(y)S(x)=S(y) となる組がある(鳩の巣原理)。P=y−xP=y-x とおく。
  3. AA の x<a≤yx<a\le y の部分を周期 PP でくり返した A′=(A∩(x,y])+PZA'=(A\cap(x,y])+P\mathbb{Z} を作る。A′A' は区間 x−D<a≤yx-D<a\le y で AA と一致する。

    x<a≤yx<a\le y では定義から一致する。x−D<a≤xx-D<a\le x のときは、S(x)=S(y)S(x)=S(y) から「a∈A  ⟺  a+P∈Aa\in A\iff a+P\in A」が成り立つ。

    a+Pa+P が (x,y](x,y] に入ればそこで一致し、入らなければ a+Pa+P はまた (x−D,x](x-D,x] にあるので、同じ議論をくり返す。PP ずつ増やすといずれ (x,y](x,y] に入るので、a∈A  ⟺  a∈A′a\in A\iff a\in A' となる。

  4. x<z≤yx<z\le y の各点 zz を覆う候補 aa は z−D<a≤zz-D<a\le z にあり、そこで A′=AA'=A なので、zz は A′A' でもちょうど1回覆われる。A′A' は周期 PP をもつので、すべての整数がちょうど1回覆われる。
  5. A′+P=A′A'+P=A' で、PZP\mathbb{Z} は Z\mathbb{Z} の有限指数の部分群なので、A′A' は完全に周期的である。

ニューマンはもっと強く、Z\mathbb{Z} では「どの敷き詰めも周期的」であることを示しています[5]。今回の論文は1次元・2次元の結果を「3が最小」という結論にだけ使い、3次元の主張は論文の中で直接証明しています[2, §1]。

帽子タイルとの違い

2023年、スミス、マイヤーズ、カプラン、グッドマン=ストラウスが「帽子」と呼ばれるタイルを発表し、話題になりました[9]。平面を敷き詰められるが、どの敷き詰めも周期的にならない1枚のタイルです。今回の結果とは、許す動かし方と問いが違います。

帽子(2023年)今回(2026年)
空間平面 R2\mathbb{R}^23次元のマス目 Z3\mathbb{Z}^3 と空間 R3\mathbb{R}^3
動かし方平行移動・回転・裏返し平行移動だけ
主張敷き詰められ、どの敷き詰めも周期的でない敷き詰められ、完全に周期的な敷き詰めが1つもない

帽子による敷き詰めには、裏返した帽子と裏返していない帽子の両方が現れます。同じ著者たちは後に、裏返しを使わない「スペクター」も見つけましたが、こちらも回転は使います[10]。

平行移動だけに限ると、平面のマス目 Z2\mathbb{Z}^2 では、どの有限タイルも周期的な敷き詰めをもちます(バタチャリア)。

今回の定理

定理9 OpenAI, 2026 [2, Theorem 1.1]

空でない有限集合 T⊂Z3T\subset\mathbb{Z}^3 で、次の2つをみたすものがある。

(1) TT は平行移動で Z3\mathbb{Z}^3 を敷き詰めるが、A⊕T=Z3A\oplus T=\mathbb{Z}^3 となる AA で、Z3\mathbb{Z}^3 の有限指数の部分群で不変なものはない。

(2) 単位立方体を貼り合わせた立体 Ω=T+[0,1]3\Omega=T+[0,1]^3 は、平行移動で(零集合を除いて)R3\mathbb{R}^3 を敷き詰めるが、そのような敷き詰めで、平行移動の集合が R3\mathbb{R}^3 の格子で不変なものはない。

Ω=T+[0,1]3\Omega=T+[0,1]^3 は、TT の各点を左下の角とする1辺1の立方体を集めた立体です。(2) では平行移動のベクトルに整数という制限がなく、立体を実数の分だけずらして並べてもよい点に注意してください。それでも完全に周期的な敷き詰めはありません。

読むときに気をつけたい点を挙げます。

  • タイルは非常に大きい。論文はタイルの大きさの具体的な値を出していません。構成は素数 p>200p>200 から始まります。論文の構成から読み取ると(この記事の見積もり)、立方体の個数は少なくとも 2114=1,982,119,441211^4=1{,}982{,}119{,}441 個で、実際はこれよりはるかに大きくなります。論文の最後の注意は、タイルは有限の探索で選べるが、大きさの実用的な上限は必要ないと述べています[2, Remark 7.6]。
  • つながっているとは限らない。論文はタイルの連結性を主張していません[2, §1]。
  • 否定するのは「完全な」周期。敷き詰めが0でない周期を1本ももたない、とは主張していません[2, §1]。

立方体の個数の下限は、論文の構成から次のように読み取れます。TT は m3m^3 個ずつの塊を ∣U∣=∣F∣|U|=|F| 個集めたもので(§7)、FF は ∣H0∣|H_0| 個の点をもつタイルを qq 段に積んだもの(系6.3)、∣H0∣|H_0| は D=p4D=p^4 の倍数です(§3の終わり)。

∣T∣=∣U∣ m3 ≥ ∣F∣=q ∣H0∣ ≥ D=p4 ≥ 2114|T|=|U|\,m^3\ \ge\ |F|=q\,|H_0|\ \ge\ D=p^4\ \ge\ 211^4∣T∣=∣U∣ m3≥∣F∣=q ∣H0∣≥D=p4≥2114\begin{aligned}|T| &= |U|\,m^3\\&\ge |F|\\&= q\,|H_0|\\&\ge D\\&= p^4\\&\ge 211^4\end{aligned}

211211 は 200200 より大きい最小の素数です。

反例の作り方

論文の構成は4段階に分かれ、グリーンフェルドとタオの方法の大筋に従っています[2, §1]。

  1. 1
    数独のような規則

    帯状の配列 W(n,m)W(n,m) に、どの直線に沿って読んでも決まった形の「語」になる、という規則を課す。この規則をみたし、どの列も定数でない配列はあるが、縦に周期をもつものはない(§2)。

  2. 2
    敷き詰めの方程式の連立

    Z2×V\mathbb{Z}^2\times V(VV は有限の巡回群)で、同じ未知の AA についての敷き詰めの方程式を有限個並べ、その共通の解が数独の解を表すようにする(§3–§5)。

  3. 3
    1枚のタイルにまとめる

    新しい素数 qq の分だけ座標を増やし、方程式の連立を1枚のタイル F⊂Z2×Z/QF\subset\mathbb{Z}^2\times\mathbb{Z}/Q の敷き詰めに置き換える(§6)。

  4. 4
    3次元へ

    有限の巡回群 Z/Q\mathbb{Z}/Q を3本目の整数の座標で置き換え、Z3\mathbb{Z}^3 のタイル TT と立体 T+[0,1]3T+[0,1]^3 を作る(§7)。

各段階で2つのことを確かめます。1つは、構成したものに敷き詰めが少なくとも1つあること(右向き)。もう1つは、完全に周期的な敷き詰めがあったと仮定すると、1つ前の段階でも完全に周期的な解ができてしまうこと(左向き)です。左向きにたどると最後は「縦に周期をもつ数独の解」ができ、段階1の結果と矛盾します[2, Figure 1]。

段階1:最後の0でない桁

素数 pp を1つ決めます。論文では p>200p>200 です。0でない整数 tt を pp 進法で書き、いちばん下の0でない桁を f(t)f(t) とします。

定義10 最後の0でない桁 [2, Lemma 2.5]

0でない整数 tt に対し、tt を割り切る pp の最大のべきを prp^r として

f(t)=tpr mod p∈{1,…,p−1}f(0)=1\begin{aligned} f(t)&=\frac{t}{p^{r}}\bmod p\\ &\in\{1,\dots,p-1\}\\[4pt] f(0)&=1 \end{aligned}

と定める。f(0)=1f(0)=1 は約束である。

例11 p=5p=5

f(7)=2f(7)=2(7=12(5)7=12_{(5)})、f(10)=2f(10)=2(10=5⋅210=5\cdot2)、f(75)=3f(75)=3(75=25⋅375=25\cdot3)、f(−1)=4f(-1)=4(−1≡4-1\equiv4)。t=1,2,…,25t=1,2,\dots,25 では次のように並ぶ。

1,2,3,4,1, 1,2,3,4,2,1,2,3,4,3, 1,2,3,4,4,1,2,3,4,1\begin{aligned} &1,2,3,4,1,\ 1,2,3,4,2,{}\\ &1,2,3,4,3,\ 1,2,3,4,4,{}\\ &1,2,3,4,1\end{aligned}

5つおきの項(t=5,10,15,20,25t=5,10,15,20,25)が、また 1,2,3,4,11,2,3,4,1 と並んでいます。f(pt)=f(t)f(pt)=f(t) が成り立つので、pp 倍に引き伸ばすと同じ列が現れます。この自己相似な形が、周期をもたない理由になります。

次に、数独の規則に当たる「許される語」と「直線の規則」を定めます。Σ={1,…,p−1}\Sigma=\{1,\dots,p-1\}(Fp\mathbb{F}_p の0でない元)を記号とし、列の番号は I={0,1,…,p2−1}I=\{0,1,\dots,p^2-1\} とします。

定義12 許される語と直線の規則 [2, Definition 2.1]

語 w:I→Σw:I\to\Sigma が許されるとは、両方は pp で割り切れない整数 a,ba,b があって、すべての n∈In\in I で次が成り立つことをいう。

w(n)={an+b mod p(p∤an+b)an+bp mod p(p∣an+b,(p2∤an+b)w(n)=\begin{cases} an+b \bmod p\\ \quad(p\nmid an+b)\\[4pt] \dfrac{an+b}{p} \bmod p\\ \quad(p\mid an+b,{}\\ \quad\phantom{(}p^2\nmid an+b)\end{cases}

p2∣an+bp^2\mid an+b となる nn では、w(n)w(n) は Σ\Sigma のどれでもよい。配列 W:I×Z→ΣW:I\times\mathbb{Z}\to\Sigma が直線の規則をみたすとは、すべての整数 d,ed,e について、直線 m=dn+em=dn+e に沿って読んだ語 n↦W(n,dn+e)n\mapsto W(n,dn+e) が許されることをいう。正の整数 MM が縦の周期であるとは、すべての (n,m)(n,m) で W(n,m+M)=W(n,m)W(n,m+M)=W(n,m) となることをいう。

ざっくり言えば、どの直線に沿って読んでも、an+ban+b の「最後の0でない桁」の形に読める、ということです。p2p^2 で割り切れるところは見ないことにします。

補題13 規則をみたす配列 [2, Lemma 2.5]

W(n,m)=f(m)W(n,m)=f(m) は直線の規則をみたし、どの列も定数でない。

証明
  1. f(prt)=f(t)f(p^rt)=f(t) がすべての r≥0r\ge0 と整数 tt で成り立つ(t=0t=0 でも約束から成り立つ)。
  2. 直線 m=dn+em=dn+e を考える。(d,e)≠(0,0)(d,e)\ne(0,0) なら、d,ed,e を両方割り切る pp の最大のべき prp^r で割り、d=prad=p^ra、e=prbe=p^rb とする。a,ba,b は両方は pp で割り切れず、f(dn+e)=f(an+b)f(dn+e)=f(an+b) である。
  3. この (a,b)(a,b) が許される語の条件をみたす。

    an+ban+b が pp で割り切れなければ f(an+b)=an+b mod pf(an+b)=an+b\bmod p。pp でちょうど1回割り切れれば f(an+b)=(an+b)/p mod pf(an+b)=(an+b)/p\bmod p。どちらも定義の式そのものである。p2p^2 で割り切れるとき(an+b=0an+b=0 も含む)は、値は自由なので条件はない。

  4. (d,e)=(0,0)(d,e)=(0,0) なら語は定数 11 で、a=0, b=1a=0,\ b=1 が条件をみたす。
  5. どの列 nn でも W(n,1)=f(1)=1W(n,1)=f(1)=1、W(n,2)=f(2)=2W(n,2)=f(2)=2 なので、列は定数でない。

下の図で、p=5p=5 のときの配列 W(n,m)=f(m)W(n,m)=f(m) と、直線に沿って読んだ語を確かめられます。

00
55
1010
1515
2020
2525
00
55
1010
1515
2020
2424
nn
mm
an+ban+b
f(dn+e)f(dn+e)

直線 m=dn+em=dn+e:d=d=1、e=e=3。証人は a=a=1、b=b=3 です。

図3具体例上は p=5p=5 の配列 W(n,m)=f(m)W(n,m)=f(m)(0≤n≤240\le n\le24、0≤m≤290\le m\le29)で、行ごとに f(m)f(m) の色(1=青、2=緑、3=橙、4=紫)で塗っています。濃い枠のマスが直線 m=dn+em=dn+e の上のマスです。下の2段は、an+b mod 5an+b\bmod 5 と、直線に沿って読んだ語 f(dn+e)f(dn+e) です。下線が橙のマスは 55 でちょうど1回割り切れるところ、下線が灰色のマスは 2525 で割り切れて値が自由なところです。それ以外では2段の数字が一致します。直線の規則はこの図の範囲の −12≤d≤12-12\le d\le12、−30≤e≤30-30\le e\le30 のすべてで、生成時に確かめています。

論文は p>200p>200 を仮定し、たとえば次の命題の証明(補題2.2)で p2−48p−3>0p^2-48p-3>0 を使います。上の補題自体はどの奇素数でも成り立つので、図は見やすい p=5p=5 で描いています。

この配列 W(n,m)=f(m)W(n,m)=f(m) には縦の周期がありません。これはすぐ確かめられます。

例14 ff は周期をもたない

M>0M>0 が ff の周期なら f(M)=f(0)=1f(M)=f(0)=1 かつ f(2M)=f(0)=1f(2M)=f(0)=1。一方で pp は奇素数なので f(2M)=2f(M) mod p=2≠1f(2M)=2f(M)\bmod p=2\ne1 となり、矛盾する。

論文の要点は、規則をみたし列が定数でない配列が、どれも縦の周期をもたないことです。

命題15 縦の周期の障害 [2, Proposition 2.4]

p>200p>200 とする。直線の規則をみたし、どの列も定数でない配列 W:I×Z→ΣW:I\times\mathbb{Z}\to\Sigma で、縦の周期をもつものはない。

証明
  1. 直線の規則をみたす配列は、ある1次式 H(n,m)=An+Bm+CH(n,m)=An+Bm+C(A,B,C∈FpA,B,C\in\mathbb{F}_p は全部は0でない)と、H≠0H\ne0 のところで一致する(論文の補題2.2)。

    証明は、まず傾き 0,±10,\pm1 の直線の例外のマスを含まない 4×44\times4 の正方形を数え上げで見つける。この評価に p2−48p−3>0p^2-48p-3>0 を使う。正方形の中で1次式を決め、それを直線に沿って配列全体に広げる。

  2. 列が定数でないことは B≠0B\ne0 と同値で、そのとき縦の周期 MM はすべて pp で割り切れる(論文の補題2.3)。

    B=0B=0 なら、An+C≠0An+C\ne0 となる列 nn では列全体が定数 An+CAn+C になる。B≠0B\ne0 なら、各列で mm を動かすと HH は Fp\mathbb{F}_p のすべての値をとる。

    周期 MM があれば、H(n,m)H(n,m) と H(n,m+M)H(n,m+M) がともに0でない mm をとって BM=H(n,m+M)−H(n,m)=0BM=H(n,m+M)-H(n,m)=0。B≠0B\ne0 なので p∣Mp\mid M である。

  3. 周期をもつ配列があったとし、その中で最小の周期 MM をもつものをとる。各列を縦に un+vun+v ずつずらした配列 W~(n,m)=W(n,m+un+v)\widetilde W(n,m)=W(n,m+un+v) に取り替えて H=BmH=Bm の形にしてから、pp 行おきに取り出した配列 W1(n,m)=W(n,pm)W_1(n,m)=W(n,pm) を作る。
  4. W1W_1 も直線の規則をみたし、列は定数でない。さらに M/pM/p が W1W_1 の縦の周期になり、MM の最小性に反する。

    W1W_1 の直線 m=dn+em=dn+e は、WW の直線 m=pdn+pem=pdn+pe なので、規則はそのまま受け継がれる。列が定数でないこと(W1W_1 の1次式の B1B_1 が0でないこと)が証明の主要な部分である。B1=0B_1=0 と仮定すると、ある直線の上の p−1p-1 個のマスが、すべて同じ値をとり、しかも互いに違う値をとることになって矛盾する。

    周期については W1(n,m+M/p)=W(n,pm+M)=W(n,pm)=W1(n,m)W_1(n,m+M/p)=W(n,pm+M)=W(n,pm)=W_1(n,m) である。

pp 行おきに取り出しても同じ種類の配列に戻る、という構造は、例で見た f(pt)=f(t)f(pt)=f(t) と同じものです。周期があれば、pp で割った周期をもつ配列が作れてしまい、いくらでも小さくなるので矛盾します。グリーンフェルドとタオは2のべき q=2sq=2^s 進法で同じ考え方を使い、今回の論文は pp 進法の形[11, §4]を使っています[2, §2]。

段階2:敷き詰めの方程式で条件を書く

次は、数独の規則を敷き詰めの言葉に翻訳します。使うのは、未知の集合 AA を共通にした敷き詰めの方程式の連立です。ここでは仕組みを一番小さな形で見ます。群は G=Z×Z/qG=\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/q とします。横に整数、縦に qq 段の円筒のような世界です。

命題16 グラフの方程式

H0={0}×Z/qH_0=\{0\}\times\mathbb{Z}/q(1列分の縦の棒)とする。A⊆GA\subseteq G について、A⊕H0=GA\oplus H_0=G となるのは、どの列 {x}×Z/q\{x\}\times\mathbb{Z}/q にも AA の点がちょうど1つあるときに限る。つまり、ある関数 c:Z→Z/qc:\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}/q のグラフ A={(x,c(x))}A=\{(x,c(x))\} のときである。

証明
  1. a+H0a+H_0 は、点 aa を含む列全体である。よって A+H0A+H_0 で列 xx が覆われる回数は、その列にある AA の点の個数に等しい。これがどの列でも1であることが条件である。

グラフの形にした上で、別のタイルによる方程式を加えると、関数 cc に条件を課せます。

命題17 周期を強制するタイル [2, Lemma 3.1]

A={(x,c(x)):x∈Z}A=\{(x,c(x)):x\in\mathbb{Z}\} をグラフとし、整数 σ\sigma に対して

Fσ={(0,y):y≠0}∪{(σ,0)}F_\sigma=\{(0,y):y\ne0\}\cup\{(\sigma,0)\}Fσ={(0,y):y≠0}∪{(σ,0)}\begin{aligned}F_\sigma &= \{(0,y):y\ne0\}\cup\{(\sigma,0)\}\end{aligned}

とする。A⊕Fσ=GA\oplus F_\sigma=G となるのは、すべての xx で c(x−σ)=c(x)c(x-\sigma)=c(x) となるときに限る。

証明
  1. 点 (x,t)(x,t) が A+FσA+F_\sigma で覆われる回数を数える。(0,y)(0,y) の部分からは、列 xx の点 (x,c(x))(x,c(x)) を使う表し方が t≠c(x)t\ne c(x) のとき1つある。
  2. (σ,0)(\sigma,0) の部分からは、列 x−σx-\sigma の点 (x−σ,c(x−σ))(x-\sigma,c(x-\sigma)) を使う表し方が t=c(x−σ)t=c(x-\sigma) のとき1つある。
  3. 覆われる回数は [t≠c(x)]+[t=c(x−σ)][t\ne c(x)]+[t=c(x-\sigma)](条件が成り立てば1、そうでなければ0)である。これがすべての tt で1になるのは、t=c(x)t=c(x) のときに2つ目の項が1になること、つまり c(x−σ)=c(x)c(x-\sigma)=c(x) のときである。

論文の補題3.1は、これを多くの座標をもつ群で行ったものです。下の図で q=4q=4、σ=3\sigma=3 の場合を動かせます。

00
11
22
33
44
55
66
77
88
99
1010
1111
00
11
22
33
x∈Zx\in\mathbb{Z}(一部)
Z/4\mathbb{Z}/4
タイル F3F_3
(0,0)(0,0)
(3,0)(3,0)

すき間 0 マス、重なり 0 マス。敷き詰めになっています(c(x−3)=c(x)c(x-3)=c(x))。

図4具体例G=Z×Z/4G=\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/4 の一部(横 x=0,…,11x=0,\dots,11、縦 0,…,30,\dots,3)です。黒い点がグラフ A={(x,c(x))}A=\{(x,c(x))\} で、マスをクリックするとその列の点が動きます。x≥3x\ge3 の各マスを、A+F3A+F_3 で覆われる回数で塗っています。青は列の棒 (0,y)(0,y) の部分、橙は (3,0)(3,0) の部分で1回覆われたマス、赤い点線はすき間、赤の塗りは重なりです。x<3x<3 の列(灰色)は窓の外の列に左右されるので数えていません。数え方の規則 [t≠c(x)]+[t=c(x−3)][t\ne c(x)]+[t=c(x-3)] は、生成時にランダムな300通りの cc で確かめています。

同じ未知の AA に、このような方程式をいくつも課すのが「連立」です。論文では、数独の各列(全部で p2p^2 列)の記号を、出力の座標が入力のどの桁に依存するかで表します。そのうえで、直線に沿った語が許されることや、列が定数でないことを、有限個のタイルの方程式で書きます[2, §3, §4]。

連立の解が完全に周期的なら数独に縦の周期ができる、という向きの議論には、命題4と同じ考え方が使われます。有限指数の部分群 Λ\Lambda があれば、縦方向の単位ベクトル eve_{\mathrm v} のある倍数 MevMe_{\mathrm v} が Λ\Lambda に入ります。それが数独の配列の縦の周期 MM になり、命題15に反します[2, Proposition 4.4]。

専門的な話論文の群 Z2×V\mathbb{Z}^2\times V と3種類の検査

論文の群は G=Z2×VG=\mathbb{Z}^2\times V で、VV は Z/D\mathbb{Z}/D(D=p4D=p^4)と、各「チャンネル」ii ごとの Z/ri2×Z/ai×Z/bi\mathbb{Z}/r_i^2\times\mathbb{Z}/a_i\times\mathbb{Z}/b_i の積です(式 (3.2))。ri,ai,bir_i,a_i,b_i はすべて異なる素数(の積)で、位数がたがいに素なので、VV は巡回群になります。チャンネルは数独の p2p^2 列と、「種」と呼ぶ2つで、全部で p2+2p^2+2 個です。

グラフの方程式 A⊕H0=GA\oplus H_0=G で AA を関数のグラフにし、その出力 cic_i が入力のどの桁に依存するかを「記号が活性である」と呼びます(§3.3)。上の命題17と同じ形のタイルで依存の仕方を制限し、サイクル検査(補題3.2)で、禁じられた語の記号が同時に活性になることを排除します。

活性化の検査(§4)では、各チャンネルが少なくとも1つの記号で活性になることを強制します。種のチャンネルは、ある点で列の記号がすべて 11(または 22)になることを強制し、これで数独の列が定数でなくなります。最後に§5で、最後の0でない桁の配列から、すべての方程式の共通の解を具体的に作ります(定理5.2)。

段階3:方程式を1枚のタイルにまとめる

連立の方程式 A⊕Fν=GA\oplus F_\nu=G(ν=1,…,s\nu=1,\dots,s)を、1枚のタイルの方程式に置き換えます。新しい素数 qq をとり、Z/q\mathbb{Z}/q を ss 個の部分 E1,…,EsE_1,\dots,E_s に分けて、タイル FνF_\nu を EνE_\nu の段に積み上げます。

命題18 積み上げ [2, Lemma 6.1, Proposition 6.2]

Z/q=E1⊔⋯⊔Es\mathbb{Z}/q=E_1\sqcup\cdots\sqcup E_s を、どの EνE_\nu も差の集合 Eν−EνE_\nu-E_\nu が Z/q\mathbb{Z}/q 全体になる分け方とする(qq が十分大きな素数ならそのような分け方がある)。Fst=⋃νFν×Eν⊂G×Z/qF^{\mathrm{st}}=\bigcup_\nu F_\nu\times E_\nu\subset G\times\mathbb{Z}/q とおくと、次が成り立つ。

(1) 連立 A⊕Fν=GA\oplus F_\nu=G(すべての ν\nu)に共通の解があることと、FstF^{\mathrm{st}} が G×Z/qG\times\mathbb{Z}/q を敷き詰めることは同値である。
(2) 完全に周期的な共通の解があることと、FstF^{\mathrm{st}} による完全に周期的な敷き詰めがあることは同値である。

例19 q=7q=7、s=2s=2

Z/7={0,1,3}⊔{2,4,5,6}\mathbb{Z}/7=\{0,1,3\}\sqcup\{2,4,5,6\} とすると、どちらの差の集合も Z/7\mathbb{Z}/7 全体になる。たとえば {0,1,3}\{0,1,3\} では 1−0=1, 3−1=2, 3−0=3, 0−3=4, 1−3=5, 0−1=61-0=1,\ 3-1=2,\ 3-0=3,\ 0-3=4,\ 1-3=5,\ 0-1=6。

差の集合が全体になるという条件は、次の場面で使われます。同じ段の集まり EνE_\nu を2回使う覆い方があると、EνE_\nu のずらした写し2つは必ず交わるので、重なりが出てしまいます。そのため、各点の上の qq 段は、どの ν\nu についてもちょうど1回ずつ使って覆うしかありません。これが「どの方程式も同時に解けている」ことを意味します[2, §6]。

VV が巡回群で、qq が ∣V∣|V| を割り切らない素数なら、V×Z/qV\times\mathbb{Z}/q は位数 Q=q∣V∣Q=q|V| の巡回群 Z/Q\mathbb{Z}/Q です(中国剰余定理)。こうして、Z2×Z/Q\mathbb{Z}^2\times\mathbb{Z}/Q のタイル FF で、敷き詰めはあるが完全に周期的な敷き詰めがないものが得られます[2, Corollary 6.3]。

段階4:3次元へ

有限の巡回群 Z/Q\mathbb{Z}/Q は、整数 Z\mathbb{Z} を QQ ごとに同一視したものです。したがって Z2×Z/Q\mathbb{Z}^2\times\mathbb{Z}/Q は、Z3\mathbb{Z}^3 の3番目の座標を QQ で割った余りに置き換えたものになります。

π:Z3→Z2×Z/Qπ(a1,a2,a3)=(a1,a2, a3 mod Q)ker⁡π=Zw,  w=(0,0,Q)\pi:\mathbb{Z}^3\to\mathbb{Z}^2\times\mathbb{Z}/Q\qquad \pi(a_1,a_2,a_3)=(a_1,a_2,\,a_3\bmod Q)\qquad \ker\pi=\mathbb{Z}w,\ \ w=(0,0,Q)π:Z3→Z2×Z/Qπ(a1,a2,a3)=(a1,a2, a3 mod Q)ker⁡π=Zw,  w=(0,0,Q)\begin{gathered}\pi:\mathbb{Z}^3\to\mathbb{Z}^2\times\mathbb{Z}/Q\\\pi(a_1,a_2,a_3)=(a_1,a_2,\,a_3\bmod Q)\\\ker\pi=\mathbb{Z}w,\ \ w=(0,0,Q)\end{gathered}π:Z3→Z2×Z/Qπ(a1,a2,a3)=(a1,a2, a3 mod Q)ker⁡π=Zw,  w=(0,0,Q)\begin{aligned}\pi:\mathbb{Z}^3 &\to \mathbb{Z}^2\times\mathbb{Z}/Q\\[4pt]\pi(a_1,a_2,a_3) &= (a_1,a_2,\,a_3\bmod Q)\\[4pt]\ker\pi &= \mathbb{Z}w,\ \ w\\&= (0,0,Q)\end{aligned}

ここで、巡回群であることが役に立ちます。グリーンフェルドとタオの G0G_0 のような一般の有限アーベル群は、生成元が何本も要るので、整数の座標も何本も要ります。巡回群なら3本目の座標1本で済みます[2, §1]。

ただし、FF を Z3\mathbb{Z}^3 に持ち上げただけでは、敷き詰めが3番目の座標の方向に ww で不変になるとは限りません。また実数のずらしを許す R3\mathbb{R}^3 の主張には、整数のずらしに限ってよい理由も必要です。論文は、次のタイルでこの2つを同時に解決します[2, §7]。

定義20 散らばった代表系と印のマス [2, Lemma 7.1, (7.3)]

大きな整数 mm を決める。各余り v∈{0,…,m−1}3v\in\{0,\dots,m-1\}^3 に1つずつ点 t(v)≡v(modm)t(v)\equiv v\pmod m を選んだ集合を T0={t(v)}T_0=\{t(v)\} とする(m3m^3 個)。T∗=T0∖{t(0)}T_*=T_0\setminus\{t(0)\} とし、印の点 t(0)t(0) だけを mwmw 動かした T1=T∗∪{t(0)+mw}T_1=T_*\cup\{t(0)+mw\} を作る。π\pi で FF と一対一に対応する有限集合 U∋0U\ni0 をとり、

T=T1∪⋃u∈U∖{0}(mu+T0)Ω=T+[0,1]3T=T_1\cup\bigcup_{u\in U\setminus\{0\}}(mu+T_0)\qquad \Omega=T+[0,1]^3T=T1∪⋃u∈U∖{0}(mu+T0)Ω=T+[0,1]3\begin{gathered}T=T_1\cup\bigcup_{u\in U\setminus\{0\}}(mu+T_0)\\\Omega=T+[0,1]^3\end{gathered}T=T1∪⋃u∈U∖{0}(mu+T0)Ω=T+[0,1]3\begin{aligned}T &= T_1\cup\bigcup_{u\in U\setminus\{0\}}(mu+T_0)\\[4pt]\Omega &= T+[0,1]^3\end{aligned}

を最終的なタイルとする。

T0T_0 は「mm で割った余りがすべて違う m3m^3 個の点」なので、mZ3m\mathbb{Z}^3 の平行移動で Z3\mathbb{Z}^3 をちょうど敷き詰めます。点を散らばらせて選ぶのは、差の集合 T∗−T∗T_*-T_* が mZ3m\mathbb{Z}^3 以外の短いベクトルをすべて含むようにするためです(ランダムに選べばそうなることを、論文は確率の評価で示しています)。

下の図は、この仕組みを2次元に縮めた模型です。m=3m=3 とし、余り v∈{0,1,2}2v\in\{0,1,2\}^2 ごとに1マスを、3×3 の正方形から最大1ブロックずらして選びました。

図5概念図2次元の模型のタイル T0T_0(9マス)です。点線の正方形の9マスを、それぞれ縦横に −3,0,3-3,0,3 のどれかだけずらしました。3で割った余りの組 (x mod 3, y mod 3)(x\bmod3,\,y\bmod3) は9マスで全部違います。白丸のマスが印の点 t(0)t(0) です。
図6概念図図5のタイルを、3Z23\mathbb{Z}^2 の点だけずらして並べた模型です。色はどのずらした写しに属するかを表し、マスをクリックするとその写しの9マスが枠で示されます。「印のマスを動かす」では、横・縦とも偶数番目の写しで、印のマスを上に mQ=6mQ=6 マス動かします(この模型では w=(0,2)w=(0,2))。動いた印は黒丸で、その写しをクリックすると動いた向きが矢印で出ます。空いたマス(点線)には、下の写しから動いてきた印のマスが入るので、敷き詰めのままです。各段階で窓の 18×1818\times18 マスがちょうど1回ずつ覆われることを、生成時に確かめています。m=3m=3、Q=2Q=2 は見やすさのための値で、論文の mm は十分大きく、QQ は巨大です。

図6の2段階目が、論文の構成の要点です。動かした印のマスが空いたマスにちょうど入るのは、印を動かす写しの集合が ww ずらしで不変なときです。論文はこれを逆向きに使います。

命題21 3次元への持ち上げ [2, Proposition 7.2, Lemma 7.4, Proposition 7.5]

(1) FF の敷き詰めから、TT による Z3\mathbb{Z}^3 の敷き詰めと、Ω\Omega による R3\mathbb{R}^3 の敷き詰めが作れる。
(2) Ω\Omega の敷き詰めで平行移動の集合が格子で不変なものがあれば、FF の完全に周期的な敷き詰めが作れる。

証明
  1. (1) を示す。A⊕F=Z2×Z/QA\oplus F=\mathbb{Z}^2\times\mathbb{Z}/Q から B=π−1(A)B=\pi^{-1}(A) をとると、B⊕U=Z3B\oplus U=\mathbb{Z}^3 で、B+w=BB+w=B である。TT を mBmB の各点に置くと、mZ3m\mathbb{Z}^3 の各点に T0T_0 か T1T_1 がちょうど1つずつ並ぶ。

    T0T_0 だけを並べれば Z3\mathbb{Z}^3 の敷き詰めになる。T1T_1 の位置 mBmB では印の点が t(0)+mBt(0)+mB から t(0)+m(B+w)t(0)+m(B+w) に移るが、B+w=BB+w=B なのでこれは同じ集合で、抜けた点と入った点が一致する。立方体で太らせれば R3\mathbb{R}^3 の敷き詰めになる。

  2. (2) を示す。共通部分 T∗T_* の差の集合が短いベクトルをすべて含むことから、周期的な敷き詰めでは塊の中心が1つの格子 c0+mZ3c_0+m\mathbb{Z}^3 に並ぶ(補題7.4)。

    2つの中心の差が mZ3m\mathbb{Z}^3 に入らない短いベクトルなら、共通部分の立方体どうしが正の体積で重なり、敷き詰めに反する。周期性を使って中心のまわりの1辺 mm の立方体が空間を覆うことを示し、そこから中心がすべて1つの格子に乗ることを導く。実数のずらしが整数のずらしに引き戻されるのはこのステップである。

  3. 中心を mZ3m\mathbb{Z}^3 にそろえたあと、中心 mama の塊が T1T_1 なら b(a)=1b(a)=1、T0T_0 なら b(a)=0b(a)=0 とおく。印の位置 t(0)+mat(0)+ma のマスを覆えるのは、中心 mama の T0T_0 の印か、中心 m(a−w)m(a-w) の T1T_1 の動いた印だけである。
  4. そのマスが覆われる回数は 1−b(a)+b(a−w)1-b(a)+b(a-w) で、これが1なので b(a)=b(a−w)b(a)=b(a-w)。つまり T1T_1 の中心の集合は ww ずらしで不変である。
  5. こうして ww で不変になった集合を π\pi で Z2×Z/Q\mathbb{Z}^2\times\mathbb{Z}/Q に落とすと、FF の完全に周期的な敷き詰めになる。

段階3で、FF には完全に周期的な敷き詰めがないことが分かっています。したがって (2) から、Ω\Omega にも TT にも完全に周期的な敷き詰めはありません。TT の整数の敷き詰めが完全に周期的なら、立方体で太らせた Ω\Omega の敷き詰めも格子で不変になるので、(2) に帰着します。これで定理9が示されます[2, §7]。

どこまで確かなのか

  • 論文は2026年9月23日付のプレプリントで、査読はまだです[2]。
  • リポジトリの照合(Comparator)の設定で、主定理 OAI.PeriodicTilingThree.periodic_tiling_counterexample_and_minimality が検査の対象になっています[12]。許可された公理は、Leanで標準的な propext、Quot.sound、Classical.choice の3つです。
  • 形式化の範囲の説明によれば、形式化されたのは 定理9 の (1)(2) の両方と、「マス目で反例がありうる最小の次元は3」という主張です[13]。最小性の証明には、1次元と2次元で周期的な敷き詰めがあること(2次元はバタチャリアの定理と同じ主張)の形式化も含まれています[12]。
  • 2026年10月7日付の更新では、この論文は修正も取り下げもされていません[14]。

Leanで照合される主張は次のとおりです。前半が定理9、後半が「Zd\mathbb{Z}^d に完全に周期的な敷き詰めをもたないタイルがある dd の最小値は 33」です。

theorem periodic_tiling_counterexample_and_minimality :
    (∃ T : Finset (Lattice 3), T.Nonempty ∧
      (∃ A : Set (Lattice 3), Tiles T A) ∧
      (∀ A : Set (Lattice 3), Tiles T A → ¬ FullyPeriodic A) ∧
      (∃ A : Set (Space 3), AETiles (Thickening T) A) ∧
      (∀ A : Set (Space 3),
        AETiles (Thickening T) A → ¬ EuclideanFullyPeriodic A)) ∧
    IsLeast {d : ℕ | HasTileWithoutPeriodicComplement d} 3

同じファイルで、Tiles F A は「(f,a)↦f+a(f,a)\mapsto f+a が F×AF\times A から全体への全単射」、FullyPeriodic A は「有限指数の部分群のすべての元が AA の周期」と定義されています。定義1と定義3をそのまま書いたものだと読めます。なお、筆者はこの記事を書いた時点で、Leanの検査を手元で再実行していません。

残された問題

  • 平面 R2\mathbb{R}^2:マス目の Z2\mathbb{Z}^2 では予想は正しいですが、平面の一般の有界可測集合については、論文が挙げる既知の結果(穴のないポリオミノ[15]や、有理数の座標をもつ多角形の集まり[16])では決着していない、と論文は書いています[2, §1]。円板と同相なタイルでも予想が成り立つことは知られています[3, §1.1]。
  • タイルの大きさ:今回のタイルは非常に大きく、論文は大きさの具体的な値を出していません。もっと小さな反例がどこまで作れるかは、論文では扱われていません。
  • つながったタイル:論文はタイルの連結性を主張していません。つながった立体で同じことが起こるかは、この論文からは分かりません。

OpenAIの数学論文では、ほかに「平面は5色では塗れない」と「π\pi の無理数度は2」も読んでいます。

参考文献

  1. OpenAI, openai/math: mathematical manuscripts and supporting proof artifacts, GitHub, 2026.
  2. OpenAI, A translational tile with no fully periodic tiling in dimension three, OpenAI Math Release preprint, September 23, 2026.
  3. R. Greenfeld, T. Tao, A counterexample to the periodic tiling conjecture, Annals of Mathematics 200 (2024), 301–363(arXiv:2211.15847, 2022).
  4. J. C. Lagarias, Y. Wang, Tiling the line with translates of one tile, Inventiones Mathematicae 124 (1996), 341–365.
  5. D. J. Newman, Tesselation of integers, Journal of Number Theory 9 (1977), 107–111.
  6. H. Leptin, D. Müller, Uniform partitions of unity on locally compact groups, Advances in Mathematics 90 (1991), 1–14.
  7. S. Bhattacharya, Periodicity and decidability of tilings of Z^2, American Journal of Mathematics 142 (2020), 255–266(arXiv:1602.05738, 2016).
  8. R. Greenfeld, T. Tao, The structure of translational tilings in Z^d, Discrete Analysis 2021, Paper No. 16(arXiv:2010.03254, 2020).
  9. D. Smith, J. S. Myers, C. S. Kaplan, C. Goodman-Strauss, An aperiodic monotile, arXiv:2303.10798, 2023.
  10. D. Smith, J. S. Myers, C. S. Kaplan, C. Goodman-Strauss, A chiral aperiodic monotile, arXiv:2305.17743, 2023.
  11. R. Greenfeld, T. Tao, Undecidability of translational monotilings, Journal of the European Mathematical Society, 2025(arXiv:2309.09504).
  12. OpenAI, openai/math: lean/ComparatorChallenges/PeriodicTilingThree.lean と OAI/Geometry/PeriodicTiling/Counterexample.lean, GitHub, 2026.
  13. OpenAI, openai/math: lean/docs/155.md(形式化の範囲), GitHub, 2026.
  14. OpenAI, openai/math: History, GitHub, 2026.
  15. H. A. G. Wijshoff, J. van Leeuwen, Arbitrary versus periodic storage schemes and tessellations of the plane using one type of polyomino, Information and Control 62 (1984), 1–25.
  16. J. de Dios Pont, J. Grebík, R. Greenfeld, J. Madrid, Periodicity and decidability of translational tilings by rational polygonal sets, Expositiones Mathematicae 44 (2026), 125620(arXiv:2408.02151).