数学ビジュアライズ

代数幾何図で読む代数幾何第6回

曲線が尖る点・交わる点:特異点と接空間

曲線が自分と交わる結節点や尖る尖点を、偏微分が0になる点として定義します。ヤコビ行列で接空間を計算し、局所環の M/M^2 と同型であることを示して、特異点かどうかが置き方によらないことを確かめます。接錐で特異点の枝の向きを調べ、y=x^3 の射影閉包が無限遠点で尖ることも計算で確かめます。曲面 z=f(x,y) と円錐は回せる立体図で見ます。

目次
  1. 前回の宿題
  2. 平面曲線の特異点
  3. 接空間とヤコビ行列
  4. ザリスキー接空間:置き方によらない接空間
  5. 接錐:特異点での接線の束
  6. 射影曲線の特異点:宿題の答え
  7. 代数閉体でない体と標数
  8. まとめ:特異点を見る3つの道具
  9. 次回:ブローアップで特異点をほどく
  10. 参考文献
この記事の要点
特異点
平面曲線 f(x,y)=0f(x,y)=0 の点のうち、fx=fy=0f_x=f_y=0 となる点が特異点です。原点で自分と交わる結節点 y2=x2(x+1)y^2=x^2(x+1) や、原点で尖る尖点 y2=x3y^2=x^3 が代表例です。
接空間
定義式を1次の式で近似した連立1次方程式の解の空間です。次元を数えるとヤコビ行列の階数で書け、多様体の次元と等しい点が非特異点です。
ザリスキー接空間
点での局所環の極大イデアル MM について、M/M2M/M^2 の双対空間です。接空間と同型なので、特異点かどうかは多様体を空間に置く置き方によりません。
接錐
定義式の最低次の部分の零点集合で、特異点での「接線の束」です。結節点では2本の接線、尖点では重なった1本の接線になります。
  • 証明は、ステップの流れだけを短く書いています。「詳しく」の付いた行をクリックすると、そのステップの詳しい説明が開きます。説明の中にも開ける行があります。
  • 定義・命題・定理には、記事全体で通し番号を振っています。
  • もう少し詳しくは補足、専門的な話は先の回につながる話題です。どちらも開かずに読み進められます。
  • 各ブロックの「AIに質問」を押すと、その部分の内容を入れた質問文で、お使いのAIを開けます。

前回の宿題

第5回の最後で、曲線 y=x3y=x^3 を射影平面に延ばしました。射影閉包は x02x2=x13x_0^2x_2=x_1^3 で、無限遠点 [0:0:1][0:0:1] が1つ加わります。この点のまわりの座標 a=x0/x2, b=x1/x2a=x_0/x_2,\ b=x_1/x_2 で書くと、式は a2=b3a^2=b^3 になります(第5回の例11)。

y=x3y=x^3 自身はどこも尖っていないのに、無限遠点では a2=b3a^2=b^3 の形で尖っています。

尖った点は第1回にも出てきました。第1回の命題17では、空間の中の滑らかなねじれ3次曲線を xx 軸の方向から見ると、影 y3=z2y^3=z^2 が原点で尖りました(第1回の図6)。第1回の例16の曲線 y2=x2(x+1)y^2=x^2(x+1) は、原点で自分自身と交わっていました。

しかし「尖る」「自分と交わる」は、まだ定義していません。この記事では、微分を使って特異点を定義し、接空間・局所環・接錐の3つの道具で調べます。最後に宿題に戻り、[0:0:1][0:0:1] が本当に尖点であることを計算で確かめます。

とくに断らなければ、kk は代数閉体とします。例では標数の仮定を明記します。ハーツホーン和訳の第 I 章は、零点集合 V(f)V(f) を Z(f)Z(f) と書いています。

平面曲線の特異点

微分は極限を使わず、多項式の式の操作として定義します。こうするとどんな体でも使えます。

定義1 形式的な偏微分 [1, p.43]

kk を体とする。f=∑i,jcijxiyj∈k[x,y]f=\sum_{i,j}c_{ij}x^iy^j\in k[x,y] に対して

∂f∂x=∑i,ji cijxi−1yj∂f∂y=∑i,jj cijxiyj−1\frac{\partial f}{\partial x}=\sum_{i,j}i\,c_{ij}x^{i-1}y^j\qquad \frac{\partial f}{\partial y}=\sum_{i,j}j\,c_{ij}x^iy^{j-1}∂f∂x=∑i,ji cijxi−1yj∂f∂y=∑i,jj cijxiyj−1\begin{gathered}\frac{\partial f}{\partial x}=\sum_{i,j}i\,c_{ij}x^{i-1}y^j\\\frac{\partial f}{\partial y}=\sum_{i,j}j\,c_{ij}x^iy^{j-1}\end{gathered}∂f∂x=∑i,ji cijxi−1yj∂f∂y=∑i,jj cijxiyj−1\begin{aligned}\frac{\partial f}{\partial x} &= \sum_{i,j}i\,c_{ij}x^{i-1}y^j\\[4pt]\frac{\partial f}{\partial y} &= \sum_{i,j}j\,c_{ij}x^iy^{j-1}\end{aligned}

を ff の偏微分と呼び、fx, fyf_x,\ f_y とも書く。nn 変数の多項式でも同じように定める。

和の微分と積の微分の公式 (fg)x=fxg+fgx(fg)_x=f_xg+fg_x は、普通の微分と同じく成り立ちます。単項式どうしで確かめれば足ります。

ただし標数 pp の体では、普通の微分と違うことが起きます。kk の中では p=0p=0 なので、xpx^p の微分は0です[1, p.43]。

∂∂xxp=p xp−1=0(char⁡k=p)\frac{\partial}{\partial x}x^p=p\,x^{p-1}=0\qquad(\operatorname{char}k=p)∂∂xxp=p xp−1=0(char⁡k=p)\begin{gathered}\frac{\partial}{\partial x}x^p=p\,x^{p-1}=0\\(\operatorname{char}k=p)\end{gathered}∂∂xxp=p xp−1=0(char⁡k=p)\begin{aligned}\frac{\partial}{\partial x}x^p &= p\,x^{p-1}\\&= 0\\[4pt]&(\operatorname{char}k=p)\end{aligned}

例えば F3\mathbb{F}_3 の上では (x3+x)′=3x2+1=1(x^3+x)'=3x^2+1=1 です。

定義2 平面曲線の特異点

f∈k[x,y]f\in k[x,y] を既約多項式とし、C=V(f)⊆A2C=V(f)\subseteq\mathbb{A}^2 とする。点 p∈Cp\in C で fx(p)=fy(p)=0f_x(p)=f_y(p)=0 となるとき、pp を CC の特異点と呼ぶ。そうでない点を非特異点と呼び、非特異点 p=(a,b)p=(a,b) で直線

fx(p) (x−a)+fy(p) (y−b)=0f_x(p)\,(x-a)+f_y(p)\,(y-b)=0fx(p) (x−a)+fy(p) (y−b)=0\begin{aligned}f_x(p)\,(x-a)+f_y(p)\,(y-b) &= 0\end{aligned}

を pp での CC の接線と呼ぶ。

特異点の全体は、3つの式の共通の解です。

Sing⁡C=V(f, fx, fy)\operatorname{Sing}C=V(f,\ f_x,\ f_y)Sing⁡C=V(f, fx, fy)\begin{aligned}\operatorname{Sing}C &= V(f,\ f_x,\ f_y)\end{aligned}

ff を既約としたのは、重複した因子を除くためです。例えば f=g2f=g^2 なら fx=2ggxf_x=2gg_x は C=V(g)C=V(g) の上で0になり、すべての点が特異点になってしまいます。この定義は、次の節で一般の多様体の定義の特別な場合として位置づけ直します。

例3 円

kk の標数は2でないとし、f=x2+y2−1f=x^2+y^2-1、C=V(f)C=V(f) とする。

fx=2xfy=2yf_x=2x\qquad f_y=2yfx=2xfy=2y\begin{gathered}f_x=2x\\f_y=2y\end{gathered}fx=2xfy=2y\begin{aligned}f_x &= 2x\\[4pt]f_y &= 2y\end{aligned}

が両方0になるのは原点だけで、f(0,0)=−1≠0f(0,0)=-1\neq0 なので原点は CC の上にない。よって CC に特異点はない。

標数が5でもないとき、点 p=(3/5, 4/5)p=(3/5,\ 4/5) は CC の上にあり(9/25+16/25=19/25+16/25=1)、fx(p)=6/5f_x(p)=6/5、fy(p)=8/5f_y(p)=8/5 である。pp での接線は

65(x−35)+85(y−45)=0⟺3x+4y=5\frac65\Bigl(x-\frac35\Bigr)+\frac85\Bigl(y-\frac45\Bigr)=0\quad\Longleftrightarrow\quad 3x+4y=565(x−35)+85(y−45)=0⟺3x+4y=5\begin{gathered}\frac65\Bigl(x-\frac35\Bigr)+\frac85\Bigl(y-\frac45\Bigr)=0\\\Longleftrightarrow 3x+4y=5\end{gathered}65(x−35)+85(y−45)=0⟺3x+4y=5\begin{aligned}\frac65\Bigl(x-\frac35\Bigr)+\frac85\Bigl(y-\frac45\Bigr) &= 0\\[4pt]&\Longleftrightarrow 3x+4y=5\end{aligned}

標数2を除いたのは、標数2では x2+y2−1=(x+y+1)2x^2+y^2-1=(x+y+1)^2 となり、既約でないからです。

例4 結節点と尖点

(1) kk の標数は2でないとし、f=y2−x2(x+1)=y2−x3−x2f=y^2-x^2(x+1)=y^2-x^3-x^2 とする。

fx=−3x2−2x=−x(3x+2)fy=2yf_x=-3x^2-2x=-x(3x+2)\qquad f_y=2yfx=−3x2−2x=−x(3x+2)fy=2y\begin{gathered}f_x=-3x^2-2x=-x(3x+2)\\f_y=2y\end{gathered}fx=−3x2−2x=−x(3x+2)fy=2y\begin{aligned}f_x &= -3x^2-2x\\&= -x(3x+2)\\[4pt]f_y &= 2y\end{aligned}

特異点では y=0y=0 かつ x(3x+2)=0x(3x+2)=0 である。x=0x=0 なら原点で、f(0,0)=0f(0,0)=0 なので CC の上にある。x=−2/3x=-2/3(標数が3でないとき)では f(−2/3,0)=−49⋅13=−427≠0f(-2/3,0)=-\tfrac49\cdot\tfrac13=-\tfrac4{27}\neq0 で、CC の上にない。よって特異点は原点だけである。この原点を結節点と呼ぶ。

(2) f=y2−x3f=y^2-x^3 とする。fx=−3x2f_x=-3x^2、fy=2yf_y=2y で、特異点は原点だけである。この原点を尖点と呼ぶ。

(1)(2) の ff はどちらも既約である。yy の2次式 y2−g(x)y^2-g(x) が分解するのは gg が多項式の平方のときだけで、x2(x+1)x^2(x+1) も x3x^3 も平方ではない。

(3) 標数が3でもないとき、(1) の点 q=(3,6)q=(3,6) は CC の上にあり(36=9⋅436=9\cdot4)、fx(q)=−33f_x(q)=-33、fy(q)=12f_y(q)=12 なので非特異点で、接線は 11x−4y=911x-4y=9 である。

証明
  1. (1) で ff が既約であることは第1回の例16で示した。
  2. (1) で標数が3のときは fx=−2xf_x=-2x なので、特異点では x=0x=0 となり、同じ結論になる。
  3. (2) の ff が既約であることも同じ次数の議論で分かる。yy の根 α(x)\alpha(x) があれば α2=x3\alpha^2=x^3 となるが、左辺の次数は偶数、右辺は3である。
  4. (2) の特異点はどの標数でも原点だけである。

    標数が2でも3でもなければ、fx=fy=0f_x=f_y=0 から x=y=0x=y=0。

    標数3なら fx=0f_x=0 は恒等的に成り立つが、fy=2y=0f_y=2y=0 から y=0y=0、f=0f=0 から x3=0x^3=0 で x=0x=0。

    標数2なら fy=0f_y=0 は恒等的に成り立つが、fx=−3x2=x2=0f_x=-3x^2=x^2=0 から x=0x=0、f=0f=0 から y=0y=0。

  5. (3) の接線は −33(x−3)+12(y−6)=0-33(x-3)+12(y-6)=0 で、−3-3 で割ると 11x−4y−9=011x-4y-9=0。

特異点の条件 f=fx=fy=0f=f_x=f_y=0 は、曲面 z=f(x,y)z=f(x,y) を使うと目で見えます。曲線 CC は、この曲面と平面 z=0z=0 の交わりです。

点 p=(a,b)∈Cp=(a,b)\in C の上で、曲面の接平面は次の式で表されます。この接平面と z=0z=0 の交わりを求める式は、接線の式そのものです。

z=fx(p) (x−a)+fy(p) (y−b)z=0z=f_x(p)\,(x-a)+f_y(p)\,(y-b)\qquad z=0z=fx(p) (x−a)+fy(p) (y−b)z=0\begin{gathered}z=f_x(p)\,(x-a)+f_y(p)\,(y-b)\\z=0\end{gathered}z=fx(p) (x−a)+fy(p) (y−b)z=0\begin{aligned}z &= f_x(p)\,(x-a)+f_y(p)\,(y-b)\\[4pt]z &= 0\end{aligned}z=fx(p) (x−a)=+fy(p) (y−b)z=0\begin{aligned}z &= f_x(p)\,(x-a)\\&\phantom{=}{} +f_y(p)\,(y-b)\\[4pt]z &= 0\end{aligned}

pp が特異点なら右辺の係数がどちらも0で、接平面は z=0z=0 そのものになります。交わりは直線ではなく平面全体になり、接線が1本に決まりません。

ドラッグで回せます

円 x2+y2=1x^2+y^2=1 は、曲面 z=x2+y2−1z=x^2+y^2-1(青)と平面 z=0z=0 の交わりです。点 P=(3/5,4/5)P=(3/5,4/5) で曲面の接平面(紫)は傾いていて、平面 z=0z=0 とは直線 3x+4y=53x+4y=5 で交わります。これが円の PP での接線です。

結節点 y2=x2(x+1)y^2=x^2(x+1)。曲面 z=y2−x2−x3z=y^2-x^2-x^3 は原点で峠(鞍点)になっていて、接平面がちょうど z=0z=0 です。接平面と z=0z=0 の交わりは1本の直線ではなく平面全体になり、接線が1本に決まりません。

尖点 y2=x3y^2=x^3。曲面 z=y2−x3z=y^2-x^3 も原点で接平面が水平で、z=0z=0 に一致します。峠とは違う形ですが、f=fx=fy=0f=f_x=f_y=0 である点は、どれも「接平面が z=0z=0 になる点」です。

図1具体例曲面 z=f(x,y)z=f(x,y)(青)と平面 z=0z=0(灰色)。曲面と平面の交わりが曲線 f=0f=0(オレンジ)で、「真上」から見ると平面の曲線の図になります。斜めから見ると、円の点 PP では曲面が z=0z=0 を斜めに横切り、接平面(紫)と z=0z=0 の交わりが接線 3x+4y=53x+4y=5 になっていることが分かります。結節点と尖点の原点では、曲面の接平面が水平で、z=0z=0 と一致します。k=Rk=\mathbb{R} として実数の点だけを描いています。

結節点の曲面 z=y2−x2−x3z=y^2-x^2-x^3 は、原点で峠(鞍点)の形をしています。峠の高さでの等高線は、峠で十字に交わります。結節点で曲線が自分と交わるのは、このためです。

k=Rk=\mathbb{R} のとき、非特異点の近くでは CC は1本の滑らかな曲線です。例えば fy(p)≠0f_y(p)\neq0 なら、陰関数定理から、pp の近くの CC は y=φ(x)y=\varphi(x) の形のグラフになります。

もう2つ、原点に特異点をもつ曲線を挙げておきます。どちらも図3で形を見ます。

例5 タクノードと葉線

(1) kk の標数は2でないとし、f=y2−x4+x6=y2−x4(1−x2)f=y^2-x^4+x^6=y^2-x^4(1-x^2) とする。fx=−4x3+6x5=2x3(3x2−2)f_x=-4x^3+6x^5=2x^3(3x^2-2)、fy=2yf_y=2y で、特異点は原点だけである。この原点をタクノード(ハーツホーン和訳では接触節点)と呼ぶ。

(2) kk の標数は3でないとし、f=x3+y3−3xyf=x^3+y^3-3xy(デカルトの葉線)とする。fx=3(x2−y)f_x=3(x^2-y)、fy=3(y2−x)f_y=3(y^2-x) で、特異点は原点だけである。

証明
  1. (1) 特異点では y=0y=0 なので、f=0f=0 から x4(1−x2)=0x^4(1-x^2)=0、fx=0f_x=0 から x3(3x2−2)=0x^3(3x^2-2)=0。x≠0x\neq0 なら x2=1x^2=1 かつ 3x2=23x^2=2 で、3=23=2 となり矛盾する。よって x=0x=0。
  2. (1) の ff は既約である。yy の根 α(x)\alpha(x) があれば (α/x2)2=1−x2=(1−x)(1+x)(\alpha/x^2)^2=1-x^2=(1-x)(1+x) となるが、右辺は重根をもたないので平方にならない。
  3. (2) の ff は既約である。可約なら xx か yy が ff を割り切ることになるが、f(0,y)=y3f(0,y)=y^3、f(x,0)=x3f(x,0)=x^3 は0でない。

    f=ghf=gh(gg は1次式、hh は2次式)として、最低次の部分を比べる。ff には定数項も1次の項もなく、2次の部分は −3xy≠0-3xy\neq0 である。

    g(0,0)=0g(0,0)=0 のとき、h(0,0)≠0h(0,0)\neq0 なら ff に1次の項が出るので h(0,0)=0h(0,0)=0。このとき gg と hh の1次の部分の積が −3xy-3xy なので、gg は xx か yy の定数倍である。

    g(0,0)≠0g(0,0)\neq0 のとき、h(0,0)=0h(0,0)=0 で、1次の項がないことから hh の1次の部分も0。すると g(0,0)g(0,0) と hh の2次の部分の積が −3xy-3xy なので、hh は xyxy の定数倍で、やはり xx が ff を割り切る。

  4. (2) 特異点では y=x2y=x^2、x=y2x=y^2 なので x4=xx^4=x。f=0f=0 に y=x2y=x^2 を代入すると x3+x6−3x3=x3(x3−2)=0x^3+x^6-3x^3=x^3(x^3-2)=0 となる。

    x≠0x\neq0 なら x3=1x^3=1 かつ x3=2x^3=2 で、1=21=2 となり矛盾する。よって x=0x=0、y=x2=0y=x^2=0。

標数の仮定が必要なのは、それぞれ ff が平方や3乗になってしまうからです。標数2では y2−x4+x6=(y+x2+x3)2y^2-x^4+x^6=(y+x^2+x^3)^2、標数3では x3+y3−3xy=(x+y)3x^3+y^3-3xy=(x+y)^3 です。

接空間とヤコビ行列

平面曲線の定義を、An\mathbb{A}^n の中の多様体に広げます。式1つの代わりに、イデアルの生成元をすべて使います。

多様体 YY の次元 dim⁡Y\dim Y は、YY の既約閉集合の鎖の長さの最大値です。これは座標環 A(Y)=k[x1,…,xn]/I(Y)A(Y)=k[x_1,\dots,x_n]/I(Y) のクルル次元に等しくなります[1, p.7; 1, 命題1.7, p.8]。既約多項式 ff の零点集合 V(f)⊆AnV(f)\subseteq\mathbb{A}^n の次元は n−1n-1 です[1, 命題1.13, p.9]。

定義6 ヤコビ行列と非特異点 [1, §I.5 定義, p.42–43]

Y⊆AnY\subseteq\mathbb{A}^n をアフィン多様体、r=dim⁡Yr=\dim Y とし、f1,…,ftf_1,\dots,f_t を I(Y)I(Y) の生成元とする。点 p∈Yp\in Y で、t×nt\times n 行列

J(p)=(∂fi∂xj(p))i,jJ(p)=\Bigl(\frac{\partial f_i}{\partial x_j}(p)\Bigr)_{i,j}J(p)=(∂fi∂xj(p))i,j\begin{aligned}J(p) &= \Bigl(\frac{\partial f_i}{\partial x_j}(p)\Bigr)_{i,j}\end{aligned}

の階数が n−rn-r のとき、YY は pp で非特異であるという。そうでないとき pp を YY の特異点と呼ぶ。J(p)J(p) を pp でのヤコビ行列と呼ぶ。

定義7 接空間

同じ記号で、knk^n の線形部分空間

TpY={ v∈kn∣∑j=1n∂fi∂xj(p) vj=0(i=1,…,t) }=Ker⁡J(p)\begin{aligned} T_pY&=\Bigl\{\,v\in k^n\Bigm|{}\\ &\qquad\sum_{j=1}^n\frac{\partial f_i}{\partial x_j}(p)\,v_j=0\\ &\qquad\quad(i=1,\dots,t)\,\Bigr\}\\ &=\operatorname{Ker}J(p) \end{aligned}

を、YY の pp での接空間と呼ぶ。

TpYT_pY は J(p)J(p) の核なので、次元は n−rank⁡J(p)n-\operatorname{rank}J(p) です。

dim⁡TpY=n−rank⁡J(p)\dim T_pY=n-\operatorname{rank}J(p)dim⁡TpY=n−rank⁡J(p)\begin{aligned}\dim T_pY &= n-\operatorname{rank}J(p)\end{aligned}

したがって、YY が pp で非特異であることは、dim⁡TpY=dim⁡Y\dim T_pY=\dim Y と同じです。次の節で、どの点でも dim⁡TpY≥dim⁡Y\dim T_pY\geq\dim Y であることを示します。特異点は、接空間の次元が多様体の次元より大きくなる点です。

多項式 ff に p+vp+v を代入して vv について展開すると、vjv_j の係数がちょうど ∂f/∂xj(p)\partial f/\partial x_j(p) です(単項式で確かめられます)。

f(p+v)=f(p)+∑j=1n∂f∂xj(p) vj+R(v)R(v)∈(v1,…,vn)2f(p+v)=f(p)+\sum_{j=1}^n\frac{\partial f}{\partial x_j}(p)\,v_j+R(v)\qquad R(v)\in(v_1,\dots,v_n)^2f(p+v)=f(p)+∑j=1n∂f∂xj(p) vj+R(v)R(v)∈(v1,…,vn)2\begin{gathered}f(p+v)=f(p)+\sum_{j=1}^n\frac{\partial f}{\partial x_j}(p)\,v_j+R(v)\\R(v)\in(v_1,\dots,v_n)^2\end{gathered}f(p+v)=f(p)+∑j=1n∂f∂xj(p) vj+R(v)R(v)∈(v1,…,vn)2\begin{aligned}f(p+v) &= f(p)+\sum_{j=1}^n\frac{\partial f}{\partial x_j}(p)\,v_j+R(v)\\[4pt]&R(v)\in(v_1,\dots,v_n)^2\end{aligned}f(p+v)=f(p)=+∑j=1n∂f∂xj(p) vj=+R(v)R(v)∈(v1,…,vn)2\begin{aligned}f(p+v) &= f(p)\\&\phantom{=}{} +\sum_{j=1}^n\frac{\partial f}{\partial x_j}(p)\,v_j\\&\phantom{=}{} +R(v)\\[4pt]&R(v)\in(v_1,\dots,v_n)^2\end{aligned}

R(v)R(v) は vv について2次以上の項です。YY の上では fi(p)=0f_i(p)=0 なので、TpYT_pY は「YY の式を1次の項で打ち切った連立1次方程式」の解の空間です。TpYT_pY を pp まで平行移動した p+TpYp+T_pY を描くと、YY に接する直線や平面になります。

平面曲線は n=2n=2 の場合です。既約多項式 ff について I(V(f))=(f)I(V(f))=(f)(第1回、零点定理から)、dim⁡V(f)=1\dim V(f)=1 なので、条件は「1×21\times2 行列 (fx(p)  fy(p))(f_x(p)\ \ f_y(p)) の階数が1」、つまり (fx(p),fy(p))≠(0,0)(f_x(p),f_y(p))\neq(0,0) です。定義2と一致し、接線は p+TpCp+T_pC です。

もう少し詳しくなぜ I(Y)I(Y) の生成元を使うのか

YY を定める式なら何でもよいわけではありません。例えば xx 軸は V(y)V(y) とも V(y2)V(y^2) とも書けます。

y2y^2 を使うと、ヤコビ行列は (0  2y)(0\ \ 2y) で、xx 軸の上では0になります。すべての点が特異点に見えてしまいます。

xx 軸のイデアルは (y)(y) です。その生成元 yy を使えば、ヤコビ行列は (0  1)(0\ \ 1) で、どの点でも階数1です。イデアル I(Y)I(Y) の生成元の選び方によらないことは、次の節の定理の証明で分かります[1, p.43]。

例8 円錐

kk の標数は2でないとし、Y=V(f)⊆A3Y=V(f)\subseteq\mathbb{A}^3、f=x2+y2−z2f=x^2+y^2-z^2 とする。ff は既約で、dim⁡Y=2\dim Y=2 である。ヤコビ行列は

J(p)=(2x   2y  −2z)J(p)=\bigl(2x\ \ \ 2y\ \ -2z\bigr)J(p)=(2x   2y  −2z)\begin{aligned}J(p) &= \bigl(2x\ \ \ 2y\ \ -2z\bigr)\end{aligned}

で、階数が 3−2=13-2=1 でないのは原点だけである。よって特異点は原点(頂点)だけで、T0Y=k3T_0Y=k^3 は3次元になる。

標数が5でもないとき、点 P=(3/5, 4/5, 1)P=(3/5,\ 4/5,\ 1) では J(P)=(6/5  8/5  −2)J(P)=(6/5\ \ 8/5\ \ -2) で、接空間と、PP を通る接平面は次のようになる。

TPY={ 3v1+4v2−5v3=0 }P+TPY={ 3x+4y=5z }T_PY=\{\,3v_1+4v_2-5v_3=0\,\}\qquad P+T_PY=\{\,3x+4y=5z\,\}TPY={ 3v1+4v2−5v3=0 }P+TPY={ 3x+4y=5z }\begin{gathered}T_PY=\{\,3v_1+4v_2-5v_3=0\,\}\\P+T_PY=\{\,3x+4y=5z\,\}\end{gathered}TPY={ 3v1+4v2−5v3=0 }P+TPY={ 3x+4y=5z }\begin{aligned}T_PY &= \{\,3v_1+4v_2-5v_3=0\,\}\\[4pt]P+T_PY &= \{\,3x+4y=5z\,\}\end{aligned}
証明
  1. ff が既約であることを示す。もし f=L1L2f=L_1L_2(LiL_i は1次の斉次式)なら、積の微分から ff の偏微分は L1=L2=0L_1=L_2=0 の上で0になる。

    2次の斉次式の因子は斉次式なので、ff が可約なら L1,L2L_1,L_2 は1次の斉次式である。∂f/∂x=L1 ∂L2/∂x+L2 ∂L1/∂x\partial f/\partial x=L_1\,\partial L_2/\partial x+L_2\,\partial L_1/\partial x で、ほかの変数も同じ。

    L1=L2=0L_1=L_2=0 は原点を通る直線か平面を含む。しかし (2x,2y,−2z)(2x,2y,-2z) が0になるのは原点だけなので、矛盾する。

  2. dim⁡Y=2\dim Y=2 は[1, 命題1.13, p.9]から従う。J(p)J(p) の階数は、成分が全部0なら0、そうでなければ1である。
  3. 接平面は 65(x−35)+85(y−45)−2(z−1)=0\tfrac65(x-\tfrac35)+\tfrac85(y-\tfrac45)-2(z-1)=0 で、52\tfrac52 倍すると 3x+4y−5z−95−165+5=03x+4y-5z-\tfrac95-\tfrac{16}5+5=0、つまり 3x+4y=5z3x+4y=5z。

この接平面は原点を通り、PP と頂点を結ぶ直線 {t(3/5,4/5,1)}\{t(3/5,4/5,1)\} を丸ごと含みます。この直線は円錐の母線なので、接平面は1点ではなく、母線全体に沿って円錐に触れています。

ドラッグで回せます

円錐 x2+y2=z2x^2+y^2=z^2 の点 P=(3/5,4/5,1)P=(3/5,4/5,1) での接平面 3x+4y=5z3x+4y=5z(紫)。接平面は1点で触れるのではなく、PP と頂点を結ぶ直線(オレンジ)全体に沿って円錐に触れています。「平面に沿って」のボタンで回すと、接平面が円錐の輪郭線の一本に重なります。

頂点では、円錐に含まれる直線(母線)が四方に出ています。図の3本は同じ平面に乗らないので、接空間はこれらをすべて含む3次元 k3k^3 になり、曲面の次元2より大きくなります。

図2具体例円錐 x2+y2=z2x^2+y^2=z^2(青)と、点 PP での接平面 3x+4y=5z3x+4y=5z(紫)。「平面に沿って」のボタンで、接平面を真横から見る向きに回ります。接平面は線に縮み、円錐の輪郭線の一本と重なります。接平面が母線全体に沿って触れていることは、このように回して初めて分かります。「頂点」では、頂点を通る3本の母線が同じ平面に乗らないことを、回して確かめられます。

頂点 00 では、円錐に含まれる直線が四方に出ています。直線 {tv}\{tv\} が YY に含まれれば、f(tv)=0f(tv)=0 を tt で微分して t=0t=0 とおくと、v∈T0Yv\in T_0Y が分かります。図2の3本の方向は k3k^3 を張るので、接空間は k3k^3 全体になります。

第1回の宿題も、この定義で説明できます。

例9 ねじれ3次曲線とその影

ねじれ3次曲線 C=V(y−x2, z−x3)⊆A3C=V(y-x^2,\ z-x^3)\subseteq\mathbb{A}^3 は1次元で、ヤコビ行列は

J(p)=(−2x10−3x201)J(p)=\begin{pmatrix}-2x&1&0\\-3x^2&0&1\end{pmatrix}

である。右の2列から階数はどの点でも 2=3−12=3-1 で、CC は非特異である。原点での接空間は T0C=Ker⁡J(0)={(v1,0,0)}T_0C=\operatorname{Ker}J(0)=\{(v_1,0,0)\}、つまり xx 軸の方向である。

一方、影 D=V(y3−z2)⊆A2D=V(y^3-z^2)\subseteq\mathbb{A}^2(座標 y,zy,z)では、偏微分 (3y2, −2z)(3y^2,\ -2z) が原点で0になる。よって原点は DD の特異点で、例4(2) と同じく、どの標数でもこれが唯一の特異点である。

I(C)=(y−x2, z−x3)I(C)=(y-x^2,\ z-x^3) と dim⁡C=1\dim C=1 は、第1回の例18の計算で A(C)≅k[t]A(C)\cong k[t] となることから分かります。

原点での CC の接空間が xx 軸の方向だという点が大事です。第1回の図6で影が尖ったのは、CC を原点での接線の方向から見ていたからです。接線の方向が潰れて点になるので、影の接線が1本に決まらなくなります。

ザリスキー接空間:置き方によらない接空間

定義6は、YY を An\mathbb{A}^n の中に置いて、その座標で計算しています。同じ多様体でも、置き方は1通りではありません。例えば直線 A1\mathbb{A}^1 は、ねじれ3次曲線 C⊆A3C\subseteq\mathbb{A}^3 としても置けます。

そこで、点のまわりの関数だけで接空間を書き直します。使うのは点での局所環です。

アフィン多様体 YY の点 pp での局所環 Op\mathcal{O}_p は、座標環 A(Y)A(Y) を、pp で0になる関数の極大イデアル Mˉ\bar M で局所化した環です。Op\mathcal{O}_p の極大イデアル MM は、pp で値が0になる元の全体です。

Op=A(Y)MˉM=Mˉ Opdim⁡Op=dim⁡Y\mathcal{O}_p=A(Y)_{\bar M}\qquad M=\bar M\,\mathcal{O}_p\qquad \dim\mathcal{O}_p=\dim YOp=A(Y)MˉM=Mˉ Opdim⁡Op=dim⁡Y\begin{gathered}\mathcal{O}_p=A(Y)_{\bar M}\\M=\bar M\,\mathcal{O}_p\\\dim\mathcal{O}_p=\dim Y\end{gathered}Op=A(Y)MˉM=Mˉ Opdim⁡Op=dim⁡Y\begin{aligned}\mathcal{O}_p &= A(Y)_{\bar M}\\[4pt]M &= \bar M\,\mathcal{O}_p\\[4pt]\dim\mathcal{O}_p &= \dim Y\end{aligned}

ハーツホーンは Op\mathcal{O}_p を「pp の近くで定義された正則関数の芽の環」として定義し[1, p.21–22]、それが A(Y)MˉA(Y)_{\bar M} と同型で、次元が dim⁡Y\dim Y に等しいことを定理3.2(c) で示しています[1, 定理3.2, p.22–23]。第3回の言葉では、Op\mathcal{O}_p は Spec⁡A(Y)\operatorname{Spec}A(Y) の点 Mˉ\bar M での構造層の茎 A(Y)MˉA(Y)_{\bar M} です(第3回の定理14)。

定義10 ザリスキー接空間 [1, 演習5.10, p.51]

局所環 Op\mathcal{O}_p の極大イデアルを MM とする。M/M2M/M^2 は Op/M≅k\mathcal{O}_p/M\cong k 上のベクトル空間で、その双対空間

(M/M2)∨=Hom⁡k(M/M2, k)(M/M^2)^\vee=\operatorname{Hom}_k(M/M^2,\ k)(M/M2)∨=Hom⁡k(M/M2, k)\begin{aligned}(M/M^2)^\vee &= \operatorname{Hom}_k(M/M^2,\ k)\end{aligned}

を、YY の pp でのザリスキー接空間と呼ぶ。

定義11 正則局所環 [1, p.43]

ネーター局所環 AA の極大イデアルを MM、剰余体を k=A/Mk=A/M とする。dim⁡kM/M2=dim⁡A\dim_kM/M^2=\dim A のとき、AA を正則局所環と呼ぶ。

MM の元は pp で0になる関数です。M2M^2 で割ると、2つの関数の積のように「pp で2重に0になる」部分が消え、1次の振る舞いだけが残ります。

1変数で見ると分かりやすくなります。O0=k[x](x)\mathcal{O}_0=k[x]_{(x)} なら M=(x)M=(x) で、M/M2M/M^2 は1次元です。g∈Mg\in M の行き先は、原点での傾き g′(0)g'(0) で決まります。

M/M2≅kg=a1x+a2x2+⋯ ⟼ a1=g′(0)M/M^2\cong k\qquad g=a_1x+a_2x^2+\cdots\ \longmapsto\ a_1=g'(0)M/M2≅kg=a1x+a2x2+⋯ ⟼ a1=g′(0)\begin{gathered}M/M^2\cong k\\g=a_1x+a_2x^2+\cdots\ \longmapsto\ a_1=g'(0)\end{gathered}M/M2≅kg=a1x+a2x2+⋯ ⟼ a1=g′(0)\begin{aligned}M/M^2 &\cong k\\[4pt]g &= a_1x+a_2x^2+\cdots\ \longmapsto\ a_1\\&= g'(0)\end{aligned}

第3回の例22で、重なった点 k[x]/(x2)k[x]/(x^2) が値と傾き f(0)+f′(0)xf(0)+f'(0)x を覚えていたのと同じ現象です。

定理12 [1, 定理5.1, p.43–44; 1, 命題5.2A, p.44]

Y⊆AnY\subseteq\mathbb{A}^n をアフィン多様体、p∈Yp\in Y とし、Op\mathcal{O}_p の極大イデアルを MM とする。

(1) dim⁡kM/M2+rank⁡J(p)=n\dim_kM/M^2+\operatorname{rank}J(p)=n で、(M/M2)∨≅TpY(M/M^2)^\vee\cong T_pY である。

(2) dim⁡kM/M2≥dim⁡Y\dim_kM/M^2\geq\dim Y である。等号が成り立つことと、YY が pp で非特異であることと、Op\mathcal{O}_p が正則局所環であることは同値である。

証明
  1. p=(a1,…,an)p=(a_1,\dots,a_n)、A=k[x1,…,xn]A=k[x_1,\dots,x_n]、Mp=(x1−a1,…,xn−an)⊆AM_p=(x_1-a_1,\dots,x_n-a_n)\subseteq A とし、線形写像 θ ⁣:A→kn\theta\colon A\to k^n、θ(g)=(∂g∂x1(p),…,∂g∂xn(p))\theta(g)=\bigl(\tfrac{\partial g}{\partial x_1}(p),\dots,\tfrac{\partial g}{\partial x_n}(p)\bigr) を考える。θ\theta は同型 Mp/Mp2≅knM_p/M_p^2\cong k^n を引き起こす。
    1. θ(Mp2)=0\theta(M_p^2)=0。積の微分から θ(gh)=g(p)θ(h)+h(p)θ(g)\theta(gh)=g(p)\theta(h)+h(p)\theta(g) で、g,h∈Mpg,h\in M_p なら g(p)=h(p)=0g(p)=h(p)=0 だから。
    2. 全射。θ(xj−aj)\theta(x_j-a_j) は jj 番目の基本ベクトル eje_j だから。
    3. Mp/Mp2M_p/M_p^2 は xj−ajx_j-a_j の nn 個の像で張られる。g∈Mpg\in M_p を g=∑j(xj−aj)gjg=\sum_j(x_j-a_j)g_j と書くと、gj−gj(p)∈Mpg_j-g_j(p)\in M_p なので g≡∑jgj(p)(xj−aj)(modMp2)g\equiv\sum_jg_j(p)(x_j-a_j)\pmod{M_p^2}。
    4. よって dim⁡Mp/Mp2≤n\dim M_p/M_p^2\leq n で、knk^n への全射があるので同型。
  2. I=I(Y)=(f1,…,ft)I=I(Y)=(f_1,\dots,f_t) とすると、θ(I)\theta(I) は θ(f1),…,θ(ft)\theta(f_1),\dots,\theta(f_t)、つまり J(p)J(p) の行が張る空間で、dim⁡θ(I)=rank⁡J(p)\dim\theta(I)=\operatorname{rank}J(p)。とくに階数は生成元の選び方によらない。

    g=∑ihifi∈Ig=\sum_ih_if_i\in I なら、積の微分と fi(p)=0f_i(p)=0 から

    θ(g)=∑i(hi(p) θ(fi)+fi(p) θ(hi))=∑ihi(p) θ(fi)\begin{aligned} \theta(g)&=\sum_i\bigl(h_i(p)\,\theta(f_i)\\ &\qquad+f_i(p)\,\theta(h_i)\bigr)\\ &=\sum_ih_i(p)\,\theta(f_i)\end{aligned}
  3. I⊆MpI\subseteq M_p なので、同型 Mp/Mp2≅knM_p/M_p^2\cong k^n で (I+Mp2)/Mp2(I+M_p^2)/M_p^2 は θ(I)\theta(I) に移る。よって Mp/(I+Mp2)≅kn/θ(I)M_p/(I+M_p^2)\cong k^n/\theta(I) で、次元は n−rank⁡J(p)n-\operatorname{rank}J(p)。
  4. M/M2≅Mp/(I+Mp2)M/M^2\cong M_p/(I+M_p^2) である。

    A(Y)=A/IA(Y)=A/I の極大イデアル Mˉ=Mp/I\bar M=M_p/I について、Mˉ/Mˉ2=Mp/(I+Mp2)\bar M/\bar M^2=M_p/(I+M_p^2)。

    Op=A(Y)Mˉ\mathcal{O}_p=A(Y)_{\bar M} で、局所化は完全なので M/M2=(Mˉ/Mˉ2)MˉM/M^2=(\bar M/\bar M^2)_{\bar M}。Mˉ/Mˉ2\bar M/\bar M^2 は A(Y)/Mˉ=kA(Y)/\bar M=k 上のベクトル空間で、s∉Mˉs\notin\bar M は0でない定数 s(p)s(p) 倍として働き、もともと逆元をもつ。よって局所化しても変わらない。

  5. (1) が従う。次元は前の2つのステップから分かる。双対は (kn/θ(I))∨(k^n/\theta(I))^\vee で、これは θ(I)\theta(I) の上で0になる knk^n の線形形式の全体、つまり Ker⁡J(p)=TpY\operatorname{Ker}J(p)=T_pY と同一視できる。

    knk^n の線形形式は w↦∑jvjwjw\mapsto\sum_jv_jw_j(v∈knv\in k^n)の形に書ける。これが θ(I)\theta(I) の上で0になる条件は、各 ii で ∑jvj ∂fi∂xj(p)=0\sum_jv_j\,\tfrac{\partial f_i}{\partial x_j}(p)=0、つまり v∈Ker⁡J(p)v\in\operatorname{Ker}J(p)。

  6. (2) を示す。dim⁡Op=dim⁡Y\dim\mathcal{O}_p=\dim Y(ハーツホーンの定理3.2(c))で、ネーター局所環について dim⁡kM/M2≥dim⁡Op\dim_kM/M^2\geq\dim\mathcal{O}_p [2, 系11.15, p.188]。等号は、(1) から rank⁡J(p)=n−dim⁡Y\operatorname{rank}J(p)=n-\dim Y と同値で、これが非特異の定義である。正則局所環の定義とも同じ式である。

証明の中身は、次の短い完全列にまとまります。真ん中の knk^n は Mp/Mp2M_p/M_p^2 と同一視したもので、左が J(p)J(p) の行の張る空間、右が M/M2M/M^2 です。

0⟶θ(I)⟶kn⟶M/M2⟶0rank⁡J(p)+dim⁡kM/M2=n0\longrightarrow\theta(I)\longrightarrow k^n\longrightarrow M/M^2\longrightarrow0\qquad \operatorname{rank}J(p)+\dim_kM/M^2=n0⟶θ(I)⟶kn⟶M/M2⟶0rank⁡J(p)+dim⁡kM/M2=n\begin{gathered}0\longrightarrow\theta(I)\longrightarrow k^n\longrightarrow M/M^2\longrightarrow0\\\operatorname{rank}J(p)+\dim_kM/M^2=n\end{gathered}0⟶θ(I)⟶kn⟶M/M2⟶0rank⁡J(p)+dim⁡kM/M2=n\begin{aligned}0 &\longrightarrow \theta(I)\\&\longrightarrow k^n\\&\longrightarrow M/M^2\\&\longrightarrow 0\\[4pt]\operatorname{rank}J(p)+\dim_kM/M^2 &= n\end{aligned}

(M/M2)∨≅TpY(M/M^2)^\vee\cong T_pY の同型は、方向微分で具体的に書けます。接ベクトル vv は、関数 gg に「pp での vv 方向の微分」を対応させます。

TpY∋v ⟼ (gˉ↦∑j=1nvj ∂g∂xj(p))∈(M/M2)∨\begin{aligned} T_pY\ni v\ &\longmapsto\ \Bigl(\bar g\mapsto\sum_{j=1}^nv_j\,\frac{\partial g}{\partial x_j}(p)\Bigr)\\ &\in(M/M^2)^\vee\end{aligned}

左辺の M/M2M/M^2 は局所環 Op\mathcal{O}_p だけで決まります。したがって dim⁡TpY\dim T_pY も、特異点かどうかも、YY の置き方によりません。ハーツホーンは、この定理をもとに、一般の多様体の非特異点を「局所環が正則局所環である点」と定義しています[1, p.44]。

例13 M/M2M/M^2 の計算

(1) 結節点・尖点の原点。f=y2−x2−x3f=y^2-x^2-x^3 も f=y2−x3f=y^2-x^3 も (x,y)2(x,y)^2 に入るので、I+Mp2=Mp2I+M_p^2=M_p^2 となる。よって

M/M2≅(x,y)/(x,y)2=k xˉ⊕k yˉM/M^2\cong(x,y)/(x,y)^2=k\,\bar x\oplus k\,\bar yM/M2≅(x,y)/(x,y)2=k xˉ⊕k yˉ\begin{aligned}M/M^2 &\cong (x,y)/(x,y)^2\\&= k\,\bar x\oplus k\,\bar y\end{aligned}

は2次元で、曲線の次元1より大きい。

(2) 円 x2+y2=1x^2+y^2=1 の点 p=(3/5,4/5)p=(3/5,4/5)(標数は2, 5でない)。u=x−3/5u=x-3/5、v=y−4/5v=y-4/5 とおくと Mp=(u,v)M_p=(u,v) で、

f=x2+y2−1=u2+v2+65u+85v≡65u+85v(modMp2)f=x^2+y^2-1=u^2+v^2+\frac65u+\frac85v\equiv\frac65u+\frac85v\pmod{M_p^2}f=x2+y2−1=u2+v2+65u+85v≡65u+85v(modMp2)\begin{aligned}f &= x^2+y^2-1\\&= u^2+v^2+\frac65u+\frac85v\\&\equiv \frac65u+\frac85v\pmod{M_p^2}\end{aligned}

よって M/M2M/M^2 では 6uˉ+8vˉ=06\bar u+8\bar v=0、つまり vˉ=−34uˉ\bar v=-\tfrac34\bar u で、M/M2=k uˉM/M^2=k\,\bar u は1次元である。

(3) ねじれ3次曲線の原点。y−x2, z−x3∈Iy-x^2,\ z-x^3\in I で x2,x3∈Mp2x^2,x^3\in M_p^2 なので yˉ=zˉ=0\bar y=\bar z=0 となり、M/M2=k xˉM/M^2=k\,\bar x は1次元である。

(2) の vˉ=−34uˉ\bar v=-\tfrac34\bar u は、「円に沿って動くと、1次の近似で y−45y-\tfrac45 は x−35x-\tfrac35 の −34-\tfrac34 倍で変わる」という意味です。−34-\tfrac34 は、接線 3x+4y=53x+4y=5 の傾きです。

(1) では xˉ\bar x と yˉ\bar y の間に関係が1つも残りません。定義式に1次の項がないので、1次の近似では式が何の条件にもならないのです。枝が2本の結節点でも、枝が1本の尖点でも、この点は同じです。

接錐:特異点での接線の束

接空間で特異点かどうかは分かりますが、結節点でも尖点でも T0C=k2T_0C=k^2 で、区別がつきません。2本の枝が交わる点と、1本の枝が尖る点の違いを見るには、式の最低次の部分を見ます。

定義14 重複度と接錐 [1, 演習5.3, p.49]

f∈k[x,y]f\in k[x,y] が f(0,0)=0f(0,0)=0 をみたすとし、ii 次の斉次式 fif_i を使って

f=fm+fm+1+⋯+fd(fm≠0)f=f_m+f_{m+1}+\cdots+f_d\qquad(f_m\neq0)f=fm+fm+1+⋯+fd(fm≠0)\begin{gathered}f=f_m+f_{m+1}+\cdots+f_d\\(f_m\neq0)\end{gathered}f=fm+fm+1+⋯+fd(fm≠0)\begin{aligned}f &= f_m+f_{m+1}+\cdots+f_d\\[4pt]&(f_m\neq0)\end{aligned}

と書く。mm を C=V(f)C=V(f) の原点での重複度と呼び、μ0(C)\mu_0(C) と書く。V(fm)V(f_m) を原点での接錐と呼ぶ。ほかの点では、平行移動でその点を原点に移して同じように定める。

kk が代数閉体なら、2変数の斉次式 fmf_m は1次式の積に分解します。1変数の多項式 fm(x,1)f_m(x,1) を1次式の積に分け、各因子を斉次式に戻せばよいからです(次数が足りない分は yy の因子になります)。

fm=∏i(βix−αiy)ei∑iei=mf_m=\prod_{i}(\beta_ix-\alpha_iy)^{e_i}\qquad \sum_ie_i=mfm=∏i(βix−αiy)ei∑iei=m\begin{gathered}f_m=\prod_{i}(\beta_ix-\alpha_iy)^{e_i}\\\sum_ie_i=m\end{gathered}fm=∏i(βix−αiy)ei∑iei=m\begin{aligned}f_m &= \prod_{i}(\beta_ix-\alpha_iy)^{e_i}\\[4pt]\sum_ie_i &= m\end{aligned}

したがって接錐は、原点を通る何本かの直線に、重複の回数 eie_i を付けたものです。ハーツホーンは、この1次の因子を接方向と呼んでいます。

命題15 [1, 演習5.3(a), p.49]

ff を既約、C=V(f)C=V(f)、0∈C0\in C とする。原点が CC の非特異点であることと、μ0(C)=1\mu_0(C)=1 は同値である。このとき接錐は接線に一致する。

証明
  1. f(0,0)=0f(0,0)=0 なので定数項 f0f_0 は0で、m≥1m\geq1。
  2. 1次の部分は f1=fx(0,0) x+fy(0,0) yf_1=f_x(0,0)\,x+f_y(0,0)\,y である(2次以上の項の偏微分は原点で0)。
  3. よって m=1  ⟺  f1≠0  ⟺  (fx(0,0),fy(0,0))≠(0,0)m=1\iff f_1\neq0\iff(f_x(0,0),f_y(0,0))\neq(0,0)。このとき V(f1)V(f_1) は定義2の接線そのものである。

例16 いろいろな特異点の接錐

最低次の部分を取り出して分解すると、次のようになる。

曲線fffmf_m重複度接錐
結節点y2−x2−x3y^2-x^2-x^3(y−x)(y+x)(y-x)(y+x)222本の直線 y=±xy=\pm x
尖点y2−x3y^2-x^3y2y^222直線 y=0y=0 が2重
タクノードy2−x4+x6y^2-x^4+x^6y2y^222直線 y=0y=0 が2重
葉線x3+y3−3xyx^3+y^3-3xy−3xy-3xy222本の直線 x=0, y=0x=0,\ y=0
三重点x2y+xy2−x4−y4x^2y+xy^2-x^4-y^4xy(x+y)xy(x+y)333本の直線

結節点・タクノードでは標数が2でないとし、葉線では標数が3でないとする。尖点と三重点は、どの標数でも表のとおりである。結節点の y=±xy=\pm x が2本に分かれるのは標数が2でないときで、標数2では y2−x2=(y+x)2y^2-x^2=(y+x)^2 となり1本に重なる。三重点はハーツホーンの演習5.1(d) の曲線である。

最低次の部分が効くのは、原点の近くでは次数の高い項ほど小さいからです。点を (x,y)=(tu,tv)(x,y)=(tu,tv) と書いて tt を小さくすると、次のようになります。

f(tu,tv)=tm(fm(u,v)+t fm+1(u,v)+⋯ )\begin{aligned} f(tu,tv)&=t^m\bigl(f_m(u,v)+t\,f_{m+1}(u,v)\\ &\qquad+\cdots\bigr)\end{aligned}

CC の点が原点に近づく方向 (u,v)(u,v) では、括弧の中が0なので、t→0t\to0 で fm(u,v)=0f_m(u,v)=0 になります。

結節点で確かめます。CC の点は (t2−1, t3−t)(t^2-1,\ t^3-t) と書け、傾きは y/x=ty/x=t です。原点に近づくのは t→±1t\to\pm1 のときで、傾きは ±1\pm1 に近づきます。尖点の点 (t2, t3)(t^2,\ t^3) では、傾き y/x=ty/x=t が t→0t\to0 で0に近づき、2つの枝がどちらも x≥0x\geq0 の側から y=0y=0 に沿って原点に入ります。

結節点
y2=x2(x+1)y^2=x^2(x+1) 接錐 y2−x2=0y^2-x^2=0
尖点
y2=x3y^2=x^3 接錐 y2=0y^2=0
タクノード
y2=x4−x6y^2=x^4-x^6 接錐 y2=0y^2=0
葉線
x3+y3=3xyx^3+y^3=3xy 接錐 xy=0xy=0
図3具体例原点に特異点をもつ4つの曲線(青、実数の点)と、その接錐(オレンジの破線)。どの曲線も、原点の近くでは接錐の直線に沿って原点に入ります。結節点と葉線では2本の枝が別々の方向に交わり、尖点とタクノードでは枝が1本の直線 y=0y=0 に沿って入ります。曲線の点は方程式から計算し、方程式をみたすことと、原点の近くで接錐の方向に近づくことを、図を作るプログラムで確かめています。

尖点とタクノードは、接錐が同じ y2=0y^2=0 です。それでも曲線の形は違います。尖点は1本の枝が折り返す形、タクノードは2本の枝 y≈±x2y\approx\pm x^2 が接する形です。

接錐だけでは区別できないこの違いは、次回のブローアップで見えるようになります。

接空間と接錐の関係も見ておきます。m≥2m\geq2 なら1次の部分が0なので、特異点での接空間は、接錐の直線が何本でも k2k^2 全体です。接錐のほうが、特異点の様子を細かく覚えています。

専門的な話結節点は形式的には2本の直線

標数が2でないとき、形式的べき級数 1+x=1+12x−18x2+⋯\sqrt{1+x}=1+\tfrac12x-\tfrac18x^2+\cdots を使うと、結節点の式は k[[x,y]]k[[x,y]] の中で2つに分解します。

y2−x2(1+x)=(y−x1+x)=(y+x1+x)\begin{aligned} y^2-x^2(1+x)&=\bigl(y-x\sqrt{1+x}\bigr)\\ &\phantom{{}={}}\bigl(y+x\sqrt{1+x}\bigr)\end{aligned}

2つの因子の1次の部分 y−xy-x と y+xy+x は、接錐の2本の直線です。変数を取り替えると、結節点の局所環の完備化は k[[x,y]]/(xy)k[[x,y]]/(xy)、つまり2本の座標軸の交わりと同じになります[1, 例5.6.3, p.47–48]。

多項式の範囲では y2−x2(1+x)y^2-x^2(1+x) は既約で、曲線は1つの部品です。それでも原点の「ごく近く」だけを見ると、2本の直線が交わった形に分かれています。尖点 y2−x3y^2-x^3 はべき級数でも分解しません。

射影曲線の特異点:宿題の答え

射影平面 P2\mathbb{P}^2 は、3枚の平面 U0,U1,U2U_0,U_1,U_2(Ui={xi≠0}≅A2U_i=\{x_i\neq0\}\cong\mathbb{A}^2)で覆われています。射影曲線の点が特異点であるとは、その点を含む UiU_i の座標で見て特異点であることとします。定理12から特異点かどうかは局所環だけで決まるので、どの UiU_i で見ても答えは同じです。

実際には、3枚に分けずに斉次式のまま判定できます。

命題17 [1, 演習5.8, p.51]

F∈k[x0,x1,x2]F\in k[x_0,x_1,x_2] を dd 次の既約な斉次式、C=V+(F)⊆P2C=V_+(F)\subseteq\mathbb{P}^2 とする。点 P=[a0:a1:a2]∈CP=[a_0:a_1:a_2]\in C が CC の特異点であることは、

∂F∂x0(a)=∂F∂x1(a)=∂F∂x2(a)=0(a=(a0,a1,a2))\frac{\partial F}{\partial x_0}(a)=\frac{\partial F}{\partial x_1}(a)=\frac{\partial F}{\partial x_2}(a)=0\qquad(a=(a_0,a_1,a_2))∂F∂x0(a)=∂F∂x1(a)=∂F∂x2(a)=0(a=(a0,a1,a2))\begin{gathered}\frac{\partial F}{\partial x_0}(a)=\frac{\partial F}{\partial x_1}(a)=\frac{\partial F}{\partial x_2}(a)=0\\(a=(a_0,a_1,a_2))\end{gathered}∂F∂x0(a)=∂F∂x1(a)=∂F∂x2(a)=0(a=(a0,a1,a2))\begin{aligned}\frac{\partial F}{\partial x_0}(a) &= \frac{\partial F}{\partial x_1}(a)\\&= \frac{\partial F}{\partial x_2}(a)\\&= 0\\[4pt]&(a=(a_0,a_1,a_2))\end{aligned}

と同値である。さらに標数が dd を割り切らなければ、3つの偏微分が0になる点は自動的に CC の上にある。

証明
  1. オイラーの等式 ∑ixi ∂F/∂xi=d F\sum_ix_i\,\partial F/\partial x_i=d\,F が成り立つ。dd 次の単項式 x0e0x1e1x2e2x_0^{e_0}x_1^{e_1}x_2^{e_2} では、左辺が (e0+e1+e2) x0e0x1e1x2e2(e_0+e_1+e_2)\,x_0^{e_0}x_1^{e_1}x_2^{e_2} になるから。
  2. 偏微分は d−1d-1 次の斉次式なので、0になるかどうかは斉次座標の取り方によらない。
  3. a0≠0a_0\neq0 としてよく、a0=1a_0=1 とする。U0U_0 の座標では CC は f(x,y)=F(1,x,y)f(x,y)=F(1,x,y) の零点集合で、fx(a1,a2)=Fx1(a)f_x(a_1,a_2)=F_{x_1}(a)、fy(a1,a2)=Fx2(a)f_y(a_1,a_2)=F_{x_2}(a)。

    x0=1x_0=1 を代入する操作と x1,x2x_1,x_2 での偏微分は、単項式ごとに見れば入れ替えられる。

    CC が U0U_0 の点をもつので FF は x0x_0 の定数倍でなく、ff は既約である。f=ghf=gh と分解すれば、g,hg,h を斉次化した積が FF になり、FF の既約性に反するからである(FF は x0x_0 で割り切れないので、ff を斉次化すると FF に戻る)。

  4. 3つの偏微分が0なら、fx=fy=0f_x=f_y=0 で特異点。逆に fx=fy=0f_x=f_y=0 なら、オイラーの等式と F(a)=0F(a)=0 から Fx0(a)=d F(a)−a1Fx1(a)−a2Fx2(a)=0F_{x_0}(a)=d\,F(a)-a_1F_{x_1}(a)-a_2F_{x_2}(a)=0。
  5. 標数が dd を割り切らなければ、オイラーの等式から F=1d∑ixiFxiF=\tfrac1d\sum_ix_iF_{x_i} なので、偏微分がすべて0になる点で FF も0になる。

いよいよ宿題です。

例18 y=x3y=x^3 の無限遠点

U0U_0 の座標 x=x1/x0x=x_1/x_0、y=x2/x0y=x_2/x_0 で y=x3y=x^3 を斉次化すると、F=x02x2−x13F=x_0^2x_2-x_1^3 である。偏微分は

Fx0=2x0x2Fx1=−3x12Fx2=x02F_{x_0}=2x_0x_2\qquad F_{x_1}=-3x_1^2\qquad F_{x_2}=x_0^2Fx0=2x0x2Fx1=−3x12Fx2=x02\begin{gathered}F_{x_0}=2x_0x_2\\F_{x_1}=-3x_1^2\\F_{x_2}=x_0^2\end{gathered}Fx0=2x0x2Fx1=−3x12Fx2=x02\begin{aligned}F_{x_0} &= 2x_0x_2\\[4pt]F_{x_1} &= -3x_1^2\\[4pt]F_{x_2} &= x_0^2\end{aligned}

C=V+(F)C=V_+(F) の特異点はどの標数でも [0:0:1][0:0:1] だけである。U2U_2 の座標 a=x0/x2a=x_0/x_2、b=x1/x2b=x_1/x_2 では CC は a2=b3a^2=b^3 で、[0:0:1][0:0:1] はその原点、つまり尖点である。接錐は a2=0a^2=0 で、無限遠直線 x0=0x_0=0 と重なる。

証明
  1. 特異点では Fx2=x02=0F_{x_2}=x_0^2=0 なので x0=0x_0=0。F=0F=0 から x13=0x_1^3=0 で x1=0x_1=0。よって P=[0:0:1]P=[0:0:1]。
  2. [0:0:1][0:0:1] では3つの偏微分がすべて0なので、命題17から特異点である。
  3. x2=1x_2=1 とおくと F(a,b,1)=a2−b3F(a,b,1)=a^2-b^3。最低次の部分は a2a^2 で、重複度2、接錐は直線 a=0a=0。U2U_2 の中で a=0a=0 は x0=0x_0=0 である。

ほかの2枚でも確かめておきます。U0U_0 では f=y−x3f=y-x^3 で、fy=1f_y=1 なので、原点(変曲点)を含めてどの点も非特異です。U1U_1(座標 c=x0/x1, e=x2/x1c=x_0/x_1,\ e=x_2/x_1)では式が c2e=1c^2e=1 になり、偏微分 (2ce, c2)(2ce,\ c^2) が両方0なら c=0c=0 で、c2e=1c^2e=1 に反します。

点の対応も計算できます。x≠0x\neq0 のとき、y=x3y=x^3 の点は次の点に移ります。

[1:x:x3]=[1x3:1x2:1](a,b)=(1x3, 1x2)a2=1x6=b3[1:x:x^3]=\Bigl[\frac1{x^3}:\frac1{x^2}:1\Bigr]\qquad (a,b)=\Bigl(\frac1{x^3},\ \frac1{x^2}\Bigr)\qquad a^2=\frac1{x^6}=b^3[1:x:x3]=[1x3:1x2:1](a,b)=(1x3, 1x2)a2=1x6=b3\begin{gathered}[1:x:x^3]=\Bigl[\frac1{x^3}:\frac1{x^2}:1\Bigr]\\(a,b)=\Bigl(\frac1{x^3},\ \frac1{x^2}\Bigr)\\a^2=\frac1{x^6}=b^3\end{gathered}[1:x:x3]=[1x3:1x2:1](a,b)=(1x3, 1x2)a2=1x6=b3\begin{aligned}[1:x:x^3] &= \Bigl[\frac1{x^3}:\frac1{x^2}:1\Bigr]\\[4pt](a,b) &= \Bigl(\frac1{x^3},\ \frac1{x^2}\Bigr)\\[4pt]a^2 &= \frac1{x^6}\\&= b^3\end{aligned}

x→+∞x\to+\infty では a>0a>0 の側から、x→−∞x\to-\infty では a<0a<0 の側から、どちらも (0,0)(0,0) に近づきます。曲線の両端が無限遠の同じ点に、同じ接線 a=0a=0 に沿って入ってくるので、そこが尖るのです。

U0U_0:y=x3y=x^3
xx
yy
x=±2x=\pm2 の点は枠の外
U2U_2:a2=b3a^2=b^3
[0:0:1][0:0:1]
bb
aa
破線 a=0a=0 は無限遠直線 x0=0x_0=0
同じ色の点は同じ点:x=1, 1.5, 2x=1,\ 1.5,\ 2 と x=−1, −1.5, −2x=-1,\ -1.5,\ -2
図4具体例左は U0U_0 で見た y=x3y=x^3、右は同じ曲線を U2U_2 の座標 (b,a)=(x1/x2, x0/x2)(b,a)=(x_1/x_2,\ x_0/x_2) で見たもので、式は a2=b3a^2=b^3 です。同じ色の点は同じ点で、x=1, 1.5, 2x=1,\,1.5,\,2 の点(右の上半分)と x=−1, −1.5, −2x=-1,\,-1.5,\,-2 の点(右の下半分)を描いています。∣x∣|x| が大きいほど右の図では原点に近づき、原点 [0:0:1][0:0:1] で上下の枝が尖って出会います。破線は無限遠直線 x0=0x_0=0 で、尖点の接錐です。

放物線 y=x2y=x^2 と比べると違いがはっきりします。射影閉包は x0x2=x12x_0x_2=x_1^2 で、U2U_2 の座標では a=b2a=b^2 となり、∂/∂a\partial/\partial a が1なので [0:0:1][0:0:1] は非特異点です。一般に y=xdy=x^d の無限遠点は ad−1=bda^{d-1}=b^d で、d≥3d\geq3 のときだけ特異点になります。

もう少し詳しく標数が次数を割り切るとき

命題17の後半には、標数の仮定が要ります。標数2で F=x0x1+x22F=x_0x_1+x_2^2(d=2d=2)とすると、偏微分は (x1, x0, 2x2)=(x1, x0, 0)(x_1,\ x_0,\ 2x_2)=(x_1,\ x_0,\ 0) で、点 [0:0:1][0:0:1] で3つとも0になります。

しかし F(0,0,1)=1≠0F(0,0,1)=1\neq0 なので、この点は曲線の上にありません。曲線の点ではないので、特異点でもありません。実際、この2次曲線には特異点がありません。曲線の点では x0,x1x_0,x_1 の少なくとも一方が0でなく(両方0なら x2=0x_2=0 になる)、U0U_0 では式が x+y2=0x+y^2=0 で xx での偏微分が1、U1U_1 でも同じ形の式になるからです。

代数閉体でない体と標数 pp

特異点の条件 f=fx=fy=0f=f_x=f_y=0 は形式的な微分で書けているので、代数閉体でない体の上でも、そのまま式として意味をもちます。ただし、見える点が減ることに注意が要ります。

もう少し詳しく実数の点だけを見ると見落とすもの

k=Rk=\mathbb{R} で f=x2+y2f=x^2+y^2 とすると、実数の点は原点だけで、fx=2xf_x=2x、fy=2yf_y=2y も原点で0です。実数の点だけを描くと、孤立した1点にしか見えません。

C\mathbb{C} で見ると、x2+y2=(x+iy)(x−iy)x^2+y^2=(x+iy)(x-iy) は2本の直線 y=±ixy=\pm ix の和集合で、原点は2本が交わる点です。接錐 x2+y2x^2+y^2 も、C\mathbb{C} では2本の直線に分かれます。

図1や図3も実数の点だけを描いています。例えば結節点 y2=x2(x+1)y^2=x^2(x+1) の x<−1x<-1 の部分には実数の点がありませんが、複素数の点はあります。

もう少し詳しく標数 pp の不思議な曲線 y=xpy=x^p

kk を標数 pp の代数閉体とし、f=y−xpf=y-x^p とします。fx=p xp−1=0f_x=p\,x^{p-1}=0、fy=1f_y=1 なので、どの点も非特異です。

ところが点 (a,ap)(a,a^p) での接線は 0⋅(x−a)+1⋅(y−ap)=00\cdot(x-a)+1\cdot(y-a^p)=0、つまり水平な直線 y=apy=a^p です。すべての点で接線が水平になります。標数0なら、接線がすべて水平な曲線は水平な直線しかありません。

理由は (a+u)p=ap+up(a+u)^p=a^p+u^p(二項係数 (pi)\binom pi は 0<i<p0<i<p で pp の倍数)にあります。例えば標数3なら (1+u)3=1+3u+3u2+u3=1+u3(1+u)^3=1+3u+3u^2+u^3=1+u^3 です。曲線の上で y−ap=upy-a^p=u^p となり、曲線は直線 y=apy=a^p と pp 重に接しています。

ハーツホーンは、多様体の特異点の集合が真の閉部分集合であること(非特異点が必ずある)を示しています[1, 定理5.3, p.45]。その証明でも、標数 pp で偏微分がすべて0になる多項式は pp 乗になる、という同じ現象を使っています。

まとめ:特異点を見る3つの道具

例式特異点dim⁡M/M2\dim M/M^2接錐
円x2+y2=1x^2+y^2=1なし11(どの点でも)接線
結節点y2=x2(x+1)y^2=x^2(x+1)原点222本の直線 y=±xy=\pm x
尖点y2=x3y^2=x^3原点22直線 y=0y=0 が2重
タクノードy2=x4−x6y^2=x^4-x^6原点22直線 y=0y=0 が2重
円錐x2+y2=z2x^2+y^2=z^2頂点33円錐そのもの
y=x3y=x^3 の閉包x02x2=x13x_0^2x_2=x_1^3[0:0:1][0:0:1]22無限遠直線が2重

特異点は「接空間が多様体より大きくなる点」です。ヤコビ行列で計算でき、局所環の M/M2M/M^2 で言い換えると置き方によらないことが分かります。接錐は、特異点に入ってくる枝の方向を記録します。

曲線では dim⁡Y=1\dim Y=1 なので、特異点は dim⁡M/M2≥2\dim M/M^2\geq2 の点です。円錐の頂点では、2次元の曲面に対して M/M2M/M^2 が3次元になります。

次回:ブローアップで特異点をほどく

結節点では2本の枝が別々の方向 y=±xy=\pm x から原点に入っていました。原点を「原点を通る直線の方向全体」(射影直線 P1\mathbb{P}^1)に取り替えると、2本の枝は別々の点を通るようになり、交わりがほどけます。この操作がブローアップです。

傾き m=y/xm=y/x を座標に使うと、y=mxy=mx を代入して x2x^2 で割るだけで、結節点 m2x2=x2(x+1)m^2x^2=x^2(x+1) は m2=x+1m^2=x+1 に、尖点 m2x2=x3m^2x^2=x^3 は m2=xm^2=x になります。どちらも滑らかな放物線です。

次回は、この計算を射影直線との積の中で正確に行い、結節点の2本の枝を分け、尖点を滑らかにします。

参考文献

  1. R. ハーツホーン(高橋宣能・松下大介 訳), 『代数幾何学 1』, 丸善出版, 2013.
  2. M. F. アティヤ, I. G. マクドナルド(新妻弘 訳), 『可換代数入門』, 共立出版, 2006.