数学ビジュアライズ

代数幾何図で読む代数幾何第5回

平行線が交わる平面:射影平面と Proj

3枚の平面を貼り合わせて射影平面を作り、平行な2直線が無限遠点で交わることを回せる立体図で確かめます。曲線を無限遠まで延ばすと、楕円・放物線・双曲線は1つの錐の切り口になり、y=x^3 は無限遠で尖ります。最後に次数付き環の Proj を定義し、貼り合わせで作った射影直線・射影平面と同じものになることを示します。

目次
  1. 前回の宿題
  2. 3枚の平面を貼り合わせる
  3. 平行線は無限遠で交わる
  4. 曲線を無限遠まで延ばす:射影閉包
  5. 平面では滑らか、無限遠では尖る
  6. 次数付き環から作る:Proj
  7. まとめ:平面と射影平面
  8. 次回:曲線が尖る点
  9. 参考文献
この記事の要点
射影平面
3枚の平面 Spec⁡k[x,y]\operatorname{Spec}k[x,y] を、座標を 1/x, y/x1/x,\ y/x などに読み替えて貼り合わせたものが射影平面 P2\mathbb{P}^2 です。点は斉次座標 [x0:x1:x2][x_0:x_1:x_2] で書けます。
平行線の交点
P2\mathbb{P}^2 の異なる2直線は、どの体の上でもちょうど1点で交わります。平行な2直線 y=mx+b1y=mx+b_1 と y=mx+b2y=mx+b_2 は、無限遠点 [0:1:m][0:1:m] で交わります。
射影閉包
曲線の式を斉次化すると、無限遠点まで含めた曲線が得られます。楕円・放物線・双曲線は、射影平面では座標の取り替えで移り合う同じ曲線です。y=x3y=x^3 は平面の中では滑らかですが、無限遠点で尖ります。
Proj
次数付き環 S=k[x0,x1,x2]S=k[x_0,x_1,x_2] の斉次素イデアルを点とすると、貼り合わせを使わずに P2\mathbb{P}^2 が作れます。開集合 D+(x0)D_+(x_0) は Spec⁡k[x1/x0, x2/x0]\operatorname{Spec}k[x_1/x_0,\ x_2/x_0] と同型で、これが1枚目の平面です。
  • 証明は、ステップの流れだけを短く書いています。「詳しく」の付いた行をクリックすると、そのステップの詳しい説明が開きます。説明の中にも開ける行があります。
  • 定義・命題・定理には、記事全体で通し番号を振っています。
  • もう少し詳しくは補足、専門的な話は先の回につながる話題です。どちらも開かずに読み進められます。
  • 各ブロックの「AIに質問」を押すと、その部分の内容を入れた質問文で、お使いのAIを開けます。

前回の宿題

第4回では、2本の直線 Spec⁡k[t]\operatorname{Spec}k[t] と Spec⁡k[s]\operatorname{Spec}k[s] を s=1/ts=1/t で貼り合わせて、射影直線 P1\mathbb{P}^1 を作りました(第4回の例10)。閉点は斉次座標 [x0:x1][x_0:x_1] で書け、t=x1/x0t=x_1/x_0、s=x0/x1s=x_0/x_1 でした。

第4回の最後では、2つのことを予告しました。同じやり方で平面に無限遠の点を足して射影平面を作ることと、射影空間を次数付き環から作る方法(Proj)を説明することです。第4回の貼り合わせは Proj⁡k[x0,x1]\operatorname{Proj}k[x_0,x_1] と同型だと述べただけで、まだ確かめていません。

この記事では、まず3枚の平面を貼り合わせて射影平面 P2\mathbb{P}^2 を作り、平行な2直線が無限遠で交わることを確かめます。次に、曲線を無限遠まで延ばす操作(射影閉包)で、楕円・放物線・双曲線や y=x3y=x^3 を無限遠まで含めて見ます。最後に Proj を定義し、貼り合わせで作った P1\mathbb{P}^1、P2\mathbb{P}^2 と同じものになることを示します。

3枚の平面を貼り合わせる

P1\mathbb{P}^1 の閉点 [x0:x1][x_0:x_1] は、x0≠0x_0\neq0 なら t=x1/x0t=x_1/x_0、x1≠0x_1\neq0 なら s=x0/x1s=x_0/x_1 で読めました。平面でも同じように、比 [x0:x1:x2][x_0:x_1:x_2] を3通りの割り算で読みます。0でない座標で割るので、地図は3枚になります。

x0≠0: (x1x0, x2x0)x1≠0: (x0x1, x2x1)x2≠0: (x0x2, x1x2)x_0\neq0:\ \Bigl(\frac{x_1}{x_0},\ \frac{x_2}{x_0}\Bigr)\qquad x_1\neq0:\ \Bigl(\frac{x_0}{x_1},\ \frac{x_2}{x_1}\Bigr)\qquad x_2\neq0:\ \Bigl(\frac{x_0}{x_2},\ \frac{x_1}{x_2}\Bigr)x0≠0: (x1x0, x2x0)x1≠0: (x0x1, x2x1)x2≠0: (x0x2, x1x2)\begin{gathered}x_0\neq0:\ \Bigl(\frac{x_1}{x_0},\ \frac{x_2}{x_0}\Bigr)\\x_1\neq0:\ \Bigl(\frac{x_0}{x_1},\ \frac{x_2}{x_1}\Bigr)\\x_2\neq0:\ \Bigl(\frac{x_0}{x_2},\ \frac{x_1}{x_2}\Bigr)\end{gathered}x0≠0: (x1x0, x2x0)x1≠0: (x0x1, x2x1)x2≠0: (x0x2, x1x2)\begin{aligned}x_0 &\neq 0:\ \Bigl(\frac{x_1}{x_0},\ \frac{x_2}{x_0}\Bigr)\\[4pt]x_1 &\neq 0:\ \Bigl(\frac{x_0}{x_1},\ \frac{x_2}{x_1}\Bigr)\\[4pt]x_2 &\neq 0:\ \Bigl(\frac{x_0}{x_2},\ \frac{x_1}{x_2}\Bigr)\end{aligned}

この3枚の地図を、環の言葉で貼り合わせます。3つの環は、どれも1つの体 K=k(x,y)K=k(x,y)(x,yx,y の有理式の体)の部分環として用意します。

定義1 射影平面 [1, 例2.5.1, p.106; 1, 演習2.12, p.109]

kk を体とし、K=k(x,y)K=k(x,y) の中で次の3つの部分環を考える。

A0=k[x, y]A1=k[u, v]  (u=1x, v=yx)A2=k[a, b]  (a=1y, b=xy)A_0=k[x,\ y]\qquad A_1=k[u,\ v]\ \ \Bigl(u=\frac1x,\ v=\frac yx\Bigr)\qquad A_2=k[a,\ b]\ \ \Bigl(a=\frac1y,\ b=\frac xy\Bigr)A0=k[x, y]A1=k[u, v]  (u=1x, v=yx)A2=k[a, b]  (a=1y, b=xy)\begin{gathered}A_0=k[x,\ y]\\A_1=k[u,\ v]\ \ \Bigl(u=\frac1x,\ v=\frac yx\Bigr)\\A_2=k[a,\ b]\ \ \Bigl(a=\frac1y,\ b=\frac xy\Bigr)\end{gathered}A0=k[x, y]A1=k[u, v]  (u=1x, v=yx)A2=k[a, b]  (a=1y, b=xy)\begin{aligned}A_0 &= k[x,\ y]\\[4pt]A_1 &= k[u,\ v]\ \ \Bigl(u=\frac1x,\ v=\frac yx\Bigr)\\[4pt]A_2 &= k[a,\ b]\ \ \Bigl(a=\frac1y,\ b=\frac xy\Bigr)\end{aligned}

Xi=Spec⁡AiX_i=\operatorname{Spec}A_i とする。X0X_0 の開集合 D(x)D(x) と X1X_1 の開集合 D(u)D(u) を、環が KK の中で等しいこと

A0[1/x]=k[x, 1/x, y]=A1[1/u]A_0[1/x]=k[x,\,1/x,\,y]=A_1[1/u]A0[1/x]=k[x, 1/x, y]=A1[1/u]\begin{aligned}A_0[1/x] &= k[x,\,1/x,\,y]\\&= A_1[1/u]\end{aligned}

によって同一視する。同様に X0⊇D(y)X_0\supseteq D(y) と X2⊇D(a)X_2\supseteq D(a) を A0[1/y]=A2[1/a]A_0[1/y]=A_2[1/a] で、X1⊇D(v)X_1\supseteq D(v) と X2⊇D(b)X_2\supseteq D(b) を A1[1/v]=A2[1/b]A_1[1/v]=A_2[1/b] で同一視する。こうして3つのスキームを貼り合わせたものを射影平面と呼び、P2\mathbb{P}^2 と書く。XiX_i を P2\mathbb{P}^2 の開集合とみて UiU_i と書く。

A1=k[u,v]A_1=k[u,v] は2変数の多項式環です(x=1/ux=1/u、y=v/uy=v/u なので k(u,v)=Kk(u,v)=K で、u,vu,v の間に多項式の関係はありません)。A2A_2 も同じです。つまり U0,U1,U2U_0,U_1,U_2 はどれも平面 A2\mathbb{A}^2 です。

重なりで使う座標の読み替えを並べると、次のようになります。どれも、比 [x0:x1:x2][x_0:x_1:x_2] の読み方を変えただけです。

U0∩U1:u=1x,  v=yx(x=1u,  y=vu)U0∩U2:a=1y,  b=xy(x=ba,  y=1a)U1∩U2:a=uv,  b=1v(u=ab,  v=1b)\begin{array}{ll} U_0\cap U_1: & u=\dfrac1x,\ \ v=\dfrac yx\\[1ex] & \Bigl(x=\dfrac1u,\ \ y=\dfrac vu\Bigr)\\[3ex] U_0\cap U_2: & a=\dfrac1y,\ \ b=\dfrac xy\\[1ex] & \Bigl(x=\dfrac ba,\ \ y=\dfrac1a\Bigr)\\[3ex] U_1\cap U_2: & a=\dfrac uv,\ \ b=\dfrac1v\\[1ex] & \Bigl(u=\dfrac ab,\ \ v=\dfrac1b\Bigr) \end{array}

3つの等式 A0[1/x]=A1[1/u]A_0[1/x]=A_1[1/u] などは、生成元を書き直せば確かめられます。例えば A1[1/u]=k[u,v,1/u]A_1[1/u]=k[u,v,1/u] の生成元は u=1/xu=1/x、v=y/xv=y/x、1/u=x1/u=x で、どれも k[x,1/x,y]k[x,1/x,y] に入ります。逆に x=1/ux=1/u、y=v/uy=v/u、1/x=u1/x=u なので、2つの環は同じものです。

第4回の定義8は2枚の貼り合わせでした。3枚以上では、各2枚の重なりを同型で同一視したうえで、3枚が重なる部分でその同一視が矛盾しないこと(U0→U1→U2U_0\to U_1\to U_2 と読み替えた結果が、U0→U2U_0\to U_2 と直接読み替えた結果と一致すること)が要ります[1, 演習2.12, p.109]。

この定義では、どの同一視も KK の中の恒等写像なので、この条件は自動的にみたされます。数で確かめると、(x,y)=(2,3)(x,y)=(2,3) は U1U_1 で (u,v)=(1/2, 3/2)(u,v)=(1/2,\ 3/2) になり、そこから U2U_2 に移すと

(a,b)=(uv, 1v)=(13, 23)=(1y, xy)(a,b)=\Bigl(\frac uv,\ \frac1v\Bigr)=\Bigl(\frac13,\ \frac23\Bigr)=\Bigl(\frac1y,\ \frac xy\Bigr)(a,b)=(uv, 1v)=(13, 23)=(1y, xy)\begin{aligned}(a,b) &= \Bigl(\frac uv,\ \frac1v\Bigr)\\&= \Bigl(\frac13,\ \frac23\Bigr)\\&= \Bigl(\frac1y,\ \frac xy\Bigr)\end{aligned}

で、U0U_0 から直接移した値と一致します。

命題2 P2\mathbb{P}^2 の閉点と斉次座標 [1, §I.2, p.11–12; 1, 命題2.2, p.14]

kk を代数閉体とする。0でない (c0,c1,c2)∈k3(c_0,c_1,c_2)\in k^3 を、0でない定数倍の違いを無視して [c0:c1:c2][c_0:c_1:c_2] と書く(斉次座標)。P2\mathbb{P}^2 の閉点は [c0:c1:c2][c_0:c_1:c_2] の全体と1対1に対応する。ci≠0c_i\neq0 の点は UiU_i に入り、その座標は cj/cic_j/c_i の組である。例えば c0≠0c_0\neq0 なら

[c0:c1:c2]⟷ (x,y)=(c1c0, c2c0)∈U0\begin{aligned} &[c_0:c_1:c_2]\\ &\quad\longleftrightarrow\ (x,y)=\Bigl(\frac{c_1}{c_0},\ \frac{c_2}{c_0}\Bigr)\in U_0\end{aligned}

ここで U0U_0 の点 (p,q)(p,q) は、A0A_0 の極大イデアル (x−p, y−q)(x-p,\ y-q) のことである。

証明
  1. UiU_i の閉点は、第2回の例12より k2k^2 の点と1対1に対応する。U0U_0 の点 (p,q)(p,q) を [1:p:q][1:p:q]、U1U_1 の点 (u,v)=(p,q)(u,v)=(p,q) を [p:1:q][p:1:q]、U2U_2 の点 (a,b)=(p,q)(a,b)=(p,q) を [p:q:1][p:q:1] に送る。
  2. U0U_0 の点 (p,q)(p,q) が U1U_1 にも入るのは p≠0p\neq0 のときで、そのとき U1U_1 では (1/p, q/p)(1/p,\ q/p) である。[1:p:q]=[1/p:1:q/p][1:p:q]=[1/p:1:q/p] なので、2通りの送り方は一致する。

    点 (p,q)(p,q) は極大イデアル (x−p, y−q)(x-p,\ y-q) で、D(x)D(x) に入るのは x∉(x−p,y−q)x\notin(x-p,y-q)、つまり p≠0p\neq0 のとき。重なりの環 k[x,1/x,y]k[x,1/x,y] の中で

    u−1p=p−xpxv−qp=p(y−q)−q(x−p)pxu-\frac1p=\frac{p-x}{px}\qquad v-\frac qp=\frac{p(y-q)-q(x-p)}{px}u−1p=p−xpxv−qp=p(y−q)−q(x−p)px\begin{gathered}u-\frac1p=\frac{p-x}{px}\\v-\frac qp=\frac{p(y-q)-q(x-p)}{px}\end{gathered}u−1p=p−xpxv−qp=p(y−q)−q(x−p)px\begin{aligned}u-\frac1p &= \frac{p-x}{px}\\[4pt]v-\frac qp &= \frac{p(y-q)-q(x-p)}{px}\end{aligned}

    なので、(u−1/p, v−q/p)(u-1/p,\ v-q/p) は (x−p, y−q)(x-p,\ y-q) と同じイデアルを生成する(1/(px)1/(px) は単元)。U0∩U2U_0\cap U_2、U1∩U2U_1\cap U_2 も同じ計算である。

  3. どの [c0:c1:c2][c_0:c_1:c_2] も、ci≠0c_i\neq0 となる ii を選べば UiU_i の点から来る。重なりで送り方が一致するので、全体で1対1になる。

ハーツホーンの第 I 章は、Pn\mathbb{P}^n を斉次座標の集合として定義し、UiU_i が An\mathbb{A}^n と同相であることを命題2.2で示しています(第 I 章では零点集合を VV ではなく ZZ と書きます)。上の命題は、この斉次座標の集合が、貼り合わせで作った P2\mathbb{P}^2 の閉点と同じものだと言っています。

閉点のほかに、P2\mathbb{P}^2 には生成点もあります。第2回の例12のとおり、各 UiU_i には既約な曲線の生成点と、全体の生成点 (0)(0) があります。

斉次座標で書くと、3枚の地図で同じ点が別の座標になる様子がよく見えます。点 [1:2:3][1:2:3] は U0U_0 では (2,3)(2,3)、U1U_1 では (1/2, 3/2)(1/2,\ 3/2)、U2U_2 では (1/3, 2/3)(1/3,\ 2/3) です。同じ点を k=F7k=\mathbb{F}_7 で考えると、2−1=42^{-1}=4、3−1=53^{-1}=5 なので、U1U_1 では (4, 3⋅4)=(4,5)(4,\ 3\cdot4)=(4,5)、U2U_2 では (5, 2⋅5)=(5,3)(5,\ 2\cdot5)=(5,3) です。

x0=0x_0=0 の点 [0:c1:c2][0:c_1:c_2] は U0U_0 に入りません。これが U0U_0 から見た無限遠点で、その全体を無限遠直線と呼びます。無限遠直線の点は [0:1:m][0:1:m](m∈km\in k)と [0:0:1][0:0:1] で、P1\mathbb{P}^1 の閉点と同じ形をしています。

P2={[1:x:y]}⏟U0 ≅ A2 ⊔ {[0:x1:x2]}⏟≅ P1\mathbb{P}^2=\underbrace{\{[1:x:y]\}}_{U_0\,\cong\,\mathbb{A}^2}\ \sqcup\ \underbrace{\{[0:x_1:x_2]\}}_{\cong\,\mathbb{P}^1}P2={[1:x:y]}⏟U0 ≅ A2 ⊔ {[0:x1:x2]}⏟≅ P1\begin{aligned}\mathbb{P}^2 &= \underbrace{\{[1:x:y]\}}_{U_0\,\cong\,\mathbb{A}^2}\ \sqcup\ \underbrace{\{[0:x_1:x_2]\}}_{\cong\,\mathbb{P}^1}\end{aligned}

例3 Fp\mathbb{F}_p の上の射影平面

k=Fpk=\mathbb{F}_p とする。斉次座標が Fp\mathbb{F}_p の元で書ける点は、次の個数だけある。

#(Fp3∖{0})#Fp×=p3−1p−1=p2+p+1\frac{\#(\mathbb{F}_p^3\setminus\{0\})}{\#\mathbb{F}_p^\times}=\frac{p^3-1}{p-1}=p^2+p+1#(Fp3∖{0})#Fp×=p3−1p−1=p2+p+1\begin{aligned}\frac{\#(\mathbb{F}_p^3\setminus\{0\})}{\#\mathbb{F}_p^\times} &= \frac{p^3-1}{p-1}\\&= p^2+p+1\end{aligned}

内訳は、U0U_0 の点 [1:x:y][1:x:y] が p2p^2 個、無限遠点 [0:1:m][0:1:m] が pp 個、[0:0:1][0:0:1] が1個である。p=2,3,5,7p=2,3,5,7 なら 7,13,31,577,13,31,57 個になる。

p=2p=2 の7点を、各座標が0か1の代表で書くと [1:0:0],[0:1:0],[0:0:1],[1:1:0],[1:0:1],[0:1:1],[1:1:1][1:0:0],[0:1:0],[0:0:1],[1:1:0],[1:0:1],[0:1:1],[1:1:1] である。

F2\mathbb{F}_2 の上の射影平面はファノ平面と呼ばれ、7点と7本の直線からなります。直線の定義は次の節で述べますが、先に図で見ておきます。

[0:0:1][0:0:1]
[0:1:0][0:1:0]
[0:1:1][0:1:1]
[1:0:0][1:0:0]
[1:0:1][1:0:1]
[1:1:0][1:1:0]
[1:1:1][1:1:1]
円は直線 x0+x1+x2=0x_0+x_1+x_2=0
図1具体例ファノ平面 P2(F2)\mathbb{P}^2(\mathbb{F}_2)。7つの点と、a0x0+a1x1+a2x2=0a_0x_0+a_1x_1+a_2x_2=0(係数は0か1、計算は2で割った余り)で決まる7本の直線を描いています。三角形の3辺(青)は xi=0x_i=0、3本の中線(緑)は xi+xj=0x_i+x_j=0、円(オレンジ)は x0+x1+x2=0x_0+x_1+x_2=0 です。どの直線にも3点が乗り、どの点も3本の直線が通り、どの2直線もちょうど1点で交わります(図を作るプログラムで全部の組を確かめています)。

円も1本の「直線」です。例えば [1:1:0][1:1:0] は 1+1+0=2≡01+1+0=2\equiv0 なので円に乗っていて、[1:1:1][1:1:1] は 1+1+1=3≡11+1+1=3\equiv1 なので乗っていません。ファノ平面には平行な2直線がありません。どの2直線も交わることは、次の節でどの体でも成り立つと示します。

平行線は無限遠で交わる

定義4 直線

kk を体とする。0でない α=(a0,a1,a2)∈k3\alpha=(a_0,a_1,a_2)\in k^3 について、a0x0+a1x1+a2x2=0a_0x_0+a_1x_1+a_2x_2=0 をみたす点 [x0:x1:x2][x_0:x_1:x_2] の全体を P2\mathbb{P}^2 の直線と呼ぶ。α\alpha と、その0でない定数倍は同じ直線を表す。とくに x0=0x_0=0 は無限遠直線である。

点の代表 (x0,x1,x2)(x_0,x_1,x_2) を0でない定数倍に変えても、式の値は定数倍になるだけです。そのため、点が直線に乗るかどうかは代表の取り方によりません。スキームとしての直線は、後の Proj の節で V+(a0x0+a1x1+a2x2)V_+(a_0x_0+a_1x_1+a_2x_2) として定義し直します。

U0U_0 で x0=1x_0=1 とおくと、直線の式は a0+a1x+a2y=0a_0+a_1x+a_2y=0 になります。(a1,a2)≠(0,0)(a_1,a_2)\neq(0,0) なら、P2\mathbb{P}^2 の直線は、この平面の直線に無限遠点を1つ足したものです。逆に平面の直線は、次のように P2\mathbb{P}^2 の直線に延びます。

y=mx+b ⇝ x2=mx1+bx0α=(−b, −m, 1)x0=0 ⇒ [0:1:m]y=mx+b\ \leadsto\ x_2=mx_1+bx_0\qquad \alpha=(-b,\,-m,\,1)\qquad x_0=0\ \Rightarrow\ [0:1:m]y=mx+b ⇝ x2=mx1+bx0α=(−b, −m, 1)x0=0 ⇒ [0:1:m]\begin{gathered}y=mx+b\ \leadsto\ x_2=mx_1+bx_0\\\alpha=(-b,\,-m,\,1)\\x_0=0\ \Rightarrow\ [0:1:m]\end{gathered}y=mx+b ⇝ x2=mx1+bx0α=(−b, −m, 1)x0=0⇒[0:1:m]\begin{aligned}y &= mx+b\ \leadsto\ x_2\\&= mx_1+bx_0\\[4pt]\alpha &= (-b,\,-m,\,1)\\[4pt]x_0 &= 0\\&\Rightarrow [0:1:m]\end{aligned}

無限遠点 [0:1:m][0:1:m] は切片 bb によりません。傾きが同じ直線は、同じ無限遠点を通ります。無限遠点は「直線の向き」を表していると言えます。縦の直線 x=cx=c は x1=cx0x_1=cx_0 で、無限遠点は [0:0:1][0:0:1] です。

命題5

kk を体とし、α,β∈k3\alpha,\beta\in k^3 を、互いに定数倍でない0でないベクトルとする。α\alpha と β\beta が表す2直線は、ちょうど1点で交わる。交点は、α\alpha と β\beta の外積

α×β=(a1b2−a2b1,a2b0−a0b2,a0b1−a1b0)\begin{aligned} \alpha\times\beta=\bigl(&a_1b_2-a_2b_1,{}\\ &a_2b_0-a_0b_2,{}\\ &a_0b_1-a_1b_0\bigr) \end{aligned}

を斉次座標とする点である。

証明
  1. α×β≠0\alpha\times\beta\neq0 を示す。成分は、α,β\alpha,\beta を行とする 2×32\times3 行列の2次の小行列式で、すべて0なら α,β\alpha,\beta は比例する。

    例えば a0≠0a_0\neq0 とする。a0b1−a1b0=0a_0b_1-a_1b_0=0 と a0b2−a2b0=0a_0b_2-a_2b_0=0 から b1=(b0/a0)a1b_1=(b_0/a_0)a_1、b2=(b0/a0)a2b_2=(b_0/a_0)a_2 で、β=(b0/a0)α\beta=(b_0/a_0)\alpha となる。

  2. α×β\alpha\times\beta は両方の直線に乗る。α⋅(α×β)\alpha\cdot(\alpha\times\beta) は α,α,β\alpha,\alpha,\beta を行とする行列式で、同じ行が2つあるので0である。β\beta も同じ。
  3. 交点はこれだけである。連立方程式 α⋅c=β⋅c=0\alpha\cdot c=\beta\cdot c=0 の係数行列は階数2なので、解 cc の全体は1次元で、α×β\alpha\times\beta の定数倍に限る。

平面 A2\mathbb{A}^2 では、平行な2直線は交わりませんでした。P2\mathbb{P}^2 でも方程式は同じで、交点にあたる解 cc はあります。ただ、その解の x0x_0 成分が0になるので、U0U_0 の中には見えません。

例6 交点の計算

(1) k=Rk=\mathbb{R}。平行な2直線 y=2x+1y=2x+1、y=2x−3y=2x-3 は α=(1,2,−1)\alpha=(1,2,-1)、β=(−3,2,−1)\beta=(-3,2,-1) で、

α×β=(2⋅(−1)−(−1)⋅2,(−1)(−3)−1⋅(−1),1⋅2−2⋅(−3))=(0,4,8)\begin{aligned} \alpha\times\beta&=\bigl(2\cdot(-1)-(-1)\cdot2,{}\\ &\qquad(-1)(-3)-1\cdot(-1),{}\\ &\qquad1\cdot2-2\cdot(-3)\bigr)\\ &=(0,4,8) \end{aligned}

なので、交点は [0:4:8]=[0:1:2][0:4:8]=[0:1:2] である。

(2) kk を任意の体、b1≠b2b_1\neq b_2 とする。y=mx+b1y=mx+b_1 と y=mx+b2y=mx+b_2 は

(−b1,−m,1)×(−b2,−m,1)=(0, b1−b2, m(b1−b2))\begin{aligned} &(-b_1,-m,1)\times(-b_2,-m,1)\\ &\quad=\bigl(0,\ b_1-b_2,\ m(b_1-b_2)\bigr) \end{aligned}

より、無限遠点 [0:1:m][0:1:m] で交わる。

(3) k=Rk=\mathbb{R}。縦の2直線 x=1x=1、x=3x=3 は (−1,1,0)×(−3,1,0)=(0,0,2)(-1,1,0)\times(-3,1,0)=(0,0,2) より [0:0:1][0:0:1] で交わる。平行でない y=xy=x と y=−x+2y=-x+2 は (0,−1,1)×(−2,1,1)=(−2,−2,−2)(0,-1,1)\times(-2,1,1)=(-2,-2,-2) より [1:1:1][1:1:1]、つまり平面の点 (1,1)(1,1) で交わる。

(4) k=F5k=\mathbb{F}_5。y=2x+1y=2x+1 と y=2x+3y=2x+3 は (2) より [0:1:2][0:1:2] で交わる。y=x+1y=x+1 と y=3xy=3x は

(−1,−1,1)×(0,−3,1)=(2,1,3)[2:1:3]=[3⋅2:3⋅1:3⋅3]=[1:3:4]\begin{aligned} &(-1,-1,1)\times(0,-3,1)\\ &\quad=(2,1,3)\\[4pt] &[2:1:3]=[3\cdot2:3\cdot1:3\cdot3]\\ &\quad=[1:3:4] \end{aligned}

より、平面の点 (3,4)(3,4) で交わる(2−1=32^{-1}=3 を掛けた)。実際 4=3+14=3+1、4≡3⋅3(mod5)4\equiv3\cdot3\pmod5 である。

(1) で交点 [0:1:2][0:1:2] の比 x2/x1=2x_2/x_1=2 は、2直線の傾きです。(2) から、どの体でも、平行線の交点は傾きだけで決まることが分かります。

交点を立体で見ます。斉次座標 [x0:x1:x2][x_0:x_1:x_2] は k3k^3 の原点を通る直線 {λ(x0,x1,x2)}\{\lambda(x_0,x_1,x_2)\} と同じものなので、P2\mathbb{P}^2 の点は k3k^3 の原点を通る直線です。式 a0x0+a1x1+a2x2=0a_0x_0+a_1x_1+a_2x_2=0 は k3k^3 の原点を通る平面を表すので、P2\mathbb{P}^2 の直線は原点を通る平面です。

高さ x0=1x_0=1 の平面(スクリーン)を置くと、原点を通る直線のうちスクリーンと交わるものが U0U_0 の点 (x,y)(x,y) に対応します。スクリーンと交わらないもの、つまり x0=0x_0=0 の中に寝ている直線が無限遠点です。

ドラッグで回せます

高さ x0=1x_0=1 の灰色の面がスクリーン(U0U_0)で、その上に平行な2直線 y=0.4x±0.8y=0.4x\pm0.8 があります。それぞれを含む原点を通る平面(青・緑)が、P2\mathbb{P}^2 の直線そのものです。2枚の平面の交線(オレンジ)は床 x0=0x_0=0 の中の直線 (t, 0.4t, 0)(t,\,0.4t,\,0) で、スクリーンとは交わりません。これが無限遠点 [0:1:0.4]=[0:5:2][0:1:0.4]=[0:5:2] です。

「真上」から見るとスクリーンの図(平行線)と重なり、交線は2本の間の平行線に見えます。「線の向き」から見ると2枚の平面が原点を通る2直線に、交線が原点の1点に見えます。

平行でない2直線 y=0.4x+0.8y=0.4x+0.8 と y=−0.5x+0.2y=-0.5x+0.2 では、平面の交線がスクリーンを貫き、貫いた点がスクリーンの上の交点 (−2/3, 8/15)(-2/3,\ 8/15) です。平行な2直線との違いは、交線が床に寝ているかどうかだけです。

図2具体例R3\mathbb{R}^3 の中で、縦の軸を x0x_0 にとっています。スクリーン x0=1x_0=1 の上の2直線を、原点を通る平面として描きました。平行な2直線では、2枚の平面の交線が床 x0=0x_0=0 に寝ていて、スクリーンと交わりません。この交線が無限遠点です。「真上」から見ると平面に描いた平行線の図と重なり、交線も2本の間の平行線に見えます。回すと、交線だけが床にあることが分かります。「線の向き」から見ると、第4回の図1と同じ「原点を通る直線」の図になります。

曲線を無限遠まで延ばす:射影閉包

直線 y=mx+by=mx+b は、式を x2=mx1+bx0x_2=mx_1+bx_0 と書き直して P2\mathbb{P}^2 に延ばしました。同じことを一般の曲線でも行います。

定義7 斉次化と射影閉包 [1, 命題2.2の証明, p.14; 1, 演習2.9, p.16]

kk を体、f∈k[x,y]f\in k[x,y] を次数 d≥1d\geq1 の多項式とする。

F(x0,x1,x2)=x0d f(x1x0, x2x0)F(x_0,x_1,x_2)=x_0^d\,f\Bigl(\frac{x_1}{x_0},\ \frac{x_2}{x_0}\Bigr)F(x0,x1,x2)=x0d f(x1x0, x2x0)\begin{aligned}F(x_0,x_1,x_2) &= x_0^d\,f\Bigl(\frac{x_1}{x_0},\ \frac{x_2}{x_0}\Bigr)\end{aligned}

を ff の斉次化と呼ぶ。FF は次数 dd の斉次多項式である。F=0F=0 をみたす点 [x0:x1:x2][x_0:x_1:x_2] の全体を、曲線 f=0f=0 の射影閉包と呼ぶ。

F(λx0,λx1,λx2)=λdF(x0,x1,x2)F(\lambda x_0,\lambda x_1,\lambda x_2)=\lambda^dF(x_0,x_1,x_2) なので、F=0F=0 かどうかは代表の取り方によりません。具体的には、ff の各項に x0x_0 を掛けて次数を dd にそろえれば FF になります。

x2+y2−1⇝x12+x22−x02y−x2⇝x0x2−x12xy−1⇝x1x2−x02y−x3⇝x02x2−x13y2−x3⇝x0x22−x13\begin{array}{lll} x^2+y^2-1 & \leadsto & x_1^2+x_2^2-x_0^2\\ y-x^2 & \leadsto & x_0x_2-x_1^2\\ xy-1 & \leadsto & x_1x_2-x_0^2\\ y-x^3 & \leadsto & x_0^2x_2-x_1^3\\ y^2-x^3 & \leadsto & x_0x_2^2-x_1^3 \end{array}

ハーツホーンは、射影閉包を Pn\mathbb{P}^n の中での閉包として定義しています(演習2.9。kk は代数閉体)。この閉包は点の集合として上の F=0F=0 と一致し、ff の既約因子ごとに演習2.9(a) を使うと分かります。

ff に重複する因子があっても同じです。例えば f=g2f=g^2 なら F=G2F=G^2 で、F=0F=0 と G=0G=0 は同じ点の集合になります。

命題8 射影閉包の無限遠点

f=f0+f1+⋯+fdf=f_0+f_1+\dots+f_d(fjf_j は ff の jj 次の部分、fd≠0f_d\neq0)とし、FF を斉次化とする。

(1) F(1,x,y)=f(x,y)F(1,x,y)=f(x,y)。よって射影閉包のうち U0U_0 に入る部分は、もとの曲線 f=0f=0 である。
(2) 射影閉包の無限遠点は、fd(x1,x2)=0f_d(x_1,x_2)=0 をみたす [0:x1:x2][0:x_1:x_2] である。

証明
  1. F=∑j=0dx0d−jfj(x1,x2)F=\sum_{j=0}^{d}x_0^{d-j}f_j(x_1,x_2) である。fjf_j は jj 次の斉次式なので、x0dfj(x1/x0, x2/x0)=x0d−jfj(x1,x2)x_0^df_j(x_1/x_0,\,x_2/x_0)=x_0^{d-j}f_j(x_1,x_2) となるから。
  2. x0=1x_0=1 を代入すると ∑jfj(x,y)=f\sum_jf_j(x,y)=f で (1) が従う。x0=0x_0=0 を代入すると j=dj=d の項だけが残り、(2) が従う。

(2) から、無限遠点は「曲線が無限遠に向かう方向」を表しています。最高次の部分 fdf_d は、x,yx,y が大きいところで ff を支配する部分だからです。

例9 円・放物線・双曲線の無限遠点

(1) 円 x2+y2=1x^2+y^2=1:f2=x12+x22f_2=x_1^2+x_2^2。k=Rk=\mathbb{R} では x12+x22=0x_1^2+x_2^2=0 から x1=x2=0x_1=x_2=0 となり、無限遠点はない。k=Ck=\mathbb{C} では x2=±ix1x_2=\pm ix_1 から [0:1:i][0:1:i] と [0:1:−i][0:1:-i] の2点がある。

(2) 放物線 y=x2y=x^2:f2=−x12f_2=-x_1^2。x1=0x_1=0 から、無限遠点は [0:0:1][0:0:1] の1点だけである。

(3) 双曲線 xy=1xy=1:f2=x1x2f_2=x_1x_2。無限遠点は [0:1:0][0:1:0] と [0:0:1][0:0:1] の2点で、2本の漸近線 y=0y=0、x=0x=0 の向きに当たる。

放物線の閉包と無限遠直線 x0=0x_0=0 の交わりを求めると x12=0x_1^2=0 で、重根になります。平面で直線が放物線と重根で交わるのは接するときなので、放物線は無限遠直線に接していると言えます。交点重複度で数えると2です(第9回の例11)。

実際に U2U_2(座標 a=x0/x2, b=x1/x2a=x_0/x_2,\ b=x_1/x_2)で見ると、x0x2−x12x_0x_2-x_1^2 を x22x_2^2 で割って a−b2=0a-b^2=0 になります。U2U_2 の中の無限遠直線は a=0a=0 なので、放物線 a=b2a=b^2 が原点 [0:0:1][0:0:1] で直線 a=0a=0 に接しています。

双曲線を U1U_1(座標 u=x0/x1, v=x2/x1u=x_0/x_1,\ v=x_2/x_1)で見ると、x1x2−x02x_1x_2-x_0^2 を x12x_1^2 で割って v=u2v=u^2 です。双曲線の片側の無限遠点 [0:1:0][0:1:0] のまわりでは、双曲線は放物線の形をしています。点で確かめると、(x,y)=(2,1/2)(x,y)=(2,1/2) は (u,v)=(1/2, 1/4)(u,v)=(1/2,\ 1/4) に移り、確かに v=u2v=u^2 です。

この3つの曲線は、射影平面では座標の取り替えで移り合います。

座標の取り替えを先に定義します。3×33\times3 の正則行列 gg は、点 [c][c] を [gc][gc] に移す P2\mathbb{P}^2 の自己同型を引き起こします。これを射影変換と呼びます。直線は直線に移ります(係数ベクトルが t ⁣g−1α{}^t\!g^{-1}\alpha に変わります)。

命題10 3つの円錐曲線は射影変換で移り合う

kk を体とし、C={x0x2=x12}C=\{x_0x_2=x_1^2\}(放物線の射影閉包)とする。

(1) kk の標数が2でないとき、射影変換 (y0,y1,y2)=(x0−x2, x1, x0+x2)(y_0,y_1,y_2)=(x_0-x_2,\ x_1,\ x_0+x_2) は、円の射影閉包 {x12+x22=x02}\{x_1^2+x_2^2=x_0^2\} を CC に移す。
(2) x0x_0 と x1x_1 を入れ替える射影変換は、双曲線の射影閉包 {x1x2=x02}\{x_1x_2=x_0^2\} を CC に移す。

証明
  1. (1) の式の変形:x12+x22−x02=x12−(x0−x2)(x0+x2)=−(y0y2−y12)x_1^2+x_2^2-x_0^2=x_1^2-(x_0-x_2)(x_0+x_2)=-(y_0y_2-y_1^2)。よって [x][x] が円の閉包に乗ることと、[y][y] が CC に乗ることは同値である。
  2. この変換は正則である。行列式は2で、標数が2でないので0でない。逆は x0=(y0+y2)/2x_0=(y_0+y_2)/2、x1=y1x_1=y_1、x2=(y2−y0)/2x_2=(y_2-y_0)/2。
    g=(10−1010101)det⁡g=1⋅det⁡(1−111)=2{}\begin{gathered} g=\begin{pmatrix}1&0&-1\\0&1&0\\1&0&1\end{pmatrix}\\[4pt] \det g=1\cdot\det\begin{pmatrix}1&-1\\1&1\end{pmatrix}=2 \end{gathered}
  3. (2) は、x1x2−x02x_1x_2-x_0^2 の x0x_0 と x1x_1 を入れ替えると x0x2−x12x_0x_2-x_1^2 になることから従う。

(1) の変換で、円の点 [1:0:1][1:0:1](平面の点 (0,1)(0,1))は [0:0:2]=[0:0:1][0:0:2]=[0:0:1] に移ります。新しい座標で見ると、円のこの点が CC の無限遠点 [0:0:1][0:0:1] にあたります。

標数2では、(1) は成り立ちません。標数2では 2=02=0 なので

x12+x22−x02=x02+x12+x22=(x0+x1+x2)2x_1^2+x_2^2-x_0^2=x_0^2+x_1^2+x_2^2=(x_0+x_1+x_2)^2x12+x22−x02=x02+x12+x22=(x0+x1+x2)2\begin{aligned}x_1^2+x_2^2-x_0^2 &= x_0^2+x_1^2+x_2^2\\&= (x_0+x_1+x_2)^2\end{aligned}

となり、円 x2+y2=1x^2+y^2=1 は直線 x+y=1x+y=1 を2重にしたもの((x+y+1)2=0(x+y+1)^2=0)になってしまいます。

平面の中では、楕円・放物線・双曲線は無限遠点の数(実数で0個・1個・2個)で区別されます。射影平面の中では、違うのは無限遠直線との交わり方だけで、曲線としては同じものです。図3で、1つの錐を3枚のスクリーンで切ってこのことを確かめます。

ドラッグで回せます

青い面は錐 x12+x22=x02x_1^2+x_2^2=x_0^2 で、円 x2+y2=1x^2+y^2=1 の射影閉包を原点を通る直線の集まりとして描いたものです。スクリーン x0=1x_0=1(U0U_0)で切ると円になります。「正面(円)」で真上から見ると、切り口の円が見えます。スクリーンに平行な床 x0=0x_0=0 と錐は原点でしか交わらないので、実数の無限遠点はありません。

スクリーン x0−x2=1x_0-x_2=1 で切ると放物線になります。このスクリーンに平行な平面 x0=x2x_0=x_2 は、錐に母線 x1=0x_1=0(紫)で接しています。この母線がスクリーンから見た無限遠点で、放物線の無限遠点はちょうど1つです。「正面(放物線)」はスクリーンに垂直な向きで、放物線が歪まずに見えます。

スクリーン x2=1x_2=1(U2U_2、座標 a=x0/x2, b=x1/x2a=x_0/x_2,\ b=x_1/x_2)で切ると、上下の2本の枝からなる双曲線 a2−b2=1a^2-b^2=1 になります。平行な平面 x2=0x_2=0 は錐と2本の母線 x0=±x1x_0=\pm x_1(紫)で交わり、無限遠点は2つです。どの段階でも錐は同じなので、3つの曲線は同じ射影曲線を別のスクリーンで見たものです。

図3具体例円の射影閉包 x12+x22=x02x_1^2+x_2^2=x_0^2 は、R3\mathbb{R}^3 の中では錐(原点を通る直線の集まり)です。3枚のスクリーンで切ると、切り口は円・放物線・双曲線になります(アポロニウスの円錐曲線)。各段階の「正面」ボタンはスクリーンに垂直な向きで、切り口が歪まずに見えます。回すと、3つの切り口がどれも同じ錐から来ていることが分かります。紫の線は、スクリーンから見て無限遠点になる母線です。

図3のスクリーン x0−x2=1x_0-x_2=1 は、命題の (1) の座標 y0=x0−x2y_0=x_0-x_2 で y0=1y_0=1 とおいたものです。y0=1y_0=1 とおくと CC の式は y2=y12y_2=y_1^2 で、確かに放物線です。スクリーン x2=1x_2=1 は U2U_2 で、円の式は b2+1=a2b^2+1=a^2、つまり双曲線 a2−b2=1a^2-b^2=1 になります。

もう少し詳しく2次曲線の分類

標数が2でない体の上の2次の斉次式 FF は、対称行列 QQ を使って F=t ⁣x Q xF={}^t\!x\,Q\,x と書けます。det⁡Q≠0\det Q\neq0 のとき、F=0F=0 を非退化な円錐曲線と呼びます。

線形代数の対角化(平方完成をくり返す操作)で、変数を取り替えると F=c0x02+c1x12+c2x22F=c_0x_0^2+c_1x_1^2+c_2x_2^2(ci≠0c_i\neq0)の形にできます。代数閉体なら cic_i の平方根で割って F=x02+x12+x22F=x_0^2+x_1^2+x_2^2 にできるので、非退化な円錐曲線は射影変換で全部同じになります。

R\mathbb{R} では平方根がとれるとは限らないので、符号が残ります。x12+x22=x02x_1^2+x_2^2=x_0^2(円)と x02+x12+x22=0x_0^2+x_1^2+x_2^2=0(実数の点がない)の2種類に分かれます。

平面では滑らか、無限遠では尖る

3次の曲線では、無限遠で新しい現象が起こります。

例11 y=x3y=x^3 と y2=x3y^2=x^3 の無限遠点

kk を体とし、U2U_2 の座標を a=x0/x2=1/ya=x_0/x_2=1/y、b=x1/x2=x/yb=x_1/x_2=x/y とする。

(1) y=x3y=x^3 の射影閉包は x02x2=x13x_0^2x_2=x_1^3 で、無限遠点は x13=0x_1^3=0 から [0:0:1][0:0:1] だけである。x2=1x_2=1 とおくと、U2U_2 の中では

a2=b3a^2=b^3a2=b3\begin{aligned}a^2 &= b^3\end{aligned}

となる。曲線の点 (t,t3)(t,t^3)(t≠0t\neq0)は (b,a)=(t−2, t−3)(b,a)=(t^{-2},\ t^{-3}) に移る。

(2) y2=x3y^2=x^3 の射影閉包は x0x22=x13x_0x_2^2=x_1^3 で、無限遠点はやはり [0:0:1][0:0:1] だけである。U2U_2 の中では a=b3a=b^3 となり、点 (t2,t3)(t^2,t^3) は (b,a)=(t−1, t−3)(b,a)=(t^{-1},\ t^{-3}) に移る。

y=x3y=x^3 は、平面の中ではどこも尖っていない滑らかなグラフです。ところが無限遠点 [0:0:1][0:0:1] のまわりで見ると、a2=b3a^2=b^3 という尖った曲線になります。第1回の命題17で、ねじれ3次曲線の影として出てきた曲線と同じ形です。

逆に y2=x3y^2=x^3 は、平面の中の原点で尖っていますが、無限遠点のまわりでは a=b3a=b^3 というグラフで、滑らかです。

実は2つの射影閉包は、x0x_0 と x2x_2 を入れ替える射影変換で移り合います。

x02x2−x13 → x0↔x2  x22x0−x13x_0^2x_2-x_1^3\ \xrightarrow{\ x_0\leftrightarrow x_2\ }\ x_2^2x_0-x_1^3

同じ射影曲線を2枚の地図で見ていて、尖った点が U0U_0 の中にあるか、無限遠にあるかが違うだけです。

xx
yy
y=x3y=x^3(U0U_0)
bb
aa
[0:0:1][0:0:1]
無限遠直線
a2=b3a^2=b^3(U2U_2)
xx
yy
尖点
y2=x3y^2=x^3(U0U_0)
bb
aa
[0:0:1][0:0:1]
無限遠直線
a=b3a=b^3(U2U_2)
図4具体例上の段が y=x3y=x^3、下の段が y2=x3y^2=x^3 です。左は U0U_0(座標 x,yx,y)、右は無限遠点 [0:0:1][0:0:1] のまわりの U2U_2(横軸 b=x/yb=x/y、縦軸 a=1/ya=1/y)です。曲線の点 (x,y)(x,y) を tt で表し、tt が正の部分をオレンジ、負の部分を緑で塗りました(灰色の部分は右の図の枠の外に出ます)。右の図の赤い横軸 a=0a=0 は無限遠直線です。t→±∞t\to\pm\infty で、曲線の両端は無限遠点に集まります。上の段では両端が同じ向きから入ってきて尖り、下の段では向きを変えずに通り抜けます。

y=x3y=x^3 の射影閉包と無限遠直線 x0=0x_0=0 の交わりは x13=0x_1^3=0 で、3重根です。尖った点の接線(a2=b3a^2=b^3 の場合は a=0a=0)が、ちょうど無限遠直線になっています。

3重根を3個と数えれば交点は3個で、直線と3次曲線の次数の積 1⋅31\cdot3 に一致します。交点の数が次数だけで決まることは、射影平面の大事な性質で、次の定理にまとめられています。

定理12 ベズーの定理 [1, 系7.8, p.74]

kk を代数閉体とし、Y,ZY,Z を P2\mathbb{P}^2 の相異なる既約な曲線で、次数がそれぞれ d,ed,e とする。交点を重複度こみで数えると、ちょうど dede 個である。

重複度の定義が必要なので、この記事では証明しません。重複度は第9回で定義し(第9回の定義1)、直線と曲線の場合を証明します。重複度を気にしなくてよい例で、個数を確かめます。

例13 交点の数がそろう

(1) 放物線 y=x2y=x^2 と縦の直線 x=cx=c は、平面では1点 (c,c2)(c,c^2) でしか交わらない。射影平面では、x0x2=x12x_0x_2=x_1^2 と x1=cx0x_1=cx_0 を連立して

x0x2=c2x02 ⟹ x0 (x2−c2x0)=0x_0x_2=c^2x_0^2\ \Longrightarrow\ x_0\,(x_2-c^2x_0)=0x0x2=c2x02⟹x0 (x2−c2x0)=0\begin{aligned}x_0x_2 &= c^2x_0^2\\&\Longrightarrow x_0\,(x_2-c^2x_0)\\&= 0\end{aligned}

となり、交点は [1:c:c2][1:c:c^2] と [0:0:1][0:0:1] の2個である(1⋅2=21\cdot2=2)。

(2) 平行な2直線は、平面では交わらないが、射影平面では1点で交わる(1⋅1=11\cdot1=1)。

(3) k=Ck=\mathbb{C} で、円の射影閉包と無限遠直線は [0:1:±i][0:1:\pm i] の2点で交わる(2⋅1=22\cdot1=2)。

平面だけで数えると、交点は無限遠に逃げたり、実数の点として見えなかったりして、数がそろいません。射影平面と代数閉体の両方を使うと、数がそろいます。

次数付き環から作る:Proj

ここまでは、3枚の平面を貼り合わせて P2\mathbb{P}^2 を作りました。貼り合わせを使わずに、1つの環から一度に作る方法があります。斉次座標の「定数倍しても同じ点」という性質を、環の言葉で表します。

定義14 次数付き環と斉次イデアル [1, §I.2, p.12; 1, §II.2, p.104]

環 SS が加法群の直和 S=⨁d≥0SdS=\bigoplus_{d\geq0}S_d に分かれ、SdSe⊆Sd+eS_dS_e\subseteq S_{d+e} をみたすとき、SS を次数付き環と呼ぶ。SdS_d の元を次数 dd の斉次元と呼び、S+=⨁d>0SdS_+=\bigoplus_{d>0}S_d とおく。斉次元で生成されるイデアルを斉次イデアルと呼ぶ。

多項式環 S=k[x0,x1,x2]S=k[x_0,x_1,x_2] は、SdS_d を dd 次の単項式で張られる部分とすると次数付き環です。このとき S+=(x0,x1,x2)S_+=(x_0,x_1,x_2) です。

例えば (x0x2−x12)(x_0x_2-x_1^2) や (x1−2x0, x2−3x0)(x_1-2x_0,\ x_2-3x_0) は斉次イデアルです。一方 (x2−x12)(x_2-x_1^2) は斉次イデアルではありません。斉次イデアルなら、元の各次数の部分もまたイデアルに入りますが、x2−x12x_2-x_1^2 の1次の部分 x2x_2 はこのイデアルに入らないからです。

定義15 Proj [1, §II.2, p.104–105]

SS を次数付き環とする。S+S_+ を含まない斉次素イデアル PP の全体を Proj⁡S\operatorname{Proj}S と書く。斉次イデアル JJ について V+(J)={P∈Proj⁡S∣P⊇J}V_+(J)=\{P\in\operatorname{Proj}S\mid P\supseteq J\} とおき、これらを閉集合とする位相を入れる。斉次元 f∈S+f\in S_+ について

D+(f)={P∈Proj⁡S∣f∉P}S(f)={gfn∣n≥0, g∈Sndeg⁡f}D_+(f)=\{P\in\operatorname{Proj}S\mid f\notin P\}\qquad S_{(f)}=\Bigl\{\frac{g}{f^n}\Bigm|n\geq0,\ g\in S_{n\deg f}\Bigr\}D+(f)={P∈Proj⁡S∣f∉P}S(f)={gfn∣n≥0, g∈Sndeg⁡f}\begin{gathered}D_+(f)=\{P\in\operatorname{Proj}S\mid f\notin P\}\\S_{(f)}=\Bigl\{\frac{g}{f^n}\Bigm|n\geq0,\ g\in S_{n\deg f}\Bigr\}\end{gathered}D+(f)={P∈Proj⁡S∣f∉P}S(f)={gfn∣n≥0, g∈Sndeg⁡f}\begin{aligned}D_+(f) &= \{P\in\operatorname{Proj}S\mid f\notin P\}\\[4pt]S_{(f)} &= \Bigl\{\frac{g}{f^n}\Bigm|n\geq0,\ g\in S_{n\deg f}\Bigr\}\end{aligned}

とおく(gg は次数 ndeg⁡fn\deg f の斉次元)。D+(f)D_+(f) は開集合で、S(f)S_{(f)} は局所化 SfS_f の次数0の部分である。Proj⁡S\operatorname{Proj}S には構造層が定まる(定義はハーツホーン p.105)。

ハーツホーンは素イデアルを p\mathfrak p と書きますが、連載では PP と書きます。

S+S_+ を除くのは、斉次座標 [0:0:0][0:0:0] を点として認めないのと同じです。S+=(x0,x1,x2)S_+=(x_0,x_1,x_2) は k3k^3 の原点のイデアルで、原点だけでは「原点を通る直線」が決まりません。

S(f)S_{(f)} は「定数倍しても値が変わらない分数」の環です。分子と分母の次数が等しいので、g/fng/f^n の xix_i をすべて λxi\lambda x_i に変えても、λ\lambda が約分されて消えます。

命題16 [1, 命題2.5, p.105]

SS を次数付き環とする。

(1) 斉次元 f∈S+f\in S_+ について、局所環付き空間として (D+(f),O∣D+(f))≅Spec⁡S(f)(D_+(f),\mathcal{O}|_{D_+(f)})\cong\operatorname{Spec}S_{(f)} である。点の対応は P↦PSf∩S(f)P\mapsto PS_f\cap S_{(f)} である。
(2) ff が S+S_+ の斉次元を動くとき、D+(f)D_+(f) は Proj⁡S\operatorname{Proj}S を覆う。とくに Proj⁡S\operatorname{Proj}S はスキームである。

一般の場合の証明はハーツホーン p.105–106 にあります。ここでは S=k[x0,x1,x2]S=k[x_0,x_1,x_2]、f=x0f=x_0 の場合に、環 S(x0)S_{(x_0)} と点の対応を具体的に求めます。

例17 S(x0)=k[x1/x0, x2/x0]S_{(x_0)}=k[x_1/x_0,\ x_2/x_0]

S=k[x0,x1,x2]S=k[x_0,x_1,x_2] とする。S(x0)S_{(x_0)} は x=x1/x0x=x_1/x_0、y=x2/x0y=x_2/x_0 で生成される2変数の多項式環 k[x,y]k[x,y] である。例えば

x02+3x1x2−x22x02=1+3xy−y2\frac{x_0^2+3x_1x_2-x_2^2}{x_0^2}=1+3xy-y^2x02+3x1x2−x22x02=1+3xy−y2\begin{aligned}\frac{x_0^2+3x_1x_2-x_2^2}{x_0^2} &= 1+3xy-y^2\end{aligned}

点の対応では、斉次素イデアル P=(x1−2x0, x2−3x0)P=(x_1-2x_0,\ x_2-3x_0) は D+(x0)D_+(x_0) に入り、k[x,y]k[x,y] の極大イデアル (x−2, y−3)(x-2,\ y-3)、つまり点 (2,3)=[1:2:3](2,3)=[1:2:3] に対応する。

証明
  1. x,y∈S(x0)x,y\in S_{(x_0)} で、S(x0)S_{(x_0)} は環なので k[x,y]⊆S(x0)k[x,y]\subseteq S_{(x_0)}。

    g/x0ng/x_0^n と h/x0mh/x_0^m(deg⁡g=n\deg g=n、deg⁡h=m\deg h=m)の積は gh/x0n+mgh/x_0^{n+m} で、和は (gx0m+hx0n)/x0n+m(gx_0^m+hx_0^n)/x_0^{n+m}。分子はどちらも次数 n+mn+m の斉次式である。

  2. 逆の包含:deg⁡g=n\deg g=n の斉次式 gg は単項式 x0ix1jx2lx_0^ix_1^jx_2^l(i+j+l=ni+j+l=n)の和で、x0ix1jx2l/x0n=xjylx_0^ix_1^jx_2^l/x_0^n=x^jy^l である。
  3. x,yx,y の間に多項式の関係はない。h(x,y)=0h(x,y)=0 なら、x0deg⁡hx_0^{\deg h} を掛けると hh の斉次化が SS の中で0になり、h=0h=0 となる。
  4. 点の対応:x0∉Px_0\notin P なので P∈D+(x0)P\in D_+(x_0)。PSx0∩S(x0)PS_{x_0}\cap S_{(x_0)} は (x1−2x0)/x0=x−2(x_1-2x_0)/x_0=x-2 と (x2−3x0)/x0=y−3(x_2-3x_0)/x_0=y-3 を含む素イデアルなので、極大イデアル (x−2, y−3)(x-2,\ y-3) に等しい。

    PP が素イデアルであることは、S/P≅k[x0]S/P\cong k[x_0](x1↦2x0x_1\mapsto2x_0、x2↦3x0x_2\mapsto3x_0)が整域であることから分かる。PSx0∩S(x0)PS_{x_0}\cap S_{(x_0)} は 11 を含まない(含めば x0n∈Px_0^n\in P となる)ので、(x−2,y−3)(x-2,y-3) を含む真のイデアルで、(x−2,y−3)(x-2,y-3) が極大なのでこれに等しい。

逆向きの対応は、k[x,y]k[x,y] の素イデアルの元を斉次化して生成される斉次イデアルを作るものです(ハーツホーンの第 I 章、命題2.2の証明の β\beta)。(x−2, y−3)(x-2,\ y-3) からは (x1−2x0, x2−3x0)(x_1-2x_0,\ x_2-3x_0) に戻ります。

ほかの斉次素イデアルも、同じように UiU_i の点と対応します。

(x0, x1)∈D+(x2)⟷ (a, b)⊆k[a,b](x0x2−x12)∈D+(x0)⟷ (y−x2)⊆k[x,y](0)∈D+(x0)⟷ (0)⊆k[x,y]\begin{aligned} &(x_0,\ x_1)\in D_+(x_2)\\ &\qquad\longleftrightarrow\ (a,\ b)\subseteq k[a,b]\\[4pt] &(x_0x_2-x_1^2)\in D_+(x_0)\\ &\qquad\longleftrightarrow\ (y-x^2)\subseteq k[x,y]\\[4pt] &(0)\in D_+(x_0)\\ &\qquad\longleftrightarrow\ (0)\subseteq k[x,y] \end{aligned}

(x0,x1)(x_0,x_1) は x0x_0 を含むので D+(x0)D_+(x_0) には入らず、U2U_2 の原点、つまり [0:0:1][0:0:1] に対応します。(x0x2−x12)(x_0x_2-x_1^2) は放物線の射影閉包の生成点、(0)(0) は P2\mathbb{P}^2 全体の生成点です。

命題18 [1, 例2.5.1, p.106]

kk を体とする。Proj⁡k[x0,x1,x2]\operatorname{Proj}k[x_0,x_1,x_2] は定義1の P2\mathbb{P}^2 と同型である。同様に Proj⁡k[x0,x1]\operatorname{Proj}k[x_0,x_1] は第4回の例10の P1\mathbb{P}^1 と同型である。

証明
  1. D+(x0),D+(x1),D+(x2)D_+(x_0),D_+(x_1),D_+(x_2) は Proj⁡S\operatorname{Proj}S を覆う。3つとも含む斉次素イデアルは S+S_+ を含むからである。
  2. 例17と同じ計算で、S(xi)S_{(x_i)} は定義1の AiA_i と等しい(K=k(x1/x0, x2/x0)K=k(x_1/x_0,\ x_2/x_0) の中で)。例えば S(x1)=k[x0/x1, x2/x1]=k[u,v]S_{(x_1)}=k[x_0/x_1,\ x_2/x_1]=k[u,v]。
  3. 重なり D+(xi)∩D+(xj)=D+(xixj)D_+(x_i)\cap D_+(x_j)=D_+(x_ix_j) の環は S(xixj)=Ai[xi/xj]S_{(x_ix_j)}=A_i[x_i/x_j] で、定義1の重なりの環と同じである。

    xi/xj=xi2/(xixj)∈S(xixj)x_i/x_j=x_i^2/(x_ix_j)\in S_{(x_ix_j)}。逆に g/(xixj)ng/(x_ix_j)^n(deg⁡g=2n\deg g=2n)は (g/xi2n)⋅(xi/xj)n\bigl(g/x_i^{2n}\bigr)\cdot(x_i/x_j)^n と書ける。例えば i=0, j=1i=0,\ j=1 なら A0[x0/x1]=k[x,y,1/x]A_0[x_0/x_1]=k[x,y,1/x] である。

  4. 命題16の同型は、どれも局所化の自然な写像から作られるので、重なりの上で両立する。よって Proj⁡S\operatorname{Proj}S は、定義1と同じデータで3枚を貼り合わせたものになる。
  5. Proj⁡k[x0,x1]\operatorname{Proj}k[x_0,x_1] も同じで、S(x0)=k[x1/x0]=k[t]S_{(x_0)}=k[x_1/x_0]=k[t]、S(x1)=k[x0/x1]=k[s]S_{(x_1)}=k[x_0/x_1]=k[s]、重なりは S(x0x1)=k[t,1/t]S_{(x_0x_1)}=k[t,1/t] で、s=1/ts=1/t である。

ハーツホーンは Pn\mathbb{P}^n を Proj⁡k[x0,…,xn]\operatorname{Proj}k[x_0,\dots,x_n] で定義しています。貼り合わせで作った P1\mathbb{P}^1、P2\mathbb{P}^2 は、この定義と同じものです。対応を表にすると、次のようになります。

Proj の開集合その上の環貼り合わせの1枚
D+(x0)D_+(x_0)S(x0)=k[x1/x0, x2/x0]S_{(x_0)}=k[x_1/x_0,\ x_2/x_0]U0=Spec⁡k[x,y]U_0=\operatorname{Spec}k[x,y]
D+(x1)D_+(x_1)S(x1)=k[x0/x1, x2/x1]S_{(x_1)}=k[x_0/x_1,\ x_2/x_1]U1=Spec⁡k[u,v]U_1=\operatorname{Spec}k[u,v]
D+(x2)D_+(x_2)S(x2)=k[x0/x2, x1/x2]S_{(x_2)}=k[x_0/x_2,\ x_1/x_2]U2=Spec⁡k[a,b]U_2=\operatorname{Spec}k[a,b]

斉次イデアル JJ を含む点の全体 V+(J)V_+(J) は、Proj⁡S/J\operatorname{Proj}S/J と同じ点の集合です(S/JS/J の斉次素イデアルは JJ を含む SS の斉次素イデアルと対応します)。曲線 F=0F=0 は、スキームとしては Proj⁡k[x0,x1,x2]/(F)\operatorname{Proj}k[x_0,x_1,x_2]/(F) です。

例19 放物線の射影閉包は P1\mathbb{P}^1

kk を体とし、T=k[x0,x1,x2]/(x0x2−x12)T=k[x_0,x_1,x_2]/(x_0x_2-x_1^2) とする。Proj⁡T\operatorname{Proj}T は D+(x0)D_+(x_0) と D+(x2)D_+(x_2) で覆われ、

T(x0)=k[x,y]/(y−x2)≅k[x]T(x2)=k[a,b]/(a−b2)≅k[b]T_{(x_0)}=k[x,y]/(y-x^2)\cong k[x]\qquad T_{(x_2)}=k[a,b]/(a-b^2)\cong k[b]T(x0)=k[x,y]/(y−x2)≅k[x]T(x2)=k[a,b]/(a−b2)≅k[b]\begin{gathered}T_{(x_0)}=k[x,y]/(y-x^2)\cong k[x]\\T_{(x_2)}=k[a,b]/(a-b^2)\cong k[b]\end{gathered}T(x0)=k[x,y]/(y−x2)≅k[x]T(x2)=k[a,b]/(a−b2)≅k[b]\begin{aligned}T_{(x_0)} &= k[x,y]/(y-x^2)\\&\cong k[x]\\[4pt]T_{(x_2)} &= k[a,b]/(a-b^2)\\&\cong k[b]\end{aligned}

である。重なりでは b=1/xb=1/x となり、Proj⁡T\operatorname{Proj}T は t=xt=x、s=bs=b とした P1\mathbb{P}^1 と同型である。

証明
  1. x0x_0 と x2x_2 をともに含む斉次素イデアルは、x12=x0x2x_1^2=x_0x_2 から x1x_1 も含み、T+T_+ を含む。よって D+(x0)∪D+(x2)=Proj⁡TD_+(x_0)\cup D_+(x_2)=\operatorname{Proj}T。
  2. T(x0)T_{(x_0)} は S(x0)=k[x,y]S_{(x_0)}=k[x,y] を (x0x2−x12)/x02=y−x2(x_0x_2-x_1^2)/x_0^2=y-x^2 で割ったもの。T(x2)T_{(x_2)} も同じで、(x0x2−x12)/x22=a−b2(x_0x_2-x_1^2)/x_2^2=a-b^2。
  3. 重なりでは x12=x0x2x_1^2=x_0x_2 が単元なので x1x_1 も単元で、b=x1x2=x1x0x2x0=x1x0x12=x0x1=1xb=\dfrac{x_1}{x_2}=\dfrac{x_1x_0}{x_2x_0}=\dfrac{x_1x_0}{x_1^2}=\dfrac{x_0}{x_1}=\dfrac1x。

閉点で書くと、P1\mathbb{P}^1 の点 [s0:s1][s_0:s_1] が放物線の点 [s02:s0s1:s12][s_0^2:s_0s_1:s_1^2] に対応します。t=s1/s0t=s_1/s_0 は平面の点 (t,t2)(t,t^2) に、∞=[0:1]\infty=[0:1] は無限遠点 [0:0:1][0:0:1] に移ります。命題10と合わせると、双曲線の射影閉包も P1\mathbb{P}^1 と同型で、標数が2でなければ円の射影閉包も同型です。

定理20

kk を体とする。O(P2)=k\mathcal{O}(\mathbb{P}^2)=k(定数だけ)である。とくに P2\mathbb{P}^2 はアフィンスキームではない。

証明
  1. 貼り合わせの定義と第3回の系16から、O(P2)\mathcal{O}(\mathbb{P}^2) は KK の中の共通部分 A0∩A1∩A2A_0\cap A_1\cap A_2 である。
  2. A0∩A1=kA_0\cap A_1=k を示す。h∈A0h\in A_0 を次数 dd とし、斉次化 HH で h=H/x0dh=H/x_0^d と書く。h∈A1=S(x1)h\in A_1=S_{(x_1)} なら h=G/x1eh=G/x_1^e と書けて、SS の中で Hx1e=Gx0dHx_1^e=Gx_0^d となる。

    d≥1d\geq1 とすると、x0x_0 は Hx1eHx_1^e を割り切る。SS は一意分解整域で、x0x_0 は x1x_1 を割り切らないので、x0x_0 は HH を割り切る。

    しかし 命題8の証明のとおり H(0,x1,x2)=hd(x1,x2)≠0H(0,x_1,x_2)=h_d(x_1,x_2)\neq0(hdh_d は hh の最高次の部分)なので、x0x_0 は HH を割り切らない。よって d=0d=0 で、hh は定数である。

  3. アフィンでないことは、第4回の定理14と同じ。P2≅Spec⁡A\mathbb{P}^2\cong\operatorname{Spec}A なら A≅O(P2)=kA\cong\mathcal{O}(\mathbb{P}^2)=k で、P2\mathbb{P}^2 は1点になるが、P2\mathbb{P}^2 には異なる閉点がいくつもある。

第4回の P1\mathbb{P}^1 では、k[t]k[t] と k[1/t]k[1/t] で tt のべきの範囲を比べました。ここでは x0x_0 で割り切れるかどうかを比べています。例えば h=y=x2/x0h=y=x_2/x_0 が A1A_1 に入ると x2x1e=Gx0x_2x_1^e=Gx_0 となりますが、左辺は x0x_0 で割り切れません。

専門的な話1点を除いても関数は増えない

上の証明は U0U_0 と U1U_1 しか使っていません。U0∪U1U_0\cup U_1 は P2\mathbb{P}^2 から1点 [0:0:1][0:0:1] を除いたものなので、O(P2∖{[0:0:1]})=k\mathcal{O}(\mathbb{P}^2\setminus\{[0:0:1]\})=k が分かります。

P1\mathbb{P}^1 から1点を除くと直線 A1\mathbb{A}^1 になり、関数が k[t]k[t] まで増えました。2次元では、1点を除いても関数は増えません。1点を除いたところで定義された関数が、その点まで自動的に延びるからです(複素関数論のハルトークスの現象の代数版です)。

同じ理由で、平面 A2\mathbb{A}^2 から原点を除いた開集合の上の関数は k[x,y]k[x,y] のままです。この開集合はアフィンスキームではない例として知られています。

まとめ:平面と射影平面

対象平面 A2\mathbb{A}^2 で見ると射影平面 P2\mathbb{P}^2 で見ると
平行な2直線交わらない無限遠点 [0:1:m][0:1:m] で交わる
円 x2+y2=1x^2+y^2=1閉じた曲線無限遠点は R\mathbb{R} ではなし、C\mathbb{C} では [0:1:±i][0:1:\pm i]
放物線 y=x2y=x^2上に開いた曲線無限遠直線に [0:0:1][0:0:1] で接する
双曲線 xy=1xy=12本の枝無限遠点 [0:1:0],[0:0:1][0:1:0],[0:0:1] でつながる
y=x3y=x^3滑らか無限遠点 [0:0:1][0:0:1] で尖る(a2=b3a^2=b^3)
全体の関数k[x,y]k[x,y]kk(定数だけ)

射影平面は、平面に無限遠直線を足したものです。足したことで、平行線も交わり、交点の数がそろい、楕円・放物線・双曲線は1種類になりました。作り方は2通りあり、3枚の平面の貼り合わせと、次数付き環の Proj です。

次回:曲線が尖る点

この記事では、y=x3y=x^3 の無限遠点のまわりが a2=b3a^2=b^3 になり、尖っていることを見ました。しかし「尖っている」とはどういうことかを、まだ式で定義していません。

次回は、曲線の各点で接空間を考え、その次元で滑らかな点(非特異点)と特異点を区別します。尖点 y2=x3y^2=x^3 や、自分自身と交わる結節点 y2=x2(x+1)y^2=x^2(x+1) が例になります。

参考文献

  1. R. ハーツホーン(高橋宣能・松下大介 訳), 『代数幾何学 1』, 丸善出版, 2013.