数学ビジュアライズ

代数幾何図で読む代数幾何第7回

特異点をほどく:ブローアップ

平面の原点を、原点を通る直線の向き全体に取り替えるブローアップを定義し、2枚の平面の貼り合わせとして調べます。曲線の狭義変換を計算すると、結節点の2本の枝は例外曲線の別々の点に分かれ、尖点は滑らかな曲線になります。持ち上げた曲線とその影を、回せる立体図で比べます。

目次
  1. 前回の宿題
  2. 原点でのブローアップ
  3. 2枚の平面を貼り合わせた曲面
  4. 全変換と狭義変換
  5. 結節点の枝が分かれる
  6. 尖点が滑らかになる
  7. タクノードは2回で分かれる
  8. ブローアップと特異点の解消
  9. まとめ:狭義変換の表
  10. 次回:族とファイバー
  11. 参考文献
この記事の要点
ブローアップ
平面の原点を、原点を通る直線の向き全体 P1\mathbb{P}^1 に取り替えた曲面です。A2×P1\mathbb{A}^2\times\mathbb{P}^1 の中で、式 xu1=yu0xu_1=yu_0 で定まります。
例外曲線
原点の上には P1\mathbb{P}^1 がまるごと乗り、これを例外曲線 EE と呼びます。原点以外の点の上には点が1つだけで、そこはもとの平面と同じです。
狭義変換
曲線の原点以外の部分を持ち上げ、閉包をとったものです。チャートで y=mxy=mx を代入し、xx のべきで割れば求まります。例外曲線とは、原点での接線の向きに当たる点で交わります。
特異点をほどく
結節点の2本の枝は、例外曲線の別々の点 m=±1m=\pm1 に分かれます。尖点は滑らかな曲線になります。真上から見た影と持ち上げた曲線を、回せる立体図で比べます。
  • 証明は、ステップの流れだけを短く書いています。「詳しく」の付いた行をクリックすると、そのステップの詳しい説明が開きます。説明の中にも開ける行があります。
  • 定義・命題・定理には、記事全体で通し番号を振っています。
  • もう少し詳しくは補足、専門的な話は先の回につながる話題です。どちらも開かずに読み進められます。
  • 各ブロックの「AIに質問」を押すと、その部分の内容を入れた質問文で、お使いのAIを開けます。

前回の宿題

第6回では、平面曲線 C=V(f)C=V(f) の特異点、つまり f=∂f/∂x=∂f/∂y=0f=\partial f/\partial x=\partial f/\partial y=0 となる点を調べました(第6回の定義2)。代表的な例が、原点で自分自身と交わる結節点 y2=x2(x+1)y^2=x^2(x+1) と、原点で尖る尖点 y2=x3y^2=x^3 です。

原点のまわりの形は、ff を斉次式の和 f=fr+fr+1+⋯f=f_r+f_{r+1}+\cdots(fif_i は ii 次の斉次式、fr≠0f_r\neq0)に分けたときの、最低次の部分 frf_r に表れます。fr=0f_r=0 が定める原点を通る直線の和集合が接錐でした(第6回の定義14)。

y2−x2(x+1)=(y−x)(y+x)⏟f2−x3y2−x3=y2⏟f2−x3\begin{aligned} y^2-x^2(x+1)&=\underbrace{(y-x)(y+x)}_{f_2}-x^3\\ y^2-x^3&=\underbrace{y^2}_{f_2}-x^3\end{aligned}

結節点の接錐は2本の直線 y=±xy=\pm x で、尖点の接錐は直線 y=0y=0 を2重に数えたものです。

結節点の2本の枝は、原点で違う向きに進んでいます。それでも平面の中では同じ点を通るので、交わってしまいます。そこで、点に「向き」の情報を足して、向きが違えば別の点とみなす空間を作ります。これがブローアップです。

この記事では、まず平面の原点でのブローアップを定義し、原点だけが射影直線 P1\mathbb{P}^1 に置き換わることを示します。次に、ブローアップが2枚の平面を貼り合わせたもので、その貼り合わせ方が第4回の P1\mathbb{P}^1 と同じ形であることを確かめます。最後に曲線の狭義変換を計算し、結節点の枝が分かれ、尖点が滑らかになる様子を、数式と立体図で見ます。

原点でのブローアップ

この記事では kk を代数閉体とし、ハーツホーンの第 I 章と同じく、多様体を点の集合として扱います。ハーツホーンの第 I 章は零点集合を VV ではなく ZZ と書きますが、この連載では VV のままにします。数を使った例は、標数0の体(例えば k=Ck=\mathbb{C})で計算します。

射影直線 P1\mathbb{P}^1 の点は、第4回の例10のあとで見た斉次座標で書きます。ただし平面の座標に x,yx,y を使うので、斉次座標の文字は [u0:u1][u_0:u_1] に変えます。u0≠0u_0\neq0 の点では u1/u0u_1/u_0(第4回の tt)、u1≠0u_1\neq0 の点では u0/u1u_0/u_1(第4回の ss)が座標です。

まず、平面と射影直線の積 A2×P1\mathbb{A}^2\times\mathbb{P}^1 の閉集合を決めます。点は組 ((x,y),[u0:u1])\bigl((x,y),[u_0:u_1]\bigr) です。

定義1 A2×P1\mathbb{A}^2\times\mathbb{P}^1 の閉集合 [1, §I.4, p.38]

多項式 F∈k[x,y,u0,u1]F\in k[x,y,u_0,u_1] が u0,u1u_0,u_1 について dd 次の斉次式であるとは、各項の u0,u1u_0,u_1 の次数の和がすべて dd であることをいう。このとき λ∈k\lambda\in k について

F(x,y,λu0,λu1)=λdF(x,y,u0,u1)\begin{aligned} &F(x,y,\lambda u_0,\lambda u_1)\\ &\quad=\lambda^dF(x,y,u_0,u_1) \end{aligned}

なので、FF が0になるかどうかは斉次座標の取り方によらない。そのような斉次式の集合 SS について、

V(S)={ ((a,b),[c0:c1])∈A2×P1∣F(a,b,c0,c1)=0 (F∈S) }\begin{aligned} &V(S)\\ &=\bigl\{\,\bigl((a,b),[c_0:c_1]\bigr)\in\mathbb{A}^2\times\mathbb{P}^1\\ &\quad\bigm|F(a,b,c_0,c_1)=0\ (F\in S)\,\bigr\} \end{aligned}

の形の集合を A2×P1\mathbb{A}^2\times\mathbb{P}^1 の閉集合と呼ぶ。

例えば V(u0)V(u_0) は A2×{[0:1]}\mathbb{A}^2\times\{[0:1]\} で、V(x,y)V(x,y) は {O}×P1\{O\}\times\mathbb{P}^1 です。u0+xu_0+x は斉次式ではないので、これだけでは閉集合を定めません。点 ((1,0),[1:1])=((1,0),[−1:−1])\bigl((1,0),[1:1]\bigr)=\bigl((1,0),[-1:-1]\bigr) で、代入した値が 22 と 00 に分かれてしまうからです。

定義2 原点でのブローアップ [1, §I.4, p.38]

A2×P1\mathbb{A}^2\times\mathbb{P}^1 の閉集合

A~2=V(xu1−yu0)={ ((x,y),[u0:u1])∣xu1=yu0 }\begin{aligned} \widetilde{\mathbb{A}}^2&=V(xu_1-yu_0)\\ &=\bigl\{\,\bigl((x,y),[u_0:u_1]\bigr)\\ &\qquad\quad\bigm|xu_1=yu_0\,\bigr\} \end{aligned}

を、A2\mathbb{A}^2 の原点 O=(0,0)O=(0,0) でのブローアップと呼ぶ。第1成分への写像を π ⁣:A~2→A2\pi\colon\widetilde{\mathbb{A}}^2\to\mathbb{A}^2、((x,y),[u0:u1])↦(x,y)\bigl((x,y),[u_0:u_1]\bigr)\mapsto(x,y) と書き、E=π−1(O)E=\pi^{-1}(O) を例外曲線と呼ぶ。

ハーツホーンはブローアップを XX、写像を φ\varphi と書いています。An\mathbb{A}^n の原点でのブローアップも同じ形の式 xiyj=xjyix_iy_j=x_jy_i で定義していて、n=2n=2 としたものがこの定義です。

式 xu1=yu0xu_1=yu_0 は、2つのベクトル (x,y)(x,y) と (u0,u1)(u_0,u_1) が平行であること、つまり行列式が0であることを表しています。

xu1−yu0=det⁡(xyu0u1)=0xu_1-yu_0=\det\begin{pmatrix}x&y\\u_0&u_1\end{pmatrix}=0

[u0:u1][u_0:u_1] を「原点を通り、(u0,u1)(u_0,u_1) の向きに進む直線 LL」と読めば、A~2\widetilde{\mathbb{A}}^2 の点は「平面の点 PP と、PP を含み原点を通る直線 LL の組」です。

A~2={ (P,L)∣P∈L }L={ (λu0,λu1)∣λ∈k }\widetilde{\mathbb{A}}^2=\{\,(P,L)\mid P\in L\,\}\qquad L=\{\,(\lambda u_0,\lambda u_1)\mid\lambda\in k\,\}A~2={ (P,L)∣P∈L }L={ (λu0,λu1)∣λ∈k }\begin{gathered}\widetilde{\mathbb{A}}^2=\{\,(P,L)\mid P\in L\,\}\\L=\{\,(\lambda u_0,\lambda u_1)\mid\lambda\in k\,\}\end{gathered}A~2={ (P,L)∣P∈L }L={ (λu0,λu1)∣λ∈k }\begin{aligned}\widetilde{\mathbb{A}}^2 &= \{\,(P,L)\mid P\in L\,\}\\[4pt]L &= \{\,(\lambda u_0,\lambda u_1)\mid\lambda\in k\,\}\end{aligned}

例3 点の上にある点

(1) P=(2,6)P=(2,6) の上の点は、2u1=6u02u_1=6u_0 から u1=3u0u_1=3u_0 なので ((2,6),[1:3])\bigl((2,6),[1:3]\bigr) だけである。[1:3][1:3] は傾き 33 の直線 y=3xy=3x で、確かに PP を通る。

(2) P=(−1,2)P=(-1,2) の上の点は、−u1=2u0-u_1=2u_0 から ((−1,2),[1:−2])\bigl((-1,2),[1:-2]\bigr) だけである。

(3) P=(0,5)P=(0,5) の上の点は、0⋅u1=5u00\cdot u_1=5u_0 から u0=0u_0=0 なので ((0,5),[0:1])\bigl((0,5),[0:1]\bigr) だけである。[0:1][0:1] は縦の直線 x=0x=0 で、傾きをもたない。

(4) P=OP=O の上では、式は 0=00=0 になり、すべての [u0:u1][u_0:u_1] について (O,[u0:u1])∈A~2\bigl(O,[u_0:u_1]\bigr)\in\widetilde{\mathbb{A}}^2 である。

例の (1)〜(3) では点がちょうど1つ、(4) では P1\mathbb{P}^1 がまるごと乗っています。一般に次が成り立ちます。

命題4 [1, §I.4 (1)(2)(3), p.38–39]

(1) P=(a,b)≠OP=(a,b)\neq O なら、π−1(P)={((a,b),[a:b])}\pi^{-1}(P)=\bigl\{\bigl((a,b),[a:b]\bigr)\bigr\} はただ1点である。

(2) E=π−1(O)={O}×P1E=\pi^{-1}(O)=\{O\}\times\mathbb{P}^1 である。

(3) π\pi は A~2∖E\widetilde{\mathbb{A}}^2\setminus E から A2∖{O}\mathbb{A}^2\setminus\{O\} への全単射で、逆写像は (a,b)↦((a,b),[a:b])(a,b)\mapsto\bigl((a,b),[a:b]\bigr) である。

証明
  1. (1) を示す。((a,b),[u0:u1])∈A~2\bigl((a,b),[u_0:u_1]\bigr)\in\widetilde{\mathbb{A}}^2 は au1=bu0au_1=bu_0 と同値で、これは (u0,u1)(u_0,u_1) が (a,b)(a,b) の定数倍であることと同値である。

    a≠0a\neq0 とする。u1=(b/a)u0u_1=(b/a)u_0 となる。u0=0u_0=0 なら u1=0u_1=0 で斉次座標にならないので u0≠0u_0\neq0 で、

    [u0:u1]=[u0:(b/a)u0]=[1:b/a]=[a:b][u_0:u_1]=[u_0:(b/a)u_0]=[1:b/a]=[a:b][u0:u1]=[u0:(b/a)u0]=[1:b/a]=[a:b]\begin{aligned}[u_0:u_1] &= [u_0:(b/a)u_0]\\&= [1:b/a]\\&= [a:b]\end{aligned}

    b≠0b\neq0 のときも、aa と bb の役割を入れ替えて同じように [u0:u1]=[a:b][u_0:u_1]=[a:b] となる。逆に [a:b][a:b] は ab=baab=ba なので式をみたす。

  2. (2) を示す。a=b=0a=b=0 なら式は 0=00=0 で、どの [u0:u1][u_0:u_1] でも成り立つ。
  3. (3) は (1) から従う。A2∖{O}\mathbb{A}^2\setminus\{O\} の各点の上に、A~2∖E\widetilde{\mathbb{A}}^2\setminus E の点がちょうど1つある。

(2) の EE の点 [u0:u1][u_0:u_1] は、原点を通る直線と1対1に対応しています。ハーツホーンは、原点を通る直線 LL について、L∖{O}L\setminus\{O\} の逆像の閉包が EE とちょうど点 [u0:u1][u_0:u_1] で交わることを示しています[1, §I.4 (3), p.38–39]。これは後の例10で計算します。

y=2xy=2x
y=xy=x
y=0y=0
y=−xy=-x
x=0x=0
OO
平面 A2\mathbb{A}^2 の、原点を通る直線
m=2m=2:[1:2][1:2]
m=1m=1:[1:1][1:1]
m=0m=0:[1:0][1:0]
m=−1m=-1:[1:−1][1:-1]
[0:1][0:1]
例外曲線 E≅P1E\cong\mathbb{P}^1
傾き
図1具体例左は平面の、原点を通る直線です。直線 y=axy=ax は例外曲線 EE の点 [1:a][1:a](傾き m=am=a)に、縦の直線 x=0x=0 は点 [0:1][0:1] に対応します。右の縦の線が EE で、同じ色の点が同じ直線を表します。破線は結節点 y2=x2(x+1)y^2=x^2(x+1) で、原点での2本の枝はオレンジの y=xy=x と緑の y=−xy=-x に接しています。ブローアップすると、この2本の枝は EE の点 m=1m=1 と m=−1m=-1 を通るようになります。

2枚の平面を貼り合わせた曲面

A~2\widetilde{\mathbb{A}}^2 を、P1\mathbb{P}^1 の2つの座標に合わせて2つに分けます。

W0=A~2∩{u0≠0}W1=A~2∩{u1≠0}A~2=W0∪W1W_0=\widetilde{\mathbb{A}}^2\cap\{u_0\neq0\}\qquad W_1=\widetilde{\mathbb{A}}^2\cap\{u_1\neq0\}\qquad \widetilde{\mathbb{A}}^2=W_0\cup W_1W0=A~2∩{u0≠0}W1=A~2∩{u1≠0}A~2=W0∪W1\begin{gathered}W_0=\widetilde{\mathbb{A}}^2\cap\{u_0\neq0\}\\W_1=\widetilde{\mathbb{A}}^2\cap\{u_1\neq0\}\\\widetilde{\mathbb{A}}^2=W_0\cup W_1\end{gathered}W0=A~2∩{u0≠0}W1=A~2∩{u1≠0}A~2=W0∪W1\begin{aligned}W_0 &= \widetilde{\mathbb{A}}^2\cap\{u_0\neq0\}\\[4pt]W_1 &= \widetilde{\mathbb{A}}^2\cap\{u_1\neq0\}\\[4pt]\widetilde{\mathbb{A}}^2 &= W_0\cup W_1\end{aligned}

W0W_0 では m=u1/u0m=u_1/u_0 が決まり、式 xu1=yu0xu_1=yu_0 を u0u_0 で割ると y=mxy=mx になります。mm は、点 PP と原点を結ぶ直線の傾きです。同じように W1W_1 では n=u0/u1n=u_0/u_1 が決まり、式は x=nyx=ny になります。

命題5 ブローアップのチャート

(1) W0→A2W_0\to\mathbb{A}^2、((x,y),[u0:u1])↦(x,m)\bigl((x,y),[u_0:u_1]\bigr)\mapsto(x,m)(m=u1/u0m=u_1/u_0)は全単射で、逆写像は (x,m)↦((x,mx),[1:m])(x,m)\mapsto\bigl((x,mx),[1:m]\bigr) である。同じく W1→A2W_1\to\mathbb{A}^2、((x,y),[u0:u1])↦(n,y)\bigl((x,y),[u_0:u_1]\bigr)\mapsto(n,y)(n=u0/u1n=u_0/u_1)は全単射で、逆写像は (n,y)↦((ny,y),[n:1])(n,y)\mapsto\bigl((ny,y),[n:1]\bigr) である。

(2) この座標で、π\pi は (x,m)↦(x,mx)(x,m)\mapsto(x,mx)、(n,y)↦(ny,y)(n,y)\mapsto(ny,y) と書け、EE は W0W_0 では x=0x=0、W1W_1 では y=0y=0 で定まる。

(3) 重なり W0∩W1W_0\cap W_1 は、W0W_0 では m≠0m\neq0、W1W_1 では n≠0n\neq0 の部分で、座標は次のように移り合う。

n=1my=mxn=\frac1m\qquad y=mxn=1my=mx\begin{gathered}n=\frac1m\\y=mx\end{gathered}n=1my=mx\begin{aligned}n &= \frac1m\\[4pt]y &= mx\end{aligned}

逆向きは m=1/nm=1/n、x=nyx=ny である。

証明
  1. (1) を W0W_0 について示す。u0≠0u_0\neq0 なら [u0:u1]=[1:m][u_0:u_1]=[1:m] で、式 xu1=yu0xu_1=yu_0 は y=mxy=mx になる。よって点は (x,m)(x,m) で決まり、どの (x,m)(x,m) にも点 ((x,mx),[1:m])\bigl((x,mx),[1:m]\bigr) がある。W1W_1 も同じ。
  2. (2) は (1) の逆写像の第1成分を読めばよい。EE は (x,y)=(0,0)(x,y)=(0,0) の部分で、W0W_0 では y=mxy=mx なので x=0x=0 だけで決まる。
  3. (3) を示す。u0u1≠0u_0u_1\neq0 の点では n=u0/u1=1/mn=u_0/u_1=1/m で、y=mxy=mx と x=nyx=ny は同じ式である。

W0W_0 と W1W_1 はどちらも平面 A2\mathbb{A}^2 と同じ形で、A~2\widetilde{\mathbb{A}}^2 はこの2枚の平面を貼り合わせたものです。点の座標を両方のチャートで並べてみます。

例6 2つのチャートの座標

A~2\widetilde{\mathbb{A}}^2 の点W0W_0 の座標 (x,m)(x,m)W1W_1 の座標 (n,y)(n,y)
((2,6),[1:3])\bigl((2,6),[1:3]\bigr)(2,3)(2,3)(1/3,6)(1/3,6)
((−1,2),[1:−2])\bigl((-1,2),[1:-2]\bigr)(−1,−2)(-1,-2)(−1/2,2)(-1/2,2)
((3,0),[1:0])\bigl((3,0),[1:0]\bigr)(3,0)(3,0)なし
((0,5),[0:1])\bigl((0,5),[0:1]\bigr)なし(0,5)(0,5)
(O,[1:1])\bigl(O,[1:1]\bigr)(0,1)(0,1)(1,0)(1,0)
(O,[2:1])\bigl(O,[2:1]\bigr)(0,1/2)(0,1/2)(2,0)(2,0)

両方の座標がある行では n=1/mn=1/m、x=nyx=ny が成り立つ(例えば1行目は 1/3=1/31/3=1/3、2=(1/3)⋅62=(1/3)\cdot6)。下の2行は EE の点で、W0W_0 では x=0x=0、W1W_1 では y=0y=0 である。

この貼り合わせを環で書くと、第4回の例10の P1\mathbb{P}^1 の貼り合わせと同じ形をしています。W0W_0 の関数の環を k[x,m]k[x,m]、W1W_1 の関数の環を k[n,y]k[n,y] とすると、重なりの部分は D(m)D(m) と D(n)D(n) で、(3) の座標の移り方は次の環の同型で表されます。

k[n,y,1/n]→ ≅ k[x,m,1/m]n⟼1my⟼mxk[n,y,1/n]\xrightarrow{\ \cong\ }k[x,m,1/m]\qquad n\longmapsto\frac1m\quad y\longmapsto mxk[n,y,1/n]→ ≅ k[x,m,1/m]n⟼1my⟼mx\begin{gathered}k[n,y,1/n]\xrightarrow{\ \cong\ }k[x,m,1/m]\\n\longmapsto\frac1m\\y\longmapsto mx\end{gathered}

逆向きは m↦1/nm\mapsto1/n、x↦nyx\mapsto ny です。y↦mx↦(1/n)(ny)=yy\mapsto mx\mapsto(1/n)(ny)=y と戻るので、確かに互いに逆です。

P1\mathbb{P}^1 の貼り合わせ s↦1/ts\mapsto1/t と並べると、次の図式が可換になります。縦の矢印は t↦mt\mapsto m、s↦ns\mapsto n です。

k[s,1/s]→s↦1/tk[t,1/t]s↦n↓↓t↦mk[n,y,1/n]→n↦1/m, y↦mxk[x,m,1/m]\begin{CD} k[s,1/s] @>{s\mapsto1/t}>> k[t,1/t] \\ @V{s\mapsto n}VV @VV{t\mapsto m}V \\ k[n,y,1/n] @>>{n\mapsto1/m,\ y\mapsto mx}> k[x,m,1/m] \end{CD}

ss を右上から回すと s↦1/t↦1/ms\mapsto1/t\mapsto1/m、左下から回すと s↦n↦1/ms\mapsto n\mapsto1/m で一致します。

この図式は、A~2\widetilde{\mathbb{A}}^2 から P1\mathbb{P}^1 への写像 ((x,y),[u0:u1])↦[u0:u1]\bigl((x,y),[u_0:u_1]\bigr)\mapsto[u_0:u_1] が、チャートでは mm(=t=t)と nn(=s=s)を読む写像になることを表しています。A~2\widetilde{\mathbb{A}}^2 は、P1\mathbb{P}^1 の各点 [u0:u1][u_0:u_1] の上に、その向きの直線 LL を1本ずつ立てたものだと言えます。

もう少し詳しくチャートの閉集合は平面の閉集合

A~2\widetilde{\mathbb{A}}^2 には A2×P1\mathbb{A}^2\times\mathbb{P}^1 の閉集合から位相が入ります(閉集合は、A2×P1\mathbb{A}^2\times\mathbb{P}^1 の閉集合と A~2\widetilde{\mathbb{A}}^2 の共通部分)。W0=A~2∖V(u0)W_0=\widetilde{\mathbb{A}}^2\setminus V(u_0) なので、W0W_0 は開集合です。

命題5の座標 (x,m)(x,m) で、W0W_0 の閉集合は平面 A2\mathbb{A}^2 の閉集合とちょうど対応します。斉次式 FF に u0=1u_0=1、u1=mu_1=m、y=mxy=mx を代入すると (x,m)(x,m) の多項式になり、逆に (x,m)(x,m) の多項式 gg は、ee を gg の mm についての次数として次の斉次式で表せるからです。

F⟼F(x,mx,1,m)g(x,m)⟼u0 e g(x,u1/u0)F\longmapsto F(x,mx,1,m)\qquad g(x,m)\longmapsto u_0^{\,e}\,g\bigl(x,u_1/u_0\bigr)F⟼F(x,mx,1,m)g(x,m)⟼u0 e g(x,u1/u0)\begin{gathered}F\longmapsto F(x,mx,1,m)\\g(x,m)\longmapsto u_0^{\,e}\,g\bigl(x,u_1/u_0\bigr)\end{gathered}

例えば g=m2−x−1g=m^2-x-1 は u12−xu02−u02u_1^2-xu_0^2-u_0^2 になり、u0=1u_0=1、u1=mu_1=m で gg に戻ります。

命題7 [1, §I.4 (1)(4), p.38–39]

(1) π\pi は A~2∖E\widetilde{\mathbb{A}}^2\setminus E から A2∖{O}\mathbb{A}^2\setminus\{O\} への同型である。チャートでは、D(x)D(x) の上の逆写像が (x,y)↦(x, y/x)(x,y)\mapsto(x,\,y/x)、D(y)D(y) の上の逆写像が (x,y)↦(x/y, y)(x,y)\mapsto(x/y,\,y) で与えられる。

(2) A~2\widetilde{\mathbb{A}}^2 は既約で、次元は 22 である。

証明
  1. (1) を示す。まず W0W_0 は (x,m)(x,m) の平面 A2\mathbb{A}^2 と同型である。A2×P1\mathbb{A}^2\times\mathbb{P}^1 の開集合 u0≠0u_0\neq0 を、m=u1/u0m=u_1/u_0 を加えた座標 (x,y,m)(x,y,m) の空間 A3\mathbb{A}^3 と見ると、W0W_0 はその中の曲面 y=mxy=mx で、(x,y,m)↦(x,m)(x,y,m)\mapsto(x,m) とその逆 (x,m)↦(x,mx,m)(x,m)\mapsto(x,mx,m) はどちらも多項式で書けるからである。

    {u0≠0}⊆P1\{u_0\neq0\}\subseteq\mathbb{P}^1 は座標 mm で A1\mathbb{A}^1 と同型なので、A2×{u0≠0}\mathbb{A}^2\times\{u_0\neq0\} は A2×A1=A3\mathbb{A}^2\times\mathbb{A}^1=\mathbb{A}^3 と同じものになる。この見方は図2でも使っている。

    2つの写像は互いに逆である。(x,m)↦(x,mx,m)↦(x,m)(x,m)\mapsto(x,mx,m)\mapsto(x,m) で、曲面 y=mxy=mx の上では (x,y,m)↦(x,m)↦(x,mx,m)=(x,y,m)(x,y,m)\mapsto(x,m)\mapsto(x,mx,m)=(x,y,m) となる。

  2. この座標で W0∖EW_0\setminus E は D(x)D(x) で、π\pi は (x,m)↦(x,mx)(x,m)\mapsto(x,mx) と書ける。これは (x,y)(x,y) の平面の D(x)D(x) への写像で、逆写像 (x,y)↦(x,y/x)(x,y)\mapsto(x,y/x) の成分も D(x)D(x) の上の正則関数なので、π\pi は W0∖EW_0\setminus E から D(x)D(x) への同型である。

    互いに逆であることは、(x,m)↦(x,mx)↦(x,mx/x)=(x,m)(x,m)\mapsto(x,mx)\mapsto(x,mx/x)=(x,m)、(x,y)↦(x,y/x)↦(x,(y/x)x)=(x,y)(x,y)\mapsto(x,y/x)\mapsto\bigl(x,(y/x)x\bigr)=(x,y) から分かる。関数の環で見ると、k[x,y]xk[x,y]_x と k[x,m]xk[x,m]_x が y↦mxy\mapsto mx、m↦y/xm\mapsto y/x で同型になることに当たる。

    W1∖EW_1\setminus E と D(y)D(y) も同じで、D(x)∪D(y)=A2∖{O}D(x)\cup D(y)=\mathbb{A}^2\setminus\{O\} である。2つの逆写像は D(xy)D(xy) の上で一致する(どちらも点 PP を (P,[x:y])\bigl(P,[x:y]\bigr) に送る)ので、貼り合わせると A2∖{O}\mathbb{A}^2\setminus\{O\} 全体での逆写像になる。

  3. (2) の既約性を示す。W0,W1W_0,W_1 は、(1) の証明で見たとおり既約な A2\mathbb{A}^2 と同型な開集合で、共通部分 W0∩W1W_0\cap W_1 は空でない。このとき A~2=Z1∪Z2\widetilde{\mathbb{A}}^2=Z_1\cup Z_2(ZiZ_i は閉集合)なら、どちらかが全体になる。

    ここで位相空間が既約であるとは、空でなく、2つの閉集合の和に書けば必ずどちらかが全体になることをいう(第1回の定義13と同じ形)。A2=V(0)\mathbb{A}^2=V(0) は (0)(0) が素イデアルなので既約である(第1回の命題14)。

    W0=(Z1∩W0)∪(Z2∩W0)W_0=(Z_1\cap W_0)\cup(Z_2\cap W_0) で W0W_0 は既約なので、例えば W0⊆Z1W_0\subseteq Z_1 となる。すると Z1∩W1Z_1\cap W_1 は W1W_1 の閉集合で、空でない開集合 W0∩W1W_0\cap W_1 を含む。

    既約な空間の空でない開集合は、閉包が全体になる(そうでないと、閉包と開集合の補集合で2つに分かれる)。よって Z1∩W1=W1Z_1\cap W_1=W_1 で、Z1=A~2Z_1=\widetilde{\mathbb{A}}^2 である。

  4. 次元は、開被覆 {W0,W1}\{W_0,W_1\} について dim⁡A~2=max⁡(dim⁡W0,dim⁡W1)=dim⁡A2=2\dim\widetilde{\mathbb{A}}^2=\max(\dim W_0,\dim W_1)=\dim\mathbb{A}^2=2 となる [1, 演習1.10 (b), p.11; 1, 命題1.9, p.8]。

ハーツホーン自身は、(2) を「EE の各点が A~2∖E\widetilde{\mathbb{A}}^2\setminus E の部分集合(直線 LL の逆像)の閉包に入る」ことから示しています[1, §I.4 (4), p.39]。

チャート W0W_0 は、座標 (x,y,m)(x,y,m) の空間の曲面 y=mxy=mx として描けます。π\pi は (x,y,m)↦(x,y)(x,y,m)\mapsto(x,y) で、高さ mm を忘れる写像です。真上から見た影が、そのまま π\pi による像になります。

ドラッグで回せます

青い曲面が、ブローアップ A~2\widetilde{\mathbb{A}}^2 のチャート W0W_0(u0≠0u_0\neq0)です。座標 (x,y,m)(x,y,m) の空間の曲面 y=mxy=mx で、黒い縦の線(mm 軸)が例外曲線 EE です。高さ m=cm=c で切ると、切り口は直線 y=cxy=cx になります。床の影では原点で交わっていた直線が、高さ cc ごとに分かれて、EE の点 m=cm=c を通ります。

結節点 y2=x2(x+1)y^2=x^2(x+1) の点 (x,y)(x,y) を、高さ m=y/xm=y/x まで持ち上げた曲線(オレンジ)です。「真上」から見ると床の影と重なって自分と交わりますが、回すと、原点を通る2本の枝が高さ m=1m=1 と m=−1m=-1 に分かれ、EE と別々の点で交わります。「正面」から見ると (x,m)(x,m) の平面の放物線 m2=x+1m^2=x+1 です。

尖点 y2=x3y^2=x^3 を持ち上げた曲線(緑)は、点 (m2,m3,m)(m^2,m^3,m) の軌跡です。「真上」から見ると尖っていますが、「正面」から見ると放物線 x=m2x=m^2 で、尖りがありません。EE とは m=0m=0 の1点だけで、EE に接して交わります。

タクノード y2=x4y^2=x^4 の2本の枝 y=x2y=x^2(紫)と y=−x2y=-x^2(緑)は、m=xm=x と m=−xm=-x に持ち上がります。どちらも原点での接線が y=0y=0 なので、同じ点 m=0m=0 で EE と交わり、まだ交わったままです。「正面」から見ると2本の直線が交わる結節点です。

図2具体例チャート W0W_0 を、座標 (x,y,m)(x,y,m) の空間の曲面 y=mxy=mx(青)として描いた図です。黒い縦の線(mm 軸)が例外曲線 EE の W0W_0 の部分、床は平面 A2\mathbb{A}^2 です。カメラは正射影なので、「真上」から見ると高さ mm が消え、曲面の上の曲線はちょうど床の影(π\pi による像)に重なります。「正面」から見ると yy が消え、チャートの座標 (x,m)(x,m) の平面になります。回すと、真上からは1点に重なって見える点が、高さ mm で分かれます。ボタンで、曲線を持ち上げた様子を切り替えられます(ハーツホーンの図3(p.40)と同じ曲面です)。

もう一つの射 A~2→P1\widetilde{\mathbb{A}}^2\to\mathbb{P}^1、((x,y),[u0:u1])↦[u0:u1]((x,y),[u_0:u_1])\mapsto[u_0:u_1] を考えると、点 [u0:u1][u_0:u_1] の上には、その方向の原点を通る直線 xu1=yu0xu_1=yu_0 がまるごと乗ります。A~2\widetilde{\mathbb{A}}^2 は、P1\mathbb{P}^1 の各点にその点が表す直線を乗せた空間で、第11回ではこれを直線束 O(−1)\mathcal{O}(-1) の全空間として見直します(第11回の命題17)。

全変換と狭義変換

平面曲線をブローアップの中へ持ち上げます。原点以外では π\pi が同型なので、曲線の原点以外の部分はそのまま持ち上がります。問題は、原点の上にどの点を足すかです。

定義8 全変換と狭義変換 [1, §I.4 定義, p.39; 1, 例4.9.1, p.40]

C⊆A2C\subseteq\mathbb{A}^2 を原点 OO を通る閉集合とする。π−1(C)\pi^{-1}(C) を CC の全変換と呼ぶ。π−1(C∖{O})\pi^{-1}(C\setminus\{O\}) の A~2\widetilde{\mathbb{A}}^2 での閉包

C~=π−1(C∖{O})‾\widetilde C=\overline{\pi^{-1}(C\setminus\{O\})}C~=π−1(C∖{O})‾\begin{aligned}\widetilde C &= \overline{\pi^{-1}(C\setminus\{O\})}\end{aligned}

を CC の狭義変換と呼ぶ。

ハーツホーンの和訳は、全変換を「全逆像」、狭義変換を「強変換」と呼んでいます。CC が多様体のとき、ハーツホーンは C~\widetilde C を「CC の OO でのブローアップ」と呼んでいます。

全変換には EE がまるごと含まれます。CC が OO を通るので、π−1(C)⊇π−1(O)=E\pi^{-1}(C)\supseteq\pi^{-1}(O)=E だからです。狭義変換は、全変換から EE を取り除き、EE のうち曲線が近づいてくる点だけを戻したものです。

命題9 狭義変換の求め方

0でない f∈k[x,y]f\in k[x,y] が f(O)=0f(O)=0 をみたすとし、f=fr+fr+1+⋯+fdf=f_r+f_{r+1}+\cdots+f_d(fif_i は ii 次の斉次式、fr≠0f_r\neq0、r≥1r\geq1)と書く。C=V(f)C=V(f) とする。

(1) チャートで y=mxy=mx、x=nyx=ny を代入すると、次のように書ける。

f(x,mx)=xr g0(x,m)f(ny,y)=yr g1(n,y)f(x,mx)=x^r\,g_0(x,m)\qquad f(ny,y)=y^r\,g_1(n,y)f(x,mx)=xr g0(x,m)f(ny,y)=yr g1(n,y)\begin{gathered}f(x,mx)=x^r\,g_0(x,m)\\f(ny,y)=y^r\,g_1(n,y)\end{gathered}f(x,mx)=xr g0(x,m)f(ny,y)=yr g1(n,y)\begin{aligned}f(x,mx) &= x^r\,g_0(x,m)\\[4pt]f(ny,y) &= y^r\,g_1(n,y)\end{aligned} g0=∑i=rdxi−rfi(1,m)g1=∑i=rdyi−rfi(n,1)g_0=\sum_{i=r}^{d}x^{i-r}f_i(1,m)\qquad g_1=\sum_{i=r}^{d}y^{i-r}f_i(n,1)g0=∑i=rdxi−rfi(1,m)g1=∑i=rdyi−rfi(n,1)\begin{gathered}g_0=\sum_{i=r}^{d}x^{i-r}f_i(1,m)\\g_1=\sum_{i=r}^{d}y^{i-r}f_i(n,1)\end{gathered}g0=∑i=rdxi−rfi(1,m)g1=∑i=rdyi−rfi(n,1)\begin{aligned}g_0 &= \sum_{i=r}^{d}x^{i-r}f_i(1,m)\\[4pt]g_1 &= \sum_{i=r}^{d}y^{i-r}f_i(n,1)\end{aligned}

(2) C~∩W0=V(g0)\widetilde C\cap W_0=V(g_0)、C~∩W1=V(g1)\widetilde C\cap W_1=V(g_1) で、全変換は π−1(C)=E∪C~\pi^{-1}(C)=E\cup\widetilde C である。

(3) C~∩E={ (O,[u0:u1])∣fr(u0,u1)=0 }\widetilde C\cap E=\bigl\{\,\bigl(O,[u_0:u_1]\bigr)\bigm|f_r(u_0,u_1)=0\,\bigr\}。つまり C~\widetilde C は、接錐 V(fr)V(f_r) の直線の向きの点で EE と交わる。

証明
  1. (1) を示す。fif_i は ii 次の斉次式なので fi(x,mx)=xifi(1,m)f_i(x,mx)=x^if_i(1,m) で、和をとって xrx^r でくくればよい。W1W_1 も同じ。
  2. g0g_0 は xx で割り切れない。g0(0,m)=fr(1,m)g_0(0,m)=f_r(1,m) で、fr≠0f_r\neq0 なのでこれは0でない多項式である。

    fr=∑jcjxr−jyjf_r=\sum_jc_jx^{r-j}y^j と書くと fr(1,m)=∑jcjmjf_r(1,m)=\sum_jc_jm^j で、係数 cjc_j がすべて0でない限り0にならない。g1g_1 も同じで、g1(n,0)=fr(n,1)≠0g_1(n,0)=f_r(n,1)\neq0 である。

  3. (2) の W0W_0 の部分を示す。W0W_0 の点 (x,m)(x,m) で π(x,m)≠O\pi(x,m)\neq O となるのは x≠0x\neq0 のときなので、π−1(C∖{O})∩W0=V(g0)∖V(x)\pi^{-1}(C\setminus\{O\})\cap W_0=V(g_0)\setminus V(x) である。その閉包は V(g0)V(g_0) になる。

    x≠0x\neq0 では f(x,mx)=0  ⟺  g0(x,m)=0f(x,mx)=0\iff g_0(x,m)=0 なので、最初の等式が成り立つ。

    g0g_0 を既約多項式の積 h1⋯hsh_1\cdots h_s に分けると V(g0)=V(h1)∪⋯∪V(hs)V(g_0)=V(h_1)\cup\cdots\cup V(h_s) で、各 V(hj)V(h_j) は既約である(第1回の命題14)。x∤g0x\nmid g_0 なので hjh_j は xx の定数倍でなく、零点定理から V(hj)⊈V(x)V(h_j)\not\subseteq V(x) となる。

    よって V(hj)∖V(x)V(h_j)\setminus V(x) は既約な V(hj)V(h_j) の空でない開集合で、閉包は V(hj)V(h_j) 全体である。和をとって、V(g0)∖V(x)V(g_0)\setminus V(x) の閉包は V(g0)V(g_0)。開集合 W0W_0 の中の閉包は、A~2\widetilde{\mathbb{A}}^2 での閉包と W0W_0 の共通部分に等しい。

  4. 全変換は、W0W_0 では V(xrg0)=V(x)∪V(g0)=(E∩W0)∪(C~∩W0)V(x^rg_0)=V(x)\cup V(g_0)=(E\cap W_0)\cup(\widetilde C\cap W_0)。W1W_1 も同じなので π−1(C)=E∪C~\pi^{-1}(C)=E\cup\widetilde C。
  5. (3) を示す。E∩W0E\cap W_0 は x=0x=0 の部分なので、C~∩E∩W0\widetilde C\cap E\cap W_0 は g0(0,m)=fr(1,m)=0g_0(0,m)=f_r(1,m)=0 となる点 [1:m][1:m] である。W1W_1 では fr(n,1)=0f_r(n,1)=0 となる点 [n:1][n:1] で、frf_r が斉次式なので、まとめて fr(u0,u1)=0f_r(u_0,u_1)=0 と書ける。

    u0≠0u_0\neq0 なら fr(u0,u1)=u0 rfr(1,u1/u0)=u0 rfr(1,m)f_r(u_0,u_1)=u_0^{\,r}f_r(1,u_1/u_0)=u_0^{\,r}f_r(1,m) なので、fr(u0,u1)=0  ⟺  fr(1,m)=0f_r(u_0,u_1)=0\iff f_r(1,m)=0 である。

    直線 {(λu0,λu1)}\{(\lambda u_0,\lambda u_1)\} が V(fr)V(f_r) に含まれることは、fr(λu0,λu1)=λrfr(u0,u1)=0f_r(\lambda u_0,\lambda u_1)=\lambda^rf_r(u_0,u_1)=0 がすべての λ\lambda で成り立つこと、つまり fr(u0,u1)=0f_r(u_0,u_1)=0 と同値である。

ff が同じ既約因子を2回以上含まないとき、rr は原点での CC の重複度と呼ばれる数です[1, 演習5.3, p.49]。kk は代数閉体なので、frf_r は1次式 rr 個の積に分かれます。ハーツホーンは、その1次式を OO での接方向と呼んでいます。(3) は「狭義変換は、接方向に当たる EE の点を通る」と言い換えられます。

計算の手順をまとめると、y=mxy=mx を代入し、xx のべきを最大限くくり出して、残った因子 g0g_0 を見ます。xrx^r の部分が EE に、g0g_0 の部分が狭義変換に当たります。

f(x,mx)=xr⏟E⋅g0(x,m)⏟C~f(x,mx)=\underbrace{x^r}_{E}\cdot\underbrace{g_0(x,m)}_{\widetilde C}f(x,mx)=xr⏟E⋅g0(x,m)⏟C~\begin{aligned}f(x,mx) &= \underbrace{x^r}_{E}\cdot\underbrace{g_0(x,m)}_{\widetilde C}\end{aligned}

例10 原点を通る直線

(1) 直線 y=2xy=2x:f(x,mx)=mx−2x=x(m−2)f(x,mx)=mx-2x=x(m-2) なので、C~∩W0\widetilde C\cap W_0 は m=2m=2 である。W1W_1 では f(ny,y)=y(1−2n)f(ny,y)=y(1-2n) で、n=1/2n=1/2(=1/m=1/m)の同じ点になる。C~\widetilde C は EE と点 [1:2][1:2] で交わる。

(2) 直線 y=axy=ax:同じ計算で C~\widetilde C は m=am=a で、EE と点 [1:a][1:a] で交わる。例えば y=2xy=2x の点 (1,2)(1,2) と (−3,−6)(-3,-6) は、W0W_0 の点 (1,2)(1,2) と (−3,2)(-3,2) に持ち上がり、どちらも高さ m=2m=2 にある。

(3) 直線 x=0x=0:f(x,mx)=x=x⋅1f(x,mx)=x=x\cdot1 なので g0=1g_0=1 で、C~∩W0=∅\widetilde C\cap W_0=\varnothing。W1W_1 では f(ny,y)=ny=y⋅nf(ny,y)=ny=y\cdot n なので C~\widetilde C は n=0n=0 で、EE と点 [0:1][0:1] で交わる。

原点を通る2本の直線 y=axy=ax、y=bxy=bx(a≠ba\neq b)は原点で交わります。ところが狭義変換は m=am=a と m=bm=b で、もう交わりません。図2の最初の段階で、高さ m=cm=c で曲面を切った灰色の直線がこれです。

結節点の枝が分かれる

例11 結節点のブローアップ [1, 例4.9.1, p.39–41]

kk を標数が2でない代数閉体とし、C=V(f)C=V(f)、f=y2−x2(x+1)f=y^2-x^2(x+1) とする。

(1) f(x,mx)=x2(m2−x−1)f(x,mx)=x^2(m^2-x-1) で、狭義変換は C~=V(m2−x−1)⊆W0\widetilde C=V(m^2-x-1)\subseteq W_0 である。

(2) C~∩E\widetilde C\cap E は2点 m=1m=1 と m=−1m=-1 で、接線 y=xy=x、y=−xy=-x の傾きに当たる。

(3) C~\widetilde C は非特異で、m↦(m2−1,m)m\mapsto(m^2-1,m) によって直線 A1\mathbb{A}^1 と同型である。π\pi を C~\widetilde C に制限すると

m⟼(m2−1, m3−m)m\longmapsto(m^2-1,\ m^3-m)

となり、m=±1m=\pm1 の2点がともに OO に移る以外は1対1である。

証明
  1. (1) を示す。W0W_0 では (mx)2−x2(x+1)=x2(m2−x−1)(mx)^2-x^2(x+1)=x^2(m^2-x-1)。W1W_1 では f(ny,y)=y2(1−n2−n3y)f(ny,y)=y^2(1-n^2-n^3y) で、n=0n=0 を代入すると 1≠01\neq0 なので、C~\widetilde C は W1∖W0W_1\setminus W_0(n=0n=0 の部分)の点を含まない。
  2. (2) を示す。E∩W0E\cap W_0 は x=0x=0 なので m2=1m^2=1、つまり m=±1m=\pm1。標数が2でないので 1≠−11\neq-1 で、2点は異なる。
  3. (3) の非特異性を示す。g=m2−x−1g=m^2-x-1 とすると ∂g/∂x=−1\partial g/\partial x=-1 はどこでも0でないので、ヤコビの判定から C~\widetilde C のどの点も非特異である [1, §I.5 定義, p.42–43]。

    平面曲線 V(g)V(g)(gg は既約)の点 pp が非特異であるとは、(∂g/∂x(p), ∂g/∂m(p))≠(0,0)\bigl(\partial g/\partial x(p),\,\partial g/\partial m(p)\bigr)\neq(0,0) であることだった。ハーツホーンの定義では、ヤコビ行列の階数が 2−1=12-1=1 であることに当たる。gg は xx について1次なので既約である。

  4. g=0g=0 は x=m2−1x=m^2-1 と同値なので、C~\widetilde C は mm を座標とする直線と同型である。π(x,m)=(x,mx)\pi(x,m)=(x,mx) に代入すると (m2−1, m3−m)(m^2-1,\ m^3-m) を得る。

    π(m)=π(m′)\pi(m)=\pi(m') とすると m2=m′2m^2=m'^2 で、m(m2−1)=m′(m′2−1)m(m^2-1)=m'(m'^2-1)。m2≠1m^2\neq1 なら両辺を m2−1=m′2−1m^2-1=m'^2-1 で割って m=m′m=m'。m2=1m^2=1 なら像は (0,0)=O(0,0)=O である。

ハーツホーンの例4.9.1 は、P1\mathbb{P}^1 の斉次座標を t,ut,u と書き、ブローアップを xu=tyxu=ty で定めています。そのため、本の t=1t=1 のチャートがこの記事の W0W_0 に、本の uu が mm に当たり、本の「u=±1u=\pm1」はこの記事の m=±1m=\pm1 です。

持ち上げた点を、いくつか数で確かめます。CC の点 (x,y)(x,y) は、高さ m=y/xm=y/x の点に移ります。

mmC~\widetilde C の点 (x,y,m)(x,y,m)CC の点 (x,y)(x,y)m2=x+1m^2=x+1 の検算
22(3,6,2)(3,6,2)(3,6)(3,6)4=3+14=3+1
−2-2(3,−6,−2)(3,-6,-2)(3,−6)(3,-6)4=3+14=3+1
1/21/2(−3/4,−3/8,1/2)(-3/4,-3/8,1/2)(−3/4,−3/8)(-3/4,-3/8)1/4=−3/4+11/4=-3/4+1
00(−1,0,0)(-1,0,0)(−1,0)(-1,0)0=−1+10=-1+1
±1\pm1(0,0,±1)(0,0,\pm1)(0,0)(0,0)1=0+11=0+1

例えば (3,6)(3,6) は 62=36=32⋅46^2=36=3^2\cdot4 をみたす CC の点で、m=6/3=2m=6/3=2 です。最後の行の2点は EE の上にあり、どちらも OO に移ります。

第1回の例16では、この曲線の点を (t2−1, t3−t)(t^2-1,\ t^3-t) と書きました。y/x=(t3−t)/(t2−1)=ty/x=(t^3-t)/(t^2-1)=t なので、その媒介変数 tt は傾き mm そのものです。狭義変換 C~\widetilde C は、この tt を座標とする直線でした。

図2の「結節点」のボタンを押すと、C~\widetilde C の実数の点(オレンジ)と床の影 CC が出ます。「真上」から見ると C~\widetilde C は影と重なり、原点で自分と交わって見えます。回すと、原点を通る2本の枝は高さ m=1m=1 と m=−1m=-1 に分かれていて、EE と別々の点で交わっています。

もう少し詳しく標数2では枝が分かれない

標数2では −1=1-1=1 なので、接錐は y2−x2=(y+x)2y^2-x^2=(y+x)^2 となり、接方向は1つしかありません。この曲線は標数2では結節点ではなくなります。

ブローアップの計算はそのまま通り、C~=V(m2−x−1)\widetilde C=V(m^2-x-1) は非特異です(∂/∂x=−1\partial/\partial x=-1)。ただし EE との交わりは m2−1=(m+1)2=0m^2-1=(m+1)^2=0 で、1点 m=1m=1 だけになり、C~\widetilde C はそこで EE に接します。

尖点が滑らかになる

例12 尖点のブローアップ [1, 演習4.10, p.42]

kk を代数閉体とし(標数は何でもよい)、C=V(f)C=V(f)、f=y2−x3f=y^2-x^3 とする。

(1) f(x,mx)=x2(m2−x)f(x,mx)=x^2(m^2-x) で、狭義変換は C~=V(x−m2)⊆W0\widetilde C=V(x-m^2)\subseteq W_0 である。C~\widetilde C は非特異で、mm を座標とする直線と同型である。

(2) C~∩E\widetilde C\cap E は1点 m=0m=0 で、C~\widetilde C はそこで EE に接する。

(3) π\pi を C~\widetilde C に制限すると m↦(m2,m3)m\mapsto(m^2,m^3) で、これは C~\widetilde C から CC への全単射である。

証明
  1. (1) を示す。W0W_0 では m2x2−x3=x2(m2−x)m^2x^2-x^3=x^2(m^2-x)。W1W_1 では f(ny,y)=y2(1−n3y)f(ny,y)=y^2(1-n^3y) で、n=0n=0 で 1≠01\neq0 なので C~⊆W0\widetilde C\subseteq W_0。g=x−m2g=x-m^2 は ∂g/∂x=1≠0\partial g/\partial x=1\neq0 なので非特異で、x=m2x=m^2 と解ける。
  2. (2) を示す。E∩W0E\cap W_0 は x=0x=0 で、gg に代入すると −m2-m^2。これは m=0m=0 を2重根にもつので、交わりは1点で、そこで接する。
  3. (3) を示す。π(x,m)=(x,mx)\pi(x,m)=(x,mx) に x=m2x=m^2 を代入して (m2,m3)(m^2,m^3)。全単射であることは第1回の命題17と同じ計算(b≠0b\neq0 なら m=c/bm=c/b)で分かる。

C~\widetilde C を空間 (x,y,m)(x,y,m) の曲線として書くと、{(m2,m3,m)}\{(m^2,m^3,m)\} です。座標の順番を入れ替えれば、これは第1回のねじれ3次曲線 (t,t2,t3)(t,t^2,t^3) です。π\pi は高さ mm を忘れる写像なので、第1回の命題17の、ねじれ3次曲線の影が尖った曲線になるという話と同じことを見ています。

C~={(m2, m3, m)} → π  C={(m2, m3)}=V(y2−x3)m=2: (4,8,2)↦(4,8)\widetilde C=\{(m^2,\ m^3,\ m)\}\ \xrightarrow{\ \pi\ }\ C=\{(m^2,\ m^3)\}=V(y^2-x^3)\qquad m=2:\ (4,8,2)\mapsto(4,8)C~={(m2, m3, m)} → π  C={(m2, m3)}=V(y2−x3)m=2: (4,8,2)↦(4,8)\begin{gathered}\widetilde C=\{(m^2,\ m^3,\ m)\}\ \xrightarrow{\ \pi\ }\ C=\{(m^2,\ m^3)\}=V(y^2-x^3)\\m=2:\ (4,8,2)\mapsto(4,8)\end{gathered}C~={(m2, m3, m)} → π  C={(m2, m3)}=V(y2−x3)m=2: (4,8,2)↦(4,8)\begin{aligned}\widetilde C &= \{(m^2,\ m^3,\ m)\}\ \xrightarrow{\ \pi\ }\ C\\&= \{(m^2,\ m^3)\}\\&= V(y^2-x^3)\\[4pt]m &= 2:\ (4,8,2)\\&\mapsto (4,8)\end{aligned}

(4,8)(4,8) は 82=64=438^2=64=4^3 をみたす CC の点で、m=8/4=2m=8/4=2 です。

図2の「尖点」のボタンを押すと、C~\widetilde C(緑)が出ます。「真上」から見ると尖った影と重なりますが、「正面」から見ると放物線 x=m2x=m^2 で、尖りはありません。尖点の尖りは、滑らかな曲線を真上から見たときに、影にできるものです。

(3) の π ⁣:C~→C\pi\colon\widetilde C\to C は全単射ですが、同型ではありません[1, 演習4.10, p.42]。関数の環で見ると、CC の関数 x,yx,y は m2,m3m^2,m^3 に移り、C~\widetilde C の関数 mm は、CC の関数の引き戻しとしては得られないからです。

π# ⁣:k[x,y]/(y2−x3)⟶k[m]x↦m2,  y↦m3π#(k[x,y]/(y2−x3))=k[m2,m3]≠k[m]\pi^\#\colon k[x,y]/(y^2-x^3)\longrightarrow k[m]\qquad x\mapsto m^2,\ \ y\mapsto m^3\qquad \pi^\#\bigl(k[x,y]/(y^2-x^3)\bigr)=k[m^2,m^3]\neq k[m]π# ⁣:k[x,y]/(y2−x3)⟶k[m]x↦m2,  y↦m3π#(k[x,y]/(y2−x3))=k[m2,m3]≠k[m]\begin{gathered}\pi^\#\colon k[x,y]/(y^2-x^3)\longrightarrow k[m]\\x\mapsto m^2,\ \ y\mapsto m^3\\\pi^\#\bigl(k[x,y]/(y^2-x^3)\bigr)=k[m^2,m^3]\neq k[m]\end{gathered}π# ⁣:k[x,y]/(y2−x3)⟶k[m]x↦m2,  y↦m3π#(k[x,y]/(y2−x3))=k[m2,m3]≠k[m]\begin{aligned}\pi^\#\colon k[x,y]/(y^2-x^3) &\longrightarrow k[m]\\[4pt]x &\mapsto m^2,\ \ y\\&\mapsto m^3\\[4pt]\pi^\#\bigl(k[x,y]/(y^2-x^3)\bigr) &= k[m^2,m^3]\\&\neq k[m]\end{aligned}

m=y/xm=y/x は、CC の上では原点で定義できない関数です。ブローアップは、この関数 y/xy/x を座標に加える操作だと言えます。

タクノードは2回で分かれる

接線が重なっている特異点では、1回のブローアップでは足りないことがあります。

例13 タクノードのブローアップ [1, 演習5.6 (c), p.50–51]

kk を標数が2でない代数閉体とし、C=V(y2−x4)C=V(y^2-x^4) とする。CC は2本の放物線 y=x2y=x^2 と y=−x2y=-x^2 の和で、原点で同じ接線 y=0y=0 をもつ。

(1) f(x,mx)=x2(m2−x2)f(x,mx)=x^2(m^2-x^2) で、狭義変換は C~=V(m2−x2)⊆W0\widetilde C=V(m^2-x^2)\subseteq W_0、つまり (x,m)(x,m) の平面の2直線 m=xm=x、m=−xm=-x である。C~∩E\widetilde C\cap E は1点 m=0m=0 で、C~\widetilde C はそこに結節点をもつ。

(2) W0W_0(座標 (x,m)(x,m) の平面)の原点をもう一度ブローアップし、チャートで m=m′xm=m'x とおくと、C~\widetilde C の狭義変換は V(m′2−1)V(m'^2-1)、つまり交わらない2直線 m′=1m'=1、m′=−1m'=-1 である。これらは新しい例外曲線 E′E' と別々の点で交わる。

証明
  1. (1) を示す。m2x2−x4=x2(m2−x2)m^2x^2-x^4=x^2(m^2-x^2)。W1W_1 では f(ny,y)=y2(1−n4y2)f(ny,y)=y^2(1-n^4y^2) で、n=0n=0 で 11 なので C~⊆W0\widetilde C\subseteq W_0。EE との交わりは x=0x=0 を代入して m2=0m^2=0。
  2. m2−x2m^2-x^2 の最低次の部分は (m−x)(m+x)(m-x)(m+x) で、標数が2でないので2つの因子は異なる。よって C~\widetilde C の原点は、接線が2本ある特異点(結節点)である。
  3. (2) を示す。m=m′xm=m'x を代入すると m′2x2−x2=x2(m′2−1)m'^2x^2-x^2=x^2(m'^2-1)。もう一方のチャート x=n′mx=n'm では m2(1−n′2)m^2(1-n'^2) で、n′=0n'=0 で 11 なので新しい点はない。m′=±1m'=\pm1 は、標数が2でないので異なる。

枝ごとに追うと、y=x2y=x^2 は m=y/x=xm=y/x=x に、さらに m′=m/x=1m'=m/x=1 に移ります。y=−x2y=-x^2 は m=−xm=-x を経て m′=−1m'=-1 に移ります。2本の枝は、1回目のブローアップでは接線の向き(どちらも傾き0)が同じなので分かれず、2回目で「曲がり方」の違い ±1\pm1 によって分かれます。

y=±x2 ←  π   m=±x ←  π′   m′=±1y=\pm x^2\ \xleftarrow{\ \ \pi\ \ }\ m=\pm x\ \xleftarrow{\ \ \pi'\ \ }\ m'=\pm1y=±x2 ←  π   m=±x ←  π′   m′=±1\begin{aligned}y &= \pm x^2\ \xleftarrow{\ \ \pi\ \ }\ m\\&= \pm x\ \xleftarrow{\ \ \pi'\ \ }\ m'\\&= \pm1\end{aligned}
A2\mathbb{A}^2:y2=x4y^2=x^4
xx
yy
y=mxy=mx:m2=x2m^2=x^2
xx
mm
m=m′xm=m'x:m′2=1m'^2=1
xx
m′m'
EE
E′E'
π\pi
π′\pi'
図3具体例タクノード y2=x4y^2=x^4 の2本の枝 y=x2y=x^2(紫)と y=−x2y=-x^2(緑)を、2回ブローアップした様子です。各段階は (x,s)↦(x,sx)(x,s)\mapsto(x,sx) で左の段階に移ります(図を作るプログラムで、各点が左の曲線に移ることを検算しています)。真ん中では2本はまだ原点(EE の点 m=0m=0)で交わっていて、右では平行な2直線になって、新しい例外曲線 E′E' と別々の点 m′=±1m'=\pm1 で交わります。

図2の「タクノード」のボタンでは、1回目の持ち上げを立体で見られます。2本の枝は EE の同じ点 m=0m=0 を通り、回してもまだ交わったままです。

ハーツホーンの演習5.6 (c) は、別の式で書かれたタクノード(和訳では「接触節点」)について、同じことを問うています。

ブローアップと特異点の解消

結節点・尖点は1回、タクノードは2回のブローアップで、狭義変換が非特異になりました。ハーツホーンの演習5.6 (a) は、演習5.1 の結節点と尖点の狭義変換が非特異になることを問うています。(b) は一般の結節点について、その上の点が狭義変換の異なる2つの非特異点になることを問うています[1, 演習5.6, p.50]。

平面曲線の特異点は、点でのブローアップを有限回くり返せば、いつでも解消できることが知られています[1, 演習5.6 の注意, p.51]。

専門的な話イデアルによるブローアップと普遍性

ハーツホーンは第 II 章で、スキーム XX とイデアル層 J\mathcal{J} について、次数付き環の層 ⨁d≥0Jd\bigoplus_{d\geq0}\mathcal{J}^d の Proj として、一般のブローアップを定義しています[1, §II.7 定義, p.221–222]。

X=A2X=\mathbb{A}^2、J\mathcal{J} を原点のイデアル J=(x,y)J=(x,y) とすると、次数付き環の全射 k[x,y][u0,u1]→⨁dJdk[x,y][u_0,u_1]\to\bigoplus_dJ^d(u0↦xu_0\mapsto x、u1↦yu_1\mapsto y、次数1の元)の核は xu1−yu0xu_1-yu_0 で生成されます(核に入ることは、xu1−yu0xu_1-yu_0 が xy−yx=0xy-yx=0 に移ることから分かります)。こうして Proj は、この記事の定義と同じものになります[1, 例7.12.1, p.222]。

ブローアップの上では、原点のイデアルが局所的に1つの元で生成されます。

W0: (x, y)=(x, mx)=(x)W1: (x, y)=(ny, y)=(y)W_0:\ (x,\ y)=(x,\ mx)=(x)\qquad W_1:\ (x,\ y)=(ny,\ y)=(y)W0: (x, y)=(x, mx)=(x)W1: (x, y)=(ny, y)=(y)\begin{gathered}W_0:\ (x,\ y)=(x,\ mx)=(x)\\W_1:\ (x,\ y)=(ny,\ y)=(y)\end{gathered}W0: (x, y)=(x, mx)=(x)W1: (x, y)=(ny, y)=(y)\begin{aligned}W_0:\ (x,\ y) &= (x,\ mx)\\&= (x)\\[4pt]W_1:\ (x,\ y) &= (ny,\ y)\\&= (y)\end{aligned}

例外曲線 EE が、チャートごとに1つの式 x=0x=0、y=0y=0 で定まるということです。ブローアップは、この性質をもつ射のうちで最も普遍的なものです。射 f ⁣:Z→Xf\colon Z\to X で、J\mathcal{J} の引き戻しが生成するイデアル層が可逆層になるものは、すべて π\pi を一意的に経由します[1, 命題7.14, p.223]。

狭義変換も同じ枠組みで定義され、点でのブローアップが An\mathbb{A}^n への埋め込み方によらないことが分かります[1, 定義と例7.15.1, p.225]。

専門的な話高い次元の特異点の解消

曲面の特異点も、ブローアップでほどけることがあります。例えば、非特異な平面曲線 Y⊆P2Y\subseteq\mathbb{P}^2(次数 >1>1)の上の錐を頂点でブローアップすると非特異になり、頂点の上には YY と同型な曲線が乗ります[1, 演習5.7, p.51]。

一般の次元では、広中平祐が、標数0の体の上の多様体の特異点が、非特異な部分多様体に沿ったブローアップをくり返して解消できることを証明しました[2]。ハーツホーンも、この論文で使われるのが特別な部分多様体に沿ったブローアップだけであることに触れています[1, 注意7.17.2, p.228]。

まとめ:狭義変換の表

曲線 CC接錐 frf_rf(x,mx)f(x,mx)C~∩E\widetilde C\cap EC~\widetilde C
直線 y=2xy=2xy−2xy-2xx(m−2)x(m-2)1点 m=2m=2直線 m=2m=2
結節点 y2=x2(x+1)y^2=x^2(x+1)(y−x)(y+x)(y-x)(y+x)x2(m2−x−1)x^2(m^2-x-1)2点 m=±1m=\pm1非特異(≅A1\cong\mathbb{A}^1)
尖点 y2=x3y^2=x^3y2y^2x2(m2−x)x^2(m^2-x)1点 m=0m=0(接する)非特異(≅A1\cong\mathbb{A}^1)
タクノード y2=x4y^2=x^4y2y^2x2(m2−x2)x^2(m^2-x^2)1点 m=0m=0結節点が残る(もう1回で2直線)

xx のべき rr は原点での重複度で、C~\widetilde C と EE の交わりは接錐の向きの点です。結節点とタクノードの行は標数2でない体での値で、尖点の行はどの標数でも成り立ちます。

ブローアップは、原点だけを、原点を通る直線の向き全体 P1\mathbb{P}^1 に取り替える操作でした。向きの違う枝は EE の別の点を通るので分かれ、尖点の尖りは、滑らかな曲線を真上から見た影だったことが分かります。

次回:族とファイバー

π ⁣:A~2→A2\pi\colon\widetilde{\mathbb{A}}^2\to\mathbb{A}^2 の、点ごとの逆像 π−1(P)\pi^{-1}(P) を思い出してください。P≠OP\neq O では1点で、P=OP=O では P1\mathbb{P}^1 がまるごと乗っていました。射の点ごとの逆像をファイバーと呼び、点 PP を動かしたファイバーの集まりを「族」として見ることができます。

次回は、スキームの射とファイバーを定義し、方程式のパラメータ tt を動かすと形が変わる族(xy=txy=t など)を見ます。

参考文献

  1. R. ハーツホーン(高橋宣能・松下大介 訳), 『代数幾何学 1』, 丸善出版, 2013.
  2. H. Hironaka, Resolution of singularities of an algebraic variety over a field of characteristic zero. I, II, Annals of Mathematics 79, 1964.