数学ビジュアライズ

代数幾何図で読む代数幾何第18回

次数を上げて埋め込む:ヴェロネーゼ埋め込みと有理正規曲線

P^n の点を d 次の単項式すべての値の組に送る d 重埋め込み(ヴェロネーゼ埋め込み)を定義します。射影直線の像である有理正規曲線が 2×2 の小行列式で切り出されること、ねじれ3次曲線には2次式が3本要ること、超平面とちょうど d 点で交わることを示します。P^2 の2次の場合には円錐曲線が超平面の切り口になり、5点を通る円錐曲線が連立1次方程式で求まります。2次曲面の交わりと平面との交点は、回せる立体図で見ます。

目次
  1. 前回の宿題
  2. 単項式を全部並べる:d 重埋め込み
  3. 有理正規曲線と2×2の小行列式
  4. 超平面とちょうど d 点で交わる
  5. 直線束の切断で読む
  6. ヴェロネーゼ曲面:円錐曲線が超平面の切り口になる
  7. まとめ:次数を上げると方程式が1次になる
  8. 次回:直線全体の空間
  9. 参考文献
この記事の要点
d 重埋め込み
Pn\mathbb{P}^n の点を、dd 次の単項式すべての値を並べた点に送る写像 νd ⁣:Pn→PN\nu_d\colon\mathbb{P}^n\to\mathbb{P}^N(N=(n+dd)−1N=\binom{n+d}{d}-1)です。単射で、逆写像は1次式で書けます。
有理正規曲線
P1\mathbb{P}^1 の像 Cd⊆PdC_d\subseteq\mathbb{P}^d は、2行のハンケル行列の階数が1以下になる点の全体です。d=2d=2 は円錐曲線、d=3d=3 は第1回のねじれ3次曲線で、そのイデアルは2次式3本で生成されますが、2つの元では生成できません。
超平面と d 点
CdC_d と超平面の交点は dd 次の2元形式の根で、代数閉体なら重複度こみでちょうど dd 個です。CdC_d の相異なる d+1d+1 点は、1つの超平面に乗りません。
ヴェロネーゼ曲面
ν2(P2)⊆P5\nu_2(\mathbb{P}^2)\subseteq\mathbb{P}^5 は、階数1の 3×33\times3 対称行列の全体です。P2\mathbb{P}^2 の円錐曲線は P5\mathbb{P}^5 の超平面による切り口になり、5点を通る円錐曲線は1次方程式を解いて求まります。
  • 証明は、ステップの流れだけを短く書いています。「詳しく」の付いた行をクリックすると、そのステップの詳しい説明が開きます。説明の中にも開ける行があります。
  • 定義・命題・定理には、記事全体で通し番号を振っています。
  • もう少し詳しくは補足、専門的な話は先の回につながる話題です。どちらも開かずに読み進められます。
  • 各ブロックの「AIに質問」を押すと、その部分の内容を入れた質問文で、お使いのAIを開けます。

前回の宿題

第17回では、2本の射影直線の積 P1×P1\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1 を、座標どうしの積を並べるセグレ埋め込みで P3\mathbb{P}^3 に入れました(第17回の定義1)。

([a0:a1], [b0:b1])⟼[a0b0:a0b1:a1b0:a1b1]\begin{aligned} &\bigl([a_0:a_1],\ [b_0:b_1]\bigr)\\ &\quad\longmapsto[a_0b_0:a_0b_1:a_1b_0:a_1b_1] \end{aligned}

像は2次曲面 z00z11=z01z10z_{00}z_{11}=z_{01}z_{10} で、その上を2つの直線族が走っていました。

第17回の最後に、1本の P1\mathbb{P}^1 の座標どうしの積を並べるとどうなるかを予告しました。2次なら [x0:x1]↦[x02:x0x1:x12][x_0:x_1]\mapsto[x_0^2:x_0x_1:x_1^2] で、像は第5回の放物線の射影閉包です(第5回の例19)。3次に上げると、第1回のねじれ3次曲線が現れます。

この記事では、まず一般の Pn\mathbb{P}^n で、dd 次の単項式をすべて並べる写像(dd 重埋め込み)を定義します。次に P1\mathbb{P}^1 の像である有理正規曲線の方程式を求め、超平面とちょうど dd 点で交わることを示します。最後に P2\mathbb{P}^2 の2次の場合(ヴェロネーゼ曲面)で、円錐曲線が超平面の切り口になることを確かめます。

単項式を全部並べる:d 重埋め込み

変数 x0,…,xnx_0,\dots,x_n の dd 次の単項式は x0e0x1e1⋯xnenx_0^{e_0}x_1^{e_1}\cdots x_n^{e_n}(e0+⋯+en=de_0+\dots+e_n=d)の形をしています。指数の組の数を数えると、単項式は次の個数だけあります。

#{(e0,…,en)∈Z≥0n+1∣e0+⋯+en=d}=(n+dd)\begin{aligned} &\#\{(e_0,\dots,e_n)\in\mathbb{Z}_{\geq0}^{n+1}\mid{}\\ &\qquad e_0+\dots+e_n=d\}=\binom{n+d}{d} \end{aligned}

dd 個の玉を nn 本の仕切りで n+1n+1 組に分ける方法の数で、n+dn+d か所から仕切りの位置 nn か所を選ぶ数と同じです。例えば n=2, d=2n=2,\ d=2 なら (42)=6\binom42=6 個、n=2, d=3n=2,\ d=3 なら (53)=10\binom53=10 個です。

定義1 d 重埋め込み [1, 演習2.12, p.17–18]

kk を体、n,d≥1n,d\geq1 とし、x0,…,xnx_0,\dots,x_n の dd 次の単項式を1つの順に M0,…,MNM_0,\dots,M_N と並べる(N=(n+dd)−1N=\binom{n+d}{d}-1)。写像

νd ⁣:Pn⟶PN[a0:⋯:an]⟼[M0(a):M1(a):⋯:MN(a)]\begin{aligned} &\nu_d\colon\mathbb{P}^n\longrightarrow\mathbb{P}^N\\[4pt] &[a_0:\dots:a_n]\\ &\quad\longmapsto\bigl[M_0(a):M_1(a):{}\\ &\qquad\quad\dots:M_N(a)\bigr] \end{aligned}

を dd 重埋め込み、またはヴェロネーゼ埋め込みと呼ぶ。n=1n=1 のときは、Pd\mathbb{P}^d の斉次座標を z0,…,zdz_0,\dots,z_d として

νd([x0:x1])=[x0d:x0d−1x1:…:x0x1d−1:x1d]zi=x0d−ix1i\begin{aligned} \nu_d\bigl([x_0:x_1]\bigr)&=\bigl[x_0^d:x_0^{d-1}x_1:\dots{}\\ &\qquad:x_0x_1^{d-1}:x_1^d\bigr]\\[4pt] z_i&=x_0^{d-i}x_1^i \end{aligned}

と並べる。

νd\nu_d は矛盾なく定まります。ai≠0a_i\neq0 となる ii があるので、単項式 xidx_i^d の値が0でなく、値の組は0になりません。代表を λa\lambda a に変えると、どの単項式の値も λd\lambda^d 倍になるだけです。

例2 小さい n, d の d 重埋め込み

(n,d)(n,d)NNνd\nu_d
(1,2)(1,2)22[x0:x1]↦[x02:x0x1:x12][x_0:x_1]\mapsto[x_0^2:x_0x_1:x_1^2]
(1,3)(1,3)33[x0:x1]↦[x03:x02x1:x0x12:x13][x_0:x_1]\mapsto[x_0^3:x_0^2x_1:x_0x_1^2:x_1^3]
(2,2)(2,2)55[x0:x1:x2]↦[x02:x12:x22:x0x1:x0x2:x1x2][x_0:x_1:x_2]\mapsto[x_0^2:x_1^2:x_2^2:x_0x_1:x_0x_2:x_1x_2]
(2,3)(2,3)99x03, x13, x23, x02x1, …, x0x1x2x_0^3,\ x_1^3,\ x_2^3,\ x_0^2x_1,\ \dots,\ x_0x_1x_2 の10個
(3,2)(3,2)99x02, …, x32, x0x1, …, x2x3x_0^2,\ \dots,\ x_3^2,\ x_0x_1,\ \dots,\ x_2x_3 の10個

k=Qk=\mathbb{Q} で値を入れると、ν3([1:2])=[1:2:4:8]\nu_3([1:2])=[1:2:4:8]、ν3([2:1])=[8:4:2:1]\nu_3([2:1])=[8:4:2:1]、ν3([0:1])=[0:0:0:1]\nu_3([0:1])=[0:0:0:1] である。ν2([1:2:3])=[1:4:9:2:3:6]\nu_2([1:2:3])=[1:4:9:2:3:6] となる。

x22x_2^2
x1x2x_1x_2
x12x_1^2
x0x2x_0x_2
x0x1x_0x_1
x02x_0^2
d=2: P2→P5d=2:\ \mathbb{P}^2\to\mathbb{P}^{5}
辺 x2=0x_2=0:P1→P2\mathbb{P}^1\to\mathbb{P}^{2}
x23x_2^3
x1x22x_1x_2^2
x12x2x_1^2x_2
x13x_1^3
x0x22x_0x_2^2
x0x1x2x_0x_1x_2
x0x12x_0x_1^2
x02x2x_0^2x_2
x02x1x_0^2x_1
x03x_0^3
d=3: P2→P9d=3:\ \mathbb{P}^2\to\mathbb{P}^{9}
辺 x2=0x_2=0:P1→P3\mathbb{P}^1\to\mathbb{P}^{3}
図1概念図x0,x1,x2x_0,x_1,x_2 の2次と3次の単項式を、指数 (e0,e1,e2)(e_0,e_1,e_2) に応じて三角形に並べました。点 x0e0x1e1x2e2x_0^{e_0}x_1^{e_1}x_2^{e_2} は、3つの頂点 x0d,x1d,x2dx_0^d,x_1^d,x_2^d を重さ e0:e1:e2e_0:e_1:e_2 で平均した位置にあります。点の数が νd\nu_d の行き先の座標の数 N+1N+1 です。底辺(オレンジ)は x2x_2 を含まない d+1d+1 個の単項式で、直線 x2=0x_2=0 に制限した νd\nu_d が P1\mathbb{P}^1 の dd 重埋め込みになることを表しています。

命題3 [1, 演習2.12(c), p.18; 1, 演習3.4, p.29]

kk を体とする。

(1) νd ⁣:Pn→PN\nu_d\colon\mathbb{P}^n\to\mathbb{P}^N は単射である。
(2) n=1n=1 のとき、νd(P1)\nu_d(\mathbb{P}^1) のどの点でも z0≠0z_0\neq0 か zd≠0z_d\neq0 で、逆写像は次の式で与えられる。

[z0:⋯:zd]⟼{[z0:z1](z0≠0)[zd−1:zd](zd≠0)\begin{aligned} &[z_0:\dots:z_d]\\ &\quad\longmapsto\begin{cases}[z_0:z_1] & (z_0\neq0)\\ [z_{d-1}:z_d] & (z_d\neq0)\end{cases} \end{aligned}
証明
  1. (1) νd(a)=νd(b)\nu_d(a)=\nu_d(b) とすると、0でない λ\lambda で、すべての単項式 MM について M(a)=λM(b)M(a)=\lambda M(b) となる。ai≠0a_i\neq0 となる ii を1つ選ぶ。
  2. M=xidM=x_i^d から aid=λbida_i^d=\lambda b_i^d で、bi≠0b_i\neq0 である。
  3. M=xid−1xjM=x_i^{d-1}x_j(j=0,…,nj=0,\dots,n)から aid−1aj=λbid−1bja_i^{d-1}a_j=\lambda b_i^{d-1}b_j である。aid−1≠0a_i^{d-1}\neq0 で割ると、ベクトル aa は bb の定数倍になり、[a]=[b][a]=[b] が従う。

    aj=λ (bi/ai)d−1 bja_j=\lambda\,(b_i/a_i)^{d-1}\,b_j がすべての jj で成り立つ。係数 λ(bi/ai)d−1\lambda(b_i/a_i)^{d-1} は jj によらない0でない定数である。

  4. (2) 点 νd([x0:x1])\nu_d([x_0:x_1]) では z0=x0dz_0=x_0^d、zd=x1dz_d=x_1^d で、x0,x1x_0,x_1 の一方は0でないので、z0,zdz_0,z_d の一方も0でない。
  5. z0≠0z_0\neq0 なら x0≠0x_0\neq0 で、[z0:z1]=[x0d−1⋅x0:x0d−1⋅x1]=[x0:x1][z_0:z_1]=[x_0^{d-1}\cdot x_0:x_0^{d-1}\cdot x_1]=[x_0:x_1]。zd≠0z_d\neq0 のときも、[zd−1:zd]=[x1d−1⋅x0:x1d−1⋅x1]=[x0:x1][z_{d-1}:z_d]=[x_1^{d-1}\cdot x_0:x_1^{d-1}\cdot x_1]=[x_0:x_1] である。

(2) の逆写像は、座標を2つだけ取り出す1次式で書けています。例えば ν3([1:2])=[1:2:4:8]\nu_3([1:2])=[1:2:4:8] からは [z0:z1]=[1:2][z_0:z_1]=[1:2] で元の点に戻り、ν3([0:1])=[0:0:0:1]\nu_3([0:1])=[0:0:0:1] からは [z2:z3]=[0:1][z_2:z_3]=[0:1] で戻ります。

一般の nn でも、xi≠0x_i\neq0 の点では [a]=[(xid−1x0)(a):⋯:(xid−1xn)(a)][a]=\bigl[(x_i^{d-1}x_0)(a):\dots:(x_i^{d-1}x_n)(a)\bigr] と、座標を取り出すだけで逆写像が書けます。ハーツホーンは、νd\nu_d が像への同型であること(演習3.4)と、像が閉集合であること(演習2.12(b))を演習にしています。

ハーツホーンの第 I 章では零点集合を VV ではなく ZZ と書き、素イデアルを p\mathfrak p と書きますが、連載では VV と PP を使います。

有理正規曲線と2×2の小行列式

定義4 有理正規曲線 [2, 演習3.4, p.32]

kk を体、d≥1d\geq1 とする。P1\mathbb{P}^1 の dd 重埋め込みの像 Cd=νd(P1)⊆PdC_d=\nu_d(\mathbb{P}^1)\subseteq\mathbb{P}^d を、dd 次の有理正規曲線と呼ぶ。

t=x1/x0t=x_1/x_0 とおくと、νd([1:t])=[1:t:t2:⋯:td]\nu_d([1:t])=[1:t:t^2:\dots:t^d] です。z0≠0z_0\neq0 の地図で zi/z0z_i/z_0 を座標にすると、CdC_d は曲線 (t,t2,…,td)(t,t^2,\dots,t^d) に無限遠点 νd(∞)=[0:⋯:0:1]\nu_d(\infty)=[0:\dots:0:1] を1つ足したものです。

d=2: (t, t2)d=3: (t, t2, t3)d=2:\ (t,\ t^2)\qquad d=3:\ (t,\ t^2,\ t^3)d=2: (t, t2)d=3: (t, t2, t3)\begin{gathered}d=2:\ (t,\ t^2)\\d=3:\ (t,\ t^2,\ t^3)\end{gathered}d=2: (t, t2)d=3: (t, t2, t3)\begin{aligned}d &= 2:\ (t,\ t^2)\\[4pt]d &= 3:\ (t,\ t^2,\ t^3)\end{aligned}

d=2d=2 は放物線です。d=3d=3 の地図 z0=1z_0=1 の座標を (x,y,z)=(z1/z0, z2/z0, z3/z0)(x,y,z)=(z_1/z_0,\ z_2/z_0,\ z_3/z_0) とすれば、第1回のねじれ3次曲線 V(y−x2, z−x3)V(y-x^2,\ z-x^3) そのものです。

CdC_d の点 [1:t:⋯:td][1:t:\dots:t^d] では、どの座標も1つ前の座標の tt 倍です(zi+1=tziz_{i+1}=tz_i)。この「隣どうしの比がそろう」という条件を、座標を2行に並べたハンケル行列の階数で表します。

Hd=(z0z1⋯zd−1z1z2⋯zd)Hd(νd(x))=(x0d−1−ix1i(x0x1))i=0,…,d−1\begin{aligned} &H_d=\begin{pmatrix} z_0&z_1&\cdots&z_{d-1}\\ z_1&z_2&\cdots&z_d\end{pmatrix}\\[6pt] &H_d\bigl(\nu_d(x)\bigr)\\ &\quad=\Bigl(x_0^{d-1-i}x_1^{i}\begin{pmatrix}x_0\\x_1\end{pmatrix}\Bigr)_{i=0,\dots,d-1} \end{aligned}

CdC_d の点では、HdH_d のどの列も (x0,x1)(x_0,x_1) の定数倍なので、階数は1です。逆も成り立つことを次の定理で示します。

定理5 有理正規曲線の方程式 [1, 演習2.12(a)(b), p.17; 2, 演習3.4(a), p.32]

kk を体、d≥2d\geq2 とし、HdH_d の2次の小行列式を mij=zizj+1−zi+1zjm_{ij}=z_iz_{j+1}-z_{i+1}z_j(0≤i<j≤d−10\leq i<j\leq d-1、(d2)\binom d2 個)とする。

(1) Cd={[z]∈Pd∣rank⁡Hd≤1}=V+(mij)C_d=\{[z]\in\mathbb{P}^d\mid\operatorname{rank}H_d\leq1\}=V_+\bigl(m_{ij}\bigr)。
(2) zi↦x0d−ix1iz_i\mapsto x_0^{d-i}x_1^i で定まる環準同型 θd ⁣:k[z0,…,zd]→k[x0,x1]\theta_d\colon k[z_0,\dots,z_d]\to k[x_0,x_1] の核は、mijm_{ij} で生成される。
(3) kk が無限体なら、CdC_d の上で0になる斉次式で生成されるイデアル I(Cd)I(C_d) は Ker⁡θd\operatorname{Ker}\theta_d に等しい。

証明
  1. (1) の ⊆\subseteq:上で見たとおり、CdC_d の点では HdH_d の列がすべて (x0,x1)(x_0,x_1) の定数倍である。
  2. (1) の ⊇\supseteq:rank⁡Hd≤1\operatorname{rank}H_d\leq1 の点 [z][z] で、zr≠0z_r\neq0 となる最小の rr をとる。1≤r≤d−11\leq r\leq d-1 はありえない。

    1≤r≤d−11\leq r\leq d-1 なら、第 r−1r-1 列と第 rr 列の小行列式は zr−1zr+1−zr2=−zr2≠0z_{r-1}z_{r+1}-z_r^2=-z_r^2\neq0 となり(zr−1=0z_{r-1}=0 なので)、階数が2になってしまう。

  3. r=dr=d なら [z]=[0:⋯:0:1]=νd([0:1])[z]=[0:\dots:0:1]=\nu_d([0:1])。r=0r=0 なら t=z1/z0t=z_1/z_0 として zi=z0tiz_i=z_0t^i となり、[z]=νd([1:t])[z]=\nu_d([1:t])。

    第0列 (z0,z1)(z_0,z_1) は0でないので、階数が1以下なら、どの列 (zi,zi+1)(z_i,z_{i+1}) も ci(z0,z1)c_i(z_0,z_1) と書ける。すると zi+1=ciz1=(zi/z0)z1=tziz_{i+1}=c_iz_1=(z_i/z_0)z_1=tz_i で、帰納的に zi=z0tiz_i=z_0t^i である。

  4. (2) θd(mij)=x0d−ix1i⋅x0d−j−1x1j+1−x0d−i−1x1i+1⋅x0d−jx1j=0\theta_d(m_{ij})=x_0^{d-i}x_1^i\cdot x_0^{d-j-1}x_1^{j+1}-x_0^{d-i-1}x_1^{i+1}\cdot x_0^{d-j}x_1^j=0 なので、mijm_{ij} は核に入る。
  5. 小行列式を法として、どの単項式も z0azjzdbz_0^az_jz_d^b(0<j<d0<j<d)か z0azdbz_0^az_d^b の形(標準形)に書き換えられる。

    1≤i≤j≤d−11\leq i\leq j\leq d-1 のとき zizj−zi−1zj+1=−mi−1,jz_iz_j-z_{i-1}z_{j+1}=-m_{i-1,j} なので、単項式の中の zizjz_iz_j を zi−1zj+1z_{i-1}z_{j+1} に置き換えてよい。置き換えるたびに添字の2乗の和は (i−1)2+(j+1)2−i2−j2=2(j−i)+2>0(i-1)^2+(j+1)^2-i^2-j^2=2(j-i)+2>0 だけ増え、上限があるので、いつか止まる。

    止まったときには、1,…,d−11,\dots,d-1 の添字をもつ変数が1個以下しか残っていない。これが標準形である。置き換えで θd\theta_d の値は変わらない。

  6. mm 次の標準形は、θd\theta_d で x0dm−ex1ex_0^{dm-e}x_1^e(e=0,…,dme=0,\dots,dm)に1対1に移る。

    θd(z0azjzdb)=x0dm−ex1e\theta_d(z_0^az_jz_d^b)=x_0^{dm-e}x_1^e、e=j+dbe=j+db である。ee を dd で割った商が bb、余りが jj なので、ee から標準形がただ1つに決まる(余りが0なら z0m−bzdbz_0^{m-b}z_d^b)。

  7. f∈Ker⁡θdf\in\operatorname{Ker}\theta_d を斉次成分ごとに標準形の和 ∑eceNe\sum_ec_eN_e に直すと、θd(f)=∑ecex0dm−ex1e=0\theta_d(f)=\sum_ec_ex_0^{dm-e}x_1^e=0 から ce=0c_e=0 で、ff は mijm_{ij} で生成されるイデアルに入る。

    θd\theta_d は次数を dd 倍にするので、核は斉次成分ごとに考えてよい。ff とその標準形の差は小行列式で生成されるイデアルに入り、標準形の側が0になる。

  8. (3) 斉次式 ff が CdC_d の上で0になることは、θd(f)(x0,x1)=f(νd(x))\theta_d(f)(x_0,x_1)=f\bigl(\nu_d(x)\bigr) がすべての (x0,x1)∈k2(x_0,x_1)\in k^2 で0になることと同じで、kk が無限体なら θd(f)=0\theta_d(f)=0 と同値である。

    無限体の上で、すべての点で0になる多項式は0である(1変数ずつ、無限個の根をもつ多項式は0であることを使う)。第1回で I(C)=JI(C)=J を確かめたときと同じ理由である。

(1) はどんな体でも成り立ち、像は斉次式の零点集合、つまり Pd\mathbb{P}^d の閉集合です。(3) で無限体を仮定するのは、有限体では CdC_d の点が有限個しかなく、CdC_d の上で0になる式が Ker⁡θd\operatorname{Ker}\theta_d より多くなるからです。

例6 d=2, 3, 4 の方程式

(1) d=2d=2:小行列式は z0z2−z12z_0z_2-z_1^2 の1つで、C2C_2 は円錐曲線 z0z2=z12z_0z_2=z_1^2 である。

(2) d=3d=3:小行列式は次の3つである。地図 z0=1z_0=1(座標 x,y,zx,y,z)では右の式になる。

q1=z0z2−z12 ⇝ y−x2q2=z0z3−z1z2 ⇝ z−xyq3=z1z3−z22 ⇝ xz−y2q_1=z_0z_2-z_1^2\ \leadsto\ y-x^2\qquad q_2=z_0z_3-z_1z_2\ \leadsto\ z-xy\qquad q_3=z_1z_3-z_2^2\ \leadsto\ xz-y^2q1=z0z2−z12 ⇝ y−x2q2=z0z3−z1z2 ⇝ z−xyq3=z1z3−z22 ⇝ xz−y2\begin{gathered}q_1=z_0z_2-z_1^2\ \leadsto\ y-x^2\\q_2=z_0z_3-z_1z_2\ \leadsto\ z-xy\\q_3=z_1z_3-z_2^2\ \leadsto\ xz-y^2\end{gathered}q1=z0z2−z12 ⇝ y−x2q2=z0z3−z1z2 ⇝ z−xyq3=z1z3−z22 ⇝ xz−y2\begin{aligned}q_1 &= z_0z_2-z_1^2\ \leadsto\ y-x^2\\[4pt]q_2 &= z_0z_3-z_1z_2\ \leadsto\ z-xy\\[4pt]q_3 &= z_1z_3-z_2^2\ \leadsto\ xz-y^2\end{aligned}

(3) d=4d=4:小行列式は (42)=6\binom42=6 個ある。

z0z2−z12z0z3−z1z2z0z4−z1z3z1z3−z22z1z4−z2z3z2z4−z32z_0z_2-z_1^2\quad z_0z_3-z_1z_2\quad z_0z_4-z_1z_3\quad z_1z_3-z_2^2\quad z_1z_4-z_2z_3\quad z_2z_4-z_3^2z0z2−z12z0z3−z1z2z0z4−z1z3z1z3−z22z1z4−z2z3z2z4−z32\begin{gathered}z_0z_2-z_1^2\\z_0z_3-z_1z_2\\z_0z_4-z_1z_3\\z_1z_3-z_2^2\\z_1z_4-z_2z_3\\z_2z_4-z_3^2\end{gathered}

k=Qk=\mathbb{Q} で、ν4([1:2])=[1:2:4:8:16]\nu_4([1:2])=[1:2:4:8:16] はどれも0にする(例えば 1⋅16−2⋅8=01\cdot16-2\cdot8=0)。1か所だけ変えた [1:2:4:8:15][1:2:4:8:15] では z0z4−z1z3=−1z_0z_4-z_1z_3=-1、z2z4−z32=−4z_2z_4-z_3^2=-4 で、C4C_4 に乗らない。

証明の標準形を d=3, m=2d=3,\ m=2 で書くと、z12→z0z2z_1^2\to z_0z_2、z1z2→z0z3z_1z_2\to z_0z_3、z22→z1z3z_2^2\to z_1z_3 の3つの置き換えです。2次の単項式10個は、7個の標準形 z02, z0z1, z0z2, z0z3, z1z3, z2z3, z32z_0^2,\ z_0z_1,\ z_0z_2,\ z_0z_3,\ z_1z_3,\ z_2z_3,\ z_3^2 にまとまります。これらは θ3\theta_3 で x06−ex1ex_0^{6-e}x_1^e(e=0,…,6e=0,\dots,6)に移ります。核の2次の部分は 10−7=310-7=3 次元で、q1,q2,q3q_1,q_2,q_3 が基底です。

第1回では、ねじれ3次曲線をアフィン空間の中で2本の式 y−x2, z−x3y-x^2,\ z-x^3 で定義しました。射影空間では、この2本だけでは足りません。

例7 第1回のねじれ3次曲線の射影閉包 [1, 演習2.9(b), p.16; 1, 演習2.12(d), p.18]

kk を体とする。C=V(y−x2, z−x3)⊆A3C=V(y-x^2,\ z-x^3)\subseteq\mathbb{A}^3 を P3\mathbb{P}^3 の地図 z0≠0z_0\neq0 の中の曲線とみると、C3=C∪{[0:0:0:1]}C_3=C\cup\{[0:0:0:1]\} である。

一方、2つの生成元を第5回の定義7のように斉次化すると z0z2−z12z_0z_2-z_1^2 と z02z3−z13z_0^2z_3-z_1^3 になり、その共通零点は

V+(z0z2−z12, z02z3−z13)=C3∪{z0=z1=0}\begin{aligned} &V_+\bigl(z_0z_2-z_1^2,\ z_0^2z_3-z_1^3\bigr)\\ &\quad=C_3\cup\{z_0=z_1=0\} \end{aligned}

で、直線が1本余分に入る。例えば [0:0:1:0][0:0:1:0] はこの集合に入るが、q3=z1z3−z22q_3=z_1z_3-z_2^2 の値は −1-1 で、C3C_3 には乗らない。

証明
  1. z0≠0z_0\neq0 の部分:z0=1z_0=1 とおくと2つの式は y−x2y-x^2、z−x3z-x^3 になり、CC である。
  2. z0=0z_0=0 の部分:1つめの式から z12=0z_1^2=0、つまり z1=0z_1=0 で、2つめの式は自動的に0になる。よって直線 {[0:0:a:b]}\{[0:0:a:b]\} が丸ごと入る。
  3. C3C_3 の点で z0=0z_0=0 となるのは ν3([0:1])=[0:0:0:1]\nu_3([0:1])=[0:0:0:1] だけで、これはこの直線の上にある。

アフィンの部分 CC のイデアルの生成元を斉次化しても、射影閉包のイデアルの生成元になるとは限りません。ハーツホーンの演習2.9(b) は、まさにこの例でそれを確かめさせています。

では q1,q2,q3q_1,q_2,q_3 のうち2つなら足りるでしょうか。これも足りません。どの2つを選んでも、直線が1本余ります。

命題8 2つの2次曲面の交わり [1, 演習2.16(a), p.18; 1, 演習2.17(c), p.19]

kk を体とし、q1,q2,q3q_1,q_2,q_3 を例6(2) の2次式とする。

(1) 次の3つが成り立つ。

V+(q1,q3)=C3∪{z1=z2=0}V+(q2,q3)=C3∪{z2=z3=0}V+(q1,q2)=C3∪{z0=z1=0}V_+(q_1,q_3)=C_3\cup\{z_1=z_2=0\}\quad V_+(q_2,q_3)=C_3\cup\{z_2=z_3=0\}\quad V_+(q_1,q_2)=C_3\cup\{z_0=z_1=0\}V+(q1,q3)=C3∪{z1=z2=0}V+(q2,q3)=C3∪{z2=z3=0}V+(q1,q2)=C3∪{z0=z1=0}\begin{gathered}V_+(q_1,q_3)=C_3\cup\{z_1=z_2=0\}\\V_+(q_2,q_3)=C_3\cup\{z_2=z_3=0\}\\V_+(q_1,q_2)=C_3\cup\{z_0=z_1=0\}\end{gathered}V+(q1,q3)=C3∪{z1=z2=0}V+(q2,q3)=C3∪{z2=z3=0}V+(q1,q2)=C3∪{z0=z1=0}\begin{aligned}V_+(q_1,q_3) &= C_3\cup\{z_1=z_2=0\}\\[4pt]V_+(q_2,q_3) &= C_3\cup\{z_2=z_3=0\}\\[4pt]V_+(q_1,q_2) &= C_3\cup\{z_0=z_1=0\}\end{aligned}

(2) Ker⁡θ3\operatorname{Ker}\theta_3 は2つの元では生成できない。斉次でない元を使っても同じである。

証明
  1. q1,q2,q3q_1,q_2,q_3 の間には、次の2つの恒等式がある。
    z0q3−z1q2+z2q1=0z1q3−z2q2+z3q1=0z_0q_3-z_1q_2+z_2q_1=0\qquad z_1q_3-z_2q_2+z_3q_1=0z0q3−z1q2+z2q1=0z1q3−z2q2+z3q1=0\begin{gathered}z_0q_3-z_1q_2+z_2q_1=0\\z_1q_3-z_2q_2+z_3q_1=0\end{gathered}z0q3−z1q2+z2q1=0z1q3−z2q2+z3q1=0\begin{aligned}z_0q_3-z_1q_2+z_2q_1 &= 0\\[4pt]z_1q_3-z_2q_2+z_3q_1 &= 0\end{aligned}

    展開すれば確かめられる。それぞれ、H3H_3 の1行目または2行目をもう一度上に重ねた 3×33\times3 行列の行列式を、重ねた行で展開したものである(同じ行が2つあるので0)。

  2. (1) の1つめ:q1=q3=0q_1=q_3=0 の点では、恒等式から z1q2=z2q2=0z_1q_2=z_2q_2=0。(z1,z2)≠(0,0)(z_1,z_2)\neq(0,0) なら q2=0q_2=0 となり、定理5(1) から点は C3C_3 に乗る。(z1,z2)=(0,0)(z_1,z_2)=(0,0) の点では q1=q3=0q_1=q_3=0 が成り立つ。
  3. 残りの2つも同じ。q2=q3=0q_2=q_3=0 なら z2q1=z3q1=0z_2q_1=z_3q_1=0、q1=q2=0q_1=q_2=0 なら z0q3=z1q3=0z_0q_3=z_1q_3=0 で、余るのは z2=z3=0z_2=z_3=0、z0=z1=0z_0=z_1=0 の直線である。どちらの直線の上でも2つの式が0になることは、代入すれば分かる。
  4. (2) I=Ker⁡θ3I=\operatorname{Ker}\theta_3、M=(z0,z1,z2,z3)M=(z_0,z_1,z_2,z_3) とおく。II の元は2次以上の項だけからなるので、MIMI の元は3次以上の項だけからなる。

    θ3\theta_3 は rr 次の斉次式を 3r3r 次の斉次式に移すので、II の元の斉次成分はどれも II に入る。0でない定数 cc は θ3(c)=c≠0\theta_3(c)=c\neq0 である。1次式も、a≠0a\neq0 なら θ3(a0z0+⋯+a3z3)=a0x03+a1x02x1+a2x0x12+a3x13\theta_3(a_0z_0+\dots+a_3z_3)=a_0x_0^3+a_1x_0^2x_1+a_2x_0x_1^2+a_3x_1^3 は0でない。よって II の元に0次と1次の成分はない。

  5. I=(g1,g2)I=(g_1,g_2) と書けたとすると、II の2次の部分は g1,g2g_1,g_2 の2次の成分で張られ、2次元以下になる。しかし2次の部分は3次元である。

    f=r1g1+r2g2∈If=r_1g_1+r_2g_2\in I の係数 rir_i を、定数項 cic_i と MM の元の和に分けると、f−c1g1−c2g2f-c_1g_1-c_2g_2 は MIMI に入り、2次の成分をもたない。よって ff の2次の成分は、g1,g2g_1,g_2 の2次の成分の c1,c2c_1,c_2 による1次結合である。

    II の2次の部分が q1,q2,q3q_1,q_2,q_3 で張られる3次元の空間であることは、上の標準形の計算で見た。

余る直線は、どれも C3C_3 と2点で交わるか接しています。{z1=z2=0}\{z_1=z_2=0\} は ν3(0)=[1:0:0:0]\nu_3(0)=[1:0:0:0] と ν3(∞)=[0:0:0:1]\nu_3(\infty)=[0:0:0:1] を結ぶ直線です。{z2=z3=0}\{z_2=z_3=0\} は ν3(0)\nu_3(0) での接線(地図の中の xx 軸)、{z0=z1=0}\{z_0=z_1=0\} は ν3(∞)\nu_3(\infty) での接線です。

ハーツホーンの演習2.17(c) は、2次式と3次式の2本なら集合としては C3C_3 を切り出せることも問うています。2本の式で集合として切り出せても、イデアルは2つの元では生成できない例になっています。

ドラッグで回せます

青い柱面 q1: y=x2q_1:\ y=x^2 と緑の錐 q3: xz=y2q_3:\ xz=y^2 の交わりは、ねじれ3次曲線 CC(オレンジ)と zz 軸(黒)です。柱面の上では xz−y2=x(z−x3)xz-y^2=x(z-x^3) なので、x=0x=0 の部分と z=x3z=x^3 の部分に分かれます。「真上」から見ると柱面は放物線 y=x2y=x^2 に、zz 軸は原点の1点に潰れます。

紫の鞍面 q2: z=xyq_2:\ z=xy と錐 q3q_3 の交わりは、CC と xx 軸です。鞍面の上では xz−y2=y(x2−y)xz-y^2=y(x^2-y) で、y=0y=0 の部分が xx 軸、y=x2y=x^2 の部分が CC です。xx 軸は原点で CC に接しています。

柱面 q1q_1 と鞍面 q2q_2 の交わりは、この図の中では CC だけに見えます。余分な直線 z0=z1=0z_0=z_1=0 は無限遠にあり、z0=1z_0=1 の地図には写りません。

3つの2次曲面を全部とると、交わりはちょうど CC になります。どの2つでも直線が1本余ります。

図2具体例地図 z0=1z_0=1 の中で、ねじれ3次曲線 CC(オレンジ)と、それを含む3つの2次曲面 q1 ⁣:y=x2q_1\colon y=x^2(青の柱面)、q2 ⁣:z=xyq_2\colon z=xy(紫の鞍面)、q3 ⁣:xz=y2q_3\colon xz=y^2(緑の錐)を描きました。最初の3段階では、2つずつ表示されます。1・2段階目の交わりは CC と黒い直線です。回すと、黒い直線が2つの面の両方に乗っていて、CC とは別の部品であることが分かります。3段階目の q1,q2q_1,q_2 では、余る直線が無限遠にあるので図には現れません。

超平面とちょうど d 点で交わる

Pd\mathbb{P}^d の超平面 Ha ⁣:a0z0+a1z1+⋯+adzd=0H_a\colon a_0z_0+a_1z_1+\dots+a_dz_d=0(a≠0a\neq0)と CdC_d の交わりを求めます。zi=x0d−ix1iz_i=x_0^{d-i}x_1^i を代入すると、dd 次の2元形式が出てきます。

A(x0,x1)=∑i=0dai x0d−ix1iνd(x)∈Ha  ⟺  A(x0,x1)=0A(x_0,x_1)=\sum_{i=0}^{d}a_i\,x_0^{d-i}x_1^i\qquad \nu_d(x)\in H_a\iff A(x_0,x_1)=0A(x0,x1)=∑i=0dai x0d−ix1iνd(x)∈Ha  ⟺  A(x0,x1)=0\begin{gathered}A(x_0,x_1)=\sum_{i=0}^{d}a_i\,x_0^{d-i}x_1^i\\\nu_d(x)\in H_a\iff A(x_0,x_1)=0\end{gathered}A(x0,x1)=∑i=0dai x0d−ix1iνd(x)∈Ha  ⟺  A(x0,x1)=0\begin{aligned}A(x_0,x_1) &= \sum_{i=0}^{d}a_i\,x_0^{d-i}x_1^i\\[4pt]\nu_d(x)\in H_a &\iff A(x_0,x_1)\\&= 0\end{aligned}

超平面の式の係数が、そのまま AA の係数になっています。地図 x0=1x_0=1 では、A(1,t)=a0+a1t+⋯+adtdA(1,t)=a_0+a_1t+\dots+a_dt^d の根 tt が交点です。

命題9 超平面との交わり

kk を体、d≥1d\geq1、a≠0a\neq0 とし、AA を上の2元形式とする。

(1) Cd∩Ha=νd({[x]∈P1∣A(x)=0})C_d\cap H_a=\nu_d\bigl(\{[x]\in\mathbb{P}^1\mid A(x)=0\}\bigr) で、これは dd 点以下である。kk が代数閉体なら、根の重複度で数えてちょうど dd 点である。
(2) CdC_d の相異なる d+1d+1 点は、1つの超平面に乗らない。とくに、kk が dd 個以上の元をもてば、CdC_d はどの超平面にも含まれない。

証明
  1. (1) の等式は上の代入そのもの。νd\nu_d は単射(命題3)なので、交点の数は AA の零点の数に等しい。
  2. a≠0a\neq0 で、単項式 x0d−ix1ix_0^{d-i}x_1^i は1次独立なので A≠0A\neq0 である。AA の零点は dd 個以下である。

    A(1,t)=∑aitiA(1,t)=\sum a_it^i は0でない多項式で、次数は dd 以下である。x0≠0x_0\neq0 の零点はその根なので、次数の数以下しかない。∞=[0:1]\infty=[0:1] が零点になるのは ad=0a_d=0 のときだけで、そのとき A(1,t)A(1,t) の次数は d−1d-1 以下である。どちらの場合も合計は dd 以下になる。

  3. 代数閉体なら、第11回の命題10より、AA を O(d)\mathcal{O}(d) の切断とみた零点は重複度こみでちょうど dd 個である。
  4. (2) d+1d+1 点が HaH_a に乗れば、AA が d+1d+1 個の零点をもち、(1) に反する。P1(k)\mathbb{P}^1(k) は #k+1≥d+1\#k+1\geq d+1 点あるので、CdC_d も d+1d+1 点以上ある。

(2) を行列式で書くと、ヴァンデルモンド行列式になります。点 νd([si:ti])\nu_d([s_i:t_i])(i=0,…,di=0,\dots,d)を行に並べた行列の行列式は、次の積です。

det⁡(sid−jtij)0≤i,j≤d=∏0≤i<j≤d(sitj−sjti)\det\bigl(s_i^{d-j}t_i^{j}\bigr)_{0\leq i,j\leq d}=\prod_{0\leq i<j\leq d}\bigl(s_it_j-s_jt_i\bigr)det⁡(sid−jtij)0≤i,j≤d=∏0≤i<j≤d(sitj−sjti)\begin{aligned}\det\bigl(s_i^{d-j}t_i^{j}\bigr)_{0\leq i,j\leq d} &= \prod_{0\leq i<j\leq d}\bigl(s_it_j-s_jt_i\bigr)\end{aligned}

si=1s_i=1 のときが普通のヴァンデルモンド行列式 ∏i<j(tj−ti)\prod_{i<j}(t_j-t_i) です。点が相異なれば各因子は0でないので、d+1d+1 個の行は1次独立で、1つの超平面には乗りません。

例10 ねじれ3次曲線と平面

(1) k=Qk=\mathbb{Q}。C3C_3 の4点 t=0,1,−1,2t=0,1,-1,2 を並べると、

det⁡(100011111−11−11248)=(1−0)(−1−0)(2−0)(−1−1)(2−1)(2+1)=12≠0\begin{aligned} &\det\begin{pmatrix}1&0&0&0\\1&1&1&1\\1&-1&1&-1\\1&2&4&8\end{pmatrix}\\ &\quad=(1-0)(-1-0)(2-0)\\ &\qquad(-1-1)(2-1)(2+1)\\ &\quad=12\neq0 \end{aligned}

である。t=2t=2 を ∞=[0:1]\infty=[0:1] に替えると、行 (0,0,0,1)(0,0,0,1) が入り、行列式は 1⋅(−1)⋅1⋅(−2)⋅1⋅1=21\cdot(-1)\cdot1\cdot(-2)\cdot1\cdot1=2 になる。

(2) k=Rk=\mathbb{R} または C\mathbb{C}。地図 z0=1z_0=1(座標 x,y,zx,y,z)の平面と、交点を表にまとめる。

平面HaH_aA(x0,x1)A(x_0,x_1)交点の tt
z=xz=xz3−z1z_3-z_1x1(x1−x0)(x1+x0)x_1(x_1-x_0)(x_1+x_0)0, 1, −10,\ 1,\ -1
y=14y=\tfrac144z2−z04z_2-z_0x0(2x1−x0)(2x1+x0)x_0(2x_1-x_0)(2x_1+x_0)12, −12, ∞\tfrac12,\ -\tfrac12,\ \infty
4z=3x−14z=3x-14z3−3z1+z04z_3-3z_1+z_0(2x1−x0)2(x1+x0)(2x_1-x_0)^2(x_1+x_0)12\tfrac12(2重), −1,\ -1
z=0z=0z3z_3x13x_1^300(3重)
z=−xz=-xz3+z1z_3+z_1x1(x12+x02)x_1(x_1^2+x_0^2)0, i, −i0,\ i,\ -i

(2) の2行目では、平面 y=14y=\tfrac14 は地図の中で2点 (±12, 14, ±18)(\pm\tfrac12,\ \tfrac14,\ \pm\tfrac18) としか交わりません。3つめの交点は無限遠点 [0:0:0:1][0:0:0:1] で、式 4z2−z04z_2-z_0 は z0=z2=0z_0=z_2=0 で0になります。

3行目の平面 4z=3x−14z=3x-1 は t=12t=\tfrac12 で曲線に接し、4行目の z=0z=0 は原点で3重に接しています。接する平面では、交点は重根として数えられます。5行目の z=−xz=-x では、実数の交点は原点だけで、残りの2つは複素数の点です。

ドラッグで回せます

平面 z=xz=x と CC の交点は t3−t=0t^3-t=0 の根 t=−1,0,1t=-1,0,1 で、3点 (−1,1,−1),(0,0,0),(1,1,1)(-1,1,-1),(0,0,0),(1,1,1) です。「yy 軸から」見ると平面が1本の線に見え、曲線がそれを3回横切ります。

平面 y=14y=\tfrac14 との交点は t=±12t=\pm\tfrac12 の2点しか見えません。式 4z2−z0=04z_2-z_0=0 は z0=0z_0=0 の点 [0:0:0:1][0:0:0:1] も含み、これが3つめの交点です。CC の両端は zz 軸の向きに無限遠へ延びていき、この向きは平面 y=14y=\tfrac14 と平行です。「zz 軸から」見ると、平面は線 y=14y=\tfrac14 に、CC は放物線に見えます。

平面 4z=3x−14z=3x-1 は t=12t=\tfrac12 で CC に接し、t=−1t=-1 でもう一度交わります。式は 4t3−3t+1=(2t−1)2(t+1)4t^3-3t+1=(2t-1)^2(t+1) で、接点は2重根です。「yy 軸から」見ると、曲線が線に接してから横切るのが見えます。

平面 z=0z=0 との交点は t3=0t^3=0 の3重根で、原点だけです。「yy 軸から」見ると、曲線 z=x3z=x^3 が原点で線に接しながら横切ります。

平面 z=−xz=-x は t3+t=t(t2+1)t^3+t=t(t^2+1) で、実数の交点は原点だけです。残りの2つ t=±it=\pm i は複素数の点なので、実数の図には現れません。

図3具体例例10(2) の5枚の平面(青)と、ねじれ3次曲線 CC(オレンジ)の交点(黒)。段階のボタンで平面を切り替えます。「yy 軸から」見ると、yy を含まない平面は1本の線に見え、曲線がその線を何回、どう横切るかが数えられます。回すと、その交点がどれも1枚の平面に乗っていることが分かります。数えられない交点は、無限遠点(2段目)と複素数の点(5段目)です。

交点の数がいつも dd になることから、CdC_d は dd 次の曲線だと言えます。ハーツホーンは次数をヒルベルト多項式で定義していますが、曲線の場合、それは超平面との交点を重複度こみで数えた数に一致します[1, §I.7 の定義, p.71; 1, 定理7.7, p.72–73]。

次数が dd で、どの超平面にも含まれない Pd\mathbb{P}^d の曲線は、実は有理正規曲線しかありません。

定理11 [2, 演習3.4(b)(c)(d), p.32; 1, 例7.8.5, p.216–217]

kk を代数閉体、d≤nd\leq n とし、X⊆PnX\subseteq\mathbb{P}^n を dd 次の非特異な射影曲線で、どの超平面にも含まれないものとする。このとき d=nd=n、XX の種数は0で、XX は CnC_n を Pn\mathbb{P}^n の射影変換で移したものである。

この記事では証明しません。ハーツホーンの例7.8.5 は、P1\mathbb{P}^1 と同型で平面に含まれない P3\mathbb{P}^3 の非特異な3次曲線が、射影変換でねじれ3次曲線に移ることを示しています。演習3.4(b) は、P1\mathbb{P}^1 と同型という仮定を外した形です。

同じ演習の (c)(d) から、射影空間の中の2次の曲線はある平面の中の円錐曲線で、3次の曲線は平面3次曲線かねじれ3次曲線のどちらかです。

種数0は、CdC_d が P1\mathbb{P}^1 と同型であることからも分かります(命題3、第16回の定義1)。

もう少し詳しくねじれ3次曲線の影と種数

C3C_3 に乗らない点 PP から平面へ射影した影を、3つの PP で求めます。影の式は、C3C_3 の点 [1:t:t2:t3][1:t:t^2:t^3] の座標を3つの1次式で読んで求めます。

P=[0:1:0:0]:[z0:z2:z3]=[1:t2:t3]z23=z0z32P=[0:0:1:0]:[z0:z1:z3]=[1:t:t3]z02z3=z13P=[0:1:0:1]:[z0:z2:z3−z1]=[1:t2:t3−t]Z2=Y(Y−1)2\begin{array}{lll} P=[0:1:0:0]: & [z_0:z_2:z_3]=[1:t^2:t^3] & z_2^3=z_0z_3^2\\ P=[0:0:1:0]: & [z_0:z_1:z_3]=[1:t:t^3] & z_0^2z_3=z_1^3\\ P=[0:1:0:1]: & [z_0:z_2:z_3-z_1]=[1:t^2:t^3-t] & Z^2=Y(Y-1)^2 \end{array}

1行目は xx 軸の向きの影で、第1回の命題17の尖点 y3=z2y^3=z^2 です。2行目は yy 軸の向きの影 z=x3z=x^3 で、第5回の y=x3y=x^3 と同じ曲線です。第5回の例11のとおり、無限遠点で尖ります。どの影も平面の3次曲線です。3行目は Y=t2, Z=t3−tY=t^2,\ Z=t^3-t とおいた地図の式で、t=±1t=\pm1 が同じ点 (1,0)(1,0) に写る結節点です(標数 ≠2\neq2)。

3つとも特異点をもつのは偶然ではありません。どの影でも tt は影の座標の有理式で書けるので(1行目なら t=z3/z2t=z_3/z_2)、影の幾何種数は0です。一方、非特異な平面3次曲線の種数は1です(第16回の命題5)。第16回の定理8の式 0=1−∑δP0=1-\sum\delta_P から、特異点はちょうど1つです。

射影の中心 PP は、1行目では ν3(0)\nu_3(0) での接線 {z2=z3=0}\{z_2=z_3=0\} の上に、2行目では ν3(∞)\nu_3(\infty) での接線 {z0=z1=0}\{z_0=z_1=0\} の上にあります。3行目では、ν3(1)=[1:1:1:1]\nu_3(1)=[1:1:1:1] と ν3(−1)=[1:−1:1:−1]\nu_3(-1)=[1:-1:1:-1] を結ぶ直線の上にあります。この3つの例では、中心が接線の上にあると尖点が、2点を結ぶ直線の上にあると結節点ができています。

PP が C3C_3 の上にあると、影の次数は1つ下がります。例えば P=[0:0:0:1]P=[0:0:0:1] からの影は [z0:z1:z2]=[1:t:t2][z_0:z_1:z_2]=[1:t:t^2] で、円錐曲線 z0z2=z12z_0z_2=z_1^2 です。

直線束の切断で読む

第11回の第11回の定理7では、P1\mathbb{P}^1 の上の直線束 O(d)\mathcal{O}(d) の大域切断が dd 次の2元形式で、次元が d+1d+1 であることを示しました。基底 x0d, x0d−1x1, …, x1dx_0^d,\ x_0^{d-1}x_1,\ \dots,\ x_1^d は、ちょうど νd\nu_d の座標 z0,…,zdz_0,\dots,z_d です。

νd∗(zi)=x0d−ix1iHa=V+(∑iaizi) ⟷ A=∑iaix0d−ix1i∈Γ(P1,O(d))\nu_d^{*}(z_i)=x_0^{d-i}x_1^i\qquad H_a=V_+\Bigl(\sum_ia_iz_i\Bigr)\ \longleftrightarrow\ A=\sum_ia_ix_0^{d-i}x_1^i\in\Gamma\bigl(\mathbb{P}^1,\mathcal{O}(d)\bigr)νd∗(zi)=x0d−ix1iHa=V+(∑iaizi) ⟷ A=∑iaix0d−ix1i∈Γ(P1,O(d))\begin{gathered}\nu_d^{*}(z_i)=x_0^{d-i}x_1^i\\H_a=V_+\Bigl(\sum_ia_iz_i\Bigr)\ \longleftrightarrow\ A=\sum_ia_ix_0^{d-i}x_1^i\in\Gamma\bigl(\mathbb{P}^1,\mathcal{O}(d)\bigr)\end{gathered}νd∗(zi)=x0d−ix1iHa=V+(∑iaizi) ⟷ A=∑iaix0d−ix1i∈Γ(P1,O(d))\begin{aligned}\nu_d^{*}(z_i) &= x_0^{d-i}x_1^i\\[4pt]H_a &= V_+\Bigl(\sum_ia_iz_i\Bigr)\ \longleftrightarrow\ A\\&= \sum_ia_ix_0^{d-i}x_1^i\in\Gamma\bigl(\mathbb{P}^1,\mathcal{O}(d)\bigr)\end{aligned}

つまり Pd\mathbb{P}^d の超平面は、O(d)\mathcal{O}(d) の0でない切断を定数倍の違いを無視したものと1対1に対応します。超平面と CdC_d の交点は、対応する切断の零点です。命題9(1) は、切断の零点の数が dd であるという第11回の命題の言い換えです。

逆に言えば、νd\nu_d は O(d)\mathcal{O}(d) の切断の基底を座標として並べた写像です。第11回の補足で見た「切断を並べて射影空間への射を作る」構成の、もっとも基本的な例になっています。

専門的な話非常に豊富な直線束と次数 dnd^n

直線束の切断で射影空間への埋め込みが作れるとき、その直線束を非常に豊富と呼びます。ハーツホーンの例7.6.1 は、Pn\mathbb{P}^n の O(d)\mathcal{O}(d)(d>0d>0)が dd 重埋め込みに対応し、非常に豊富であることを述べています[1, 例7.6.1, p.211]。

次数も計算できます。定理5の証明から、CdC_d の斉次座標環の mm 次の部分は x0dm−ex1ex_0^{dm-e}x_1^e(e=0,…,dme=0,\dots,dm)で張られ、次元は dm+1dm+1 です。ヒルベルト多項式は P(m)=dm+1P(m)=dm+1 で、次数は dd、算術種数は pa=−(P(0)−1)=0p_a=-(P(0)-1)=0 です[1, §I.7 の定義, p.71; 1, 演習7.2, p.74]。

νd(Pn)\nu_d(\mathbb{P}^n) では、mm 次の部分が k[x0,…,xn]k[x_0,\dots,x_n] の dmdm 次の部分と同じになり、次元は (dm+nn)\binom{dm+n}{n} です。mm の最高次の項は dnmn/n!d^nm^n/n! なので、次数は dnd^n になります[1, 演習7.1(a), p.74]。ヴェロネーゼ曲面なら 22=42^2=4 で、2枚の超平面の切り口(2本の円錐曲線)が4点で交わることと合っています。

dd 重埋め込みは、dd 次超曲面 V+(F)V_+(F) を超平面の切り口に変えます。PN\mathbb{P}^N から超平面を除くと AN\mathbb{A}^N なので、Pn∖V+(F)\mathbb{P}^n\setminus V_+(F) は AN\mathbb{A}^N の閉集合と同型になり、アフィン多様体です[1, 演習3.5, p.29]。

ヴェロネーゼ曲面:円錐曲線が超平面の切り口になる

P2\mathbb{P}^2 の2重埋め込み ν2 ⁣:P2→P5\nu_2\colon\mathbb{P}^2\to\mathbb{P}^5 の像をヴェロネーゼ曲面と呼びます[1, 演習2.13, p.18]。P5\mathbb{P}^5 の座標を zij=xixjz_{ij}=x_ix_j(0≤i≤j≤20\leq i\leq j\leq2)と名づけ、対称行列に並べます。

Z=(z00z01z02z01z11z12z02z12z22)Z(ν2(x))=x t ⁣x=(xixj)i,j\begin{aligned} Z&=\begin{pmatrix} z_{00}&z_{01}&z_{02}\\ z_{01}&z_{11}&z_{12}\\ z_{02}&z_{12}&z_{22}\end{pmatrix}\\[6pt] Z\bigl(\nu_2(x)\bigr)&=x\,{}^t\!x=\bigl(x_ix_j\bigr)_{i,j} \end{aligned}

x t ⁣xx\,{}^t\!x の各列は xx の定数倍なので、階数は1です。ここでも、逆が成り立ちます。

命題12 ヴェロネーゼ曲面の方程式

kk を体とする。ν2(P2)={[Z]∈P5∣rank⁡Z≤1}\nu_2(\mathbb{P}^2)=\{[Z]\in\mathbb{P}^5\mid\operatorname{rank}Z\leq1\} である。これは ZZ の2次の小行列式6つの共通零点である。

z00z11−z012z00z22−z022z11z22−z122z00z12−z01z02z01z12−z02z11z01z22−z02z12z_{00}z_{11}-z_{01}^2\quad z_{00}z_{22}-z_{02}^2\quad z_{11}z_{22}-z_{12}^2\quad z_{00}z_{12}-z_{01}z_{02}\quad z_{01}z_{12}-z_{02}z_{11}\quad z_{01}z_{22}-z_{02}z_{12}z00z11−z012z00z22−z022z11z22−z122z00z12−z01z02z01z12−z02z11z01z22−z02z12\begin{gathered}z_{00}z_{11}-z_{01}^2\\z_{00}z_{22}-z_{02}^2\\z_{11}z_{22}-z_{12}^2\\z_{00}z_{12}-z_{01}z_{02}\\z_{01}z_{12}-z_{02}z_{11}\\z_{01}z_{22}-z_{02}z_{12}\end{gathered}
証明
  1. ⊆\subseteq は上で見た。逆に Z≠0Z\neq0 を階数1以下の対称行列とし、0でない列 uu を1つとる。どの列も uu の定数倍なので、Z=u t ⁣wZ=u\,{}^t\!w と書ける(w≠0w\neq0)。
  2. 対称性から w=cuw=cu(c≠0c\neq0)で、Z=c u t ⁣uZ=c\,u\,{}^t\!u となり、[Z]=ν2([u])[Z]=\nu_2([u]) である。

    ui≠0u_i\neq0 となる ii をとる。u t ⁣w=t ⁣(u t ⁣w)=w t ⁣uu\,{}^t\!w={}^t\!(u\,{}^t\!w)=w\,{}^t\!u の第 ii 行を比べると ui t ⁣w=wi t ⁣uu_i\,{}^t\!w=w_i\,{}^t\!u で、w=(wi/ui) uw=(w_i/u_i)\,u となる。斉次座標では0でない定数倍を無視するので [c u t ⁣u]=[u t ⁣u][c\,u\,{}^t\!u]=[u\,{}^t\!u] である。

  3. 小行列式は、行の組3通りと列の組3通りで9個あるが、ZZ が対称なので、行と列を入れ替えた組は同じ式になり、6つにまとまる。

k=Qk=\mathbb{Q} で、ν2([1:2:3])\nu_2([1:2:3]) は Z=(123246369)Z=\begin{pmatrix}1&2&3\\2&4&6\\3&6&9\end{pmatrix} で、どの小行列式も0です(例えば 1⋅4−22=01\cdot4-2^2=0、2⋅6−3⋅4=02\cdot6-3\cdot4=0)。一方、Z=diag⁡(1,1,0)Z=\operatorname{diag}(1,1,0) の点 [z00:z11:z22:z01:z02:z12]=[1:1:0:0:0:0][z_{00}:z_{11}:z_{22}:z_{01}:z_{02}:z_{12}]=[1:1:0:0:0:0] では z00z11−z012=1z_{00}z_{11}-z_{01}^2=1 で、曲面に乗りません。

図1の底辺で見たように、直線 x2=0x_2=0 は ν2\nu_2 で円錐曲線に写ります。どの直線でも同じです。

命題13 直線の像は円錐曲線

kk を体とし、L⊆P2L\subseteq\mathbb{P}^2 を2点 [p],[q][p],[q] を通る直線とする。ν2(L)\nu_2(L) は P5\mathbb{P}^5 の中の平面 Π\Pi に含まれ、Π\Pi の中で C2C_2 と同じ円錐曲線である。

証明
  1. LL の点は [λp+μq][\lambda p+\mu q] と書け、その像は次の形をしている。
    (λp+μq) t(λp+μq)=λ2 p t ⁣p+λμ (p t ⁣q+q t ⁣p)+μ2 q t ⁣q\begin{aligned} &(\lambda p+\mu q)\,{}^t(\lambda p+\mu q)\\ &\quad=\lambda^2\,p\,{}^t\!p+\lambda\mu\,\bigl(p\,{}^t\!q+q\,{}^t\!p\bigr)\\ &\qquad+\mu^2\,q\,{}^t\!q \end{aligned}
  2. 3つの対称行列 p t ⁣p, p t ⁣q+q t ⁣p, q t ⁣qp\,{}^t\!p,\ p\,{}^t\!q+q\,{}^t\!p,\ q\,{}^t\!q は1次独立で、張る平面を Π\Pi とする。

    p,qp,q を e0,e1e_0,e_1 に移す正則行列 gg をとると、Z↦gZ t ⁣gZ\mapsto gZ\,{}^t\!g は対称行列の空間の線形同型で、3つの行列を E00, E01+E10, E11E_{00},\ E_{01}+E_{10},\ E_{11} に移す。これらは明らかに1次独立である。

  3. この基底での Π\Pi の座標は [λ2:λμ:μ2][\lambda^2:\lambda\mu:\mu^2] で、ν2(L)\nu_2(L) は C2=ν2(P1)C_2=\nu_2(\mathbb{P}^1) である。

次に、円錐曲線がどう見えるかを調べます。P5\mathbb{P}^5 の超平面 ∑i≤jcijzij=0\sum_{i\leq j}c_{ij}z_{ij}=0 を ν2\nu_2 で引き戻すと、zijz_{ij} に xixjx_ix_j を代入した2次形式になります。

命題14 円錐曲線と超平面 [1, 演習2.12, p.17–18; 1, 演習2.13, p.18]

kk を体とする。0でない c=(cij)i≤j∈k6c=(c_{ij})_{i\leq j}\in k^6 に対し、超平面 Hc ⁣:∑i≤jcijzij=0H_c\colon\sum_{i\leq j}c_{ij}z_{ij}=0 と2次形式 Fc=∑i≤jcijxixjF_c=\sum_{i\leq j}c_{ij}x_ix_j を考える。

(1) ν2−1(Hc)=V+(Fc)\nu_2^{-1}(H_c)=V_+(F_c)。つまり ν2\nu_2 は円錐曲線 V+(Fc)V_+(F_c) を、ヴェロネーゼ曲面と超平面の交わりに移す。
(2) c↦Fcc\mapsto F_c は線形同型 k6→k[x0,x1,x2]2=Γ(P2,O(2))k^6\to k[x_0,x_1,x_2]_2=\Gamma\bigl(\mathbb{P}^2,\mathcal{O}(2)\bigr) である。よって P5\mathbb{P}^5 の超平面と、2次形式を定数倍の違いを無視したものが1対1に対応する。

証明
  1. (1) は zij=xixjz_{ij}=x_ix_j の代入そのものである。
  2. (2) は、6つの単項式 xixjx_ix_j(i≤ji\leq j)が2次形式の空間の基底であることから従う。右の等号は第11回の定理19(d=2d=2 で次元6)である。

具体的に並べると、次のようになります。

x12+x22−x02⟷z11+z22−z00=0x0x2−x12⟷z02−z11=0x1x2⟷z12=0x02⟷z00=0\begin{alignedat}{2} &x_1^2+x_2^2-x_0^2 &&{}\longleftrightarrow z_{11}+z_{22}-z_{00}=0\\ &x_0x_2-x_1^2 &&{}\longleftrightarrow z_{02}-z_{11}=0\\ &x_1x_2 &&{}\longleftrightarrow z_{12}=0\\ &x_0^2 &&{}\longleftrightarrow z_{00}=0 \end{alignedat}

1行目は円、2行目は放物線の射影閉包で、どちらも曲面の超平面の切り口になります。3行目の2直線 x1=0x_1=0、x2=0x_2=0 の和は、命題13の2つの円錐曲線の和に写ります。4行目の x02x_0^2 は直線 x0=0x_0=0 を2重にしたもので、超平面 z00=0z_{00}=0 と曲面の交わりは、集合としてはその直線の像(円錐曲線)1本です。

P2\mathbb{P}^2 の中で「円錐曲線に乗る」という2次の条件が、P5\mathbb{P}^5 の中では「超平面に乗る」という1次の条件に変わりました。そのため、指定した点を通る円錐曲線は、連立1次方程式で求まります。

例15 5点を通る円錐曲線

k=Qk=\mathbb{Q} とし、平面 U0U_0 の5点 (0,0),(1,0),(0,1),(2,1),(1,2)(0,0),(1,0),(0,1),(2,1),(1,2) を通る円錐曲線を求める。点 (x,y)=[1:x:y](x,y)=[1:x:y] の像の座標を (z00,z11,z22,z01,z02,z12)=(1,x2,y2,x,y,xy)(z_{00},z_{11},z_{22},z_{01},z_{02},z_{12})=(1,x^2,y^2,x,y,xy) の順に並べると、

(100000110100101010141212114122)(c00c11c22c01c02c12)=0\begin{aligned} &\begin{pmatrix}1&0&0&0&0&0\\1&1&0&1&0&0\\1&0&1&0&1&0\\1&4&1&2&1&2\\1&1&4&1&2&2\end{pmatrix}\begin{pmatrix}c_{00}\\c_{11}\\c_{22}\\c_{01}\\c_{02}\\c_{12}\end{pmatrix}\\ &\quad=0 \end{aligned}

である。1〜3行目から c00=0c_{00}=0、c01=−c11c_{01}=-c_{11}、c02=−c22c_{02}=-c_{22}。これを4行目に入れると 2c11+2c12=02c_{11}+2c_{12}=0、5行目に入れると 2c22+2c12=02c_{22}+2c_{12}=0 で、c12=−c11c_{12}=-c_{11}、c22=c11c_{22}=c_{11} となる。c11=1c_{11}=1 とおくと

c=(0, 1, 1, −1, −1, −1)Fc=x12+x22−x0x1−x0x2−x1x2c=(0,\ 1,\ 1,\ -1,\ -1,\ -1)\qquad F_c=x_1^2+x_2^2-x_0x_1-x_0x_2-x_1x_2c=(0, 1, 1, −1, −1, −1)Fc=x12+x22−x0x1−x0x2−x1x2\begin{gathered}c=(0,\ 1,\ 1,\ -1,\ -1,\ -1)\\F_c=x_1^2+x_2^2-x_0x_1-x_0x_2-x_1x_2\end{gathered}c=(0, 1, 1, −1, −1, −1)Fc=x12+x22−x0x1−x0x2−x1x2\begin{aligned}c &= (0,\ 1,\ 1,\ -1,\ -1,\ -1)\\[4pt]F_c &= x_1^2+x_2^2-x_0x_1-x_0x_2-x_1x_2\end{aligned}c=(0, 1, 1, −1, −1, −1)Fc=x12+x22−x0x1=−x0x2−x1x2\begin{aligned}c &= (0,\ 1,\ 1,\ -1,\ -1,\ -1)\\[4pt]F_c &= x_1^2+x_2^2-x_0x_1\\&\phantom{=}{} -x_0x_2-x_1x_2\end{aligned}

が、定数倍を除いてただ1つの解である。地図の式は x2−xy+y2−x−y=0x^2-xy+y^2-x-y=0 で、この5点を通る円錐曲線は1本しかない。

x=1+u, y=1+vx=1+u,\ y=1+v とおくと式は u2−uv+v2=1u^2-uv+v^2=1 になり、(1,1)(1,1) を中心とする楕円です。点 (1,1)(1,1) では左辺が −1-1 で、楕円の内側にあります。

xx
yy
(0,0)(0,0)
(1,0)(1,0)
(0,1)(0,1)
(2,1)(2,1)
(1,2)(1,2)
x2−xy+y2−x−y=0x^2-xy+y^2-x-y=0
図4具体例例15の5点と、それを通る楕円 x2−xy+y2−x−y=0x^2-xy+y^2-x-y=0。5点の像を通る P5\mathbb{P}^5 の超平面が1枚に決まり、それを ν2\nu_2 で引き戻した2次形式がこの楕円の式です(図を作るプログラムで、係数を連立1次方程式から求めて確かめています)。

未知数は6個、式は5本なので、どんな5点でも0でない解はあります。どんな体でも、5点を通る円錐曲線は少なくとも1本あるわけです。

ただし、解が1つに決まるかどうかは点の位置によります。例えば5点のうち4点が直線 LL に乗るなら、LL と、残りの1点を通る任意の直線 L′L' の和 L∪L′L\cup L' がどれも5点を通ります。kk が無限体なら、そのような円錐曲線は無数にあります。

ハーツホーンの演習2.13 は、ヴェロネーゼ曲面の上のどの曲線も、ある超曲面との交わりとして書けることを問うています。円錐曲線の場合は、その超曲面を超平面に選べるというのが命題14です。

まとめ:次数を上げると方程式が1次になる

像写像方程式超平面の切り口
円錐曲線 C2C_2ν2 ⁣:P1→P2\nu_2\colon\mathbb{P}^1\to\mathbb{P}^2z0z2=z12z_0z_2=z_1^22点
ねじれ3次曲線 C3C_3ν3 ⁣:P1→P3\nu_3\colon\mathbb{P}^1\to\mathbb{P}^3q1,q2,q3q_1,q_2,q_3(2本では生成できない)3点
有理正規曲線 CdC_dνd ⁣:P1→Pd\nu_d\colon\mathbb{P}^1\to\mathbb{P}^dハンケル行列の (d2)\binom d2 個の小行列式dd 点(2元形式の根)
ヴェロネーゼ曲面ν2 ⁣:P2→P5\nu_2\colon\mathbb{P}^2\to\mathbb{P}^5対称行列の6個の小行列式円錐曲線
νd(Pn)\nu_d(\mathbb{P}^n)νd ⁣:Pn→PN\nu_d\colon\mathbb{P}^n\to\mathbb{P}^N(演習2.12)dd 次超曲面

dd 重埋め込みは、dd 次の単項式をすべて新しい座標にする写像です。そのおかげで、もとの空間の dd 次の式は、行き先では1次の式になります。この記事で調べた像は、どれも「階数が1以下」という2×2の小行列式で切り出されました。

次回:直線全体の空間

この記事では、点を dd 次の単項式の組に写し、像を2×2の小行列式で切り出しました。次は、点ではなく直線を1つの点とみなします。

次回は、P3\mathbb{P}^3 の直線全体の空間を扱います。直線を通る2点を並べた 2×42\times4 行列の2×2小行列式 pijp_{ij} をプリュッカー座標と呼び、これで直線が P5\mathbb{P}^5 の点になります。その点は2次超曲面 p12p34−p13p24+p14p23=0p_{12}p_{34}-p_{13}p_{24}+p_{14}p_{23}=0 に乗ります。

参考文献

  1. R. ハーツホーン(高橋宣能・松下大介 訳), 『代数幾何学 1』, 丸善出版, 2013.
  2. R. ハーツホーン(高橋宣能・松下大介 訳), 『代数幾何学 3』, 丸善出版, 2012.