数学ビジュアライズ

代数幾何図で読む代数幾何第20回

曲面の上にちょうど27本:3次曲面の直線

非特異な3次曲面の上には、ちょうど27本の直線があります。直線全体の次元から本数が有限になる理由を数え、フェルマー3次曲面で27本を書き出します。平面の6点のブローアップで27本の内訳と交わり方を読み、27本がすべて実数のクレブシュ曲面を回せる立体図で見ます。

目次
  1. 前回の宿題
  2. 直線が曲面に乗る条件
  3. 非特異な3次曲面の27本
  4. フェルマー3次曲面の27本
  5. クレブシュの曲面:27本がすべて実数
  6. 平面の6点のブローアップ
  7. 27本を回して見る
  8. 特異な3次曲面と4次以上の曲面
  9. まとめ:曲面の上の直線
  10. 第17回から第20回まで:射影空間の中の多様体
  11. 参考文献
この記事の要点
直線が乗る条件
dd 次の曲面に直線が乗る条件は d+1d+1 個の式です。直線全体は4次元なので、3次曲面に乗る直線は有限個と見込めます。
27本
非特異な3次曲面の上には、ちょうど27本の直線があります。各直線は、ほかのちょうど10本と交わります。フェルマー3次曲面 x03+x13+x23+x33=0x_0^3+x_1^3+x_2^3+x_3^3=0 では、27本を式で書き出せます。
6点のブローアップ
P2\mathbb{P}^2 を一般の位置の6点でブローアップすると3次曲面になります。27本の内訳は、例外曲線6本、2点を通る直線15本、5点を通る円錐曲線6本です。
27本がすべて実数
クレブシュの3次曲面では27本がすべて実数で、回せる立体図に全部描けます。回すと、どの組が本当に交わり、どの組がすれ違うだけかが分かります。
  • 証明は、ステップの流れだけを短く書いています。「詳しく」の付いた行をクリックすると、そのステップの詳しい説明が開きます。説明の中にも開ける行があります。
  • 定義・命題・定理には、記事全体で通し番号を振っています。
  • もう少し詳しくは補足、専門的な話は先の回につながる話題です。どちらも開かずに読み進められます。
  • 各ブロックの「AIに質問」を押すと、その部分の内容を入れた質問文で、お使いのAIを開けます。

前回の宿題

第19回では、P3\mathbb{P}^3 の直線全体を1つの空間 G(2,4)G(2,4) とみなしました(第19回の定義8)。直線はプリュッカー座標で P5\mathbb{P}^5 の点になり、その点全体は P5\mathbb{P}^5 の2次超曲面で、次元は4でした。

次元が4なので、直線に1つ条件を課すごとに、動ける次元が1つずつ減ります。「与えられた直線と交わる」は1つの条件で、4本の直線と交わる直線は有限個(一般には2本)になりました(第19回の定理14)。

第19回の最後に、3次曲面の上にはちょうど27本の直線があると予告しました。

第17回の2次曲面(この記事の座標では x0x3=x1x2x_0x_3=x_1x_2)は、2つの直線の族で覆われていて、直線が無限にありました(第17回の命題8)。次数を1つ上げると、直線は有限個になります。

この記事では、まず直線が曲面に乗る条件を式で書き、次元を数えて「3次曲面では有限個」と見込みます。次に27本の定理を述べ、フェルマー3次曲面で27本を全部書き出します。最後に、6点のブローアップで27本の内訳を見て、27本がすべて実数のクレブシュ曲面を立体図で回します。

直線が曲面に乗る条件

この記事では kk を代数閉体とし、P3\mathbb{P}^3 の点を斉次座標 [x0:x1:x2:x3][x_0:x_1:x_2:x_3] で書きます。第5回と同じく、点の代表は k4k^4 の0でないベクトルで、定数倍の違いは無視します。標数は例ごとに断ります。

定義1 P3\mathbb{P}^3 の直線と曲面

(1) 1次独立な P,Q∈k4P,Q\in k^4 について、点 [sP+tQ][sP+tQ]([s:t]∈P1[s:t]\in\mathbb{P}^1)の全体を P3\mathbb{P}^3 の直線と呼ぶ。これは、1次独立な2つの1次斉次式の共通零点と同じものである。

(2) F∈k[x0,x1,x2,x3]F\in k[x_0,x_1,x_2,x_3] を、同じ既約因子を2回以上含まない dd 次の斉次式(d≥1d\geq1)とする。零点集合 S=V+(F)S=V_+(F) を dd 次の曲面と呼ぶ。d=2,3d=2,3 のとき2次曲面、3次曲面と呼ぶ。

直線 LL が曲面 SS に乗るかどうかは、FF に sP+tQsP+tQ を代入すれば分かります。代入した式は s,ts,t の dd 次の斉次式で、係数は d+1d+1 個あります。

命題2 直線が曲面に乗る条件

S=V+(F)S=V_+(F) を dd 次の曲面、L={[sP+tQ]}L=\{[sP+tQ]\} を直線とし、φ(s,t)=F(sP+tQ)\varphi(s,t)=F(sP+tQ) と書く。

φ(s,t)=c0sd+c1sd−1t+⋯+cdtd\varphi(s,t)=c_0s^d+c_1s^{d-1}t+\cdots+c_dt^dφ(s,t)=c0sd+c1sd−1t+⋯+cdtd\begin{aligned}\varphi(s,t) &= c_0s^d+c_1s^{d-1}t+\cdots+c_dt^d\end{aligned}φ(s,t)=c0sd+c1sd−1t+⋯=+cdtd\begin{aligned}\varphi(s,t) &= c_0s^d+c_1s^{d-1}t+\cdots\\&\phantom{=}{} +c_dt^d\end{aligned}

(1) L⊆SL\subseteq S であることと、c0=c1=⋯=cd=0c_0=c_1=\cdots=c_d=0 であることは同値である。

(2) L⊈SL\not\subseteq S なら、L∩SL\cap S は高々 dd 点で、重複も込めて数えるとちょうど dd 点である。

証明
  1. (1) を示す。L⊆SL\subseteq S は、すべての [s:t][s:t] で φ(s,t)=0\varphi(s,t)=0 となることである。kk は無限体なので、これは φ\varphi が多項式として0であること、つまり係数がすべて0であることと同値である。

    φ≠0\varphi\neq0 とする。φ(s,1)\varphi(s,1) は0でない高々 dd 次の多項式なので、根は高々 dd 個である。無限体 kk にはそれ以外の ss があり、そこで φ(s,1)≠0\varphi(s,1)\neq0 となる。

  2. (2) を示す。φ≠0\varphi\neq0 は dd 次の斉次式で、kk は代数閉体なので、1次式 dd 個の積 ∏i=1d(βis−αit)\prod_{i=1}^{d}(\beta_is-\alpha_it) に分かれる。L∩SL\cap S の点は、根 [αi:βi][\alpha_i:\beta_i] に当たる点 [αiP+βiQ][\alpha_iP+\beta_iQ] である。

(2) は、第9回の「直線と dd 次曲線は dd 点で交わる」(第9回の定理10)の、空間の曲面版です。証明はずっと簡単で、2変数の斉次式が1次式に分かれることだけを使います。

例3 代入して確かめる

標数が3でない体で、F=x03+x13+x23+x33F=x_0^3+x_1^3+x_2^3+x_3^3 とする。ω\omega を1の原始3乗根とする(ω2+ω+1=0\omega^2+\omega+1=0)。

(1) 直線 x0=−x1, x2=−x3x_0=-x_1,\ x_2=-x_3 は P=(1,−1,0,0)P=(1,-1,0,0)、Q=(0,0,1,−1)Q=(0,0,1,-1) で張られ、φ=s3−s3+t3−t3=0\varphi=s^3-s^3+t^3-t^3=0。この直線は V+(F)V_+(F) に乗る。

(2) 直線 x0=x1=0x_0=x_1=0 は P=(0,0,1,0)P=(0,0,1,0)、Q=(0,0,0,1)Q=(0,0,0,1) で張られ、φ=s3+t3=(s+t)(s+ωt)(s+ω2t)\varphi=s^3+t^3=(s+t)(s+\omega t)(s+\omega^2t)。この直線は乗らず、3点 [0:0:1:−1][0:0:1:-1]、[0:0:ω:−1][0:0:\omega:-1]、[0:0:ω2:−1][0:0:\omega^2:-1] で V+(F)V_+(F) と交わる。

(3) 2次曲面 x0x3−x1x2x_0x_3-x_1x_2 と、λ∈k\lambda\in k ごとの直線 {[s:t:λs:λt]}\{[s:t:\lambda s:\lambda t]\} では、φ=s⋅λt−t⋅λs=0\varphi=s\cdot\lambda t-t\cdot\lambda s=0。λ\lambda を動かすと、乗っている直線が無限にある。

(3) の直線は、第17回の定義7の L[1:λ]L_{[1:\lambda]} です(第17回の行列 ZZ の2つの列が (1,λ)(1,\lambda) に比例します)。λ\lambda が1つの数で決まるので、この族は1次元です。

次元を数えてみます。直線全体 G(2,4)G(2,4) は4次元で、L⊆SL\subseteq S は d+1d+1 個の式 c0=⋯=cd=0c_0=\cdots=c_d=0 です。式が互いに独立に効くとすると、乗っている直線の全体は 4−(d+1)=3−d4-(d+1)=3-d 次元になると見込めます。

次数 dd条件の数 d+1d+1見込み 3−d3-d実際
11(平面)2222平面の中の直線全体(P2\mathbb{P}^2 の直線と同じく2次元)
223311非特異なら、1次元の族が2つ(第17回の命題8)
334400非特異なら、ちょうど27本(この記事)
d≥4d\geq4d+1d+1負一般の曲面には直線がない(後の補足)

3次曲面では条件の数と直線の空間の次元がちょうど釣り合い、乗っている直線は有限個と見込めます。次の定理は、この見込みが正しいこと、しかも本数が曲面によらず同じであることを述べています。

非特異な3次曲面の27本

平面曲線と同じく、曲面にも特異点を定めます。

定義4 曲面の特異点 [1, 演習5.8, p.51]

S=V+(F)⊆P3S=V_+(F)\subseteq\mathbb{P}^3 を曲面とする。点 [a]∈S[a]\in S(a∈k4a\in k^4)で

∂F∂x0(a)=∂F∂x1(a)=∂F∂x2(a)=∂F∂x3(a)=0\frac{\partial F}{\partial x_0}(a)=\frac{\partial F}{\partial x_1}(a)=\frac{\partial F}{\partial x_2}(a)=\frac{\partial F}{\partial x_3}(a)=0∂F∂x0(a)=∂F∂x1(a)=∂F∂x2(a)=∂F∂x3(a)=0\begin{aligned}\frac{\partial F}{\partial x_0}(a) &= \frac{\partial F}{\partial x_1}(a)\\&= \frac{\partial F}{\partial x_2}(a)\\&= \frac{\partial F}{\partial x_3}(a)\\&= 0\end{aligned}

となるとき、[a][a] を SS の特異点と呼ぶ。特異点がないとき SS は非特異であるという。

偏微分は斉次式なので、0になるかどうかは代表 aa の取り方によりません。平面曲線のときの第6回の命題17と同じ形です。

ハーツホーンの演習5.8 は、射影多様体の点が非特異であることを、生成元の偏微分の行列の階数で言い換えています。FF が既約なら I(S)=(F)I(S)=(F) なので、上の定義はその特別な場合です。

非特異な曲面 V+(F)V_+(F) は既約です。F=GHF=GH(G,HG,H は定数でない)と分かれたとすると、射影次元定理から V+(G)∩V+(H)V_+(G)\cap V_+(H) は空でなく[1, 定理7.2, p.66]、そこでは ∂(GH)/∂xi=G ∂H/∂xi+H ∂G/∂xi=0\partial(GH)/\partial x_i=G\,\partial H/\partial x_i+H\,\partial G/\partial x_i=0 となって特異点ができるからです。

定理5 3次曲面の27本の直線 [2, 定理4.9, p.154–155; 2, 注意4.7.1, p.152; 2, 注意4.10.1, p.158]

kk を代数閉体とし、S⊆P3S\subseteq\mathbb{P}^3 を非特異な3次曲面とする。

(1) SS の上には、ちょうど27本の直線がある。

(2) 27本のどの1本も、残りの26本のうちちょうど10本と交わる。

この記事では証明しません。ハーツホーンは、P2\mathbb{P}^2 を6点でブローアップした曲面について (1) を証明しています(定理4.9)。(2) は、注意4.10.1 の交わり方の表から数えられます。後半の節で、その内訳を見ます。

非特異な3次曲面がどれもこの形に書けることは、注意4.7.1 に古典的な結果として述べられています。ただしハーツホーンは証明せず、マーニンの本と永田の論文を挙げています。定数を数えるもう少し弱い議論は、注意4.7.2 にあります[2, 注意4.7.2, p.152]。

1本の直線 ℓ\ell を含む平面で曲面を切ると、ℓ\ell と交わる直線の並び方が分かります。(3) では、定理の (2) を使います。

命題6 直線のまわりの5枚の平面

S=V+(F)S=V_+(F) を非特異な3次曲面、ℓ⊆S\ell\subseteq S を直線とする。

(1) ℓ\ell を含む平面 HH について、H∩SH\cap S は ℓ\ell と、HH の中の2次曲線 CC の和である。

(2) CC が直線を含むなら、CC は、ℓ\ell とも互いにも異なる2本の直線 m,m′m,m' の和である。

(3) ℓ\ell と交わる10本の直線は5組に分かれ、各組の2本は ℓ\ell と同じ平面に乗る。そのような平面はちょうど5枚ある。

証明
  1. (1) を示す。座標を取り替えて H=V+(x3)H=V_+(x_3)、ℓ=V+(x3,x2)\ell=V_+(x_3,x_2) とする。F(x0,x1,x2,0)F(x_0,x_1,x_2,0) は ℓ\ell の上で0なので x2x_2 で割り切れ、商が CC の式になる。

    F(x0,x1,x2,0)F(x_0,x_1,x_2,0) は H≅P2H\cong\mathbb{P}^2 の3次斉次式である。H⊈SH\not\subseteq S なので0ではない(SS は既約で、平面ではない)。x2x_2 で割り切れることは、x2=0x_2=0 を代入した2変数の3次式が、命題2(1) より0になることから分かる。

    商 q(x0,x1,x2)q(x_0,x_1,x_2) は2次の斉次式で、H∩S=V+(x2)∪V+(q)H\cap S=V_+(x_2)\cup V_+(q) となる。平面の中で見ると、H∩SH\cap S は平面3次曲線 V+(x2q)V_+(x_2q) である。

  2. (2) を示す。直線が2重に現れる、つまり F(x0,x1,x2,0)F(x_0,x_1,x_2,0) が1次式の2乗で割り切れるとすると、その直線の上に SS の特異点ができる。

    2重の直線を、座標を取り替えて V+(x3,x2)V_+(x_3,x_2) とする(ℓ\ell 自身でも、ℓ\ell と別の直線でもよい)。F(x0,x1,x2,0)=x22 n(x0,x1,x2)F(x_0,x_1,x_2,0)=x_2^2\,n(x_0,x_1,x_2)(nn は1次式)と書けるので、F−x22nF-x_2^2n は x3x_3 で割り切れ、

    F=x3 Q(x0,x1,x2,x3)+x22 n(x0,x1,x2)F=x_3\,Q(x_0,x_1,x_2,x_3)+x_2^2\,n(x_0,x_1,x_2)F=x3 Q(x0,x1,x2,x3)+x22 n(x0,x1,x2)\begin{aligned}F &= x_3\,Q(x_0,x_1,x_2,x_3)+x_2^2\,n(x_0,x_1,x_2)\end{aligned}F=x3 Q(x0,x1,x2,x3)=+x22 n(x0,x1,x2)\begin{aligned}F &= x_3\,Q(x_0,x_1,x_2,x_3)\\&\phantom{=}{} +x_2^2\,n(x_0,x_1,x_2)\end{aligned}

    となる(QQ は2次の斉次式)。直線の点 a=(a0,a1,0,0)a=(a_0,a_1,0,0) では、x3x_3 と x2x_2 が0なので

    ∂F∂x0(a)=∂F∂x1(a)=∂F∂x2(a)=0∂F∂x3(a)=Q(a0,a1,0,0)\frac{\partial F}{\partial x_0}(a)=\frac{\partial F}{\partial x_1}(a)=\frac{\partial F}{\partial x_2}(a)=0\qquad \frac{\partial F}{\partial x_3}(a)=Q(a_0,a_1,0,0)∂F∂x0(a)=∂F∂x1(a)=∂F∂x2(a)=0∂F∂x3(a)=Q(a0,a1,0,0)\begin{gathered}\frac{\partial F}{\partial x_0}(a)=\frac{\partial F}{\partial x_1}(a)=\frac{\partial F}{\partial x_2}(a)=0\\\frac{\partial F}{\partial x_3}(a)=Q(a_0,a_1,0,0)\end{gathered}∂F∂x0(a)=∂F∂x1(a)=∂F∂x2(a)=0∂F∂x3(a)=Q(a0,a1,0,0)\begin{aligned}\frac{\partial F}{\partial x_0}(a) &= \frac{\partial F}{\partial x_1}(a)\\&= \frac{\partial F}{\partial x_2}(a)\\&= 0\\[4pt]\frac{\partial F}{\partial x_3}(a) &= Q(a_0,a_1,0,0)\end{aligned}

    Q(a0,a1,0,0)Q(a_0,a_1,0,0) は a0,a1a_0,a_1 の2次斉次式で、代数閉体ではいつも (a0,a1)≠(0,0)(a_0,a_1)\neq(0,0) の零点をもつ(恒等的に0の場合も含む)。そこが特異点になり、SS が非特異であることに反する。

  3. よって、CC が直線 mm を含めば C=m∪m′C=m\cup m' で、m,m′,ℓm,m',\ell は相異なる。
  4. (3) を示す。ℓ\ell と交わる直線 mm について、ℓ\ell と mm で張られる平面 HH はただ1つで、(2) から H∩S=ℓ∪m∪m′H\cap S=\ell\cup m\cup m' となる。m′m' も ℓ\ell と交わる(同じ平面の2直線だから)。

    こうして、ℓ\ell と交わる直線は、平面 HH ごとに2本ずつの組に分かれる。2本の直線が1つの平面を決めるので、1本の直線が2つの組に入ることはない。定理5(2) から ℓ\ell と交わる直線は10本なので、組は5つ、平面は5枚である。

(1) の平面3次曲線 H∩SH\cap S が直線3本に分かれる平面を、3重接平面と呼びます。27本の直線はそれぞれ5枚の3重接平面に乗り、1枚には3本が乗るので、3重接平面は全部で 27⋅5/3=4527\cdot5/3=45 枚あります。

フェルマー3次曲面の27本

定理5を、方程式が一番簡単な例で確かめます。

命題7 フェルマー3次曲面の直線 [2, 演習4.16, p.164]

kk を標数が3でない代数閉体とし、S=V+(x03+x13+x23+x33)S=V_+(x_0^3+x_1^3+x_2^3+x_3^3) とする。ζ,ζ′\zeta,\zeta' が1の3乗根 1,ω,ω21,\omega,\omega^2 を動くとき、次の 3×3×3=273\times3\times3=27 本の直線を考える。

Lζ,ζ′(1): x0=−ζx1,  x2=−ζ′x3Lζ,ζ′(2): x0=−ζx2,  x1=−ζ′x3Lζ,ζ′(3): x0=−ζx3,  x1=−ζ′x2\begin{aligned} L^{(1)}_{\zeta,\zeta'}&:\ x_0=-\zeta x_1,\ \ x_2=-\zeta' x_3\\ L^{(2)}_{\zeta,\zeta'}&:\ x_0=-\zeta x_2,\ \ x_1=-\zeta' x_3\\ L^{(3)}_{\zeta,\zeta'}&:\ x_0=-\zeta x_3,\ \ x_1=-\zeta' x_2\end{aligned}

(1) SS は非特異である。

(2) 27本はどれも SS に乗り、互いに異なる。

(3) 27本のどれも、ほかのちょうど10本と交わる。

(4) SS の上の直線は、この27本ですべてである。

証明
  1. (1) を示す。偏微分は 3xi23x_i^2 で、標数が3でないので、4つとも0になるのは x0=⋯=x3=0x_0=\cdots=x_3=0 のときだけである。これは P3\mathbb{P}^3 の点ではない。
  2. (2) のうち、乗ることを示す。ζ3=1\zeta^3=1 なので、x0=−ζx1x_0=-\zeta x_1 なら x03=−x13x_0^3=-x_1^3、x2=−ζ′x3x_2=-\zeta'x_3 なら x23=−x33x_2^3=-x_3^3 で、和は0になる。L(2),L(3)L^{(2)},L^{(3)} も、組にする座標を替えるだけで同じである。
  3. 互いに異なることを示す。Lζ,ζ′(1)L^{(1)}_{\zeta,\zeta'} は2点 [−ζ:1:0:0][-\zeta:1:0:0]、[0:0:−ζ′:1][0:0:-\zeta':1] を通り、この2点から ζ,ζ′\zeta,\zeta' が読める。L(2)L^{(2)}・L(3)L^{(3)} も同じで、種類の違う直線は通る座標の点が違う。

    例えば Lζ,ζ′(1)L^{(1)}_{\zeta,\zeta'} の上では x0+ζx1x_0+\zeta x_1 がいつも0である。Lη,η′(2)L^{(2)}_{\eta,\eta'} は点 [−η:0:1:0][-\eta:0:1:0] を通り、そこで x0+ζx1=−η≠0x_0+\zeta x_1=-\eta\neq0 なので、L(1)L^{(1)} のどれとも異なる。ほかの組み合わせも同じように確かめられる。

  4. (3) を示す。同じ種類の2本 Lζ,ζ′(1)L^{(1)}_{\zeta,\zeta'}、Lη,η′(1)L^{(1)}_{\eta,\eta'} が交わるのは、ζ=η\zeta=\eta か ζ′=η′\zeta'=\eta' のちょうど一方が成り立つときである。そういう直線は 2+2=42+2=4 本ある。

    ζ=η\zeta=\eta なら、2本はどちらも平面 x0=−ζx1x_0=-\zeta x_1 に乗るので交わる。ζ≠η\zeta\neq\eta かつ ζ′≠η′\zeta'\neq\eta' なら、共通の点は x0=x1=0x_0=x_1=0 かつ x2=x3=0x_2=x_3=0 となって、P3\mathbb{P}^3 の点がない。

  5. 違う種類の2本 Lζ,ζ′(1)L^{(1)}_{\zeta,\zeta'}、Lη,η′(2)L^{(2)}_{\eta,\eta'} が交わるのは ηζ′=ζη′\eta\zeta'=\zeta\eta' のときで、η\eta を決めると η′\eta' が1つに決まる。L(2)L^{(2)} から3本、L(3)L^{(3)} からも同じく3本で、合計 4+3+3=104+3+3=10 本である。

    共通の点では x0=−ηx2x_0=-\eta x_2、x1=−η′x3x_1=-\eta'x_3、x0=−ζx1x_0=-\zeta x_1、x2=−ζ′x3x_2=-\zeta'x_3 が成り立つ。x3=0x_3=0 なら順に x2=x1=x0=0x_2=x_1=x_0=0 となるので、x3=1x_3=1 としてよい。すると x2=−ζ′x_2=-\zeta'、x1=−η′x_1=-\eta' で、

    x0=−ηx2=ηζ′x0=−ζx1=ζη′x_0=-\eta x_2=\eta\zeta'\qquad x_0=-\zeta x_1=\zeta\eta'x0=−ηx2=ηζ′x0=−ζx1=ζη′\begin{gathered}x_0=-\eta x_2=\eta\zeta'\\x_0=-\zeta x_1=\zeta\eta'\end{gathered}x0=−ηx2=ηζ′x0=−ζx1=ζη′\begin{aligned}x_0 &= -\eta x_2\\&= \eta\zeta'\\[4pt]x_0 &= -\zeta x_1\\&= \zeta\eta'\end{aligned}

    から ηζ′=ζη′\eta\zeta'=\zeta\eta' を得る。逆にこれが成り立てば、点 [ηζ′:−η′:−ζ′:1][\eta\zeta':-\eta':-\zeta':1] が両方に乗る。Lη,η′(3)L^{(3)}_{\eta,\eta'}(x0=−ηx3x_0=-\eta x_3、x1=−η′x2x_1=-\eta'x_2)でも同じ計算で、条件は η=ζζ′η′\eta=\zeta\zeta'\eta' になる。

  6. (4) は、(2) で異なる27本が見つかったことと定理5(1) から従う。

(3) は定理5(2) と一致します。(4) は定理に頼らなくても、計算機で SS の上の直線をすべて求めると、ちょうどこの27本になります(k=Ck=\mathbb{C} で、直線全体の空間のチャートごとに連立方程式を解いて確かめました)。

標数3では、x03+x13+x23+x33=(x0+x1+x2+x3)3x_0^3+x_1^3+x_2^3+x_3^3=(x_0+x_1+x_2+x_3)^3 となり、曲面は平面 x0+x1+x2+x3=0x_0+x_1+x_2+x_3=0 を3重にしたものになります。標数3を除いたのはこのためです。

Lζ,ζ′(1)L^{(1)}_{\zeta,\zeta'}
x0=−ζx1, x2=−ζ′x3x_0=-\zeta x_1,\ x_2=-\zeta' x_3
ζ′\zeta'
ζ\zeta
11
ω\omega
ω2\omega^2
11
ω\omega
ω2\omega^2
Lζ,ζ′(2)L^{(2)}_{\zeta,\zeta'}
x0=−ζx2, x1=−ζ′x3x_0=-\zeta x_2,\ x_1=-\zeta' x_3
ζ′\zeta'
ζ\zeta
11
ω\omega
ω2\omega^2
11
ω\omega
ω2\omega^2
Lζ,ζ′(3)L^{(3)}_{\zeta,\zeta'}
x0=−ζx3, x1=−ζ′x2x_0=-\zeta x_3,\ x_1=-\zeta' x_2
ζ′\zeta'
ζ\zeta
11
ω\omega
ω2\omega^2
11
ω\omega
ω2\omega^2
直線 L1,1(1) ⁣:x0=−x1, x2=−x3L^{(1)}_{1,1}\colon x_0=-x_1,\ x_2=-x_3
それと交わる10本
実数の直線(3本)
図1具体例フェルマー3次曲面の27本を、式の種類 L(1),L(2),L(3)L^{(1)},L^{(2)},L^{(3)} ごとに3×3のマス目に並べました(行が ζ\zeta、列が ζ′\zeta')。黒が L1,1(1)L^{(1)}_{1,1}、オレンジがそれと交わる10本です。同じマス目では同じ行と同じ列の4本、ほかの2つのマス目では対角線の3本ずつになります(交わるかどうかは、図を作るプログラムで直線の式から計算しています)。破線の丸は ζ=ζ′=1\zeta=\zeta'=1 の3本で、k=Ck=\mathbb{C} のとき実数の点からなる直線はこの3本だけです。

例8 L1,1(1)L^{(1)}_{1,1} のまわりの5枚の平面

ℓ=L1,1(1) ⁣:x0+x1=x2+x3=0\ell=L^{(1)}_{1,1}\colon x_0+x_1=x_2+x_3=0 を含む平面のうち、次の5枚が命題6の平面である。

x0+x1=0x2+x3=0x0+x1+ζ(x2+x3)=0(ζ=1,ω,ω2)\begin{aligned} &x_0+x_1=0\qquad x_2+x_3=0\\ &x_0+x_1+\zeta(x_2+x_3)=0\\ &\qquad(\zeta=1,\omega,\omega^2)\end{aligned}

(1) 平面 x0+x1=0x_0+x_1=0 には L1,ω(1)L^{(1)}_{1,\omega}、L1,ω2(1)L^{(1)}_{1,\omega^2} が乗る。この平面では x03+x13=0x_0^3+x_1^3=0 なので、切り口は x23+x33=(x2+x3)(x2+ωx3)(x2+ω2x3)=0x_2^3+x_3^3=(x_2+x_3)(x_2+\omega x_3)(x_2+\omega^2x_3)=0 の3本である。

(2) 平面 x2+x3=0x_2+x_3=0 には Lω,1(1)L^{(1)}_{\omega,1}、Lω2,1(1)L^{(1)}_{\omega^2,1} が乗る。

(3) 平面 x0+x1+ζ(x2+x3)=0x_0+x_1+\zeta(x_2+x_3)=0 には Lζ,ζ(2)L^{(2)}_{\zeta,\zeta} と Lζ,ζ(3)L^{(3)}_{\zeta,\zeta} が乗る。例えば Lζ,ζ(2)L^{(2)}_{\zeta,\zeta} の上では x0+x1=−ζx2−ζx3x_0+x_1=-\zeta x_2-\zeta x_3 である。

(1) の3本は、どれも点 [1:−1:0:0][1:-1:0:0] を通ります。このように曲面の上の3本の直線が通る点を、エッカルト点と呼びます。図1では、(1)(2) の組がマス目の行と列に、(3) の組が対角線に当たります。

フェルマー3次曲面では、k=Ck=\mathbb{C} のとき実数の直線が3本しかありません。27本をすべて実数の直線として描くには、別の曲面が要ります。

クレブシュの曲面:27本がすべて実数

この節では、標数0の体(例えば k=Ck=\mathbb{C})で考えます。P4\mathbb{P}^4 の中で2つの式

x0+x1+x2+x3+x4=0x03+x13+x23+x33+x43=0x_0+x_1+x_2+x_3+x_4=0\qquad x_0^3+x_1^3+x_2^3+x_3^3+x_4^3=0x0+x1+x2+x3+x4=0x03+x13+x23+x33+x43=0\begin{gathered}x_0+x_1+x_2+x_3+x_4=0\\x_0^3+x_1^3+x_2^3+x_3^3+x_4^3=0\end{gathered}x0+x1+x2+x3+x4=0x03+x13+x23+x33+x43=0\begin{aligned}x_0+x_1+x_2+x_3+x_4 &= 0\\[4pt]x_0^3+x_1^3+x_2^3+x_3^3+x_4^3 &= 0\end{aligned}

が定める集合を考えます。1つ目の式は超平面 P3\mathbb{P}^3 を定め、x4=−(x0+x1+x2+x3)x_4=-(x_0+x_1+x_2+x_3) を2つ目に代入すると、P3\mathbb{P}^3 の3次曲面

x03+x13+x23+x33−(x0+x1+x2+x3)3=0\begin{aligned} &x_0^3+x_1^3+x_2^3+x_3^3\\ &\quad-(x_0+x_1+x_2+x_3)^3=0 \end{aligned}

になります。これをクレブシュの3次曲面(クレブシュの対角曲面)と呼びます。5つの座標の入れ替えで式が変わらないので、5個の文字の置換が曲面の対称性になります。

命題9 クレブシュ曲面の27本

kk を標数0の代数閉体、ϕ=(1+5)/2\phi=(1+\sqrt5)/2(ϕ2=ϕ+1\phi^2=\phi+1)とする。

(1) クレブシュの3次曲面は非特異である。

(2) {a,b,c,d,e}={0,1,2,3,4}\{a,b,c,d,e\}=\{0,1,2,3,4\} について、直線 xa+xb=xc+xd=xe=0x_a+x_b=x_c+x_d=x_e=0 は曲面に乗る。このような直線は15本ある。

(3) 直線 x0+x1+ϕx4=x3+x4+ϕx1=0x_0+x_1+\phi x_4=x_3+x_4+\phi x_1=0(と ∑xi=0\sum x_i=0)は曲面に乗る。その座標を入れ替えると、(2) と異なる12本の直線が得られる。

(4) (2)(3) の27本が、曲面の上の直線のすべてである。どれも有理数と 5\sqrt5 で書けるので、k=Ck=\mathbb{C} のとき27本すべてが実数の直線である。

証明
  1. (1) を示す。P3\mathbb{P}^3 の式 F=x03+x13+x23+x33−(x0+x1+x2+x3)3F=x_0^3+x_1^3+x_2^3+x_3^3-(x_0+x_1+x_2+x_3)^3 の偏微分がすべて0になる点は、x4=−(x0+x1+x2+x3)x_4=-(x_0+x_1+x_2+x_3) とおくと x02=x12=⋯=x42x_0^2=x_1^2=\cdots=x_4^2 をみたす。そういう点は ∑xi=0\sum x_i=0 と両立しない。

    i=0,1,2,3i=0,1,2,3 について、偏微分は次のとおりである。

    ∂F∂xi=3xi2−3(x0+x1+x2+x3)2=3(xi2−x42)\frac{\partial F}{\partial x_i}=3x_i^2-3(x_0+x_1+x_2+x_3)^2=3\bigl(x_i^2-x_4^2\bigr)∂F∂xi=3xi2−3(x0+x1+x2+x3)2=3(xi2−x42)\begin{aligned}\frac{\partial F}{\partial x_i} &= 3x_i^2-3(x_0+x_1+x_2+x_3)^2\\&= 3\bigl(x_i^2-x_4^2\bigr)\end{aligned}∂F∂xi=3xi2=−3(x0+x1+x2+x3)2=3(xi2−x42)\begin{aligned}\frac{\partial F}{\partial x_i} &= 3x_i^2\\&\phantom{=}{} -3(x_0+x_1+x_2+x_3)^2\\&= 3\bigl(x_i^2-x_4^2\bigr)\end{aligned}

    標数0なので 3≠03\neq0 で、4つとも0なら x02=⋯=x42=λx_0^2=\cdots=x_4^2=\lambda となる。λ=0\lambda=0 なら x0=⋯=x3=0x_0=\cdots=x_3=0 で、P3\mathbb{P}^3 の点ではない。λ≠0\lambda\neq0 なら各 xix_i は ±μ\pm\mu(μ2=λ\mu^2=\lambda)である。

    このとき x0+⋯+x4=μ⋅(±1±1±1±1±1)x_0+\cdots+x_4=\mu\cdot(\pm1\pm1\pm1\pm1\pm1) で、5個の ±1\pm1 の和は奇数なので0にならない。これは x4x_4 の決め方 x0+⋯+x4=0x_0+\cdots+x_4=0 に反する。よって特異点はない。

  2. (2) を示す。xb=−xax_b=-x_a、xd=−xcx_d=-x_c、xe=0x_e=0 なら、和も3乗の和も打ち消し合って0になる。ee の選び方が5通り、残りの4つを2組に分ける分け方が3通りで、5⋅3=155\cdot3=15 本である。
  3. (3) を示す。α=1/ϕ\alpha=1/\phi とおくと α2+α=1\alpha^2+\alpha=1 で、直線の点は x=(s, t, −s+αt, αs−t, −α(s+t))x=(s,\ t,\ -s+\alpha t,\ \alpha s-t,\ -\alpha(s+t)) と書ける。3乗の和の s3,t3s^3,t^3 の係数は打ち消し合い、s2t,st2s^2t,st^2 の係数は 3α(1−α−α2)=03\alpha(1-\alpha-\alpha^2)=0 になる。

    点が2つの式と ∑xi=0\sum x_i=0 をみたすことは、代入すれば分かる(x3+x4+ϕx1=αs−t−αs−αt+ϕt=(ϕ−1−α)t=0x_3+x_4+\phi x_1=\alpha s-t-\alpha s-\alpha t+\phi t=(\phi-1-\alpha)t=0。ϕ−1=1/ϕ=α\phi-1=1/\phi=\alpha による)。3乗の和を展開すると

    s3+t3+(−s+αt)3+(αs−t)3−α3(s+t)3=(1−1+α3−α3)s3+3α(1−α−α2)s2t+3α(1−α−α2)st2+(1+α3−1−α3)t3=0\begin{aligned} &s^3+t^3+(-s+\alpha t)^3\\ &\quad+(\alpha s-t)^3-\alpha^3(s+t)^3\\ &=(1-1+\alpha^3-\alpha^3)s^3\\ &\quad+3\alpha(1-\alpha-\alpha^2)s^2t\\ &\quad+3\alpha(1-\alpha-\alpha^2)st^2\\ &\quad+(1+\alpha^3-1-\alpha^3)t^3=0\end{aligned}

    座標を入れ替えた直線も、式の対称性から曲面に乗る。入れ替えで得られる直線がちょうど12本で、(2) の15本と重ならないことは、図を作るプログラムで確かめた。

  4. (4) は、異なる27本が見つかったことと定理5(1) から従う。

(3) の直線の上には、例えば s=1, t=0s=1,\ t=0 の点 (1,0,−1,α,−α)(1,0,-1,\alpha,-\alpha) があります。α=1/ϕ≈0.618\alpha=1/\phi\approx0.618 で、1+0−1+α3−α3=01+0-1+\alpha^3-\alpha^3=0 と確かめられます。

クレブシュ曲面は、P2\mathbb{P}^2 をうまく選んだ6点でブローアップした曲面でもあります。27本に名前を付けるため、先にブローアップの話をします。立体図は、その後の節で回します。

平面の6点のブローアップ

第7回では、平面の原点を、原点を通る直線の向き全体 P1\mathbb{P}^1 に取り替えました(第7回の定義2)。P2\mathbb{P}^2 の点 P1,…,P6P_1,\dots,P_6 のそれぞれで同じ操作をした曲面を XX とし、PiP_i の上の例外曲線を EiE_i と書きます。

曲線 C⊆P2C\subseteq\mathbb{P}^2 については、PiP_i 以外の部分を持ち上げて閉包をとったものを、第7回と同じく狭義変換と呼びます(第7回の定義8)。

定義10 一般の位置にある6点 [2, 記法4.7.3, p.152–153]

P2\mathbb{P}^2 の相異なる6点 P1,…,P6P_1,\dots,P_6 が一般の位置にあるとは、どの3点も1本の直線に乗らず、6点すべてが1つの2次曲線(円錐曲線)に乗ることもないことをいう。

3次の斉次式 G(x0,x1,x2)G(x_0,x_1,x_2) の係数は、単項式 x0ax1bx2cx_0^ax_1^bx_2^c(a+b+c=3a+b+c=3)の数だけあり、(52)=10\binom{5}{2}=10 個です。「GG が点 PiP_i を通る」は係数の1次式1つなので、6点を通る3次式は、少なくとも 10−6=410-6=4 次元の空間をなします。

定理11 6点のブローアップは3次曲面 [2, 定理4.6, p.151; 2, 系4.7, p.151–152]

kk を代数閉体、P1,…,P6∈P2P_1,\dots,P_6\in\mathbb{P}^2 を一般の位置にある6点とする。6点を通る3次式の空間はちょうど4次元で、その基底 G0,…,G3G_0,\dots,G_3 による写像

P2∖{P1,…,P6}⟶P3p⟼[G0(p):G1(p):p⟼[G2(p):G3(p)]\begin{aligned} &\mathbb{P}^2\setminus\{P_1,\dots,P_6\}\longrightarrow\mathbb{P}^3\\ &p\longmapsto[G_0(p):G_1(p):{}\\ &\phantom{p\longmapsto[}G_2(p):G_3(p)] \end{aligned}

は、6点でのブローアップ XX から P3\mathbb{P}^3 への埋め込みに延び、像は非特異な3次曲面である。

ハーツホーンは、定理4.6 で r≤6r\leq6 点の場合を扱い、系4.7 で XX が P9−r\mathbb{P}^{9-r} の 9−r9-r 次の曲面になることを示しています。r=6r=6 が3次曲面です。

この埋め込みで、平面の曲線がどんな次数の曲線に移るかは、ベズーの定理(第9回の定理12)で見当がつきます。P3\mathbb{P}^3 の平面 ∑ajyj=0\sum a_jy_j=0 を引き戻すと、6点を通る3次曲線 ∑ajGj=0\sum a_jG_j=0 になります。aa 次の平面曲線がこれと交わる 3a3a 点のうち、PiP_i で交わる分はブローアップで離れて数えなくなります。

ハーツホーンの命題4.8(e) と注意4.8.1 は、これを次の式にまとめています[2, 命題4.8, p.153; 2, 注意4.8.1, p.154]。PiP_i で重複度 bib_i の点をもつ既約な aa 次曲線の狭義変換は、P3\mathbb{P}^3 の曲線として次数

3a−∑i=16bi3a-\sum_{i=1}^{6}b_i

をもちます。次数1の曲線が直線です。例えば、Pi,PjP_i,P_j を通る直線は 3⋅1−1−1=13\cdot1-1-1=1、5点を通る円錐曲線は 3⋅2−5=13\cdot2-5=1 で、どちらも直線に移ります。

定理12 27本の内訳 [2, 定理4.9, p.154–155]

定理11の3次曲面 XX の上の直線は、次の27本である。

(a) 例外曲線 EiE_i(i=1,…,6i=1,\dots,6):6本。

(b) PiP_i と PjP_j を通る直線の狭義変換 FijF_{ij}(1≤i<j≤61\leq i<j\leq6):(62)=15\binom62=15 本。

(c) PjP_j 以外の5点を通る円錐曲線の狭義変換 GjG_j(j=1,…,6j=1,\dots,6):6本。

6+15+6=276+15+6=27 です。(c) の円錐曲線は、5点を通る2次曲線がただ1つに決まることから決まります。5点のうち3点が1直線に乗らないので、その2次曲線は2本の直線に分かれません。

具体例として、正五角形の頂点 P1,…,P5P_1,\dots,P_5 と中心 P6P_6 を取ります。座標は Pk+1=(cos⁡(90∘+72∘k), sin⁡(90∘+72∘k))P_{k+1}=(\cos(90^\circ+72^\circ k),\ \sin(90^\circ+72^\circ k))(k=0,…,4k=0,\dots,4)、P6=(0,0)P_6=(0,0) です(P2\mathbb{P}^2 のアフィン部分 U0U_0 の座標)。

五角形のどの3頂点も1直線に乗らず、中心と2頂点が1直線に乗るのは向かい合う2頂点のときだけで、正五角形にはそういう組がありません。5頂点は円 x2+y2=1x^2+y^2=1 に乗りますが、中心は乗らないので、6点は一般の位置にあります。

P1P_1
P2P_2
P3P_3
P4P_4
P5P_5
P6P_6
P1P_1
P2P_2
P3P_3
P4P_4
P5P_5
P6P_6
15本の直線 PiPjP_iP_j
5点を通る6つの円錐曲線
緑:P6P_6 を通る5本 青:頂点どうしの10本
オレンジ:円 G6G_6 紫:G1G_1 灰:G2,…,G5G_2,\dots,G_5
図2具体例正五角形の頂点 P1,…,P5P_1,\dots,P_5 と中心 P6P_6。左は2点を通る15本の直線で、狭義変換が FijF_{ij} になります。右は5点を通る6つの円錐曲線で、狭義変換が GjG_j になります。G6G_6(P6P_6 を通らない)は外接円で、G1,…,G5G_1,\dots,G_5(中心と4頂点を通る)はどれも双曲線です。図を作るプログラムで、各円錐曲線がちょうど5点を通ること、6点が一般の位置にあることを確かめています。

27本の交わり方は、名前から読めます。ハーツホーンの注意4.10.1 の表を書き写します(i,j,k,li,j,k,l は相異なる番号)。

命題13 27本の交わり方 [2, 注意4.10.1, p.158]

組交わる条件1本から見た相手
EiE_i と EjE_j交わらない00
EiE_i と FjkF_{jk}i∈{j,k}i\in\{j,k\}EiE_i に5本
EiE_i と GjG_ji≠ji\neq jEiE_i に5本
FijF_{ij} と FklF_{kl}{i,j}∩{k,l}=∅\{i,j\}\cap\{k,l\}=\varnothingFijF_{ij} に (42)=6\binom42=6 本
FijF_{ij} と GkG_kk∈{i,j}k\in\{i,j\}FijF_{ij} に2本(Gi,GjG_i,G_j)
GjG_j と GkG_k交わらない00

合計すると、EiE_i は 5+5=105+5=10 本、FijF_{ij} は Ei,Ej,Gi,GjE_i,E_j,G_i,G_j と6本の FklF_{kl} で 1010 本、GjG_j は 5+5=105+5=10 本と交わる。

平面の図で読むと、例えば FijF_{ij} と FklF_{kl} は、平面では直線 PiPjP_iP_j と PkPlP_kP_l の交点で交わります。番号が1つ共通なら、平面での交点は PiP_i そのもので、ブローアップで向きの違う2点に分かれて交わらなくなります。

命題6の5枚の平面も名前で書けます。E1E_1 と交わるのは F1jF_{1j} と GjG_j(j=2,…,6j=2,\dots,6)で、F1jF_{1j} と GjG_j は互いに交わるので、{F1j,Gj}\{F_{1j},G_j\} が5つの組です。

定義14 二重6 [2, 注意4.9.1, p.155–156]

P3\mathbb{P}^3 の12本の直線 E1,…,E6,G1,…,G6E_1,\dots,E_6,G_1,\dots,G_6 が次をみたすとき、二重6(シュレーフリの二重6)と呼ぶ。EiE_i どうしは交わらず、GjG_j どうしも交わらず、EiE_i と GjG_j は i≠ji\neq j のとき、またそのときに限り交わる。

命題13の表から、27本のうちの E1,…,E6,G1,…,G6E_1,\dots,E_6,G_1,\dots,G_6 は二重6です。ハーツホーンは、二重6はちょうど1つの非特異3次曲面に含まれることにも触れています。

E1E_1
G1G_1
E2E_2
G2G_2
E3E_3
G3G_3
E4E_4
G4G_4
E5E_5
G5G_5
E6E_6
G6G_6
交わらない
図3概念図二重6の交わり方です。点が直線を表し、線で結んだ2本だけが交わります(位置に意味はなく、結び方だけが意味をもちます)。上の EiE_i と下の GjG_j は、i≠ji\neq j なら交わり、真下の GiG_i とだけ交わりません。結び方は、次の節のクレブシュ曲面の直線の式から計算して確かめています。
専門的な話27本の対称性

27本のうち、互いに交わらない6本をどう選んでも、それを E1,…,E6E_1,\dots,E_6 とする別のブローアップ X→P2X\to\mathbb{P}^2 があります[2, 命題4.10, p.156]。つまり EiE_i という名前に特別な意味はなく、6本を選び直すと Fij,GjF_{ij},G_j の名前も付け直されます。

交わり方を保つ27本の並べ替えの群の位数は、互いに交わらない6本を順に選ぶ数として 27⋅16⋅10⋅6⋅2⋅1=5184027\cdot16\cdot10\cdot6\cdot2\cdot1=51840 になります[2, 注意4.10.1, p.158–159]。ハーツホーンは、この群がワイル群 W(E6)W(E_6) と同型で、位数25920の単純群を指数2の正規部分群として含むことに触れています。

27本を回して見る

図2の6点(正五角形の頂点と中心)でブローアップした3次曲面は、クレブシュ曲面と同型になります。図を作るプログラムでは、6点を通る3次式の基底で P2\mathbb{P}^2 を P3\mathbb{P}^3 に写し、射影変換でクレブシュ曲面に重ねています。

射影変換は、図2の平面で3本の直線 PiPjP_iP_j が1点で交わる10か所(例えば P1P6P_1P_6、P2P3P_2P_3、P4P5P_4P_5)のうち5か所の行き先で決めました。像がクレブシュ曲面の方程式をみたすこと、27本が名前どおりに命題9の直線に移ること、交わり方が命題13の表と一致することを、数値計算で確かめています。

計算すると、二重6の Ei,GjE_i,G_j が ϕ\phi を含む12本に、FijF_{ij} が xa+xb=xc+xd=xe=0x_a+x_b=x_c+x_d=x_e=0 の15本に当たります。平面で3本の直線が1点で交わる10か所は、曲面の上の10個のエッカルト点になります。

立体図には、x3≠x4x_3\neq x_4 の部分を、次の座標で描きます。

(x,y,z)=0.55x3−x4(x0−x1, x0+x1−2x23,x3+x4)\begin{aligned} &(x,y,z)\\ &=\frac{0.55}{x_3-x_4}\Bigl(x_0-x_1,\ \frac{x_0+x_1-2x_2}{\sqrt3},{}\\ &\qquad\qquad x_3+x_4\Bigr)\end{aligned}

この座標では、x0,x1,x2x_0,x_1,x_2 の巡回的な入れ替えが zz 軸のまわりの 120∘120^\circ の回転に、x3x_3 と x4x_4 の入れ替えが原点に関する点対称になります。曲面の対称性の一部が、図の対称性として見えます。

平面 x3=x4x_3=x_4 が無限遠になるので、そこで交わる2本は平行に描かれます(第5回の例6と同じことです)。27本の中には、この平面に含まれる直線はありません。

ドラッグで回せます

クレブシュの3次曲面の上の27本の直線を、すべて描いています(曲面そのものは描いていません)。「真上」から見ると、120°回しても同じ形です。1枚の絵では多くの直線が交わって見えますが、回すと、本当に交わる組と、すれ違うだけの組(ねじれの位置)が見分けられます。

黒い直線 F23F_{23}(xx 軸)と交わる直線は、ちょうど10本です。同じ色の2本と F23F_{23} は1枚の平面に乗っていて、その平面で曲面を切った切り口がこの3本です。「F23F_{23} に沿って」見ると、5枚の平面が原点を通る5本の直線に見えます。赤の2本 F16,F45F_{16},F_{45} は xx 軸と平行に描かれ、無限遠で F23F_{23} と交わります。黒い点は残り8本との交点です(F15F_{15} と F46F_{46} の交点は、どちらも原点で重なります)。

二重6です。青の6本 E1,…,E6E_1,\dots,E_6 どうし、オレンジの6本 G1,…,G6G_1,\dots,G_6 どうしは、どれも交わりません。EiE_i と GjG_j は i≠ji\neq j のときだけ交わります。その30個の交点のうち24個を黒い点で示しました。残りの6個は無限遠にあり、その組の2本は平行に描かれます。ラベルの E1E_1 と G1G_1 は、交わらない組です。

緑の15本 FijF_{ij} は、xa+xb=xc+xd=xe=0x_a+x_b=x_c+x_d=x_e=0 の形の直線です。黒い点では、3本が1点で交わります。そういう点は全部で10個あり、図の7個のほかに、無限遠に3個あります。

図4具体例クレブシュ曲面の上の27本の直線を、半径1.5の球の中の部分だけ描いた立体図です(曲面は描いていません)。各直線の点が曲面の方程式をみたすことを、生成時に確かめています。1つの向きから見ると多くの組が交わって見えますが、回すと、本当に交わる組とすれ違うだけの組が分かれます。「F23F_{23} に沿って」は直線 F23F_{23}(xx 軸)の方向から見る視点で、F23F_{23} を含む5枚の平面がそれぞれ原点を通る直線に見えます。

段階「1本と交わる10本」の黒い直線 F23F_{23} は、x0+x1=x3+x4=x2=0x_0+x_1=x_3+x_4=x_2=0 で、図の xx 軸です。交わる10本は、表から E2,E3,G2,G3E_2,E_3,G_2,G_3 と F14,F15,F16,F45,F46,F56F_{14},F_{15},F_{16},F_{45},F_{46},F_{56} で、5枚の平面の組は次のとおりです。

{E2,G3}{E3,G2}{F14,F56}{F15,F46}{F16,F45}\{E_2,G_3\}\quad \{E_3,G_2\}\quad \{F_{14},F_{56}\}\quad \{F_{15},F_{46}\}\quad \{F_{16},F_{45}\}{E2,G3}{E3,G2}{F14,F56}{F15,F46}{F16,F45}\begin{gathered}\{E_2,G_3\}\\\{E_3,G_2\}\\\{F_{14},F_{56}\}\\\{F_{15},F_{46}\}\\\{F_{16},F_{45}\}\end{gathered}

同じ組の2本は同じ色で描きました。「F23F_{23} に沿って」を押すと、xx 軸に沿って見ることになり、xx 軸を含む平面はどれも原点を通る直線に重なります。5色がそれぞれ1本の直線の上に並ぶのが、命題6(3) の5枚の平面です。

{F15,F46}\{F_{15},F_{46}\} の平面は z=0z=0 で、F15F_{15}、F46F_{46}、F23F_{23} の3本は原点で交わります。原点はエッカルト点の1つで、真上から見ると、3本は 120∘120^\circ の回転で互いに移り合います。

段階「二重6」では、青の EiE_i どうし、オレンジの GjG_j どうしが、回すとどれもすれ違っていることが分かります。段階「15本の FijF_{ij}」では、10個のエッカルト点のそれぞれを15本のうち3本が通ります。10個のうち7個が図の中に見え、残りの3個は無限遠にあります。

特異な3次曲面と4次以上の曲面

定理5の「非特異」は外せません。特異点のある3次曲面では、直線が無限にあることも、27本より少ないこともあります。

例15 特異点のある3次曲面

(1) 標数が3でない体で、S=V+(x03+x13+x23)⊆P3S=V_+(x_0^3+x_1^3+x_2^3)\subseteq\mathbb{P}^3 とする(x3x_3 を含まない)。SS は、平面曲線 x03+x13+x23=0x_0^3+x_1^3+x_2^3=0 の上の錐で、頂点 [0:0:0:1][0:0:0:1] で偏微分がすべて0になる。頂点と、平面曲線の各点 [a0:a1:a2:0][a_0:a_1:a_2:0] を結ぶ直線は SS に乗るので、直線は無限にある。

(2) ケーリーの3次曲面 S=V+(x1x2x3+x0x2x3+x0x1x3+x0x1x2)S=V_+(x_1x_2x_3+x_0x_2x_3+x_0x_1x_3+x_0x_1x_2) は、4つの座標の点 [1:0:0:0],…,[0:0:0:1][1:0:0:0],\dots,[0:0:0:1] を特異点にもつ。SS の上の直線は、6本の xi=xj=0x_i=x_j=0 と、3本の x0+x1=x2+x3=0x_0+x_1=x_2+x_3=0、x0+x2=x1+x3=0x_0+x_2=x_1+x_3=0、x0+x3=x1+x2=0x_0+x_3=x_1+x_2=0 の、合わせて9本である。

(1) の直線が乗ることは、点 [sa0:sa1:sa2:t][sa_0:sa_1:sa_2:t] を代入すると s3(a03+a13+a23)=0s^3(a_0^3+a_1^3+a_2^3)=0 となることから分かります。(2) の9本が乗ることは代入で確かめられ、これ以外にないことと特異点が4つだけであることは、計算機で連立方程式を解いて確かめました。

次数を4以上に上げると、ふつうは直線がなくなります。最初の節の数え上げでは、d≥4d\geq4 で見込みの次元が負でした。

専門的な話一般の4次以上の曲面には直線がない

dd 次の斉次式は (d+33)\binom{d+3}{3} 個の係数をもつので、dd 次の曲面全体は N=(d+33)−1N=\binom{d+3}{3}-1 次元の射影空間 PN\mathbb{P}^N の点とみなせます。d=3d=3 なら N=19N=19 で、ハーツホーンの注意4.7.2 の定数の数え上げに出てくる数です[2, 注意4.7.2, p.152]。

直線と曲面の組で、直線が曲面に乗るものの集合 Σ⊆G(2,4)×PN\Sigma\subseteq G(2,4)\times\mathbb{P}^N を考えます。直線 LL を1つ決めると、LL を含む曲面の式は、命題2の d+1d+1 個の1次式で決まる部分空間です。この d+1d+1 個は独立です(L=V+(x2,x3)L=V_+(x_2,x_3) なら、式を x2=x3=0x_2=x_3=0 に制限する写像が全射)。Σ\Sigma は G(2,4)G(2,4) の上に同じ次元の射影空間が並んだものなので既約で、次元を足して次のようになります[1, 演習3.22, p.130]。

dim⁡Σ=4+(N−(d+1))=N+3−d\dim\Sigma=4+\bigl(N-(d+1)\bigr)=N+3-ddim⁡Σ=4+(N−(d+1))=N+3−d\begin{aligned}\dim\Sigma &= 4+\bigl(N-(d+1)\bigr)\\&= N+3-d\end{aligned}dim⁡Σ=4=+(N−(d+1))=N+3−d\begin{aligned}\dim\Sigma &= 4\\&\phantom{=}{} +\bigl(N-(d+1)\bigr)\\&= N+3-d\end{aligned}

d≥4d\geq4 なら dim⁡Σ<N\dim\Sigma<N なので、Σ\Sigma を PN\mathbb{P}^N に射影した像、つまり直線を含む曲面の全体は、PN\mathbb{P}^N 全体になりません。G(2,4)G(2,4) は射影多様体なので像は閉集合で[1, 定理4.9, p.141]、その外にある「一般の」曲面は直線を含みません。

「すべての」4次曲面ではありません。標数が2でない体では、フェルマー4次曲面 x04+x14+x24+x34=0x_0^4+x_1^4+x_2^4+x_3^4=0 は、ε4=ε′4=−1\varepsilon^4=\varepsilon'^4=-1 について直線 x0=εx1, x2=ε′x3x_0=\varepsilon x_1,\ x_2=\varepsilon'x_3 を含みます。d=3d=3 では dim⁡Σ=N\dim\Sigma=N となり、非特異な3次曲面がどれも直線を含むこと(定理5)と釣り合っています。

27本の直線は、1849年にケーリーとサーモンが見つけました。ケーリーの論文の題は「3次曲面の3重接平面について」です[3]。クレブシュの曲面は、その後1871年にクレブシュが調べた例です。

まとめ:曲面の上の直線

曲面乗っている直線この記事の例
非特異な2次曲面1次元の族が2つx0x3=x1x2x_0x_3=x_1x_2 の {[s:t:λs:λt]}\{[s:t:\lambda s:\lambda t]\}(第17回の定義7)
非特異な3次曲面ちょうど27本、各1本が10本と交わるフェルマー(実数は3本)、クレブシュ(27本とも実数)
6点のブローアップEiE_i 6本、FijF_{ij} 15本、GjG_j 6本正五角形の頂点と中心(クレブシュ曲面と同型)
特異点のある3次曲面無限にあることも、少ないこともある錐(無限)、ケーリーの曲面(9本)
一般の4次以上の曲面ないフェルマー4次曲面のような例外はある

3次曲面では、直線が乗る4つの条件と直線全体の4次元がちょうど釣り合い、本数は有限で、しかも曲面によらず27本でした。27本は、平面の6点、15本の直線、6つの円錐曲線から生まれ、その交わり方は名前だけで決まります。

第17回から第20回まで:射影空間の中の多様体

第17回からの4回は、射影空間の中に置いた多様体を見てきました。

  • 第17回:セグレ埋め込みで P1×P1\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1 を2次曲面にし、2つの直線の族を見ました。
  • 第18回:ヴェロネーゼ埋め込みで次数を上げ、有理正規曲線やヴェロネーゼ曲面を作りました。
  • 第19回:P3\mathbb{P}^3 の直線全体を、プリュッカー座標で P5\mathbb{P}^5 の2次超曲面 G(2,4)G(2,4) にしました。
  • 第20回(この記事):3次曲面の上の27本の直線を、G(2,4)G(2,4) の次元とブローアップで数えました。

2次曲面では直線が無限にあり、3次曲面では27本、一般の4次以上の曲面では0本です。どれも「直線全体の空間の中で、曲面に乗る直線がどれだけあるか」という1つの問いの答えでした。

この先に何を扱うかは、まだ決めていません。曲面の上の曲線の交点数(第7回のブローアップの例外曲線の自己交点数 −1-1 など)は自然な続きですが、予定は変わることがあります。

参考文献

  1. R. ハーツホーン(高橋宣能・松下大介 訳), 『代数幾何学 1』, 丸善出版, 2013.
  2. R. ハーツホーン(高橋宣能・松下大介 訳), 『代数幾何学 3』, 丸善出版, 2012.
  3. A. Cayley, On the triple tangent planes of surfaces of the third order, The Cambridge and Dublin Mathematical Journal 4, 1849, pp. 118–132.