数学ビジュアライズ

代数幾何図で読む代数幾何第19回

直線を点とみなす空間:グラスマン多様体

ℙ³ の直線を、2点を並べた行列の小行列式6個(プリュッカー座標)で ℙ⁵ の点として表すと、その全体は2次超曲面 G(2,4) になります。2本の直線が交わる条件を座標の式で書き、一般の位置にある4本の直線のすべてと交わる直線がちょうど2本あることを、回せる立体図で確かめます。

目次
  1. 前回の宿題
  2. 直線全体を点として扱う
  3. の直線とプリュッカー座標
  4. プリュッカー関係式とグラスマン多様体
  5. 2本の直線が交わる条件
  6. 4本の直線と交わる直線
  7. まとめ:直線を点とみなす
  8. 次回:3次曲面の上の27本の直線
  9. 参考文献
この記事の要点
直線の空間
射影平面 P2\mathbb{P}^2 の直線 a0x0+a1x1+a2x2=0a_0x_0+a_1x_1+a_2x_2=0 は係数の比 [a0:a1:a2][a_0:a_1:a_2] で決まるので、直線全体はもう1つの射影平面 (P2)∗(\mathbb{P}^2)^* になります。P3\mathbb{P}^3 の直線全体も、同じように1つの多様体になります。
プリュッカー座標
P3\mathbb{P}^3 の直線の上の2点を並べた 2×42\times4 行列から、2×22\times2 の小行列式を6個とり、[p01:p02:p03:p12:p13:p23]∈P5[p_{01}:p_{02}:p_{03}:p_{12}:p_{13}:p_{23}]\in\mathbb{P}^5 とします。2点の選び方を変えても、この点は変わりません。
グラスマン多様体
こうして得られる点は、ちょうど2次の式 p01p23−p02p13+p03p12=0p_{01}p_{23}-p_{02}p_{13}+p_{03}p_{12}=0 をみたす点です。P3\mathbb{P}^3 の直線全体は、P5\mathbb{P}^5 の中の4次元の2次超曲面 G(2,4)G(2,4) と1対1に対応します。
4本の直線
2本の直線が交わる条件は、プリュッカー座標の1次の式で書けます。代数閉体の上では、一般の位置にある4本の直線のすべてと交わる直線は、ちょうど2本です。3本と交わる直線が2次曲面を埋め尽くし、4本目がその曲面を2点で貫くからです。
  • 証明は、ステップの流れだけを短く書いています。「詳しく」の付いた行をクリックすると、そのステップの詳しい説明が開きます。説明の中にも開ける行があります。
  • 定義・命題・定理には、記事全体で通し番号を振っています。
  • もう少し詳しくは補足、専門的な話は先の回につながる話題です。どちらも開かずに読み進められます。
  • 各ブロックの「AIに質問」を押すと、その部分の内容を入れた質問文で、お使いのAIを開けます。

前回の宿題

第18回では、次数 dd の単項式をすべて並べる写像(ヴェロネーゼ埋め込み)で、P1\mathbb{P}^1 や P2\mathbb{P}^2 をもっと大きな射影空間に埋め込みました。P1\mathbb{P}^1 の像が有理正規曲線で、d=2d=2 なら円錐曲線、d=3d=3 ならねじれ3次曲線です。

第18回の最後では、P3\mathbb{P}^3 の直線全体の空間を扱うと予告しました。直線を1つの点とみなすと、その全体がプリュッカー座標で P5\mathbb{P}^5 の2次曲面になる、という話です。

この記事では、まず P2\mathbb{P}^2 の直線全体が射影平面になることを確かめます。次に P3\mathbb{P}^3 の直線にプリュッカー座標を定め、その全体が2次超曲面 G(2,4)G(2,4) になることを証明します。最後に、2本の直線が交わる条件を座標で書き、4本の直線のすべてと交わる直線がちょうど2本あることを、式と立体図で確かめます。

直線全体を点として扱う

この記事では、とくに断らない限り kk を体とし、多様体を点の集合として扱います。Pn\mathbb{P}^n の点は斉次座標 [x0:⋯:xn][x_0:\dots:x_n] で書きます。数を入れた例は、標数0の体(例えば k=Qk=\mathbb{Q} や C\mathbb{C})で計算します。

直線の集まりを1つの空間とみなす例は、すでに2回出てきました。第4回では、斉次座標 [x0:x1][x_0:x_1] が k2k^2 の原点を通る直線 {λ(x0,x1)}\{\lambda(x_0,x_1)\} と同じものだと見て、P1\mathbb{P}^1 の閉点を「原点を通る直線」と考えました(第4回の例10)。第7回のブローアップでは、原点の上に、原点を通る直線の向き全体 P1\mathbb{P}^1 を乗せました(第7回の命題4(2))。

今回は、原点を通るとは限らない直線の全体を考えます。まず射影平面の直線から始めます。

第5回で、P2\mathbb{P}^2 の直線を、0でない係数 α=(a0,a1,a2)\alpha=(a_0,a_1,a_2) の式 a0x0+a1x1+a2x2=0a_0x_0+a_1x_1+a_2x_2=0 で定めました(第5回の定義4)。α\alpha とその0でない定数倍は同じ直線を表すので、直線は係数の比 [a0:a1:a2][a_0:a_1:a_2] と1対1に対応します。

定義1 双対射影平面 [1, 演習7.3, p.75; 1, §II.6, p.176]

P2\mathbb{P}^2 の直線 a0x0+a1x1+a2x2=0a_0x_0+a_1x_1+a_2x_2=0 を、係数の比 [a0:a1:a2][a_0:a_1:a_2] と同一視する。こうして直線全体を射影平面とみなしたものを双対射影平面と呼び、(P2)∗(\mathbb{P}^2)^* と書く。

点 c=[c0:c1:c2]c=[c_0:c_1:c_2] が直線 [a0:a1:a2][a_0:a_1:a_2] に乗る条件は a0c0+a1c1+a2c2=0a_0c_0+a_1c_1+a_2c_2=0 です。この式は aa と cc について対称なので、点と直線の役割を入れ替えて読むこともできます。

命題2 点を通る直線の全体

c=[c0:c1:c2]c=[c_0:c_1:c_2] を P2\mathbb{P}^2 の点とする。cc を通る直線の全体は、(P2)∗(\mathbb{P}^2)^* の中の直線

{ [a0:a1:a2]∈(P2)∗∣ c0a0+c1a1+c2a2=0 }\begin{aligned} \bigl\{\,&[a_0:a_1:a_2]\in(\mathbb{P}^2)^*\\ &\bigm|\ c_0a_0+c_1a_1+c_2a_2=0\,\bigr\} \end{aligned}

である。P2\mathbb{P}^2 の相異なる2点 c,dc,d を通る直線はただ1本で、その係数は外積 c×dc\times d である。

証明
  1. 前半は、乗る条件 ∑aici=0\sum a_ic_i=0 を aa の1次式として読んだものである。c≠0c\neq0 なので、これは (P2)∗(\mathbb{P}^2)^* の直線を定める。
  2. 後半は、第5回の命題5で直線と点の役割を入れ替えたものである。c,dc,d を通る直線の係数 aa は a⋅c=a⋅d=0a\cdot c=a\cdot d=0 の解で、比例しない c,dc,d に対して解は c×dc\times d の定数倍に限る。

例えば点 P=(1,1)P=(1,1)、つまり [1:1:1][1:1:1] を通る直線の係数は、a0+a1+a2=0a_0+a_1+a_2=0 をみたします。a0≠0a_0\neq0 の直線は a0a_0 で割って 1+ux+vy=01+ux+vy=0 と書けるので、(P2)∗(\mathbb{P}^2)^* の座標 (u,v)=(a1/a0, a2/a0)(u,v)=(a_1/a_0,\ a_2/a_0) を使うと、条件は u+v+1=0u+v+1=0 になります。

y=1[−1:0:1]x=1[−1:1:0]x+y=2[−2:1:1]y=2x−1[−1:2:−1]x−2y+1=0[1:1:−2]y=1(u,v)=(0,−1)x=1(u,v)=(−1,0)x+y=2(u,v)=(−12,−12)y=2x−1(u,v)=(−2,1)x−2y+1=0(u,v)=(1,−2){}\begin{gathered} \begin{array}{ll} y=1 & [-1:0:1]\\ x=1 & [-1:1:0]\\ x+y=2 & [-2:1:1]\\ y=2x-1 & [-1:2:-1]\\ x-2y+1=0 & [1:1:-2] \end{array}\\[8pt] \begin{array}{ll} y=1 & (u,v)=(0,-1)\\ x=1 & (u,v)=(-1,0)\\ x+y=2 & (u,v)=(-\tfrac12,-\tfrac12)\\ y=2x-1 & (u,v)=(-2,1)\\ x-2y+1=0 & (u,v)=(1,-2) \end{array} \end{gathered}

どの (u,v)(u,v) も u+v+1=0u+v+1=0 をみたしています。2点 P=[1:1:1]P=[1:1:1] と R=[1:3:5]R=[1:3:5] を通る直線は、外積 (1,1,1)×(1,3,5)=(2,−4,2)(1,1,1)\times(1,3,5)=(2,-4,2) から 2−4x+2y=02-4x+2y=0、つまり y=2x−1y=2x-1 です。

xx
yy
y=1y=1
x=1x=1
x+y=2x+y=2
y=2x−1y=2x-1
x−2y+1=0x-2y+1=0
P=(1,1)P=(1,1)
平面の直線(PP を通る5本)
uu
vv
u+v+1=0u+v+1=0
(0,−1)(0,-1)
(−1,0)(-1,0)
(−12,−12)(-\tfrac{1}{2},-\tfrac{1}{2})
(−2,1)(-2,1)
(1,−2)(1,-2)
双対平面の点 (u,v)(u,v)
↔\leftrightarrow
図1具体例左は平面の点 P=(1,1)P=(1,1) を通る5本の直線、右は双対射影平面の座標 (u,v)(u,v) で、それぞれの直線を表す点です(直線 1+ux+vy=01+ux+vy=0 を点 (u,v)(u,v) で表します)。同じ色が同じ直線です。PP を通る直線はすべて、右の図の1本の直線 u+v+1=0u+v+1=0 に乗ります。原点を通る直線(a0=0a_0=0)は、右の図の座標では無限遠点になるので、ここでは描いていません。

第5回の命題5の外積の成分は、2つのベクトルを行に並べた 2×32\times3 行列の、2次の小行列式でした。

c×d=(det⁡(c1c2d1d2),−det⁡(c0c2d0d2),det⁡(c0c1d0d1))\begin{aligned} c\times d=\Bigl(&\det\begin{pmatrix}c_1&c_2\\ d_1&d_2\end{pmatrix},{}\\ &-\det\begin{pmatrix}c_0&c_2\\ d_0&d_2\end{pmatrix},{}\\ &\det\begin{pmatrix}c_0&c_1\\ d_0&d_1\end{pmatrix}\Bigr) \end{aligned}

「直線の上の2点を並べた行列の小行列式」で直線を表すという考え方を、次の節で P3\mathbb{P}^3 に使います。

P3\mathbb{P}^3 の直線とプリュッカー座標

P3\mathbb{P}^3 の点を [x0:x1:x2:x3][x_0:x_1:x_2:x_3] と書きます。P2\mathbb{P}^2 と同じく、P3\mathbb{P}^3 の点は k4k^4 の原点を通る直線です。そこで P3\mathbb{P}^3 の直線は、k4k^4 の原点を通る平面、つまり2次元の部分空間で定めます。

定義3 P3\mathbb{P}^3 の直線とねじれの位置

W⊆k4W\subseteq k^4 を2次元の部分空間とする。0でない x∈Wx\in W の比 [x][x] の全体 L={[x]∣x∈W∖{0}}L=\{[x]\mid x\in W\setminus\{0\}\} を P3\mathbb{P}^3 の直線と呼ぶ。WW の基底 u,vu,v をとると、LL は相異なる2点 [u],[v][u],[v] を通る直線で、その点は [λu+μv][\lambda u+\mu v]((λ,μ)≠(0,0)(\lambda,\mu)\neq(0,0))と書ける。交わらない2本の直線はねじれの位置にあると言う。

直線 L,ML,M の部分空間を W,W′W,W' とすると、LL と MM が交わることは W∩W′≠{0}W\cap W'\neq\{0\} と同じです。P2\mathbb{P}^2 の場合、k3k^3 の2つの2次元部分空間は必ず0でないベクトルを共有するので、2直線は必ず交わりました。k4k^4 の中では W∩W′={0}W\cap W'=\{0\}、つまり k4=W⊕W′k^4=W\oplus W' となることがあり、そのとき2本の直線はねじれの位置にあります。

この記事で何度も使う3本の直線を用意します。

L1 ⁣:x2=x3=0,W1=⟨(1,0,0,0), (0,1,0,0)⟩L2 ⁣:x0=x1=0,W2=⟨(0,0,1,0), (0,0,0,1)⟩L3 ⁣:x0=x2, x1=x3,W3=⟨(1,0,1,0), (0,1,0,1)⟩\begin{aligned} &L_1\colon x_2=x_3=0,{}\\ &\quad W_1=\langle(1,0,0,0),\ (0,1,0,0)\rangle\\[4pt] &L_2\colon x_0=x_1=0,{}\\ &\quad W_2=\langle(0,0,1,0),\ (0,0,0,1)\rangle\\[4pt] &L_3\colon x_0=x_2,\ x_1=x_3,{}\\ &\quad W_3=\langle(1,0,1,0),\ (0,1,0,1)\rangle\end{aligned}

W1∩W2={0}W_1\cap W_2=\{0\} は明らかです。W1∩W3W_1\cap W_3 の元は (s,t,s,t)(s,t,s,t) の形で、x2=x3=0x_2=x_3=0 から s=t=0s=t=0 になります。W2∩W3W_2\cap W_3 も同じなので、3本はどの2本もねじれの位置にあります。

直線を数で表すために、P2\mathbb{P}^2 の外積と同じく小行列式を使います。

定義4 プリュッカー座標 [2, Lecture 6]

LL を P3\mathbb{P}^3 の直線、u=(u0,u1,u2,u3)u=(u_0,u_1,u_2,u_3)、v=(v0,v1,v2,v3)v=(v_0,v_1,v_2,v_3) をその部分空間 WW の基底とする。u,vu,v を行とする 2×42\times4 行列の、第 ii 列と第 jj 列からなる小行列式を

pij=det⁡(uiujvivj)=uivj−ujvi(0≤i<j≤3)\begin{aligned} p_{ij}&=\det\begin{pmatrix}u_i&u_j\\ v_i&v_j\end{pmatrix}\\ &=u_iv_j-u_jv_i\\ &\qquad(0\leq i<j\leq3) \end{aligned}

とおく。6個の組 p(L)=[p01:p02:p03:p12:p13:p23]∈P5p(L)=[p_{01}:p_{02}:p_{03}:p_{12}:p_{13}:p_{23}]\in\mathbb{P}^5 を LL のプリュッカー座標と呼ぶ。

4つの列から2つを選ぶ方法は (42)=6\binom42=6 通りなので、座標は6個です。この定義が意味をもつには、6個が全部0にならないことと、基底の選び方によらないことを確かめる必要があります。

命題5

(1) pijp_{ij} のうち少なくとも1つは0でない。
(2) 基底を u′=g11u+g12vu'=g_{11}u+g_{12}v、v′=g21u+g22vv'=g_{21}u+g_{22}v(g=(gab)g=(g_{ab}) は正則な 2×22\times2 行列)に取り替えると、6個の pijp_{ij} はすべて det⁡g\det g 倍になる。
よって p(L)∈P5p(L)\in\mathbb{P}^5 は LL だけで決まる。

証明
  1. (1):u,vu,v は1次独立なので、2×42\times4 行列の階数は2である。階数2の行列には、1次独立な2つの列があり、その2列の小行列式は0でない。
  2. (2):u′,v′u',v' を並べた行列の第 i,ji,j 列は、もとの第 i,ji,j 列に左から gg を掛けたものである。行列式は積を保つので、小行列式は det⁡g\det g 倍になる。
    (ui′uj′vi′vj′)=(g11g12g21g22)(uiujvivj),pij′=det⁡g⋅pij\begin{aligned} &\begin{pmatrix}u'_i&u'_j\\ v'_i&v'_j\end{pmatrix}\\ &=\begin{pmatrix}g_{11}&g_{12}\\ g_{21}&g_{22}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}u_i&u_j\\ v_i&v_j\end{pmatrix},{}\\[4pt] &p'_{ij}=\det g\cdot p_{ij}\end{aligned}

    gg は正則なので det⁡g≠0\det g\neq0 で、斉次座標としては同じ点である。

例6 プリュッカー座標の計算

(1) L1L_1 は基底 (1,0,0,0),(0,1,0,0)(1,0,0,0),(0,1,0,0) から p(L1)=[1:0:0:0:0:0]p(L_1)=[1:0:0:0:0:0]、L2L_2 は p(L2)=[0:0:0:0:0:1]p(L_2)=[0:0:0:0:0:1] である。

(2) L3L_3 を基底 u=(1,0,1,0)u=(1,0,1,0)、v=(0,1,0,1)v=(0,1,0,1) で計算すると、

p01=1,  p02=0,  p03=1,  p12=0⋅0−1⋅1=−1,  p13=0,  p23=1p_{01}=1,\ \ p_{02}=0,\ \ p_{03}=1,\ \ p_{12}=0\cdot0-1\cdot1=-1,\ \ p_{13}=0,\ \ p_{23}=1p01=1,  p02=0,  p03=1,  p12=0⋅0−1⋅1=−1,  p13=0,  p23=1\begin{aligned}p_{01} &= 1,\ \ p_{02}\\&= 0,\ \ p_{03}\\&= 1,\ \ p_{12}\\&= 0\cdot0-1\cdot1\\&= -1,\ \ p_{13}\\&= 0,\ \ p_{23}\\&= 1\end{aligned}

で、p(L3)=[1:0:1:−1:0:1]p(L_3)=[1:0:1:-1:0:1] である。別の基底 u+v=(1,1,1,1)u+v=(1,1,1,1)、u−v=(1,−1,1,−1)u-v=(1,-1,1,-1) で計算すると (−2,0,−2,2,0,−2)(-2,0,-2,2,0,-2) になる。これはもとの座標の det⁡(111−1)=−2\det\begin{pmatrix}1&1\\1&-1\end{pmatrix}=-2 倍なので、同じ点である。

(3) a,b,c,d∈ka,b,c,d\in k について、u=(1,0,a,b)u=(1,0,a,b)、v=(0,1,c,d)v=(0,1,c,d) が張る直線は

p=[ 1:c:d:−a:−b:ad−bc ]p=[\,1:c:d:-a:-b:ad-bc\,]p=[ 1:c:d:−a:−b:ad−bc ]\begin{aligned}p &= [\,1:c:d:-a:-b:ad-bc\,]\end{aligned}

(3) の6個の座標を、選んだ2列ごとに図にしておきます。後で使うので、補い合う2列の組({0,1}\{0,1\} と {2,3}\{2,3\} など)を縦に並べました。

(uv)=(10ab01cd)\begin{pmatrix}u\\ v\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1&0&a&b\\ 0&1&c&d\end{pmatrix}
p01=1p_{01}=1
p23=ad−bcp_{23}=ad-bc
+ p01p23+\,p_{01}p_{23}
=1⋅(ad−bc)=1\cdot(ad-bc)
p02=cp_{02}=c
p13=−bp_{13}=-b
− p02p13-\,p_{02}p_{13}
=− c⋅(−b)=-\,c\cdot(-b)
p03=dp_{03}=d
p12=−ap_{12}=-a
+ p03p12+\,p_{03}p_{12}
=d⋅(−a)=d\cdot(-a)
(ad−bc)+bc−ad=0(ad-bc)+bc-ad=0
図2概念図2×42\times4 行列の4つの列から2つを選ぶ6通りを、小さな枠の塗りで表しています。上と下の枠は補い合う2列の組で、3組あります。各組の2つの小行列式を掛けて符号 +,−,++,-,+ を付けると、1⋅(ad−bc)1\cdot(ad-bc)、bcbc、−ad-ad になり、足すと0です。この「0になる」ことが、次の節のプリュッカー関係式です。

プリュッカー関係式とグラスマン多様体

直線の自由度を数えてみます。例6(3) の行列 (10ab01cd)\begin{pmatrix}1&0&a&b\\0&1&c&d\end{pmatrix} では4つの成分 a,b,c,da,b,c,d を自由に選べるので、自由度は4だと見込めます。

一方 P5\mathbb{P}^5 は5次元なので、プリュッカー座標の間には関係式が1つあるはずです。それが図2で0になった式です。

定理7 プリュッカー関係式 [2, Lecture 6]

kk を体とする。

(1) P3\mathbb{P}^3 のどの直線 LL についても、p(L)p(L) は次の式をみたす。

p01p23−p02p13+p03p12=0p_{01}p_{23}-p_{02}p_{13}+p_{03}p_{12}=0p01p23−p02p13+p03p12=0\begin{aligned}p_{01}p_{23}-p_{02}p_{13}+p_{03}p_{12} &= 0\end{aligned}

(2) L↦p(L)L\mapsto p(L) は、P3\mathbb{P}^3 の直線全体から、(1) の式をみたす P5\mathbb{P}^5 の点全体への全単射である。

証明
  1. (1):pij=uivj−ujvip_{ij}=u_iv_j-u_jv_i を代入して展開すると、すべての項が打ち消し合う。これは ui,vju_i,v_j を変数とする整数係数の多項式の恒等式なので、どの体でも成り立つ。

    3つの積を展開すると、次のようになる。

    p01p23=u0u2v1v3−u0u3v1v2−u1u2v0v3+u1u3v0v2p02p13=u0u1v2v3−u0u3v1v2−u1u2v0v3+u2u3v0v1p03p12=u0u1v2v3−u0u2v1v3−u1u3v0v2+u2u3v0v1\begin{aligned} p_{01}p_{23}&=u_0u_2v_1v_3-u_0u_3v_1v_2-u_1u_2v_0v_3+u_1u_3v_0v_2\\ p_{02}p_{13}&=u_0u_1v_2v_3-u_0u_3v_1v_2-u_1u_2v_0v_3+u_2u_3v_0v_1\\ p_{03}p_{12}&=u_0u_1v_2v_3-u_0u_2v_1v_3-u_1u_3v_0v_2+u_2u_3v_0v_1\end{aligned}

    1行目から2行目を引いて3行目を足すと、6種類の単項式がそれぞれ +1+1 と −1-1 で1回ずつ現れ、和は0になる。

  2. (2) の準備:p01≠0p_{01}\neq0 の直線は、(10ab01cd)\begin{pmatrix}1&0&a&b\\0&1&c&d\end{pmatrix} の形の基底をただ1組もち、例6(3) より p(L)=[1:c:d:−a:−b:ad−bc]p(L)=[1:c:d:-a:-b:ad-bc] である。

    基底 u,vu,v の第0列と第1列からなる 2×22\times2 行列 hh は、det⁡h=p01≠0\det h=p_{01}\neq0 なので正則である。h−1h^{-1} を左から掛けて基底を取り替えると、第0列と第1列が単位行列になる。

    この形の基底が2組あれば、互いに正則な gg で移り合い、第0列と第1列を比べて g⋅1=1g\cdot1=1、つまり gg は単位行列である。よってこの形の基底はただ1組である。

  3. p01≠0p_{01}\neq0 の部分で単射:p(L)p(L) を p01=1p_{01}=1 に正規化すると、a=−p12a=-p_{12}、b=−p13b=-p_{13}、c=p02c=p_{02}、d=p03d=p_{03} と読めるので、LL が決まる。
  4. p01≠0p_{01}\neq0 の部分で全射:関係式をみたす点 pp を p01=1p_{01}=1 に正規化し、上の式で a,b,c,da,b,c,d を決める。この行列の直線のプリュッカー座標は、p23p_{23} 以外は pp と一致し、p23p_{23} も関係式から一致する。

    p01=1p_{01}=1 のとき、関係式は p23=p02p13−p03p12p_{23}=p_{02}p_{13}-p_{03}p_{12} と書ける。行列の直線の p23p_{23} は

    ad−bc=(−p12)p03−(−p13)p02=p02p13−p03p12ad-bc=(-p_{12})p_{03}-(-p_{13})p_{02}=p_{02}p_{13}-p_{03}p_{12}ad−bc=(−p12)p03−(−p13)p02=p02p13−p03p12\begin{aligned}ad-bc &= (-p_{12})p_{03}-(-p_{13})p_{02}\\&= p_{02}p_{13}-p_{03}p_{12}\end{aligned}ad−bc=(−p12)p03=−(−p13)p02=p02p13−p03p12\begin{aligned}ad-bc &= (-p_{12})p_{03}\\&\phantom{=}{} -(-p_{13})p_{02}\\&= p_{02}p_{13}-p_{03}p_{12}\end{aligned}

    なので、pp の p23p_{23} と等しい。

  5. ほかの pij≠0p_{ij}\neq0 の部分も同じである。直線にも関係式をみたす点にも0でない pijp_{ij} があるので、全体で全単射になる。

    関係式の3つの項は、番号 {0,1,2,3}\{0,1,2,3\} を2つずつに分ける3通り {01∣23}\{01|23\}、{02∣13}\{02|13\}、{03∣12}\{03|12\} に対応する。どの pijp_{ij} も、残りの番号の pklp_{kl} との積として、関係式にちょうど1回現れる。

    そのため pij≠0p_{ij}\neq0 の部分では、第 i,ji,j 列を単位行列にした基底で同じ議論ができる。残りの2列の4つの成分は、pik,pil,pjk,pjlp_{ik},p_{il},p_{jk},p_{jl} から符号を除いて読みとれ、pklp_{kl} は関係式で決まる。

    単射であることは、p(L)=p(L′)p(L)=p(L') なら両方で0でない同じ pijp_{ij} を選び、その部分の単射を使えばよい。

(1) の式をプリュッカー関係式と呼びます。(2) により、P3\mathbb{P}^3 の直線全体を、P5\mathbb{P}^5 の中の2次の式の零点集合と同一視できます。

定義8 グラスマン多様体 G(2,4)G(2,4) [2, Lecture 6; 3, 第3章]

P5\mathbb{P}^5 の斉次座標を [p01:p02:p03:p12:p13:p23][p_{01}:p_{02}:p_{03}:p_{12}:p_{13}:p_{23}] とする。

G(2,4)=V+(p01p23−p02p13+p03p12)⊆P5\begin{aligned} G(2,4)=V_+\bigl(&p_{01}p_{23}-p_{02}p_{13}\\ &+p_{03}p_{12}\bigr)\subseteq\mathbb{P}^5 \end{aligned}

をグラスマン多様体と呼ぶ。定理7により、G(2,4)G(2,4) の点は P3\mathbb{P}^3 の直線、つまり k4k^4 の2次元部分空間と1対1に対応する。

G(2,4)G(2,4) の「2,4」は、k4k^4 の2次元部分空間という意味です。P3\mathbb{P}^3 の直線の空間として、G(1,3)\mathbb{G}(1,3) と書く本もあります(ハリスの本など)。

ハーツホーンの第 I 章は V+V_+ を ZZ と書きます。

V+(F)V_+(F) のように、1つの斉次式の零点集合を超曲面、とくに FF が1次式のものを超平面と呼びます。

命題9 G(2,4)G(2,4) の地図

G(2,4)∩{p01≠0}G(2,4)\cap\{p_{01}\neq0\} は、写像

A4→G(2,4),(a,b,c,d)↦[ 1:c:d:−a:−b:ad−bc ]\begin{aligned} &\mathbb{A}^4\to G(2,4),{}\\ &(a,b,c,d)\\ &\mapsto[\,1:c:d:-a:-b:ad-bc\,] \end{aligned}

によってアフィン空間 A4\mathbb{A}^4 と同型である。pij≠0p_{ij}\neq0 の6つの部分も同様で、これらが G(2,4)G(2,4) を覆う。とくに G(2,4)G(2,4) は4次元である。

証明
  1. {p01≠0}\{p_{01}\neq0\} の座標 yij=pij/p01y_{ij}=p_{ij}/p_{01} で書くと、関係式は y23=y02y13−y03y12y_{23}=y_{02}y_{13}-y_{03}y_{12} となる。
  2. よって座標環は k[y02,y03,y12,y13,y23]/(y23−y02y13+y03y12)≅k[y02,y03,y12,y13]k[y_{02},y_{03},y_{12},y_{13},y_{23}]/(y_{23}-y_{02}y_{13}+y_{03}y_{12})\cong k[y_{02},y_{03},y_{12},y_{13}] で、4変数の多項式環である。

    y23y_{23} を y02y13−y03y12y_{02}y_{13}-y_{03}y_{12} に送る代入で同型が得られる。(c,d,−a,−b)=(y02,y03,y12,y13)(c,d,-a,-b)=(y_{02},y_{03},y_{12},y_{13}) とおけば、命題の写像になる。

  3. G(2,4)G(2,4) のどの点も、0でない pijp_{ij} をもつので、6つの部分のどれかに入る。

G(2,4)G(2,4) は P5\mathbb{P}^5 の超曲面なので、次元が 5−1=45-1=4 であることは超曲面の一般論からも分かります。直線の「自由度」が4であることを、地図の座標 a,b,c,da,b,c,d が表しています。

例10 G(2,4)G(2,4) の点とそうでない点

(1) [1:0:0:0:0:1][1:0:0:0:0:1] では関係式の値が 1⋅1=1≠01\cdot1=1\neq0 なので、この6つの数をプリュッカー座標にもつ直線はない。

(2) [1:2:3:4:5:p23][1:2:3:4:5:p_{23}] が G(2,4)G(2,4) に入るのは p23=2⋅5−3⋅4=−2p_{23}=2\cdot5-3\cdot4=-2 のときだけである。対応する直線は、a=−4a=-4、b=−5b=-5、c=2c=2、d=3d=3 から、(1,0,−4,−5)(1,0,-4,-5) と (0,1,2,3)(0,1,2,3) が張る直線で、実際

ad−bc=(−4)⋅3−(−5)⋅2=−2ad-bc=(-4)\cdot3-(-5)\cdot2=-2ad−bc=(−4)⋅3−(−5)⋅2=−2\begin{aligned}ad-bc &= (-4)\cdot3-(-5)\cdot2\\&= -2\end{aligned}ad−bc=(−4)⋅3=−(−5)⋅2=−2\begin{aligned}ad-bc &= (-4)\cdot3\\&\phantom{=}{} -(-5)\cdot2\\&= -2\end{aligned}

(3) [0:1:1:1:1:0][0:1:1:1:1:0] では値が 0−1⋅1+1⋅1=00-1\cdot1+1\cdot1=0 で、G(2,4)G(2,4) の点である。p02≠0p_{02}\neq0 なので、第0列と第2列を単位行列にした基底を探すと、(1,1,0,0)(1,1,0,0) と (0,0,1,1)(0,0,1,1) が見つかる。

もう少し詳しくP2\mathbb{P}^2 の場合は関係式がない

同じことを P2\mathbb{P}^2 の直線、つまり k3k^3 の2次元部分空間で行うと、2×32\times3 行列の小行列式は (32)=3\binom32=3 個で、座標は [p01:p02:p12]∈P2[p_{01}:p_{02}:p_{12}]\in\mathbb{P}^2 です。

このときは関係式がなく、どの点 [p01:p02:p12][p_{01}:p_{02}:p_{12}] も直線から来ます。実際、直線を通る2点 c,dc,d から作った座標は、外積 c×d=(p12, −p02, p01)c\times d=(p_{12},\,-p_{02},\,p_{01}) と並べ方と符号が違うだけで、命題2より直線の係数 [a0:a1:a2][a_0:a_1:a_2] そのものです。

つまり P2\mathbb{P}^2 の直線全体 G(2,3)G(2,3) は P2\mathbb{P}^2 全体で、これが (P2)∗(\mathbb{P}^2)^* です。P3\mathbb{P}^3 になって初めて、座標の数(6)が直線の自由度(4)より2つ多くなり、関係式が1本必要になります。

2本の直線が交わる条件

プリュッカー座標を使うと、2本の直線が交わるかどうかを座標の式で判定できます。

命題11 交わる条件

kk を体とする。直線 L,ML,M の部分空間の基底を u,vu,v と w,zw,z とし、p=p(L)p=p(L)、q=p(M)q=p(M) とおく。次の3つは同値である。

(1) LL と MM は交わる。
(2) u,v,w,zu,v,w,z を行とする 4×44\times4 行列の行列式が0。
(3) ⟨p,q⟩=0\langle p,q\rangle=0。ここで

⟨p,q⟩=p01q23−p02q13+p03q12+p12q03−p13q02+p23q01\langle p,q\rangle=p_{01}q_{23}-p_{02}q_{13}+p_{03}q_{12}+p_{12}q_{03}-p_{13}q_{02}+p_{23}q_{01}⟨p,q⟩=p01q23−p02q13+p03q12+p12q03−p13q02+p23q01\begin{aligned}\langle p,q\rangle &= p_{01}q_{23}-p_{02}q_{13}+p_{03}q_{12}+p_{12}q_{03}-p_{13}q_{02}+p_{23}q_{01}\end{aligned}⟨p,q⟩=p01q23−p02q13+p03q12+p12q03=−p13q02+p23q01\begin{aligned}\langle p,q\rangle &= p_{01}q_{23}-p_{02}q_{13}+p_{03}q_{12}+p_{12}q_{03}\\&\phantom{=}{} -p_{13}q_{02}+p_{23}q_{01}\end{aligned}⟨p,q⟩=p01q23−p02q13=+p03q12+p12q03=−p13q02+p23q01\begin{aligned}\langle p,q\rangle &= p_{01}q_{23}-p_{02}q_{13}\\&\phantom{=}{} +p_{03}q_{12}+p_{12}q_{03}\\&\phantom{=}{} -p_{13}q_{02}+p_{23}q_{01}\end{aligned}
証明
  1. (1)⇔(2):交わることは W∩W′≠{0}W\cap W'\neq\{0\} と同じで、これは dim⁡(W+W′)≤3\dim(W+W')\leq3、つまり4つのベクトル u,v,w,zu,v,w,z が1次従属であることと同じである。
  2. (2)⇔(3):行列式を上の2行でラプラス展開すると、ちょうど ⟨p,q⟩\langle p,q\rangle になる。

    上の2行の第 i,ji,j 列の小行列式 pijp_{ij} に、下の2行の残りの列 k,lk,l の小行列式 qklq_{kl} を掛け、符号 (−1)i+j+1(-1)^{i+j+1}(列番号は0から数える)を付けて足すと行列式になる。

    (i,j)(0,1)(0,2)(0,3)(k,l)(2,3)(1,3)(1,2)sign+−+(i,j)(1,2)(1,3)(2,3)(k,l)(0,3)(0,2)(0,1)sign+−+{}\begin{gathered} \begin{array}{c|ccc} (i,j) & (0,1) & (0,2) & (0,3)\\ \hline (k,l) & (2,3) & (1,3) & (1,2)\\ \text{sign} & + & - & + \end{array}\\[8pt] \begin{array}{c|ccc} (i,j) & (1,2) & (1,3) & (2,3)\\ \hline (k,l) & (0,3) & (0,2) & (0,1)\\ \text{sign} & + & - & + \end{array} \end{gathered}

⟨p,q⟩\langle p,q\rangle は pp と qq について対称な双1次形式で、⟨p,p⟩=2(p01p23−p02p13+p03p12)\langle p,p\rangle=2(p_{01}p_{23}-p_{02}p_{13}+p_{03}p_{12}) です。プリュッカー関係式は、標数が2でなければ ⟨p,p⟩=0\langle p,p\rangle=0、つまり「LL は LL 自身と交わる」と読めます。

例12 交わるかどうかの判定

(1) p(L1)=[1:0:0:0:0:0]p(L_1)=[1:0:0:0:0:0] なので、⟨p(L1),q⟩=q23\langle p(L_1),q\rangle=q_{23} である。L2L_2、L3L_3 の q23q_{23} はどちらも1なので、L1L_1 はどちらとも交わらない。同様に ⟨p(L2),q⟩=q01\langle p(L_2),q\rangle=q_{01} で、L3L_3 の q01=1q_{01}=1 から L2L_2 と L3L_3 も交わらない。

(2) NN を (1,1,0,0)(1,1,0,0) と (0,0,1,1)(0,0,1,1) が張る直線とすると、p(N)=[0:1:1:1:1:0]p(N)=[0:1:1:1:1:0] である。L3L_3 との値は

⟨p(N),p(L3)⟩=0⋅1−1⋅0+1⋅(−1)+1⋅1−1⋅0+0⋅1=0\begin{aligned} &\langle p(N),p(L_3)\rangle\\ &=0\cdot1-1\cdot0+1\cdot(-1)\\ &\quad+1\cdot1-1\cdot0+0\cdot1\\ &=0 \end{aligned}

で、NN と L3L_3 は交わる。実際、点 [1:1:1:1][1:1:1:1] が両方に乗っている。p(N)p(N) の p23p_{23} と p01p_{01} は0なので、NN は L1L_1(点 [1:1:0:0][1:1:0:0])とも L2L_2(点 [0:0:1:1][0:0:1:1])とも交わる。

直線 LL を1本止めると、⟨p,p(L)⟩=0\langle p,p(L)\rangle=0 は pp の1次式です。つまり、LL と交わる直線の全体は、G(2,4)G(2,4) を P5\mathbb{P}^5 の超平面で切ったものです。

{ M∣M∩L≠∅ }=G(2,4)∩HLHL={ p∈P5∣⟨p,p(L)⟩=0 }\{\,M\mid M\cap L\neq\emptyset\,\}=G(2,4)\cap H_L\qquad H_L=\{\,p\in\mathbb{P}^5\mid\langle p,p(L)\rangle=0\,\}{ M∣M∩L≠∅ }=G(2,4)∩HLHL={ p∈P5∣⟨p,p(L)⟩=0 }\begin{gathered}\{\,M\mid M\cap L\neq\emptyset\,\}=G(2,4)\cap H_L\\H_L=\{\,p\in\mathbb{P}^5\mid\langle p,p(L)\rangle=0\,\}\end{gathered}{ M∣M∩L≠∅ }=G(2,4)∩HLHL={ p∈P5∣⟨p,p(L)⟩=0 }\begin{aligned}\{\,M\mid M\cap L\neq\emptyset\,\} &= G(2,4)\cap H_L\\[4pt]H_L &= \{\,p\in\mathbb{P}^5\mid\langle p,p(L)\rangle=0\,\}\end{aligned}

例えば L1L_1 と交わる直線は G(2,4)∩{p23=0}G(2,4)\cap\{p_{23}=0\}、L2L_2 と交わる直線は G(2,4)∩{p01=0}G(2,4)\cap\{p_{01}=0\} です。G(2,4)G(2,4) は4次元なので、この超平面切断は3次元です。「1本の直線と交わる」ことは、次元を1つ下げる条件になっています。

4本の直線と交わる直線

4次元の G(2,4)G(2,4) に「LiL_i と交わる」という条件を1つずつ課していくと、次元が1つずつ下がり、4本の直線では有限個の直線が残ると期待できます。何本残るかを、まず3本の直線と交わる直線を調べてから数えます。

命題13 3本の直線と交わる直線

kk を体とし、L1′,L2′,L3′L_1',L_2',L_3' をどの2本もねじれの位置にある P3\mathbb{P}^3 の直線とする。

(1) 座標を取り替えて、L1′,L2′,L3′L_1',L_2',L_3' を上の L1,L2,L3L_1,L_2,L_3 にできる。
(2) L1,L2,L3L_1,L_2,L_3 のすべてと交わる直線は、[s:t]∈P1[s:t]\in\mathbb{P}^1 ごとに1本ずつある次の直線である。

M[s:t]={ [λs:λt:μs:μt]∣[λ:μ]∈P1 }\begin{aligned} M_{[s:t]}=\bigl\{\,&[\lambda s:\lambda t:\mu s:\mu t]\\ &\bigm|[\lambda:\mu]\in\mathbb{P}^1\,\bigr\}\end{aligned}

(3) 直線 M[s:t]M_{[s:t]} はすべて2次曲面 Q ⁣:x0x3=x1x2Q\colon x_0x_3=x_1x_2 に乗り、QQ のどの点にも、それを通る M[s:t]M_{[s:t]} がちょうど1本ある。

証明
  1. (1):k4=W1⊕W2k^4=W_1\oplus W_2 で、W3W_3 は W1W_1 とも W2W_2 とも {0}\{0\} でしか交わらないので、ある同型 φ ⁣:W1→W2\varphi\colon W_1\to W_2 のグラフ {x+φ(x)}\{x+\varphi(x)\} である。W1W_1 の基底 e0,e1e_0,e_1 と e2=φ(e0)e_2=\varphi(e_0)、e3=φ(e1)e_3=\varphi(e_1) を新しい座標の基底にとればよい。

    W3W_3 の元を x+yx+y(x∈W1x\in W_1、y∈W2y\in W_2)と分ける。x+y↦xx+y\mapsto x は W3→W1W_3\to W_1 の線形写像で、核は W3∩W2={0}W_3\cap W_2=\{0\} なので単射、次元が等しいので同型である。x+y↦yx+y\mapsto y も同様で、φ\varphi を「xx に yy を対応させる写像」とすればよい。

    新しい基底 e0,…,e3e_0,\dots,e_3 では、W1=⟨e0,e1⟩W_1=\langle e_0,e_1\rangle、W2=⟨e2,e3⟩W_2=\langle e_2,e_3\rangle、W3=⟨e0+e2, e1+e3⟩W_3=\langle e_0+e_2,\ e_1+e_3\rangle で、これは L1,L2,L3L_1,L_2,L_3 の部分空間そのものである。

  2. (2) のうち、M[s:t]M_{[s:t]} が3本と交わること:[λ:μ]=[1:0],[0:1],[1:1][\lambda:\mu]=[1:0],[0:1],[1:1] とした点 [s:t:0:0][s:t:0:0]、[0:0:s:t][0:0:s:t]、[s:t:s:t][s:t:s:t] が、それぞれ L1,L2,L3L_1,L_2,L_3 に乗る。
  3. 逆に、3本と交わる直線 NN は、L1L_1 との交点 a=(s,t,0,0)a=(s,t,0,0) と L2L_2 との交点 b=(0,0,s′,t′)b=(0,0,s',t') を通る。L3L_3 との交点 λa+μb\lambda a+\mu b の前半と後半が等しいことから、[s′:t′]=[s:t][s':t']=[s:t] となり、N=M[s:t]N=M_{[s:t]} である。

    L1L_1 と L2L_2 は交わらないので [a]≠[b][a]\neq[b] で、NN は a,ba,b が張る直線である。L3L_3 との交点を λa+μb=(λs,λt,μs′,μt′)≠0\lambda a+\mu b=(\lambda s,\lambda t,\mu s',\mu t')\neq0 とすると、L3L_3 の式 x0=x2x_0=x_2、x1=x3x_1=x_3 から λ(s,t)=μ(s′,t′)\lambda(s,t)=\mu(s',t') である。

    λ=0\lambda=0 なら μ(s′,t′)=0\mu(s',t')=0 から μ=0\mu=0 となり矛盾する。同様に μ≠0\mu\neq0 なので、(s′,t′)=(λ/μ)(s,t)(s',t')=(\lambda/\mu)(s,t) である。

  4. (3):M[s:t]M_{[s:t]} の点では x0x3−x1x2=λs⋅μt−λt⋅μs=0x_0x_3-x_1x_2=\lambda s\cdot\mu t-\lambda t\cdot\mu s=0。逆に QQ の点 xx では、x0x3=x1x2x_0x_3=x_1x_2 から (x2,x3)(x_2,x_3) と (x0,x1)(x_0,x_1) が比例するので、xx は [s:t]=[x0:x1][s:t]=[x_0:x_1]((x0,x1)=0(x_0,x_1)=0 なら [x2:x3][x_2:x_3])の M[s:t]M_{[s:t]} にだけ乗る。

QQ は第17回で扱った2次曲面(第17回の命題3)で、P1×P1\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1 の像 ([λ:μ],[s:t])↦[λs:λt:μs:μt]([\lambda:\mu],[s:t])\mapsto[\lambda s:\lambda t:\mu s:\mu t] です。[s:t][s:t] を止めた直線が M[s:t]M_{[s:t]} で、[λ:μ][\lambda:\mu] を止めた直線がもう一方の直線族です[1, 演習2.14, 2.15, p.18]。L1,L2,L3L_1,L_2,L_3 は後者の [λ:μ]=[1:0],[0:1],[1:1][\lambda:\mu]=[1:0],[0:1],[1:1] にあたります。

3本の直線と交わる直線は、ちょうど P1\mathbb{P}^1 の分だけあり、それらが QQ を埋め尽くしています。プリュッカー座標で見ると、M[s:t]M_{[s:t]} は (s,t,0,0)(s,t,0,0) と (0,0,s,t)(0,0,s,t) から

p(M[s:t])=[ 0:s2:st:st:t2:0 ]p(M_{[s:t]})=[\,0:s^2:st:st:t^2:0\,]p(M[s:t])=[ 0:s2:st:st:t2:0 ]\begin{aligned}p(M_{[s:t]}) &= [\,0:s^2:st:st:t^2:0\,]\end{aligned}

です。HL1 ⁣:p23=0H_{L_1}\colon p_{23}=0、HL2 ⁣:p01=0H_{L_2}\colon p_{01}=0、HL3 ⁣:p01−p03+p12+p23=0H_{L_3}\colon p_{01}-p_{03}+p_{12}+p_{23}=0 の3つを課すと p01=p23=0p_{01}=p_{23}=0、p12=p03p_{12}=p_{03} となり、関係式は p032=p02p13p_{03}^2=p_{02}p_{13} になります。G(2,4)G(2,4) を3枚の超平面で切った結果は、平面の中の円錐曲線 [s2:st:t2][s^2:st:t^2]、つまり第18回の d=2d=2 のヴェロネーゼ埋め込みの像(第18回の例6)です。

あとは4本目の直線 L4L_4 を足します。

定理14 4本の直線と交わる直線 [3, 第3章]

kk を代数閉体とし、L1,L2,L3L_1,L_2,L_3 をどの2本もねじれの位置にある直線とする。命題13(1) により座標を取り替え、L1,L2,L3L_1,L_2,L_3 を上の3本、QQ を2次曲面 x0x3=x1x2x_0x_3=x_1x_2 とする。L4L_4 を QQ に含まれない直線とする。

(1) L1,…,L4L_1,\dots,L_4 のすべてと交わる直線は、L4∩QL_4\cap Q の点と1対1に対応する。
(2) L4∩QL_4\cap Q は1点か2点である。F=x0x3−x1x2F=x_0x_3-x_1x_2 を L4L_4 の点 [λu+μv][\lambda u+\mu v] に制限した λ,μ\lambda,\mu の2次式が重根をもたなければ2点で、そのとき答えはちょうど2本である。

証明
  1. (1):L4∩QL_4\cap Q の点 xx を通る M[s:t]M_{[s:t]} は、命題13(3) よりただ1本で、L1,L2,L3L_1,L_2,L_3 と交わり、xx で L4L_4 とも交わる。
  2. 逆に、4本と交わる直線は 命題13(2) より M[s:t]M_{[s:t]} で、L4L_4 との交点は M[s:t]⊆QM_{[s:t]}\subseteq Q の点である。
  3. L4∩QL_4\cap Q の異なる2点が同じ M[s:t]M_{[s:t]} に乗ることはない。乗れば M[s:t]M_{[s:t]} と L4L_4 が2点を共有して一致し、L4⊆QL_4\subseteq Q となるからである。よって (1) の対応は1対1である。
  4. (2):F(λu+μv)F(\lambda u+\mu v) は λ,μ\lambda,\mu の2次の斉次式で、L4⊈QL_4\not\subseteq Q なので0でない。代数閉体の上では2つの1次式の積に分かれるので、零点 [λ:μ][\lambda:\mu] は1個か2個である。

    2次の斉次式 αλ2+βλμ+γμ2\alpha\lambda^2+\beta\lambda\mu+\gamma\mu^2 は、α≠0\alpha\neq0 なら α(λ−r1μ)(λ−r2μ)\alpha(\lambda-r_1\mu)(\lambda-r_2\mu) と分かれ(r1,r2r_1,r_2 は αr2+βr+γ=0\alpha r^2+\beta r+\gamma=0 の根)、α=0\alpha=0 なら μ(βλ+γμ)\mu(\beta\lambda+\gamma\mu) である。零点が2個になるのは、2つの1次式が比例しないときである。

4本の直線を「でたらめに」選ぶと、L1,L2,L3L_1,L_2,L_3 はどの2本もねじれの位置にあり、L4L_4 は QQ に含まれず、QQ に接することもなく、2点で交わります。この意味で、一般の位置にある4本の直線のすべてと交わる直線は、ちょうど2本です。19世紀にシューベルトが調べた数え上げの、最も基本的な例です。

定理14(2) の2次式が重根をもつのは、L4L_4 が QQ に接する場合です。このとき L4∩QL_4\cap Q は1点で、答えは1本になります。

L4L_4 が QQ に含まれる場合は、定理の外です。QQ に含まれる直線は2つの族のどちらかに属します(第17回の命題8)。L4L_4 が [λ:μ][\lambda:\mu] を止めた直線(L1,L2,L3L_1,L_2,L_3 と同じ族)なら、どの M[s:t]M_{[s:t]} も L4L_4 と交わるので、答えは無限にあります。

L4L_4 がもう一方の族の直線 M[s0:t0]M_{[s_0:t_0]} なら、答えは L4L_4 自身の1本だけです。命題13(3) より QQ の各点を通る M[s:t]M_{[s:t]} は1本なので、異なる2本の M[s:t]M_{[s:t]} は交わらないからです。

例15 答えの2本を求める

標数0の体で計算する。L4L_4 を2点 [7:8:8:7][7:8:8:7] と [1:4:−4:−1][1:4:-4:-1] を通る直線とする。

(1) QQ との交点:x=λ(7,8,8,7)+μ(1,4,−4,−1)x=\lambda(7,8,8,7)+\mu(1,4,-4,-1) を FF に代入すると

(7λ+μ)(7λ−μ)−(8λ+4μ)(8λ−4μ)=−15λ2+15μ2=−15(λ−μ)(λ+μ)\begin{aligned} &(7\lambda+\mu)(7\lambda-\mu)\\ &\quad-(8\lambda+4\mu)(8\lambda-4\mu)\\ &=-15\lambda^2+15\mu^2\\ &=-15(\lambda-\mu)(\lambda+\mu)\end{aligned}

λ=−μ\lambda=-\mu から P=[6:4:12:8]=[3:2:6:4]P=[6:4:12:8]=[3:2:6:4]、λ=μ\lambda=\mu から P′=[8:12:4:6]=[4:6:2:3]P'=[8:12:4:6]=[4:6:2:3] の2点を得る。それぞれを通る M[s:t]M_{[s:t]} は [s:t]=[x0:x1][s:t]=[x_0:x_1] から M[3:2]M_{[3:2]} と M[2:3]M_{[2:3]} である。

(2) プリュッカー座標で:p(L4)=[10:−18:−7:−32:−18:10]p(L_4)=[10:-18:-7:-32:-18:10] で、関係式 100−324+224=0100-324+224=0 をみたす。M[s:t]M_{[s:t]} との値は

⟨p(M[s:t]), p(L4)⟩=18s2−39st+18t2=3(2s−3t)(3s−2t)\begin{aligned} &\langle p(M_{[s:t]}),\,p(L_4)\rangle\\ &=18s^2-39st+18t^2\\ &=3(2s-3t)(3s-2t) \end{aligned}

で、[s:t]=[3:2],[2:3][s:t]=[3:2],[2:3] が答えである。(1) と一致する。

(3) L4L_4 が L1,L2,L3L_1,L_2,L_3 とねじれの位置にあることも確かめておく。⟨p(L4),p(Li)⟩\langle p(L_4),p(L_i)\rangle は順に 10, 10, −510,\ 10,\ -5 で、どれも0でない。

図を作るプログラムでは、4つの超平面 HL1,…,HL4H_{L_1},\dots,H_{L_4} の式とプリュッカー関係式を連立して直接解き、解がこの2本だけであることを確かめています。

この例を立体図で見ます。x0+x3≠0x_0+x_3\neq0 の部分の実数の点を、座標

(x,y,z)=1x0+x3(x0−x3,=1x0+x3(x1+x2, x1−x2)\begin{aligned} (x,y,z)&=\frac{1}{x_0+x_3}\bigl(x_0-x_3,{}\\ &\phantom{{}=\frac{1}{x_0+x_3}\bigl(}x_1+x_2,\ x_1-x_2\bigr) \end{aligned}

で描きます。x0x3−x1x2=14((x0+x3)2−(x0−x3)2−(x1+x2)2+(x1−x2)2)x_0x_3-x_1x_2=\frac14\bigl((x_0+x_3)^2-(x_0-x_3)^2-(x_1+x_2)^2+(x_1-x_2)^2\bigr) なので、この座標で QQ は一葉双曲面 x2+y2−z2=1x^2+y^2-z^2=1 になります。L1L_1 は x=1, y=zx=1,\ y=z、L2L_2 は x=−1, y=−zx=-1,\ y=-z、L3L_3 は y=1, z=−xy=1,\ z=-x です。

ドラッグで回せます

青い3本は L1 ⁣:x2=x3=0L_1\colon x_2=x_3=0、L2 ⁣:x0=x1=0L_2\colon x_0=x_1=0、L3 ⁣:x0=x2, x1=x3L_3\colon x_0=x_2,\ x_1=x_3 です。どの2本も交わらず、平行でもありません(ねじれの位置)。見かけ上交わって見える向きでも、回すと奥行きが違っていて、離れていることが分かります。

3本すべてと交わる直線 M[s:t]M_{[s:t]}(緑)を、[s:t][s:t] を変えて28本描きました。緑の直線は2次曲面 Q ⁣:x0x3=x1x2Q\colon x_0x_3=x_1x_2(灰色の面)の上にあり、QQ を埋め尽くします。青い3本も QQ の上の直線で、緑とは別の向きに並んでいます。

「真上」から見ると、くびれの円の接線のように見えます。斜めから回すと、曲面が2方向の直線で編まれていることが分かります。

4本目の直線 L4L_4(オレンジ)は QQ の上にありません。回すと、L4L_4 が QQ を PP と P′P' の2点で貫いていることが分かります。

答えは、PP を通る緑の直線 M[3:2]M_{[3:2]} と、P′P' を通る M[2:3]M_{[2:3]} の2本です(紫)。黒い点が L1,L2,L3L_1,L_2,L_3 との交点です。「L4L_4 の向き」から見ると L4L_4 が1点に潰れ、2本の答えがその点を通って見えます。

アフィンの部分 x0+x3≠0x_0+x_3\neq0 の実数の点を、座標 (x0−x3, x1+x2, x1−x2)/(x0+x3)\bigl(x_0-x_3,\ x_1+x_2,\ x_1-x_2\bigr)/(x_0+x_3) で描いています。この座標で QQ は x2+y2−z2=1x^2+y^2-z^2=1 です。

図3具体例例15の4本の直線と2次曲面 QQ。ボタンで、3本の直線(青)、それらと交わる直線 M[s:t]M_{[s:t]} の族(緑)と QQ(灰色の面)、4本目の L4L_4(オレンジ)と交点 P,P′P,P'、答えの2本(紫の線)を順に表示します。回すと、QQ が2方向の直線で編まれていること、L4L_4 が QQ を2回貫くことが分かります。「L4L_4 の向き」から見ると L4L_4 が1点に潰れ、答えの2本がその点を通って見えます。

L4L_4 が QQ と交わる2点が、答えの数2を決めています。同じことをプリュッカー座標の側で見ると、3本と交わる直線の円錐曲線に、4本目の条件の超平面が2点で交わる、という図になります。

p02=1p_{02}=1 とおいて、c=p03/p02c=p_{03}/p_{02}、b=p13/p02b=p_{13}/p_{02} を座標にとります。M[s:t]M_{[s:t]} は c=t/sc=t/s、b=c2b=c^2 の点です。L4L_4 と交わる条件 18−39c+18b=018-39c+18b=0 は、3で割って 6b−13c+6=06b-13c+6=0 という直線になります。

c=p03/p02c=p_{03}/p_{02}
b=p13/p02b=p_{13}/p_{02}
b=c2b=c^2
6b−13c+6=06b-13c+6=0
M[3:2]M_{[3:2]}
M[2:3]M_{[2:3]}
図4具体例プリュッカー座標の側から見た例15。L1,L2,L3L_1,L_2,L_3 と交わる直線の全体は円錐曲線 p032=p02p13p_{03}^2=p_{02}p_{13} で、p02=1p_{02}=1 の部分では放物線 b=c2b=c^2(緑)です。L4L_4 とも交わる条件は直線 6b−13c+6=06b-13c+6=0(オレンジ)で、交点 c=2/3c=2/3 と c=3/2c=3/2 が答えの M[3:2]M_{[3:2]} と M[2:3]M_{[2:3]} です。放物線と直線の交点が2個であることが、答えの数2になっています。

実数の点だけで見ると、答えが見えないこともあります。例えば L4L_4 を (1,0,0,1)(1,0,0,1) と (0,1,−1,0)(0,1,-1,0) が張る直線(図3の座標では zz 軸)にすると、FF の制限は λ2+μ2\lambda^2+\mu^2 で、実数の零点がありません。プリュッカー座標の条件も s2+t2=0s^2+t^2=0 となり、答えは [s:t]=[1:±i][s:t]=[1:\pm i] の2本の複素数の直線です。代数閉体の上で数えると、ここでも2本になります。

専門的な話数え上げの答えは G(2,4)G(2,4) の次数

P5\mathbb{P}^5 の中の4次元の超曲面 G(2,4)G(2,4) を、4枚の一般の超平面で切ると、2次の超曲面なので2点が残ります(高い次元のベズーの定理。平面曲線の場合は第9回の定理12)。4本の直線の答え2は、G(2,4)G(2,4) の次数2そのものです。

ただし超平面 HLH_L は一般の超平面ではありません。関係式の微分が ⟨p(L), ⋅ ⟩\langle p(L),\,\cdot\,\rangle なので、HLH_L は G(2,4)G(2,4) の点 p(L)p(L) での接超平面です。それでも4本の直線が一般の位置にあれば、4枚の超平面との交わりは重複のない2点になり、答えは次数と同じ2になります。

このような「条件の積」を G(2,4)G(2,4) のコホモロジー環の計算に置き換えるのが、シューベルト計算です。1本の直線と交わる条件の類を σ1\sigma_1 とすると、上の数え上げは σ14=2\sigma_1^4=2 と書けます[3, 第3章・第4章]。

専門的な話一般のグラスマン多様体 G(r,n)G(r,n)

knk^n の rr 次元部分空間の全体を G(r,n)G(r,n) と書きます。基底を行に並べた r×nr\times n 行列の r×rr\times r 小行列式を (nr)\binom nr 個並べると、P(nr)−1\mathbb{P}^{\binom nr-1} への単射が得られます。これをプリュッカー埋め込みと呼びます[2, Lecture 6]。

rr 個の列を単位行列にすると、残りの r×(n−r)r\times(n-r) 個の成分が自由に動くので、G(r,n)G(r,n) は r(n−r)r(n-r) 次元です。G(1,n)=Pn−1G(1,n)=\mathbb{P}^{n-1}、G(n−1,n)=(Pn−1)∗G(n-1,n)=(\mathbb{P}^{n-1})^* で、G(2,4)G(2,4) は 2⋅2=42\cdot2=4 次元です。

r=2r=2 では、像は i<j<k<li<j<k<l ごとの関係式 pijpkl−pikpjl+pilpjk=0p_{ij}p_{kl}-p_{ik}p_{jl}+p_{il}p_{jk}=0 で定まります。n=4n=4 ではこれが1本だけで、この記事の G(2,4)G(2,4) になります。n=5n=5 では (54)=5\binom54=5 本の関係式があり、G(2,5)⊆P9G(2,5)\subseteq\mathbb{P}^9 は6次元です。

まとめ:直線を点とみなす

直線の集まり点とみなした空間式
k2k^2 の原点を通る直線P1\mathbb{P}^1[x0:x1][x_0:x_1]
P2\mathbb{P}^2 の直線(P2)∗(\mathbb{P}^2)^*[a0:a1:a2][a_0:a_1:a_2]
P3\mathbb{P}^3 の直線G(2,4)⊆P5G(2,4)\subseteq\mathbb{P}^5(4次元)p01p23−p02p13+p03p12=0p_{01}p_{23}-p_{02}p_{13}+p_{03}p_{12}=0
LL と交わる直線超平面切断 G(2,4)∩HLG(2,4)\cap H_L⟨p,p(L)⟩=0\langle p,p(L)\rangle=0
L1,L2,L3L_1,L_2,L_3 と交わる直線円錐曲線(QQ の直線族)[0:s2:st:st:t2:0][0:s^2:st:st:t^2:0]
L1,…,L4L_1,\dots,L_4 と交わる直線2点18s2−39st+18t2=018s^2-39st+18t^2=0

P3\mathbb{P}^3 の直線は、2点を並べた行列の小行列式で P5\mathbb{P}^5 の点になり、その全体は2次超曲面 G(2,4)G(2,4) でした。直線どうしが交わる条件も座標の式になるので、「4本の直線と交わる直線は何本か」という幾何の問いが、2次曲面と超平面の交わりを数える問題になりました。

次回:3次曲面の上の27本の直線

今回は、直線を点とみなす空間 G(2,4)G(2,4) を作り、直線に関する条件を G(2,4)G(2,4) の中の式として数えました。

次回は、この考え方で、非特異な3次曲面の上にちょうど27本の直線があることを見ます。直線 LL が曲面 F=0F=0 に乗る条件は、FF を LL に制限した3次式の4つの係数が0になることです。4次元の G(2,4)G(2,4) に4つの条件を課すので、今回と同じく有限個の直線が残ると期待できます。

参考文献

  1. R. ハーツホーン(高橋宣能・松下大介 訳), 『代数幾何学 1』, 丸善出版, 2013.
  2. J. Harris, Algebraic Geometry: A First Course, Graduate Texts in Mathematics 133, Springer, 1992.
  3. D. Eisenbud, J. Harris, 3264 and All That: A Second Course in Algebraic Geometry, Cambridge University Press, 2016.