この記事の要点
- 直線が乗る条件
- d 次の曲面に直線が乗る条件は d+1 個の式です。直線全体は4次元なので、3次曲面に乗る直線は有限個と見込めます。
- 27本
- 非特異な3次曲面の上には、ちょうど27本の直線があります。各直線は、ほかのちょうど10本と交わります。フェルマー3次曲面 x03+x13+x23+x33=0 では、27本を式で書き出せます。
- 6点のブローアップ
- P2 を一般の位置の6点でブローアップすると3次曲面になります。27本の内訳は、例外曲線6本、2点を通る直線15本、5点を通る円錐曲線6本です。
- 27本がすべて実数
- クレブシュの3次曲面では27本がすべて実数で、回せる立体図に全部描けます。回すと、どの組が本当に交わり、どの組がすれ違うだけかが分かります。
- 証明は、ステップの流れだけを短く書いています。「詳しく」の付いた行をクリックすると、そのステップの詳しい説明が開きます。説明の中にも開ける行があります。
- 定義・命題・定理には、記事全体で通し番号を振っています。
- もう少し詳しくは補足、専門的な話は先の回につながる話題です。どちらも開かずに読み進められます。
- 各ブロックの「AIに質問」を押すと、その部分の内容を入れた質問文で、お使いのAIを開けます。
前回の宿題
第19回では、P3 の直線全体を1つの空間 G(2,4) とみなしました(第19回の定義8)。直線はプリュッカー座標で P5 の点になり、その点全体は P5 の2次超曲面で、次元は4でした。
次元が4なので、直線に1つ条件を課すごとに、動ける次元が1つずつ減ります。「与えられた直線と交わる」は1つの条件で、4本の直線と交わる直線は有限個(一般には2本)になりました(第19回の定理14)。
第19回の最後に、3次曲面の上にはちょうど27本の直線があると予告しました。
第17回の2次曲面(この記事の座標では x0x3=x1x2)は、2つの直線の族で覆われていて、直線が無限にありました(第17回の命題8)。次数を1つ上げると、直線は有限個になります。
この記事では、まず直線が曲面に乗る条件を式で書き、次元を数えて「3次曲面では有限個」と見込みます。次に27本の定理を述べ、フェルマー3次曲面で27本を全部書き出します。最後に、6点のブローアップで27本の内訳を見て、27本がすべて実数のクレブシュ曲面を立体図で回します。
直線が曲面に乗る条件
この記事では k を代数閉体とし、P3 の点を斉次座標 [x0:x1:x2:x3] で書きます。第5回と同じく、点の代表は k4 の0でないベクトルで、定数倍の違いは無視します。標数は例ごとに断ります。
定義1 P3 の直線と曲面
(1) 1次独立な P,Q∈k4 について、点 [sP+tQ]([s:t]∈P1)の全体を P3 の直線と呼ぶ。これは、1次独立な2つの1次斉次式の共通零点と同じものである。
(2) F∈k[x0,x1,x2,x3] を、同じ既約因子を2回以上含まない d 次の斉次式(d≥1)とする。零点集合 S=V+(F) を d 次の曲面と呼ぶ。d=2,3 のとき2次曲面、3次曲面と呼ぶ。
直線 L が曲面 S に乗るかどうかは、F に sP+tQ を代入すれば分かります。代入した式は s,t の d 次の斉次式で、係数は d+1 個あります。
命題2 直線が曲面に乗る条件
S=V+(F) を d 次の曲面、L={[sP+tQ]} を直線とし、φ(s,t)=F(sP+tQ) と書く。
φ(s,t)=c0sd+c1sd−1t+⋯+cdtdφ(s,t)=c0sd+c1sd−1t+⋯+cdtdφ(s,t)=c0sd+c1sd−1t+⋯=+cdtd
(1) L⊆S であることと、c0=c1=⋯=cd=0 であることは同値である。
(2) L⊆S なら、L∩S は高々 d 点で、重複も込めて数えるとちょうど d 点である。
証明開く閉じる
(1) を示す。L⊆S は、すべての [s:t] で φ(s,t)=0 となることである。k は無限体なので、これは φ が多項式として0であること、つまり係数がすべて0であることと同値である。詳しく閉じる
φ=0 とする。φ(s,1) は0でない高々 d 次の多項式なので、根は高々 d 個である。無限体 k にはそれ以外の s があり、そこで φ(s,1)=0 となる。
(2) を
示す。φ=0 は d 次の斉次式で、k は代数閉体なので、1次式 d 個の積 ∏i=1d(βis−αit) に分かれる。L∩S の点は、根 [αi:βi] に当たる点 [αiP+βiQ] である。
(2) は、第9回の「直線と d 次曲線は d 点で交わる」(第9回の定理10)の、空間の曲面版です。証明はずっと簡単で、2変数の斉次式が1次式に分かれることだけを使います。
例3 代入して確かめる
標数が3でない体で、F=x03+x13+x23+x33 とする。ω を1の原始3乗根とする(ω2+ω+1=0)。
(1) 直線 x0=−x1, x2=−x3 は P=(1,−1,0,0)、Q=(0,0,1,−1) で張られ、φ=s3−s3+t3−t3=0。この直線は V+(F) に乗る。
(2) 直線 x0=x1=0 は P=(0,0,1,0)、Q=(0,0,0,1) で張られ、φ=s3+t3=(s+t)(s+ωt)(s+ω2t)。この直線は乗らず、3点 [0:0:1:−1]、[0:0:ω:−1]、[0:0:ω2:−1] で V+(F) と交わる。
(3) 2次曲面 x0x3−x1x2 と、λ∈k ごとの直線 {[s:t:λs:λt]} では、φ=s⋅λt−t⋅λs=0。λ を動かすと、乗っている直線が無限にある。
(3) の直線は、第17回の定義7の L[1:λ] です(第17回の行列 Z の2つの列が (1,λ) に比例します)。λ が1つの数で決まるので、この族は1次元です。
次元を数えてみます。直線全体 G(2,4) は4次元で、L⊆S は d+1 個の式 c0=⋯=cd=0 です。式が互いに独立に効くとすると、乗っている直線の全体は 4−(d+1)=3−d 次元になると見込めます。
| 次数 d | 条件の数 d+1 | 見込み 3−d | 実際 |
| 1(平面) | 2 | 2 | 平面の中の直線全体(P2 の直線と同じく2次元) |
| 2 | 3 | 1 | 非特異なら、1次元の族が2つ(第17回の命題8) |
| 3 | 4 | 0 | 非特異なら、ちょうど27本(この記事) |
| d≥4 | d+1 | 負 | 一般の曲面には直線がない(後の補足) |
3次曲面では条件の数と直線の空間の次元がちょうど釣り合い、乗っている直線は有限個と見込めます。次の定理は、この見込みが正しいこと、しかも本数が曲面によらず同じであることを述べています。
非特異な3次曲面の27本
平面曲線と同じく、曲面にも特異点を定めます。
定義4 曲面の特異点 [1, 演習5.8, p.51]
S=V+(F)⊆P3 を曲面とする。点 [a]∈S(a∈k4)で
∂x0∂F(a)=∂x1∂F(a)=∂x2∂F(a)=∂x3∂F(a)=0∂x0∂F(a)=∂x1∂F(a)=∂x2∂F(a)=∂x3∂F(a)=0
となるとき、[a] を S の特異点と呼ぶ。特異点がないとき S は非特異であるという。
偏微分は斉次式なので、0になるかどうかは代表 a の取り方によりません。平面曲線のときの第6回の命題17と同じ形です。
ハーツホーンの演習5.8 は、射影多様体の点が非特異であることを、生成元の偏微分の行列の階数で言い換えています。F が既約なら I(S)=(F) なので、上の定義はその特別な場合です。
非特異な曲面 V+(F) は既約です。F=GH(G,H は定数でない)と分かれたとすると、射影次元定理から V+(G)∩V+(H) は空でなく[1, 定理7.2, p.66]、そこでは ∂(GH)/∂xi=G∂H/∂xi+H∂G/∂xi=0 となって特異点ができるからです。
定理5 3次曲面の27本の直線 [2, 定理4.9, p.154–155; 2, 注意4.7.1, p.152; 2, 注意4.10.1, p.158]
k を代数閉体とし、S⊆P3 を非特異な3次曲面とする。
(1) S の上には、ちょうど27本の直線がある。
(2) 27本のどの1本も、残りの26本のうちちょうど10本と交わる。
この記事では証明しません。ハーツホーンは、P2 を6点でブローアップした曲面について (1) を証明しています(定理4.9)。(2) は、注意4.10.1 の交わり方の表から数えられます。後半の節で、その内訳を見ます。
非特異な3次曲面がどれもこの形に書けることは、注意4.7.1 に古典的な結果として述べられています。ただしハーツホーンは証明せず、マーニンの本と永田の論文を挙げています。定数を数えるもう少し弱い議論は、注意4.7.2 にあります[2, 注意4.7.2, p.152]。
1本の直線 ℓ を含む平面で曲面を切ると、ℓ と交わる直線の並び方が分かります。(3) では、定理の (2) を使います。
命題6 直線のまわりの5枚の平面
S=V+(F) を非特異な3次曲面、ℓ⊆S を直線とする。
(1) ℓ を含む平面 H について、H∩S は ℓ と、H の中の2次曲線 C の和である。
(2) C が直線を含むなら、C は、ℓ とも互いにも異なる2本の直線 m,m′ の和である。
(3) ℓ と交わる10本の直線は5組に分かれ、各組の2本は ℓ と同じ平面に乗る。そのような平面はちょうど5枚ある。
証明開く閉じる
(1) を示す。座標を取り替えて H=V+(x3)、ℓ=V+(x3,x2) とする。F(x0,x1,x2,0) は ℓ の上で0なので x2 で割り切れ、商が C の式になる。詳しく閉じる
F(x0,x1,x2,0) は H≅P2 の3次斉次式である。H⊆S なので0ではない(S は既約で、平面ではない)。x2 で割り切れることは、x2=0 を代入した2変数の3次式が、命題2(1) より0になることから分かる。
商 q(x0,x1,x2) は2次の斉次式で、H∩S=V+(x2)∪V+(q) となる。平面の中で見ると、H∩S は平面3次曲線 V+(x2q) である。
(2) を示す。直線が2重に現れる、つまり F(x0,x1,x2,0) が1次式の2乗で割り切れるとすると、その直線の上に S の特異点ができる。詳しく閉じる
2重の直線を、座標を取り替えて V+(x3,x2) とする(ℓ 自身でも、ℓ と別の直線でもよい)。F(x0,x1,x2,0)=x22n(x0,x1,x2)(n は1次式)と書けるので、F−x22n は x3 で割り切れ、
F=x3Q(x0,x1,x2,x3)+x22n(x0,x1,x2)F=x3Q(x0,x1,x2,x3)+x22n(x0,x1,x2)F=x3Q(x0,x1,x2,x3)=+x22n(x0,x1,x2)
となる(Q は2次の斉次式)。直線の点 a=(a0,a1,0,0) では、x3 と x2 が0なので
∂x0∂F(a)=∂x1∂F(a)=∂x2∂F(a)=0∂x3∂F(a)=Q(a0,a1,0,0)∂x0∂F(a)=∂x1∂F(a)=∂x2∂F(a)=0∂x3∂F(a)=Q(a0,a1,0,0)∂x0∂F(a)∂x3∂F(a)=∂x1∂F(a)=∂x2∂F(a)=0=Q(a0,a1,0,0)
Q(a0,a1,0,0) は a0,a1 の2次斉次式で、代数閉体ではいつも (a0,a1)=(0,0) の零点をもつ(恒等的に0の場合も含む)。そこが特異点になり、S が非特異であることに反する。
よって、
C が
直線 m を含めば C=m∪m′ で、m,m′,ℓ は相異なる。(3) を示す。ℓ と交わる直線 m について、ℓ と m で張られる平面 H はただ1つで、(2) から H∩S=ℓ∪m∪m′ となる。m′ も ℓ と交わる(同じ平面の2直線だから)。詳しく閉じる
こうして、ℓ と交わる直線は、平面 H ごとに2本ずつの組に分かれる。2本の直線が1つの平面を決めるので、1本の直線が2つの組に入ることはない。定理5(2) から ℓ と交わる直線は10本なので、組は5つ、平面は5枚である。
(1) の平面3次曲線 H∩S が直線3本に分かれる平面を、3重接平面と呼びます。27本の直線はそれぞれ5枚の3重接平面に乗り、1枚には3本が乗るので、3重接平面は全部で 27⋅5/3=45 枚あります。
フェルマー3次曲面の27本
定理5を、方程式が一番簡単な例で確かめます。
命題7 フェルマー3次曲面の直線 [2, 演習4.16, p.164]
k を標数が3でない代数閉体とし、S=V+(x03+x13+x23+x33) とする。ζ,ζ′ が1の3乗根 1,ω,ω2 を動くとき、次の 3×3×3=27 本の直線を考える。
Lζ,ζ′(1)Lζ,ζ′(2)Lζ,ζ′(3): x0=−ζx1, x2=−ζ′x3: x0=−ζx2, x1=−ζ′x3: x0=−ζx3, x1=−ζ′x2
(1) S は非特異である。
(2) 27本はどれも S に乗り、互いに異なる。
(3) 27本のどれも、ほかのちょうど10本と交わる。
(4) S の上の直線は、この27本ですべてである。
証明開く閉じる
(1) を
示す。偏微分は 3xi2 で、標数が3でないので、4つとも0になるのは x0=⋯=x3=0 のときだけである。これは P3 の点ではない。(2) の
うち、乗ることを示す。ζ3=1 なので、x0=−ζx1 なら x03=−x13、x2=−ζ′x3 なら x23=−x33 で、和は0になる。L(2),L(3) も、組にする座標を替えるだけで同じである。互いに異なることを示す。Lζ,ζ′(1) は2点 [−ζ:1:0:0]、[0:0:−ζ′:1] を通り、この2点から ζ,ζ′ が読める。L(2)・L(3) も同じで、種類の違う直線は通る座標の点が違う。詳しく閉じる
例えば Lζ,ζ′(1) の上では x0+ζx1 がいつも0である。Lη,η′(2) は点 [−η:0:1:0] を通り、そこで x0+ζx1=−η=0 なので、L(1) のどれとも異なる。ほかの組み合わせも同じように確かめられる。
(3) を示す。同じ種類の2本 Lζ,ζ′(1)、Lη,η′(1) が交わるのは、ζ=η か ζ′=η′ のちょうど一方が成り立つときである。そういう直線は 2+2=4 本ある。詳しく閉じる
ζ=η なら、2本はどちらも平面 x0=−ζx1 に乗るので交わる。ζ=η かつ ζ′=η′ なら、共通の点は x0=x1=0 かつ x2=x3=0 となって、P3 の点がない。
違う種類の2本 Lζ,ζ′(1)、Lη,η′(2) が交わるのは ηζ′=ζη′ のときで、η を決めると η′ が1つに決まる。L(2) から3本、L(3) からも同じく3本で、合計 4+3+3=10 本である。詳しく閉じる
共通の点では x0=−ηx2、x1=−η′x3、x0=−ζx1、x2=−ζ′x3 が成り立つ。x3=0 なら順に x2=x1=x0=0 となるので、x3=1 としてよい。すると x2=−ζ′、x1=−η′ で、
x0=−ηx2=ηζ′x0=−ζx1=ζη′x0=−ηx2=ηζ′x0=−ζx1=ζη′x0x0=−ηx2=ηζ′=−ζx1=ζη′
から ηζ′=ζη′ を得る。逆にこれが成り立てば、点 [ηζ′:−η′:−ζ′:1] が両方に乗る。Lη,η′(3)(x0=−ηx3、x1=−η′x2)でも同じ計算で、条件は η=ζζ′η′ になる。
(4) は、
(2) で異なる27本が見つかったことと定理5(1) から従う。
(3) は定理5(2) と一致します。(4) は定理に頼らなくても、計算機で S の上の直線をすべて求めると、ちょうどこの27本になります(k=C で、直線全体の空間のチャートごとに連立方程式を解いて確かめました)。
標数3では、x03+x13+x23+x33=(x0+x1+x2+x3)3 となり、曲面は平面 x0+x1+x2+x3=0 を3重にしたものになります。標数3を除いたのはこのためです。
Lζ,ζ′(1) x0=−ζx1, x2=−ζ′x3 Lζ,ζ′(2) x0=−ζx2, x1=−ζ′x3 Lζ,ζ′(3) x0=−ζx3, x1=−ζ′x2 直線
L1,1(1):x0=−x1, x2=−x3
図1具体例フェルマー3次曲面の27本を、式の種類 L(1),L(2),L(3) ごとに3×3のマス目に並べました(行が ζ、列が ζ′)。黒が L1,1(1)、オレンジがそれと交わる10本です。同じマス目では同じ行と同じ列の4本、ほかの2つのマス目では対角線の3本ずつになります(交わるかどうかは、図を作るプログラムで直線の式から計算しています)。破線の丸は ζ=ζ′=1 の3本で、k=C のとき実数の点からなる直線はこの3本だけです。
例8 L1,1(1) のまわりの5枚の平面
ℓ=L1,1(1):x0+x1=x2+x3=0 を含む平面のうち、次の5枚が命題6の平面である。
x0+x1=0x2+x3=0x0+x1+ζ(x2+x3)=0(ζ=1,ω,ω2)
(1) 平面 x0+x1=0 には L1,ω(1)、L1,ω2(1) が乗る。この平面では x03+x13=0 なので、切り口は x23+x33=(x2+x3)(x2+ωx3)(x2+ω2x3)=0 の3本である。
(2) 平面 x2+x3=0 には Lω,1(1)、Lω2,1(1) が乗る。
(3) 平面 x0+x1+ζ(x2+x3)=0 には Lζ,ζ(2) と Lζ,ζ(3) が乗る。例えば Lζ,ζ(2) の上では x0+x1=−ζx2−ζx3 である。
(1) の3本は、どれも点 [1:−1:0:0] を通ります。このように曲面の上の3本の直線が通る点を、エッカルト点と呼びます。図1では、(1)(2) の組がマス目の行と列に、(3) の組が対角線に当たります。
フェルマー3次曲面では、k=C のとき実数の直線が3本しかありません。27本をすべて実数の直線として描くには、別の曲面が要ります。
クレブシュの曲面:27本がすべて実数
この節では、標数0の体(例えば k=C)で考えます。P4 の中で2つの式
x0+x1+x2+x3+x4=0x03+x13+x23+x33+x43=0x0+x1+x2+x3+x4=0x03+x13+x23+x33+x43=0x0+x1+x2+x3+x4x03+x13+x23+x33+x43=0=0
が定める集合を考えます。1つ目の式は超平面 P3 を定め、x4=−(x0+x1+x2+x3) を2つ目に代入すると、P3 の3次曲面
x03+x13+x23+x33−(x0+x1+x2+x3)3=0
になります。これをクレブシュの3次曲面(クレブシュの対角曲面)と呼びます。5つの座標の入れ替えで式が変わらないので、5個の文字の置換が曲面の対称性になります。
命題9 クレブシュ曲面の27本
k を標数0の代数閉体、ϕ=(1+5)/2(ϕ2=ϕ+1)とする。
(1) クレブシュの3次曲面は非特異である。
(2) {a,b,c,d,e}={0,1,2,3,4} について、直線 xa+xb=xc+xd=xe=0 は曲面に乗る。このような直線は15本ある。
(3) 直線 x0+x1+ϕx4=x3+x4+ϕx1=0(と ∑xi=0)は曲面に乗る。その座標を入れ替えると、(2) と異なる12本の直線が得られる。
(4) (2)(3) の27本が、曲面の上の直線のすべてである。どれも有理数と 5 で書けるので、k=C のとき27本すべてが実数の直線である。
証明開く閉じる
(1) を示す。P3 の式 F=x03+x13+x23+x33−(x0+x1+x2+x3)3 の偏微分がすべて0になる点は、x4=−(x0+x1+x2+x3) とおくと x02=x12=⋯=x42 をみたす。そういう点は ∑xi=0 と両立しない。詳しく閉じる
i=0,1,2,3 について、偏微分は次のとおりである。
∂xi∂F=3xi2−3(x0+x1+x2+x3)2=3(xi2−x42)∂xi∂F=3xi2−3(x0+x1+x2+x3)2=3(xi2−x42)∂xi∂F=3xi2=−3(x0+x1+x2+x3)2=3(xi2−x42)
標数0なので 3=0 で、4つとも0なら x02=⋯=x42=λ となる。λ=0 なら x0=⋯=x3=0 で、P3 の点ではない。λ=0 なら各 xi は ±μ(μ2=λ)である。
このとき x0+⋯+x4=μ⋅(±1±1±1±1±1) で、5個の ±1 の和は奇数なので0にならない。これは x4 の決め方 x0+⋯+x4=0 に反する。よって特異点はない。
(2) を
示す。xb=−xa、xd=−xc、xe=0 なら、和も3乗の和も打ち消し合って0になる。e の選び方が5通り、残りの4つを2組に分ける分け方が3通りで、5⋅3=15 本である。(3) を示す。α=1/ϕ とおくと α2+α=1 で、直線の点は x=(s, t, −s+αt, αs−t, −α(s+t)) と書ける。3乗の和の s3,t3 の係数は打ち消し合い、s2t,st2 の係数は 3α(1−α−α2)=0 になる。詳しく閉じる
点が2つの式と ∑xi=0 をみたすことは、代入すれば分かる(x3+x4+ϕx1=αs−t−αs−αt+ϕt=(ϕ−1−α)t=0。ϕ−1=1/ϕ=α による)。3乗の和を展開すると
s3+t3+(−s+αt)3+(αs−t)3−α3(s+t)3=(1−1+α3−α3)s3+3α(1−α−α2)s2t+3α(1−α−α2)st2+(1+α3−1−α3)t3=0
座標を入れ替えた直線も、式の対称性から曲面に乗る。入れ替えで得られる直線がちょうど12本で、(2) の15本と重ならないことは、図を作るプログラムで確かめた。
(4) は、
異なる27本が見つかったことと定理5(1) から従う。
(3) の直線の上には、例えば s=1, t=0 の点 (1,0,−1,α,−α) があります。α=1/ϕ≈0.618 で、1+0−1+α3−α3=0 と確かめられます。
クレブシュ曲面は、P2 をうまく選んだ6点でブローアップした曲面でもあります。27本に名前を付けるため、先にブローアップの話をします。立体図は、その後の節で回します。
平面の6点のブローアップ
第7回では、平面の原点を、原点を通る直線の向き全体 P1 に取り替えました(第7回の定義2)。P2 の点 P1,…,P6 のそれぞれで同じ操作をした曲面を X とし、Pi の上の例外曲線を Ei と書きます。
曲線 C⊆P2 については、Pi 以外の部分を持ち上げて閉包をとったものを、第7回と同じく狭義変換と呼びます(第7回の定義8)。
定義10 一般の位置にある6点 [2, 記法4.7.3, p.152–153]
P2 の相異なる6点 P1,…,P6 が一般の位置にあるとは、どの3点も1本の直線に乗らず、6点すべてが1つの2次曲線(円錐曲線)に乗ることもないことをいう。
3次の斉次式 G(x0,x1,x2) の係数は、単項式 x0ax1bx2c(a+b+c=3)の数だけあり、(25)=10 個です。「G が点 Pi を通る」は係数の1次式1つなので、6点を通る3次式は、少なくとも 10−6=4 次元の空間をなします。
定理11 6点のブローアップは3次曲面 [2, 定理4.6, p.151; 2, 系4.7, p.151–152]
k を代数閉体、P1,…,P6∈P2 を一般の位置にある6点とする。6点を通る3次式の空間はちょうど4次元で、その基底 G0,…,G3 による写像
P2∖{P1,…,P6}⟶P3p⟼[G0(p):G1(p):p⟼[G2(p):G3(p)]
は、6点でのブローアップ X から P3 への埋め込みに延び、像は非特異な3次曲面である。
ハーツホーンは、定理4.6 で r≤6 点の場合を扱い、系4.7 で X が P9−r の 9−r 次の曲面になることを示しています。r=6 が3次曲面です。
この埋め込みで、平面の曲線がどんな次数の曲線に移るかは、ベズーの定理(第9回の定理12)で見当がつきます。P3 の平面 ∑ajyj=0 を引き戻すと、6点を通る3次曲線 ∑ajGj=0 になります。a 次の平面曲線がこれと交わる 3a 点のうち、Pi で交わる分はブローアップで離れて数えなくなります。
ハーツホーンの命題4.8(e) と注意4.8.1 は、これを次の式にまとめています[2, 命題4.8, p.153; 2, 注意4.8.1, p.154]。Pi で重複度 bi の点をもつ既約な a 次曲線の狭義変換は、P3 の曲線として次数
3a−i=1∑6bi
をもちます。次数1の曲線が直線です。例えば、Pi,Pj を通る直線は 3⋅1−1−1=1、5点を通る円錐曲線は 3⋅2−5=1 で、どちらも直線に移ります。
定理12 27本の内訳 [2, 定理4.9, p.154–155]
定理11の3次曲面 X の上の直線は、次の27本である。
(a) 例外曲線 Ei(i=1,…,6):6本。
(b) Pi と Pj を通る直線の狭義変換 Fij(1≤i<j≤6):(26)=15 本。
(c) Pj 以外の5点を通る円錐曲線の狭義変換 Gj(j=1,…,6):6本。
6+15+6=27 です。(c) の円錐曲線は、5点を通る2次曲線がただ1つに決まることから決まります。5点のうち3点が1直線に乗らないので、その2次曲線は2本の直線に分かれません。
具体例として、正五角形の頂点 P1,…,P5 と中心 P6 を取ります。座標は Pk+1=(cos(90∘+72∘k), sin(90∘+72∘k))(k=0,…,4)、P6=(0,0) です(P2 のアフィン部分 U0 の座標)。
五角形のどの3頂点も1直線に乗らず、中心と2頂点が1直線に乗るのは向かい合う2頂点のときだけで、正五角形にはそういう組がありません。5頂点は円 x2+y2=1 に乗りますが、中心は乗らないので、6点は一般の位置にあります。
緑:
P6 を通る5本 青:頂点どうしの10本
オレンジ:円
G6 紫:
G1 灰:
G2,…,G5
図2具体例正五角形の頂点 P1,…,P5 と中心 P6。左は2点を通る15本の直線で、狭義変換が Fij になります。右は5点を通る6つの円錐曲線で、狭義変換が Gj になります。G6(P6 を通らない)は外接円で、G1,…,G5(中心と4頂点を通る)はどれも双曲線です。図を作るプログラムで、各円錐曲線がちょうど5点を通ること、6点が一般の位置にあることを確かめています。
27本の交わり方は、名前から読めます。ハーツホーンの注意4.10.1 の表を書き写します(i,j,k,l は相異なる番号)。
命題13 27本の交わり方 [2, 注意4.10.1, p.158]
| 組 | 交わる条件 | 1本から見た相手 |
| Ei と Ej | 交わらない | 0 |
| Ei と Fjk | i∈{j,k} | Ei に5本 |
| Ei と Gj | i=j | Ei に5本 |
| Fij と Fkl | {i,j}∩{k,l}=∅ | Fij に (24)=6 本 |
| Fij と Gk | k∈{i,j} | Fij に2本(Gi,Gj) |
| Gj と Gk | 交わらない | 0 |
合計すると、Ei は 5+5=10 本、Fij は Ei,Ej,Gi,Gj と6本の Fkl で 10 本、Gj は 5+5=10 本と交わる。
平面の図で読むと、例えば Fij と Fkl は、平面では直線 PiPj と PkPl の交点で交わります。番号が1つ共通なら、平面での交点は Pi そのもので、ブローアップで向きの違う2点に分かれて交わらなくなります。
命題6の5枚の平面も名前で書けます。E1 と交わるのは F1j と Gj(j=2,…,6)で、F1j と Gj は互いに交わるので、{F1j,Gj} が5つの組です。
定義14 二重6 [2, 注意4.9.1, p.155–156]
P3 の12本の直線 E1,…,E6,G1,…,G6 が次をみたすとき、二重6(シュレーフリの二重6)と呼ぶ。Ei どうしは交わらず、Gj どうしも交わらず、Ei と Gj は i=j のとき、またそのときに限り交わる。
命題13の表から、27本のうちの E1,…,E6,G1,…,G6 は二重6です。ハーツホーンは、二重6はちょうど1つの非特異3次曲面に含まれることにも触れています。
図3概念図二重6の交わり方です。点が直線を表し、線で結んだ2本だけが交わります(位置に意味はなく、結び方だけが意味をもちます)。上の Ei と下の Gj は、i=j なら交わり、真下の Gi とだけ交わりません。結び方は、次の節のクレブシュ曲面の直線の式から計算して確かめています。
専門的な話27本の対称性
27本のうち、互いに交わらない6本をどう選んでも、それを E1,…,E6 とする別のブローアップ X→P2 があります[2, 命題4.10, p.156]。つまり Ei という名前に特別な意味はなく、6本を選び直すと Fij,Gj の名前も付け直されます。
交わり方を保つ27本の並べ替えの群の位数は、互いに交わらない6本を順に選ぶ数として 27⋅16⋅10⋅6⋅2⋅1=51840 になります[2, 注意4.10.1, p.158–159]。ハーツホーンは、この群がワイル群 W(E6) と同型で、位数25920の単純群を指数2の正規部分群として含むことに触れています。
27本を回して見る
図2の6点(正五角形の頂点と中心)でブローアップした3次曲面は、クレブシュ曲面と同型になります。図を作るプログラムでは、6点を通る3次式の基底で P2 を P3 に写し、射影変換でクレブシュ曲面に重ねています。
射影変換は、図2の平面で3本の直線 PiPj が1点で交わる10か所(例えば P1P6、P2P3、P4P5)のうち5か所の行き先で決めました。像がクレブシュ曲面の方程式をみたすこと、27本が名前どおりに命題9の直線に移ること、交わり方が命題13の表と一致することを、数値計算で確かめています。
計算すると、二重6の Ei,Gj が ϕ を含む12本に、Fij が xa+xb=xc+xd=xe=0 の15本に当たります。平面で3本の直線が1点で交わる10か所は、曲面の上の10個のエッカルト点になります。
立体図には、x3=x4 の部分を、次の座標で描きます。
(x,y,z)=x3−x40.55(x0−x1, 3x0+x1−2x2,x3+x4)
この座標では、x0,x1,x2 の巡回的な入れ替えが z 軸のまわりの 120∘ の回転に、x3 と x4 の入れ替えが原点に関する点対称になります。曲面の対称性の一部が、図の対称性として見えます。
平面 x3=x4 が無限遠になるので、そこで交わる2本は平行に描かれます(第5回の例6と同じことです)。27本の中には、この平面に含まれる直線はありません。
xyzF23E1G1
このブラウザでは立体の図を表示できませんでした(WebGLが必要です)。
ドラッグで回せます
クレブシュの3次曲面の上の27本の直線を、すべて描いています(曲面そのものは描いていません)。「真上」から見ると、120°回しても同じ形です。1枚の絵では多くの直線が交わって見えますが、回すと、本当に交わる組と、すれ違うだけの組(ねじれの位置)が見分けられます。
黒い直線 F23(x 軸)と交わる直線は、ちょうど10本です。同じ色の2本と F23 は1枚の平面に乗っていて、その平面で曲面を切った切り口がこの3本です。「F23 に沿って」見ると、5枚の平面が原点を通る5本の直線に見えます。赤の2本 F16,F45 は x 軸と平行に描かれ、無限遠で F23 と交わります。黒い点は残り8本との交点です(F15 と F46 の交点は、どちらも原点で重なります)。
二重6です。青の6本 E1,…,E6 どうし、オレンジの6本 G1,…,G6 どうしは、どれも交わりません。Ei と Gj は i=j のときだけ交わります。その30個の交点のうち24個を黒い点で示しました。残りの6個は無限遠にあり、その組の2本は平行に描かれます。ラベルの E1 と G1 は、交わらない組です。
緑の15本 Fij は、xa+xb=xc+xd=xe=0 の形の直線です。黒い点では、3本が1点で交わります。そういう点は全部で10個あり、図の7個のほかに、無限遠に3個あります。
図4具体例クレブシュ曲面の上の27本の直線を、半径1.5の球の中の部分だけ描いた立体図です(曲面は描いていません)。各直線の点が曲面の方程式をみたすことを、生成時に確かめています。1つの向きから見ると多くの組が交わって見えますが、回すと、本当に交わる組とすれ違うだけの組が分かれます。「F23 に沿って」は直線 F23(x 軸)の方向から見る視点で、F23 を含む5枚の平面がそれぞれ原点を通る直線に見えます。
段階「1本と交わる10本」の黒い直線 F23 は、x0+x1=x3+x4=x2=0 で、図の x 軸です。交わる10本は、表から E2,E3,G2,G3 と F14,F15,F16,F45,F46,F56 で、5枚の平面の組は次のとおりです。
{E2,G3}{E3,G2}{F14,F56}{F15,F46}{F16,F45}{E2,G3}{E3,G2}{F14,F56}{F15,F46}{F16,F45}
同じ組の2本は同じ色で描きました。「F23 に沿って」を押すと、x 軸に沿って見ることになり、x 軸を含む平面はどれも原点を通る直線に重なります。5色がそれぞれ1本の直線の上に並ぶのが、命題6(3) の5枚の平面です。
{F15,F46} の平面は z=0 で、F15、F46、F23 の3本は原点で交わります。原点はエッカルト点の1つで、真上から見ると、3本は 120∘ の回転で互いに移り合います。
段階「二重6」では、青の Ei どうし、オレンジの Gj どうしが、回すとどれもすれ違っていることが分かります。段階「15本の Fij」では、10個のエッカルト点のそれぞれを15本のうち3本が通ります。10個のうち7個が図の中に見え、残りの3個は無限遠にあります。
特異な3次曲面と4次以上の曲面
定理5の「非特異」は外せません。特異点のある3次曲面では、直線が無限にあることも、27本より少ないこともあります。
例15 特異点のある3次曲面
(1) 標数が3でない体で、S=V+(x03+x13+x23)⊆P3 とする(x3 を含まない)。S は、平面曲線 x03+x13+x23=0 の上の錐で、頂点 [0:0:0:1] で偏微分がすべて0になる。頂点と、平面曲線の各点 [a0:a1:a2:0] を結ぶ直線は S に乗るので、直線は無限にある。
(2) ケーリーの3次曲面 S=V+(x1x2x3+x0x2x3+x0x1x3+x0x1x2) は、4つの座標の点 [1:0:0:0],…,[0:0:0:1] を特異点にもつ。S の上の直線は、6本の xi=xj=0 と、3本の x0+x1=x2+x3=0、x0+x2=x1+x3=0、x0+x3=x1+x2=0 の、合わせて9本である。
(1) の直線が乗ることは、点 [sa0:sa1:sa2:t] を代入すると s3(a03+a13+a23)=0 となることから分かります。(2) の9本が乗ることは代入で確かめられ、これ以外にないことと特異点が4つだけであることは、計算機で連立方程式を解いて確かめました。
次数を4以上に上げると、ふつうは直線がなくなります。最初の節の数え上げでは、d≥4 で見込みの次元が負でした。
専門的な話一般の4次以上の曲面には直線がない
d 次の斉次式は (3d+3) 個の係数をもつので、d 次の曲面全体は N=(3d+3)−1 次元の射影空間 PN の点とみなせます。d=3 なら N=19 で、ハーツホーンの注意4.7.2 の定数の数え上げに出てくる数です[2, 注意4.7.2, p.152]。
直線と曲面の組で、直線が曲面に乗るものの集合 Σ⊆G(2,4)×PN を考えます。直線 L を1つ決めると、L を含む曲面の式は、命題2の d+1 個の1次式で決まる部分空間です。この d+1 個は独立です(L=V+(x2,x3) なら、式を x2=x3=0 に制限する写像が全射)。Σ は G(2,4) の上に同じ次元の射影空間が並んだものなので既約で、次元を足して次のようになります[1, 演習3.22, p.130]。
dimΣ=4+(N−(d+1))=N+3−ddimΣ=4+(N−(d+1))=N+3−ddimΣ=4=+(N−(d+1))=N+3−d
d≥4 なら dimΣ<N なので、Σ を PN に射影した像、つまり直線を含む曲面の全体は、PN 全体になりません。G(2,4) は射影多様体なので像は閉集合で[1, 定理4.9, p.141]、その外にある「一般の」曲面は直線を含みません。
「すべての」4次曲面ではありません。標数が2でない体では、フェルマー4次曲面 x04+x14+x24+x34=0 は、ε4=ε′4=−1 について直線 x0=εx1, x2=ε′x3 を含みます。d=3 では dimΣ=N となり、非特異な3次曲面がどれも直線を含むこと(定理5)と釣り合っています。
27本の直線は、1849年にケーリーとサーモンが見つけました。ケーリーの論文の題は「3次曲面の3重接平面について」です[3]。クレブシュの曲面は、その後1871年にクレブシュが調べた例です。
まとめ:曲面の上の直線
| 曲面 | 乗っている直線 | この記事の例 |
| 非特異な2次曲面 | 1次元の族が2つ | x0x3=x1x2 の {[s:t:λs:λt]}(第17回の定義7) |
| 非特異な3次曲面 | ちょうど27本、各1本が10本と交わる | フェルマー(実数は3本)、クレブシュ(27本とも実数) |
| 6点のブローアップ | Ei 6本、Fij 15本、Gj 6本 | 正五角形の頂点と中心(クレブシュ曲面と同型) |
| 特異点のある3次曲面 | 無限にあることも、少ないこともある | 錐(無限)、ケーリーの曲面(9本) |
| 一般の4次以上の曲面 | ない | フェルマー4次曲面のような例外はある |
3次曲面では、直線が乗る4つの条件と直線全体の4次元がちょうど釣り合い、本数は有限で、しかも曲面によらず27本でした。27本は、平面の6点、15本の直線、6つの円錐曲線から生まれ、その交わり方は名前だけで決まります。
第17回から第20回まで:射影空間の中の多様体
第17回からの4回は、射影空間の中に置いた多様体を見てきました。
- 第17回:セグレ埋め込みで P1×P1 を2次曲面にし、2つの直線の族を見ました。
- 第18回:ヴェロネーゼ埋め込みで次数を上げ、有理正規曲線やヴェロネーゼ曲面を作りました。
- 第19回:P3 の直線全体を、プリュッカー座標で P5 の2次超曲面 G(2,4) にしました。
- 第20回(この記事):3次曲面の上の27本の直線を、G(2,4) の次元とブローアップで数えました。
2次曲面では直線が無限にあり、3次曲面では27本、一般の4次以上の曲面では0本です。どれも「直線全体の空間の中で、曲面に乗る直線がどれだけあるか」という1つの問いの答えでした。
この先に何を扱うかは、まだ決めていません。曲面の上の曲線の交点数(第7回のブローアップの例外曲線の自己交点数 −1 など)は自然な続きですが、予定は変わることがあります。
第19回の定義8 グラスマン多様体 G(2,4)
P5 の斉次座標を [p01:p02:p03:p12:p13:p23] とする。
G(2,4)=V+(p01p23−p02p13+p03p12)⊆P5
をグラスマン多様体と呼ぶ。定理7により、G(2,4) の点は P3 の直線、つまり k4 の2次元部分空間と1対1に対応する。
第19回の定理14 4本の直線と交わる直線
k を代数閉体とし、L1,L2,L3 をどの2本もねじれの位置にある直線とする。命題13(1) により座標を取り替え、L1,L2,L3 を上の3本、Q を2次曲面 x0x3=x1x2 とする。L4 を Q に含まれない直線とする。
(1) L1,…,L4 のすべてと交わる直線は、L4∩Q の点と1対1に対応する。
(2) L4∩Q は1点か2点である。F=x0x3−x1x2 を L4 の点 [λu+μv] に制限した λ,μ の2次式が重根をもたなければ2点で、そのとき答えはちょうど2本である。
第17回の命題8 Q の上の直線
(1) α=α′ なら Lα∩Lα′=∅、β=β′ なら Mβ∩Mβ′=∅。
(2) Lα∩Mβ={σ(α,β)}。
(3) Q に含まれる直線は、ある Lα かある Mβ である。
(4) Q の各点 σ(α,β) を通り Q に含まれる直線は、Lα と Mβ の2本だけである。
第9回の定理10 直線と曲線のベズーの定理
k を代数閉体、F を次数 d≥1 の斉次多項式、ℓ を1次の斉次式とし、ℓ は F を割り切らないとする。直線 L=V+(ℓ) について
p∈L∩V+(F)∑Ip(F,ℓ)=dp∈L∩V+(F)∑Ip(F,ℓ)=d
第17回の定義7 2つの直線の族
α,β∈P1 について
Lα=σ({α}×P1)Mβ=σ(P1×{β})Lα=σ({α}×P1)Mβ=σ(P1×{β})LαMβ=σ({α}×P1)=σ(P1×{β})
とおく。Lα は b↦αtb という単射な線形写像 k2→k4 の像なので、P3 の直線である。Mβ も同様である。式で書くと、列が α に比例する、行が β に比例するという条件になる。
LαMβ=V+(α1z00−α0z10,=V+(α1z01−α0z11),=V+(β1z00−β0z01,=V+(β1z10−β0z11)
第6回の命題17
F∈k[x0,x1,x2] を d 次の既約な斉次式、C=V+(F)⊆P2 とする。点 P=[a0:a1:a2]∈C が C の特異点であることは、
∂x0∂F(a)=∂x1∂F(a)=∂x2∂F(a)=0(a=(a0,a1,a2))∂x0∂F(a)=∂x1∂F(a)=∂x2∂F(a)=0(a=(a0,a1,a2))∂x0∂F(a)=∂x1∂F(a)=∂x2∂F(a)=0(a=(a0,a1,a2))
と同値である。さらに標数が d を割り切らなければ、3つの偏微分が0になる点は自動的に C の上にある。
第7回の定義2 原点でのブローアップ
A2×P1 の閉集合
A2=V(xu1−yu0)={((x,y),[u0:u1])xu1=yu0}
を、A2 の原点 O=(0,0) でのブローアップと呼ぶ。第1成分への写像を π:A2→A2、((x,y),[u0:u1])↦(x,y) と書き、E=π−1(O) を例外曲線と呼ぶ。
第7回の定義8 全変換と狭義変換
C⊆A2 を原点 O を通る閉集合とする。π−1(C) を C の全変換と呼ぶ。π−1(C∖{O}) の A2 での閉包
C=π−1(C∖{O})C=π−1(C∖{O})
を C の狭義変換と呼ぶ。
第9回の定理12 ベズーの定理
k を代数閉体とし、F,G を共通の因子をもたない、次数 d,e の斉次多項式とする。V+(F)∩V+(G) は有限集合で、
p∈V+(F)∩V+(G)∑Ip(F,G)=dep∈V+(F)∩V+(G)∑Ip(F,G)=de
第5回の例6 交点の計算
(1) k=R。平行な2直線 y=2x+1、y=2x−3 は α=(1,2,−1)、β=(−3,2,−1) で、
α×β=(2⋅(−1)−(−1)⋅2,(−1)(−3)−1⋅(−1),1⋅2−2⋅(−3))=(0,4,8)
なので、交点は [0:4:8]=[0:1:2] である。
(2) k を任意の体、b1=b2 とする。y=mx+b1 と y=mx+b2 は
(−b1,−m,1)×(−b2,−m,1)=(0, b1−b2, m(b1−b2))
より、無限遠点 [0:1:m] で交わる。
(3) k=R。縦の2直線 x=1、x=3 は (−1,1,0)×(−3,1,0)=(0,0,2) より [0:0:1] で交わる。平行でない y=x と y=−x+2 は (0,−1,1)×(−2,1,1)=(−2,−2,−2) より [1:1:1]、つまり平面の点 (1,1) で交わる。
(4) k=F5。y=2x+1 と y=2x+3 は (2) より [0:1:2] で交わる。y=x+1 と y=3x は
(−1,−1,1)×(0,−3,1)=(2,1,3)[2:1:3]=[3⋅2:3⋅1:3⋅3]=[1:3:4]
より、平面の点 (3,4) で交わる(2−1=3 を掛けた)。実際 4=3+1、4≡3⋅3(mod5) である。
定数でない1変数多項式が、必ずその体の中に根をもつ体。例:C。R は代数閉体ではない(x2+1 に根がない)。代数閉体は必ず無限体である。
アフィン空間 An(や射影空間)の中で、定数でない1つの多項式 f の零点 V(f) として表される集合。単項イデアル定理から、各既約成分の次元は n−1 である。例:A3 の錐面 xy=z2。
体 k で 1+1+⋯+1(p 個)=0 となる最小の正の整数 p。そのような p がなければ標数0と言う。標数は0か素数で、Fp の標数は p、Q,R,C の標数は0。体でない環でも同じように定める(Z の標数は0、Z/6 の標数は6)。0か素数になるのは体や整域の場合。
元を無限個もつ体。Q,R,C など。無限体の上では、すべての点で0になる多項式は0だけである。
参考文献
- R. ハーツホーン(高橋宣能・松下大介 訳), 『代数幾何学 1』, 丸善出版, 2013.
- R. ハーツホーン(高橋宣能・松下大介 訳), 『代数幾何学 3』, 丸善出版, 2012.
- A. Cayley, On the triple tangent planes of surfaces of the third order, The Cambridge and Dublin Mathematical Journal 4, 1849, pp. 118–132.