数学ビジュアライズ

代数幾何図で読む代数幾何第12回

3次曲線の上の足し算:楕円曲線

3次曲線 y^2=x^3+ax+b の点を、2点を通る直線のもう1つの交点を折り返して足します。判別式で非特異かどうかを判定し、有理数や有限体 F_p の上で足し算と点の数を計算します。点を因子の類に移すと結合法則が成り立つ理由が分かることを示し、無限遠点が見える錐と、複素数の点がなすトーラスを回せる立体図で見ます。

目次
  1. 前回の宿題
  2. ワイエルシュトラス形と判別式
  3. 弦と接線の足し算
  4. 有理数の点で計算する
  5. 有限体の上の点
  6. 因子で見る:結合法則が成り立つ理由
  7. 複素数の点はトーラス
  8. 有理点の群と暗号
  9. まとめ:足し算を4つの見方で
  10. この先
  11. 参考文献
この記事の要点
ワイエルシュトラス形
3次曲線 y2=x3+ax+by^2=x^3+ax+b を射影平面に延ばすと、無限遠点 O=[0:1:0]O=[0:1:0] が1つ加わります。判別式 Δ=−16(4a3+27b2)\Delta=-16(4a^3+27b^2) が0でないとき、曲線は非特異で、楕円曲線と呼ばれます。
弦と接線の足し算
点 P,QP,Q を通る直線は、曲線ともう1点 RR で交わります。RR を xx 軸で折り返した点を P+QP+Q と定めると、OO を0とする足し算になります。座標は λ2−x1−x2\lambda^2-x_1-x_2 のような式で計算できます。
有理数と有限体
係数が有理数なら、有理数の点どうしの和も有理数の点です。y2=x3+1y^2=x^3+1 の点 (2,3)(2,3) は6倍すると OO に戻ります。Fp\mathbb{F}_p の上の点は有限個で、y2=x3−xy^2=x^3-x では p≡3(mod4)p\equiv3\pmod 4 のときちょうど p+1p+1 個です。
因子との関係
点 PP に因子の類 [P−O][P-O] を対応させると、足し算が因子の類の足し算に移ります。結合法則はここから従います。複素数の点は、平面を格子で割ったトーラスと同じ群です。
  • 証明は、ステップの流れだけを短く書いています。「詳しく」の付いた行をクリックすると、そのステップの詳しい説明が開きます。説明の中にも開ける行があります。
  • 定義・命題・定理には、記事全体で通し番号を振っています。
  • もう少し詳しくは補足、専門的な話は先の回につながる話題です。どちらも開かずに読み進められます。
  • 各ブロックの「AIに質問」を押すと、その部分の内容を入れた質問文で、お使いのAIを開けます。

前回の宿題

第9回では、射影平面の3次曲線と直線が、交点重複度を数に入れてちょうど3点で交わることを確かめました。第10回では、曲線 y2=x3−xy^2=x^3-x の上で関数の零点と極を数え、次の因子を求めました。OO は無限遠点です。

div⁡(x)=2(0,0)−2Odiv⁡(y)=(0,0)+(1,0)+(−1,0)−3O\operatorname{div}(x)=2(0,0)-2O\qquad \operatorname{div}(y)=(0,0)+(1,0)+(-1,0)-3Odiv⁡(x)=2(0,0)−2Odiv⁡(y)=(0,0)+(1,0)+(−1,0)−3O\begin{gathered}\operatorname{div}(x)=2(0,0)-2O\\\operatorname{div}(y)=(0,0)+(1,0)+(-1,0)-3O\end{gathered}div⁡(x)=2(0,0)−2Odiv⁡(y)=(0,0)+(1,0)+(−1,0)−3O\begin{aligned}\operatorname{div}(x) &= 2(0,0)-2O\\[4pt]\operatorname{div}(y) &= (0,0)+(1,0)+(-1,0)-3O\end{aligned}div⁡(x)=2(0,0)−2Odiv⁡(y)=(0,0)+(1,0)+(−1,0)=−3O\begin{aligned}\operatorname{div}(x) &= 2(0,0)-2O\\[4pt]\operatorname{div}(y) &= (0,0)+(1,0)+(-1,0)\\&\phantom{=}{} -3O\end{aligned}div⁡(x)=2(0,0)−2Odiv⁡(y)=(0,0)+(1,0)=+(−1,0)−3O\begin{aligned}\operatorname{div}(x) &= 2(0,0)-2O\\[4pt]\operatorname{div}(y) &= (0,0)+(1,0)\\&\phantom{=}{} +(-1,0)-3O\end{aligned}

前回は、直線束のなす群であるピカール群を考え、Pic⁡(P1)≅Z\operatorname{Pic}(\mathbb{P}^1)\cong\mathbb{Z} を示しました(第11回の定理15)。非特異な曲線では、この群は、因子の群を主因子のなす部分群で割った群と同じものです。最後に、3次曲線の上では、因子の類を使って点どうしを足せると予告しました。

この記事では、まず直線だけを使って3次曲線の点の足し算を定義し、有理数や有限体 Fp\mathbb{F}_p の上で計算します。次に、因子の言葉に移すと結合法則が成り立つ理由が見えることを示します。最後に、複素数の点がトーラスになる様子を図で見ます。

とくに断らなければ、kk は標数が2でも3でもない代数閉体とします。有理数や Fp\mathbb{F}_p(p≥5p\geq5)の例では、その体の代数閉包の中で考え、座標がもとの体に入る点を数えます。ハーツホーン和訳の第 I 章は、零点集合 V(f)V(f) を Z(f)Z(f) と書いています。

ワイエルシュトラス形と判別式

3次曲線の中でも、yy が2乗でしか出てこない形を使います。斉次座標は [x:y:z][x:y:z] と書き、平面の座標を x/z, y/zx/z,\ y/z とします。第5回の記号では z=x0, x=x1, y=x2z=x_0,\ x=x_1,\ y=x_2 です。

この記事の無限遠点 O=[0:1:0]O=[0:1:0] は、第5回や第9回の座標 [x0:x1:x2][x_0:x_1:x_2] では [0:0:1][0:0:1] です。同じ yy の方向の無限遠点ですが、yy を2番目に書くか3番目に書くかで表し方が変わります。

定義1 ワイエルシュトラス形の3次曲線

a,b∈ka,b\in k とし、g(x)=x3+ax+bg(x)=x^3+ax+b、f=y2−g(x)f=y^2-g(x) とする。ff の斉次化

F(x,y,z)=y2z−x3−axz2−bz3F(x,y,z)=y^2z-x^3-axz^2-bz^3F(x,y,z)=y2z−x3−axz2−bz3\begin{aligned}F(x,y,z) &= y^2z-x^3-axz^2-bz^3\end{aligned}F(x,y,z)=y2z−x3−axz2=−bz3\begin{aligned}F(x,y,z) &= y^2z-x^3-axz^2\\&\phantom{=}{} -bz^3\end{aligned}

の零点集合 E=V+(F)⊆P2E=V_+(F)\subseteq\mathbb{P}^2 を、ワイエルシュトラス形の3次曲線と呼ぶ。EE が非特異のとき、EE を楕円曲線と呼ぶ。数 Δ=−16(4a3+27b2)\Delta=-16(4a^3+27b^2) を EE の判別式と呼ぶ。

EE は、平面の曲線 y2=g(x)y^2=g(x) の射影閉包です(第5回の定義7)。ff は既約です。yy について2次なので、可約なら y−h(x)y-h(x) の形の因子をもち、h2=gh^2=g となりますが、gg の次数3は奇数だからです。

命題2 無限遠点 OO

(1) EE の無限遠点(z=0z=0 の点)は O=[0:1:0]O=[0:1:0] だけである。
(2) OO は EE の非特異点で、OO での接線は無限遠直線 z=0z=0 である。
(3) z=0z=0 と EE は OO で重複度3で交わる。つまり OO は変曲点(接線との交点重複度が3以上の非特異点)である。

証明
  1. (1) F(x,y,0)=−x3F(x,y,0)=-x^3 なので、z=0z=0 の点では x=0x=0。残る座標は y≠0y\neq0 で、点は [0:1:0][0:1:0]。
  2. (2) Fz=y2−2axz−3bz2F_z=y^2-2axz-3bz^2 は OO で1なので、第6回の命題17から OO は非特異点である。

    y=1y=1 の地図で座標 u=x/y, v=z/yu=x/y,\ v=z/y を使うと、EE は次の式で、OO は原点 (u,v)=(0,0)(u,v)=(0,0) である。

    v=u3+auv2+bv3v=u^3+auv^2+bv^3v=u3+auv2+bv3\begin{aligned}v &= u^3+auv^2+bv^3\end{aligned}

    右辺は2次以上なので、原点での1次の部分は vv で、接線は v=0v=0、つまり z=0z=0 である(第6回の定義2)。

  3. (3) 同じ地図で v=0v=0 を代入すると u3=0u^3=0 となり、u=0u=0 が3重の根である。よって交点重複度は3である。

(3) は、局所環で書くと次の計算です。k[u,v](u,v)k[u,v]_{(u,v)} を vv と EE の式で割ると、u3u^3 で割った環が残ります。

IO(z, E)=dim⁡kk[u,v](u,v)=/(v, v−u3−auv2−bv3)=dim⁡kk[u](u)/(u3)=3\begin{aligned} I_O(z,\ E)&=\dim_k k[u,v]_{(u,v)}\\ &\phantom{{}={}}\big/\bigl(v,\ v-u^3-auv^2-bv^3\bigr)\\ &=\dim_k k[u]_{(u)}/(u^3)=3\end{aligned}

ベズーの定理(第5回の定理12)では、直線と3次曲線の交点は重複度こみで3個です。無限遠直線の3個は、すべて OO に重なっています。第9回でも、y2=x3−xy^2=x^3-x の OO で、無限遠直線との重複度が3、縦の直線との重複度が1であることを確かめました(第9回の例11(4))。

命題3 非特異の判定

EE が非特異であることと、g(x)=x3+ax+bg(x)=x^3+ax+b が重根をもたないことと、Δ≠0\Delta\neq0 は同値である。

証明
  1. 特異点があるとすれば、OO は非特異なので平面の部分にある。fx=−(3x2+a)f_x=-(3x^2+a)、fy=2yf_y=2y なので、特異点は y=0y=0 かつ g(x)=g′(x)=0g(x)=g'(x)=0 の点である。

    標数が2でないので、fy=0f_y=0 から y=0y=0 が出る。すると f=0f=0 は g(x)=0g(x)=0 になる。

    g(x)=g′(x)=0g(x)=g'(x)=0 となる xx は、gg の重根そのものである。よって前半の同値が従う。

  2. gg と g′g' に共通の根 cc があれば 4a3+27b2=04a^3+27b^2=0 である。

    標数が3でないので、g′(c)=0g'(c)=0 から c2=−a/3c^2=-a/3。これを使うと g(c)=c⋅c2+ac+b=2a3c+bg(c)=c\cdot c^2+ac+b=\tfrac{2a}3c+b となる。

    a=0a=0 なら g(c)=0g(c)=0 から b=0b=0。a≠0a\neq0 なら c=−3b2ac=-\tfrac{3b}{2a} で、c2=−a/3c^2=-a/3 に代入すると 9b24a2=−a3\tfrac{9b^2}{4a^2}=-\tfrac a3、つまり 27b2=−4a327b^2=-4a^3。

  3. 逆に 4a3+27b2=04a^3+27b^2=0 なら共通の根がある。a=0a=0 なら b=0b=0 で x=0x=0 が3重の根である。a≠0a\neq0 なら c=−3b2ac=-\tfrac{3b}{2a} が共通の根である。

    c2=9b24a2c^2=\tfrac{9b^2}{4a^2} で、27b2=−4a327b^2=-4a^3 から 9b2=−43a39b^2=-\tfrac43a^3 なので c2=−a3c^2=-\tfrac a3。よって g′(c)=3c2+a=0g'(c)=3c^2+a=0。

    さらに g(c)=2a3c+b=−b+b=0g(c)=\tfrac{2a}3c+b=-b+b=0。

gg の根を e1,e2,e3e_1,e_2,e_3 とすると、4a3+27b24a^3+27b^2 は根の差で書けます。Δ\Delta は根の差の積の2乗に16を掛けたものです。

Δ=16 (e1−e2)2(e1−e3)2(e2−e3)2\Delta=16\,(e_1-e_2)^2(e_1-e_3)^2(e_2-e_3)^2Δ=16 (e1−e2)2(e1−e3)2(e2−e3)2\begin{aligned}\Delta &= 16\,(e_1-e_2)^2(e_1-e_3)^2(e_2-e_3)^2\end{aligned}

例4 判別式の計算

標数0の体で計算する。

曲線(a,b)(a,b)Δ\Delta非特異か
y2=x3−xy^2=x^3-x(−1,0)(-1,0)6464非特異
y2=x3+1y^2=x^3+1(0,1)(0,1)−432-432非特異
y2=x3−2y^2=x^3-2(0,−2)(0,-2)−1728-1728非特異
y2=x3+17y^2=x^3+17(0,17)(0,17)−124848-124848非特異
y2=x3−13x+227y^2=x^3-\tfrac13x+\tfrac2{27}(−13,227)(-\tfrac13,\tfrac2{27})00結節点 (13,0)(\tfrac13,0)
y2=x3y^2=x^3(0,0)(0,0)00尖点 (0,0)(0,0)

5行目は、第6回の結節点 y2=x2(x+1)y^2=x^2(x+1) を x↦x−13x\mapsto x-\tfrac13 でずらしたものである。x3−13x+227=(x−13)2(x+23)x^3-\tfrac13x+\tfrac2{27}=(x-\tfrac13)^2(x+\tfrac23) で、重根 13\tfrac13 が結節点の xx 座標である。

y2=x2(x+1)y^2=x^2(x+1) の右辺には x2x^2 の項があります。xx を 13\tfrac13 ずらすと、(x−13)3+(x−13)2=x3−13x+227(x-\tfrac13)^3+(x-\tfrac13)^2=x^3-\tfrac13x+\tfrac2{27} となって消えます。第6回の結節点と尖点(第6回の例4)は、どちらも Δ=0\Delta=0 の曲線です。

実数の点を描くと、Δ\Delta の符号で形が分かれます。Δ>0\Delta>0 は gg が実数の根を3つもつときで、曲線は2つの部分に分かれます。Δ<0\Delta<0 では実数の根が1つで、曲線は1つにつながります。

y2=x3−xy^2=x^3-x
Δ=64>0\Delta=64>0
y2=x3+1y^2=x^3+1
Δ=−432<0\Delta=-432<0
y2=x3−13x+227y^2=x^3-\tfrac13x+\tfrac2{27}
Δ=0\Delta=0(結節点)
y2=x3y^2=x^3
Δ=0\Delta=0(尖点)
図1具体例y2=x3+ax+by^2=x^3+ax+b の実数の点。左上の y2=x3−xy^2=x^3-x(Δ>0\Delta>0)は、−1≤x≤0-1\leq x\leq0 の卵形と x≥1x\geq1 の枝の2つに分かれます。右上の y2=x3+1y^2=x^3+1(Δ<0\Delta<0)は1つにつながっています。下の2つは Δ=0\Delta=0 で、結節点と尖点(黒い点)があります。曲線の点が方程式をみたすことを、図を作るプログラムで確かめています。
もう少し詳しく標数2と3のとき

標数2では fy=2yf_y=2y がいつも0なので、g′(c)=0g'(c)=0 となる cc と、y2=g(c)y^2=g(c) の根 dd をとると、(c,d)(c,d) は特異点です。代数閉体ではこの c,dc,d がいつもあるので、y2=g(x)y^2=g(x) の形の曲線はどれも特異点をもちます。標数3では g′(x)=3x2+a=ag'(x)=3x^2+a=a となり、上の証明が使えません。

どちらの標数でも、y2+a1xy+a3y=x3+a2x2+a4x+a6y^2+a_1xy+a_3y=x^3+a_2x^2+a_4x+a_6 という一般のワイエルシュトラス形を使えば、同じ理論が作れます[1, §III.1]。標数が2でも3でもなければ、座標を取り替えてこの記事の形 y2=x3+ax+by^2=x^3+ax+b にできます。

弦と接線の足し算

ここからは EE を楕円曲線とします。足し算の材料は、直線が EE と3点で交わることだけです。

命題5 3点目

P2\mathbb{P}^2 の直線 LL は、EE と交点重複度こみでちょうど3点で交わる。とくに、EE の2点 P,QP,Q(P=QP=Q なら PP での接線)を通る直線は、EE ともう1点で交わる。この点を P∗QP\ast Q と書く。

証明
  1. LL が無限遠直線 z=0z=0 なら、命題2(3) から OO が3重である。
  2. LL が OO を通り z=0z=0 でないなら、LL は縦の直線 x=cx=c である。交点は (c,±g(c))(c,\pm\sqrt{g(c)}) の2点(g(c)=0g(c)=0 なら1点が2重)と OO の、合わせて3点である。

    O=[0:1:0]O=[0:1:0] を通る直線 αx+βy+γz=0\alpha x+\beta y+\gamma z=0 では β=0\beta=0 なので、α≠0\alpha\neq0 なら平面の部分は x=−γ/αx=-\gamma/\alpha である。

    平面の部分の交点は y2=g(c)y^2=g(c) の根である。OO での重複度は1で、地図 (u,v)(u,v) では u=cvu=cv を v=u3+auv2+bv3v=u^3+auv^2+bv^3 に代入すると v(1−c3v2−acv2−bv2)=0v(1-c^3v^2-acv^2-bv^2)=0 となり、v=0v=0 は単根だからである。

  3. LL が OO を通らないなら、LL は y=mx+qy=mx+q と書け、交点はすべて平面の部分にある。xx の3次式 g(x)−(mx+q)2g(x)-(mx+q)^2 の根が交点の xx 座標で、根の重複度が交点重複度である。

    g(x)−(mx+q)2=x3−m2x2+⋯g(x)-(mx+q)^2=x^3-m^2x^2+\cdots の最高次の係数は1なので、kk が代数閉体なら重複度こみで3個の根をもつ。

    根の重複度が交点重複度になることは、局所環で確かめられる。交点 P=(xP,yP)P=(x_P,y_P) で、h(x)=g(x)−(mx+q)2=(x−xP)eh1(x)h(x)=g(x)-(mx+q)^2=(x-x_P)^eh_1(x)(h1(xP)≠0h_1(x_P)\neq0)と書くと、y=mx+qy=mx+q を代入して

    IP(L,E)=dim⁡kOA2,P/(f, y−mx−q)=dim⁡kk[x](x−xP)/(h)=dim⁡kk[x](x−xP)/((x−xP)e)=e\begin{aligned} &I_P(L,E)\\ &=\dim_k\mathcal{O}_{\mathbb{A}^2,P}/(f,\ y-mx-q)\\ &=\dim_k k[x]_{(x-x_P)}/(h)\\ &=\dim_k k[x]_{(x-x_P)}/\bigl((x-x_P)^e\bigr)\\ &=e\end{aligned}

    h1h_1 は k[x](x−xP)k[x]_{(x-x_P)} の単元なので、3つ目の等号が成り立つ。第9回の命題6も参照。

縦の直線が必ず OO を通ることは、OO を足し算の0にするために欠かせません。平面の図では OO が見えないので、第5回の見方に戻って、P2\mathbb{P}^2 を k3k^3 の原点を通る直線の全体として描きます。

曲線 EE は、F=0F=0 で定まる k3k^3 の錐になり、直線は原点を通る平面になります。点 O=[0:1:0]O=[0:1:0] は yy 軸です。

ドラッグで回せます

紫の平面 y=0y=0 は、切り口 z=1z=1 では直線 y=0y=0 です。円錐とは原点を通る3本の直線(緑)で交わり、切り口ではそれが3点 (−1,0),(0,0),(1,0)(-1,0),(0,0),(1,0) になります。3本は x(x−z)(x+z)=0x(x-z)(x+z)=0 です。

縦の直線 x=−12x=-\tfrac12 は、平面 x=−12zx=-\tfrac12z です。この平面は yy 軸を含みます。円錐との交わりは、切り口の2点を通る2本の直線と、yy 軸(オレンジ)の3本です。yy 軸は切り口 z=1z=1 と交わらない直線で、これが無限遠点 O=[0:1:0]O=[0:1:0] です。

無限遠直線は平面 z=0z=0 です。円錐との交わりは x3=0x^3=0 で、yy 軸だけになります。重複度3で交わる OO での接線で、OO は変曲点です。

図2具体例y2z=x3−xz2y^2z=x^3-xz^2 の実数の点がなす錐(青)。灰色の平面 z=1z=1 との切り口(黒)が、図1左上の曲線 y2=x3−xy^2=x^3-x です。射影平面の直線は原点を通る平面(紫)で、錐とは原点を通る3本の直線で交わります。それが3つの交点です。「縦の直線」では、平面が yy 軸(オレンジ、点 OO)を含むことが、回すと分かります。真上から見ると、縦の直線と yy 軸が同じ向きに並び、OO が「縦の方向の無限遠点」であることが見えます。

定義6 足し算 [2, 例6.10.2, p.189–191]

EE の点 P,QP,Q に対して、P+Q=O∗(P∗Q)P+Q=O\ast(P\ast Q) と定める。

平面の点 R=(x,y)R=(x,y) と OO を通る直線は縦の直線なので、O∗R=(x,−y)O\ast R=(x,-y) です。また O∗O=OO\ast O=O です(接線 z=0z=0 が OO で3重に交わるため)。したがって P+QP+Q は、3点目 P∗QP\ast Q を xx 軸で折り返した点です。

命題7 足し算の公式

P=(x1,y1)P=(x_1,y_1)、Q=(x2,y2)Q=(x_2,y_2) を EE の平面の部分の点とする。

(1) x1≠x2x_1\neq x_2 のとき、λ=y2−y1x2−x1\lambda=\dfrac{y_2-y_1}{x_2-x_1} とおくと、P+Q=(x3,y3)P+Q=(x_3,y_3) で

x3=λ2−x1−x2y3=λ(x1−x3)−y1x_3=\lambda^2-x_1-x_2\qquad y_3=\lambda(x_1-x_3)-y_1x3=λ2−x1−x2y3=λ(x1−x3)−y1\begin{gathered}x_3=\lambda^2-x_1-x_2\\y_3=\lambda(x_1-x_3)-y_1\end{gathered}x3=λ2−x1−x2y3=λ(x1−x3)−y1\begin{aligned}x_3 &= \lambda^2-x_1-x_2\\[4pt]y_3 &= \lambda(x_1-x_3)-y_1\end{aligned}

(2) P=QP=Q、y1≠0y_1\neq0 のとき、λ=3x12+a2y1\lambda=\dfrac{3x_1^2+a}{2y_1} として、(1) と同じ式(x2=x1x_2=x_1)で 2P=P+P2P=P+P が求まる。
(3) x1=x2x_1=x_2、y1=−y2y_1=-y_2 のとき(P=QP=Q、y1=0y_1=0 の場合を含む)、P+Q=OP+Q=O。
(4) P+O=PP+O=P。−P=(x1,−y1)-P=(x_1,-y_1) とおくと P+(−P)=OP+(-P)=O。

証明
  1. (1) 直線 y=y1+λ(x−x1)y=y_1+\lambda(x-x_1) を代入した g(x)−(y1+λ(x−x1))2g(x)-(y_1+\lambda(x-x_1))^2 は x1,x2x_1,x_2 を根にもち、x2x^2 の係数が −λ2-\lambda^2 なので、根と係数の関係から3つ目の根は x3=λ2−x1−x2x_3=\lambda^2-x_1-x_2。

    最高次の係数は1なので、3つの根の和は x2x^2 の係数の符号を変えた λ2\lambda^2 である。

    3点目は P∗Q=(x3, y1+λ(x3−x1))P\ast Q=(x_3,\ y_1+\lambda(x_3-x_1)) で、xx 軸で折り返すと yy 座標は −y1−λ(x3−x1)=λ(x1−x3)−y1-y_1-\lambda(x_3-x_1)=\lambda(x_1-x_3)-y_1 になる。

  2. (2) PP での接線は fx(P)(x−x1)+fy(P)(y−y1)=0f_x(P)(x-x_1)+f_y(P)(y-y_1)=0(第6回の定義2)で、fx=−(3x2+a)f_x=-(3x^2+a)、fy=2yf_y=2y から傾きは λ\lambda。代入した3次式は x1x_1 を2重の根にもつので、3つ目の根は λ2−2x1\lambda^2-2x_1。

    h(x)=g(x)−(y1+λ(x−x1))2h(x)=g(x)-(y_1+\lambda(x-x_1))^2 とおくと h(x1)=g(x1)−y12=0h(x_1)=g(x_1)-y_1^2=0、h′(x1)=g′(x1)−2λy1=0h'(x_1)=g'(x_1)-2\lambda y_1=0 なので、x1x_1 は2重の根である。

  3. (3) P,QP,Q を通る直線は縦の直線で、3点目は OO。よって P+Q=O∗O=OP+Q=O\ast O=O。y1=0y_1=0 なら縦の直線 x=x1x=x_1 は PP で y2=0y^2=0 の2重に交わるので、接線である。
  4. (4) P∗OP\ast O は縦の直線の3点目で −P-P。よって P+O=O∗(−P)=PP+O=O\ast(-P)=P。P+(−P)=OP+(-P)=O は (3) である。
PP
QQ
RR
P+QP+Q
弦:y2=x3+17y^2=x^3+17
PP
RR
2P2P
接線:y2=x3+1y^2=x^3+1
図3具体例左は弦:y2=x3+17y^2=x^3+17 の P=(−2,3)P=(-2,3) と Q=(−1,4)Q=(-1,4) を通る直線 y=x+5y=x+5(紫)が、R=(4,9)R=(4,9) で曲線と交わります。RR を折り返した P+Q=(4,−9)P+Q=(4,-9) は、縦の破線(OO を通る直線)の3点目です。右は接線:y2=x3+1y^2=x^3+1 の P=(2,3)P=(2,3) での接線 y=2x−1y=2x-1 が R=(0,−1)R=(0,-1) で交わり、2P=(0,1)2P=(0,1) です。点が曲線に乗ることと3点が一直線に並ぶことを、分数の計算で確かめています。

定理8 楕円曲線の群 [2, 例6.10.2, p.189–191; 3, p.40–41; 1, §III.2]

(1) EE の点の全体は、++ で OO を単位元とするアーベル群になる。点 PP の逆元は −P-P である。
(2) K⊆kK\subseteq k を a,ba,b を含む部分体とする。座標が KK に入る平面の部分の点と OO をあわせた集合 E(K)E(K) は、部分群である。
(3) EE の3点 P,Q,RP,Q,R について、P+Q+R=OP+Q+R=O は、3点が1本の直線の上にあること(重複は交点重複度で数える)と同値である。

可換性は P∗Q=Q∗PP\ast Q=Q\ast P から、単位元と逆元は命題7(4) から分かります。(2) は、公式の λ,x3,y3\lambda,x_3,y_3 が KK の中の四則演算で計算できることから従います。

(3) の P+Q+RP+Q+R は、今の段階では (P+Q)+R(P+Q)+R と読みます。P+Q=O∗(P∗Q)=−(P∗Q)P+Q=O\ast(P\ast Q)=-(P\ast Q) なので、(P+Q)+R=O(P+Q)+R=O は R=P∗QR=P\ast Q と同値で、これが (3) です(X+R=OX+R=O から R=−XR=-X が出ることは、後の命題20の証明で確かめます)。

残る結合法則 (P+Q)+R=P+(Q+R)(P+Q)+R=P+(Q+R) は、直線の図だけでは見えません。後の節で、因子を使って示します。

有理数の点で計算する

この節では kk を Q\mathbb{Q} の代数閉包とし、E(Q)E(\mathbb{Q}) の点を計算します。定理8(2) により、有理数の点どうしの和は有理数の点です。

例9 y2=x3+17y^2=x^3+17 の和

P=(−2,3)P=(-2,3)、Q=(−1,4)Q=(-1,4)、S=(2,5)S=(2,5) は E ⁣:y2=x3+17E\colon y^2=x^3+17 の点である(9=−8+179=-8+17、16=−1+1716=-1+17、25=8+1725=8+17)。

P+Q: λ=4−3−1+2=1,x3=1+2+1=4,y3=1⋅(−2−4)−3=−9Q+S: λ=5−42+1=13,x3=19+1−2=−89,y3=13(−1+89)−4=−109272P: λ=3⋅42⋅3=2,x3=4+4=8,y3=2⋅(−2−8)−3=−23\begin{aligned} &P+Q:\ \lambda=\tfrac{4-3}{-1+2}=1,{}\\ &\quad x_3=1+2+1=4,{}\\ &\quad y_3=1\cdot(-2-4)-3=-9\\[4pt] &Q+S:\ \lambda=\tfrac{5-4}{2+1}=\tfrac13,{}\\ &\quad x_3=\tfrac19+1-2=-\tfrac89,{}\\ &\quad y_3=\tfrac13\bigl(-1+\tfrac89\bigr)-4=-\tfrac{109}{27}\\[4pt] &2P:\ \lambda=\tfrac{3\cdot4}{2\cdot3}=2,{}\\ &\quad x_3=4+4=8,{}\\ &\quad y_3=2\cdot(-2-8)-3=-23\end{aligned}

よって P+Q=(4,−9)P+Q=(4,-9)、Q+S=(−89,−10927)Q+S=(-\tfrac89,-\tfrac{109}{27})、2P=(8,−23)2P=(8,-23) である。

検算すると、43+17=81=924^3+17=81=9^2、83+17=529=2328^3+17=529=23^2 です。Q+SQ+S も、(−89)3+17=11881729=(10927)2(-\tfrac89)^3+17=\tfrac{11881}{729}=(\tfrac{109}{27})^2 で曲線に乗っています。整数の点どうしを足しても、整数の点になるとは限りません。

例10 y2=x3−2y^2=x^3-2 の2倍と3倍

P=(3,5)P=(3,5) は y2=x3−2y^2=x^3-2 の点である(25=27−225=27-2)。接線の傾きは λ=2710\lambda=\tfrac{27}{10} で、

x3=729100−6=129100y3=2710(3−129100)−5=46171000−5=−3831000x_3=\frac{729}{100}-6=\frac{129}{100}\qquad y_3=\frac{27}{10}\Bigl(3-\frac{129}{100}\Bigr)-5=\frac{4617}{1000}-5=-\frac{383}{1000}x3=729100−6=129100y3=2710(3−129100)−5=46171000−5=−3831000\begin{gathered}x_3=\frac{729}{100}-6=\frac{129}{100}\\y_3=\frac{27}{10}\Bigl(3-\frac{129}{100}\Bigr)-5=\frac{4617}{1000}-5=-\frac{383}{1000}\end{gathered}x3=729100−6=129100y3=2710(3−129100)−5=46171000−5=−3831000\begin{aligned}x_3 &= \frac{729}{100}-6\\&= \frac{129}{100}\\[4pt]y_3 &= \frac{27}{10}\Bigl(3-\frac{129}{100}\Bigr)-5\\&= \frac{4617}{1000}-5\\&= -\frac{383}{1000}\end{aligned}x3=729100−6=129100y3=2710(3−129100)=−5=46171000−5=−3831000\begin{aligned}x_3 &= \frac{729}{100}-6\\&= \frac{129}{100}\\[4pt]y_3 &= \frac{27}{10}\Bigl(3-\frac{129}{100}\Bigr)\\&\phantom{=}{} -5\\&= \frac{4617}{1000}-5\\&= -\frac{383}{1000}\end{aligned}

よって 2P=(129100,−3831000)2P=(\tfrac{129}{100},-\tfrac{383}{1000})。さらに 3P=P+2P=(16432329241,−662348355000211)3P=P+2P=(\tfrac{164323}{29241},-\tfrac{66234835}{5000211})(29241=171229241=171^2)である。

nP=OnP=O となる最小の n≥1n\geq1 を PP の位数と呼び、そのような nn がなければ位数は無限と言います。nn を増やすと、nPnP の分母はどんどん大きくなります。

PP の位数が無限であることは、ナゲル・ルッツの定理から分かります[1, §VIII.7]。a,ba,b が整数なら、位数が有限の点(OO 以外)は整数の座標をもつという定理です。PP の位数が有限なら 2P2P も位数が有限ですが、2P2P は整数の座標をもたないので、PP の位数は無限です。

次は、何倍かすると OO に戻る点の例です。

例11 y2=x3+1y^2=x^3+1 の位数6の点

P=(2,3)P=(2,3) は y2=x3+1y^2=x^3+1 の点である。公式で順に計算すると、次のようになる。

2P=(0,1)(λ=126=2)3P=P+2P=(−1,0)(λ=1−30−2=1)4P=−2P=(0,−1)5P=−P=(2,−3)6P=O\begin{aligned} 2P&=(0,1)\\ &\quad(\lambda=\tfrac{12}{6}=2)\\ 3P&=P+2P=(-1,0)\\ &\quad(\lambda=\tfrac{1-3}{0-2}=1)\\ 4P&=-2P=(0,-1)\\ 5P&=-P=(2,-3)\\ 6P&=O\end{aligned}

よって PP の位数は6で、{O, (2,±3), (0,±1), (−1,0)}\{O,\ (2,\pm3),\ (0,\pm1),\ (-1,0)\} は位数6の巡回群である。

3P=(−1,0)3P=(-1,0) は y=0y=0 の点なので、命題7(3) から 2⋅3P=O2\cdot3P=O です。4P=−2P4P=-2P と 5P=−P5P=-P は、6P=O6P=O から従います。

2P=(0,1)2P=(0,1) は位数3の点です。この点での接線は水平な直線 y=1y=1 で、代入すると x3=0x^3=0 となり、3重に交わります。

一般に、OO 以外の点 QQ について、位数が3であることと、QQ が変曲点であることは同値です。定理8(3) で P=Q=RP=Q=R とすると、3Q=O3Q=O は「QQ での接線が QQ で3重に交わる」ことだからです。ハーツホーンの第II章 演習6.6(c) は、y2=x3−xy^2=x^3-x についてこれを示す問題です[2, 第II章 演習6.6, p.201]。

例12 y2=x3−xy^2=x^3-x の位数2の点

y2=x3−x=x(x−1)(x+1)y^2=x^3-x=x(x-1)(x+1) の点 (0,0)(0,0)、(1,0)(1,0)、(−1,0)(-1,0) は、命題7(3) からどれも位数2である。3点は直線 y=0y=0 の上にあるので、定理8(3) から

(0,0)+(1,0)+(−1,0)=O(0,0)+(1,0)=(−1,0)(0,0)+(1,0)+(-1,0)=O\qquad (0,0)+(1,0)=(-1,0)(0,0)+(1,0)+(−1,0)=O(0,0)+(1,0)=(−1,0)\begin{gathered}(0,0)+(1,0)+(-1,0)=O\\(0,0)+(1,0)=(-1,0)\end{gathered}(0,0)+(1,0)+(−1,0)=O(0,0)+(1,0)=(−1,0)\begin{aligned}(0,0)+(1,0)+(-1,0) &= O\\[4pt](0,0)+(1,0) &= (-1,0)\end{aligned}

よって {O,(0,0),(1,0),(−1,0)}\{O,(0,0),(1,0),(-1,0)\} は Z/2×Z/2\mathbb{Z}/2\times\mathbb{Z}/2 と同型な部分群である。

第10回の div⁡(y)=(0,0)+(1,0)+(−1,0)−3O\operatorname{div}(y)=(0,0)+(1,0)+(-1,0)-3O は、同じ3点を直線 y=0y=0 の関数 yy で見たものです。後の節では、この対応を使って結合法則を示します。

有限体の上の点

係数を pp で割った余りに置き換えると、Fp\mathbb{F}_p の上の曲線が得られます。点は有限個なので、全部数えられます。第2回では x2+1x^2+1 の Fp\mathbb{F}_p での根を数え(第2回の例18)、第5回では P2(Fp)\mathbb{P}^2(\mathbb{F}_p) の点が p2+p+1p^2+p+1 個あることを見ました(第5回の例3)。

y2=x3−xy^2=x^3-x の判別式は 64=2664=2^6 なので、奇数の素数 pp で割っても0になりません。よって p≥5p\geq5 なら、Fp\mathbb{F}_p の上でも楕円曲線です。

例13 y2=x3−xy^2=x^3-x の Fp\mathbb{F}_p の点

x∈Fpx\in\mathbb{F}_p を1つずつ調べ、x3−xx^3-x が平方数なら yy を数える。OO を含めた個数 #E(Fp)\#E(\mathbb{F}_p) と群の形は次のとおり。

ppp mod 4p\bmod4#E(Fp)\#E(\mathbb{F}_p)#E−(p+1)\#E-(p+1)2p2\sqrt p群
551188224.474.47Z/2×Z/4\mathbb{Z}/2\times\mathbb{Z}/4
773388005.295.29Z/2×Z/4\mathbb{Z}/2\times\mathbb{Z}/4
1111331212006.636.63Z/2×Z/6\mathbb{Z}/2\times\mathbb{Z}/6
13131188−6-67.217.21Z/2×Z/4\mathbb{Z}/2\times\mathbb{Z}/4

例えば p=5p=5 の点は、OO、(0,0)(0,0)、(1,0)(1,0)、(4,0)(4,0)、(2,±1)(2,\pm1)、(3,±2)(3,\pm2) の8個である(23−2=6≡1=122^3-2=6\equiv1=1^2、33−3=24≡4=223^3-3=24\equiv4=2^2)。

個数はどれも p+1p+1 に近く、差は 2p2\sqrt p を超えていません。これは一般に成り立つ定理です。

定理14 ハッセ [3, 演習4.16, p.65–66; 1, §V.1]

Fp\mathbb{F}_p の上の楕円曲線 EE について、∣#E(Fp)−(p+1)∣≤2p\bigl|\#E(\mathbb{F}_p)-(p+1)\bigr|\leq2\sqrt p。

表の p=7,11p=7,11 では、個数がちょうど p+1p+1 です。p≡3(mod4)p\equiv3\pmod4 なら、いつもそうなります。

命題15 [3, 例4.23.5, p.59–60; 3, 演習4.16(e), p.66]

p≡3(mod4)p\equiv3\pmod4 なら、y2=x3−xy^2=x^3-x について #E(Fp)=p+1\#E(\mathbb{F}_p)=p+1。

証明
  1. c∈Fpc\in\mathbb{F}_p について、y2=cy^2=c の解の個数は、c=0c=0 なら1、cc が0でない平方数なら2、平方数でなければ0である。これを 1+χ(c)1+\chi(c)(χ(c)=0,1,−1\chi(c)=0,1,-1)と書く。
  2. 平面の部分の点の個数は ∑x(1+χ(x3−x))=p+∑xχ(x3−x)\sum_x(1+\chi(x^3-x))=p+\sum_x\chi(x^3-x) である。
  3. p≡3(mod4)p\equiv3\pmod4 なら −1-1 は平方数でないので、χ(−c)=−χ(c)\chi(-c)=-\chi(c)。

    Fp×\mathbb{F}_p^\times は位数 p−1p-1 の巡回群で、−1-1 は位数2の元である。−1=w2-1=w^2 なら ww の位数は4で、4∣p−14\mid p-1 となり、p≡3(mod4)p\equiv3\pmod4 に反する。

    平方数の全体は Fp×\mathbb{F}_p^\times の指数2の部分群なので、平方数でない数の積は平方数、平方数と平方数でない数の積は平方数でない。よって χ(−c)=χ(−1)χ(c)=−χ(c)\chi(-c)=\chi(-1)\chi(c)=-\chi(c)。

  4. (−x)3−(−x)=−(x3−x)(-x)^3-(-x)=-(x^3-x) なので、xx と −x-x の項が打ち消し合い、∑xχ(x3−x)=0\sum_x\chi(x^3-x)=0。平面の部分は pp 点で、OO を足して p+1p+1 点である。

図4で、p=11p=11 では、x=±2,±3,±4,±5x=\pm2,\pm3,\pm4,\pm5 の列の対のうち、ちょうど片方にだけ点があります。p=13p=13 では −1=52-1=5^2 が平方数なので、xx と −x-x の列は、両方に点があるか、両方にないかのどちらかです。

−5-5
00
55
55
−5-5
F11\mathbb{F}_{11}:OO と 11 点
−6-6
00
66
66
−6-6
F13\mathbb{F}_{13}:OO と 7 点
図4具体例y2=x3−xy^2=x^3-x の F11\mathbb{F}_{11} と F13\mathbb{F}_{13} の上の点。座標は −p/2-p/2 から p/2p/2 の代表で書き、灰色の格子点が Fp2\mathbb{F}_p^2 の全体です。オレンジは y=0y=0 の位数2の点、青はそれ以外の点です。どの点も、yy を −y-y にした点と対になっています。点が方程式をみたすことと、列の対についての上の性質を、図を作るプログラムで確かめています。

例16 E(F5)E(\mathbb{F}_5) は Z/8\mathbb{Z}/8 ではない

E(F5)E(\mathbb{F}_5) は位数8のアーベル群なので、Z/8\mathbb{Z}/8、Z/2×Z/4\mathbb{Z}/2\times\mathbb{Z}/4、(Z/2)3(\mathbb{Z}/2)^3 のどれかである。位数2の点が (0,0),(1,0),(4,0)(0,0),(1,0),(4,0) の3個あるので Z/8\mathbb{Z}/8 ではない(Z/8\mathbb{Z}/8 の位数2の元は1個)。

一方、P=(2,1)P=(2,1) では λ=3⋅4−12=112=3\lambda=\tfrac{3\cdot4-1}{2}=\tfrac{11}2=3(F5\mathbb{F}_5 で 11=111=1、2−1=32^{-1}=3)で、2P=(9−4, 3(2−0)−1)=(0,0)2P=(9-4,\ 3(2-0)-1)=(0,0) となる。よって PP の位数は4で、(Z/2)3(\mathbb{Z}/2)^3 でもない。したがって E(F5)≅Z/2×Z/4E(\mathbb{F}_5)\cong\mathbb{Z}/2\times\mathbb{Z}/4。

y2=x3−xy^2=x^3-x の3つの位数2の点は、どの pp でも Fp\mathbb{F}_p の点です。そのため E(Fp)E(\mathbb{F}_p) は必ず Z/2×Z/2\mathbb{Z}/2\times\mathbb{Z}/2 を含み、巡回群にはならず、個数は4の倍数です。表の4つの群は、どれも位数 #E/2\#E/2 の点をもつことを計算機で確かめて決めました。

因子で見る:結合法則が成り立つ理由

この節では、kk は標数が2でも3でもない代数閉体とし、第10回・第11回の言葉を使います。必要なことを短く言い直しておきます。

非特異な曲線の点 PP での局所環は離散付値環で、0でない有理関数 hh の PP での位数 ord⁡P(h)∈Z\operatorname{ord}_P(h)\in\mathbb{Z} が決まります(零点なら正、極なら負)。点の形式的な整数係数の和が因子で、div⁡(h)=∑Pord⁡P(h) P\operatorname{div}(h)=\sum_P\operatorname{ord}_P(h)\,P の形の因子が主因子です。

定義17 次数0のピカール群 [2, 系6.10, p.188; 2, 例6.10.2, p.189; 2, 系6.16, p.198]

EE の因子 D=∑nPPD=\sum n_PP で次数 deg⁡D=∑nP\deg D=\sum n_P が0のものの全体を Div⁡0(E)\operatorname{Div}^0(E) と書く。主因子は次数0である。商

Pic⁡0(E)=Div⁡0(E)/{div⁡(h)∣h∈k(E)×}\begin{aligned} &\operatorname{Pic}^0(E)=\operatorname{Div}^0(E)\\ &\qquad\big/\{\operatorname{div}(h)\mid h\in k(E)^\times\} \end{aligned}

を EE の次数0のピカール群と呼ぶ。DD の類を [D][D] と書く。

ハーツホーンはこの群を Cl⁡0E\operatorname{Cl}^0E と書いています。非特異な曲線では因子類群 Cl⁡\operatorname{Cl} とピカール群 Pic⁡\operatorname{Pic} が同型なので、ここでは前回に合わせて Pic⁡0\operatorname{Pic}^0 と書きます。

補題18 直線の因子

L=αx+βy+γzL=\alpha x+\beta y+\gamma z を0でない1次式とし、LL と EE の交点を重複度こみで P1,P2,P3P_1,P_2,P_3 とする。このとき

div⁡(Lz)=P1+P2+P3−3O\operatorname{div}\Bigl(\frac Lz\Bigr)=P_1+P_2+P_3-3Odiv⁡(Lz)=P1+P2+P3−3O\begin{aligned}\operatorname{div}\Bigl(\frac Lz\Bigr) &= P_1+P_2+P_3-3O\end{aligned}
証明
  1. 平面の点 PP では、L/zL/z は1次式 l=αx+βy+γl=\alpha x+\beta y+\gamma で、ord⁡P(l)\operatorname{ord}_P(l) は交点重複度 IP(L,E)I_P(L,E) に等しい。

    OA2,P/(f)\mathcal{O}_{\mathbb{A}^2,P}/(f) は EE の PP での局所環 OE,P\mathcal{O}_{E,P} で、離散付値環である。よって

    IP(L,E)=dim⁡kOA2,P/(f, l)=dim⁡kOE,P/(l)=ord⁡P(l)I_P(L,E)=\dim_k\mathcal{O}_{\mathbb{A}^2,P}/(f,\ l)=\dim_k\mathcal{O}_{E,P}/(l)=\operatorname{ord}_P(l)IP(L,E)=dim⁡kOA2,P/(f, l)=dim⁡kOE,P/(l)=ord⁡P(l)\begin{aligned}I_P(L,E) &= \dim_k\mathcal{O}_{\mathbb{A}^2,P}/(f,\ l)\\&= \dim_k\mathcal{O}_{E,P}/(l)\\&= \operatorname{ord}_P(l)\end{aligned}

    最後の等号は、l=tnul=t^nu(tt は極大イデアルの生成元、uu は単元)と書くと OE,P/(l)=OE,P/(tn)\mathcal{O}_{E,P}/(l)=\mathcal{O}_{E,P}/(t^n) の次元が nn になることによる。

  2. OO では、地図 (u,v)=(x/y, z/y)(u,v)=(x/y,\ z/y) で L/z=(L/y)/vL/z=(L/y)/v と書け、同じ理由で ord⁡O(L/y)=IO(L,E)\operatorname{ord}_O(L/y)=I_O(L,E)、ord⁡O(v)=IO(z,E)=3\operatorname{ord}_O(v)=I_O(z,E)=3。よって ord⁡O(L/z)=IO(L,E)−3\operatorname{ord}_O(L/z)=I_O(L,E)-3。
  3. 2つを合わせると、div⁡(L/z)\operatorname{div}(L/z) は交点の和から 3O3O を引いたものである。

第10回の2つの因子は、この補題の例です。直線 x=0x=0 は y2=x3−xy^2=x^3-x と (0,0)(0,0) で接し(y2=0y^2=0)、OO を通ります。直線 y=0y=0 は3つの位数2の点を通ります。

div⁡(xz)=2(0,0)+O−3O=2(0,0)−2Odiv⁡(yz)=(0,0)+(1,0)+(−1,0)−3O\operatorname{div}\Bigl(\frac xz\Bigr)=2(0,0)+O-3O=2(0,0)-2O\qquad \operatorname{div}\Bigl(\frac yz\Bigr)=(0,0)+(1,0)+(-1,0)-3Odiv⁡(xz)=2(0,0)+O−3O=2(0,0)−2Odiv⁡(yz)=(0,0)+(1,0)+(−1,0)−3O\begin{gathered}\operatorname{div}\Bigl(\frac xz\Bigr)=2(0,0)+O-3O=2(0,0)-2O\\\operatorname{div}\Bigl(\frac yz\Bigr)=(0,0)+(1,0)+(-1,0)-3O\end{gathered}div⁡(xz)=2(0,0)+O−3O=2(0,0)−2Odiv⁡(yz)=(0,0)+(1,0)+(−1,0)−3O\begin{aligned}\operatorname{div}\Bigl(\frac xz\Bigr) &= 2(0,0)+O-3O\\&= 2(0,0)-2O\\[4pt]\operatorname{div}\Bigl(\frac yz\Bigr) &= (0,0)+(1,0)+(-1,0)-3O\end{aligned}div⁡(xz)=2(0,0)+O−3O=2(0,0)−2Odiv⁡(yz)=(0,0)+(1,0)+(−1,0)=−3O\begin{aligned}\operatorname{div}\Bigl(\frac xz\Bigr) &= 2(0,0)+O-3O\\&= 2(0,0)-2O\\[4pt]\operatorname{div}\Bigl(\frac yz\Bigr) &= (0,0)+(1,0)+(-1,0)\\&\phantom{=}{} -3O\end{aligned}div⁡(xz)=2(0,0)+O−3O=2(0,0)−2Odiv⁡(yz)=(0,0)+(1,0)=+(−1,0)−3O\begin{aligned}\operatorname{div}\Bigl(\frac xz\Bigr) &= 2(0,0)+O-3O\\&= 2(0,0)-2O\\[4pt]\operatorname{div}\Bigl(\frac yz\Bigr) &= (0,0)+(1,0)\\&\phantom{=}{} +(-1,0)-3O\end{aligned}

補題19 OO にだけ極をもつ関数 [2, 定理3.2(a), p.22–23]

EE の平面の部分の上で正則な関数は、A(x)+B(x) yA(x)+B(x)\,y(A,B∈k[x]A,B\in k[x])の形にただ1通りに書ける。その OO での位数は

ord⁡O(A(x)+B(x) y)=−max⁡(2deg⁡A, 2deg⁡B+3)\begin{aligned} &\operatorname{ord}_O\bigl(A(x)+B(x)\,y\bigr)\\ &=-\max\bigl(2\deg A,\ 2\deg B+3\bigr) \end{aligned}

である(0の多項式の次数は −∞-\infty とする)。とくに、OO で1位の極をもち、ほかで正則な関数はない。

証明
  1. 平面の部分 V(f)V(f) はアフィン多様体で、その上の正則関数の環は座標環 k[x,y]/(y2−g)k[x,y]/(y^2-g) である。y2=g(x)y^2=g(x) で yy の2次以上を消せるので、1,y1,y が k[x]k[x] 上の基底になる。
  2. ord⁡O(x)=−2\operatorname{ord}_O(x)=-2、ord⁡O(y)=−3\operatorname{ord}_O(y)=-3(ここで x,yx,y は x/z, y/zx/z,\ y/z のこと)。

    地図 (u,v)(u,v) で x/z=u/vx/z=u/v、y/z=1/vy/z=1/v である。補題18の証明と同じく ord⁡O(v)=3\operatorname{ord}_O(v)=3。

    ord⁡O(u)=IO(x,E)\operatorname{ord}_O(u)=I_O(x,E) は、u=0u=0 を代入した v=bv3v=bv^3 の v=0v=0 での重複度で、1である。よって ord⁡O(u/v)=1−3=−2\operatorname{ord}_O(u/v)=1-3=-2、ord⁡O(1/v)=−3\operatorname{ord}_O(1/v)=-3。

  3. A(x)A(x) の位数は −2deg⁡A-2\deg A(偶数)、B(x)yB(x)y の位数は −2deg⁡B−3-2\deg B-3(奇数)で、異なる。位数が異なる2つの和の位数は小さい方なので、主張の式が従う。最大値が1になることはない。

この2つの補題から、足し算と因子の類の関係が出ます。

命題20

写像 φ ⁣:E→Pic⁡0(E)\varphi\colon E\to\operatorname{Pic}^0(E) を φ(P)=[P−O]\varphi(P)=[P-O] で定める。

(1) すべての P,QP,Q について φ(P+Q)=φ(P)+φ(Q)\varphi(P+Q)=\varphi(P)+\varphi(Q)。
(2) φ\varphi は単射である。

証明
  1. (1) R=P∗QR=P\ast Q、S=P+Q=O∗RS=P+Q=O\ast R とし、直線 PQPQ の式を L1L_1、直線 OROR の式を L2L_2 とする。補題18から div⁡(L1/z)=P+Q+R−3O\operatorname{div}(L_1/z)=P+Q+R-3O、div⁡(L2/z)=O+R+S−3O\operatorname{div}(L_2/z)=O+R+S-3O。
  2. 差をとると div⁡(L1/L2)=(P−O)+(Q−O)−(S−O)\operatorname{div}(L_1/L_2)=(P-O)+(Q-O)-(S-O)。よって [P−O]+[Q−O]=[S−O][P-O]+[Q-O]=[S-O]。
  3. (2) まず φ(P)=0\varphi(P)=0 なら P=OP=O を示す。P≠OP\neq O で P−O=div⁡(h)P-O=\operatorname{div}(h) なら、hh は平面の部分で正則で、OO で1位の極をもつ。これは補題19に反する。
  4. φ(P)=φ(Q)\varphi(P)=\varphi(Q) なら、(1) から φ(P+(−Q))=φ(P)−φ(Q)=0\varphi(P+(-Q))=\varphi(P)-\varphi(Q)=0 なので、P+(−Q)=OP+(-Q)=O。ここから結合法則を使わずに P=QP=Q が出る。

    φ(O)=[O−O]=0\varphi(O)=[O-O]=0 と (1) から φ(−Q)=−φ(Q)\varphi(-Q)=-\varphi(Q) である。

    P+(−Q)=O∗(P∗(−Q))=OP+(-Q)=O\ast(P\ast(-Q))=O なので P∗(−Q)=O∗O=OP\ast(-Q)=O\ast O=O。平面の点 XX では O∗X=−X≠OO\ast X=-X\neq O なので、O∗X=OO\ast X=O となるのは X=OX=O のときだけである。よって PP か QQ が OO なら P=Q=OP=Q=O。

    どちらも平面の点なら、PP と −Q-Q を通る直線が OO を通り、縦の直線になる。その直線と EE の交点は −Q, Q, O-Q,\ Q,\ O なので P∈{Q,−Q}P\in\{Q,-Q\}。P=−QP=-Q なら、この縦の直線 x=cx=c は −Q-Q での接線である。縦の直線が接するのは y2=g(c)y^2=g(c) が重根をもつとき、つまり yy 座標が0の点だけなので、−Q=Q-Q=Q。

定理21 結合法則

EE のすべての点 P,Q,RP,Q,R について (P+Q)+R=P+(Q+R)(P+Q)+R=P+(Q+R)。よって EE はアーベル群である。

証明
  1. 命題20(1) を2回使うと、どちらの辺も φ\varphi で φ(P)+φ(Q)+φ(R)\varphi(P)+\varphi(Q)+\varphi(R) に移る。Pic⁡0(E)\operatorname{Pic}^0(E) は群なので、こちらでは足す順序によらない。
  2. φ\varphi は単射なので、2つの辺は等しい。

図で見えにくかった結合法則が、関数の比 L1/L2L_1/L_2 の因子という一行の計算に置き換わりました。直線で定義した足し算は、因子の類の足し算を点の言葉で書いたものだったわけです。

定理8(2) の E(Q)E(\mathbb{Q}) や E(Fp)E(\mathbb{F}_p) では、代数閉包の上の EE の部分群なので、結合法則もそのまま成り立ちます。

定理22 [2, 例6.10.2, p.189–191; 3, 例1.3.7, p.6–7; 3, p.40–41]

φ ⁣:E→Pic⁡0(E)\varphi\colon E\to\operatorname{Pic}^0(E) は全単射で、群の同型である。

残る全射は、次数0の因子 D=∑ni(Pi−O)D=\sum n_i(P_i-O) を、直線の因子を足し引きして1つの P−OP-O にまとめる議論で示せます。ハーツホーンは y2=x3−xy^2=x^3-x についてこの議論を書き(例6.10.2)、一般の楕円曲線にはリーマン・ロッホの定理を使っています(第3巻の例1.3.7)。この記事ではこの部分を証明しません。

単射の証明では、OO で1位の極をもつ関数がないことが効きました。P1\mathbb{P}^1 では関数 tt がそのような関数で、どの2点も線形同値です。

ハーツホーンは例6.10.1で、異なる2点が線形同値になる曲線は P1\mathbb{P}^1 と双有理であることを示しています。第I章の演習6.2では、y2=x3−xy^2=x^3-x が P1\mathbb{P}^1 と双有理でないことを確かめさせています。例6.10.2の単射の証明は、この2つを組み合わせたものです[2, 例6.10.1, p.189; 2, 第I章 演習6.2, p.63]。

複素数の点はトーラス

k=Ck=\mathbb{C} のとき、EE の点の全体は複素数で書けます。C\mathbb{C} の中の格子とは、R\mathbb{R} 上1次独立な ω1,ω2\omega_1,\omega_2 で生成される Λ=Zω1+Zω2\Lambda=\mathbb{Z}\omega_1+\mathbb{Z}\omega_2 のことです。

定理23 [3, 定理4.12B, p.49; 3, 定理4.13B・4.14B, p.50; 3, 定理4.16, p.51]

E ⁣:y2=x3+ax+bE\colon y^2=x^3+ax+b(Δ≠0\Delta\neq0)を C\mathbb{C} 上の楕円曲線とする。ある格子 Λ\Lambda とそのワイエルシュトラスの ℘\wp 関数について、

C/Λ⟶Ez⟼(℘(z), 12℘′(z)) (z∉Λ)0⟼O\mathbb{C}/\Lambda\longrightarrow E\qquad z\longmapsto\Bigl(\wp(z),\ \tfrac12\wp'(z)\Bigr)\ (z\notin\Lambda)\qquad 0\longmapsto OC/Λ⟶Ez⟼(℘(z), 12℘′(z)) (z∉Λ)0⟼O\begin{gathered}\mathbb{C}/\Lambda\longrightarrow E\\z\longmapsto\Bigl(\wp(z),\ \tfrac12\wp'(z)\Bigr)\ (z\notin\Lambda)\\0\longmapsto O\end{gathered}C/Λ⟶Ez⟼(℘(z), 12℘′(z)) (z∉Λ)0⟼O\begin{aligned}\mathbb{C}/\Lambda &\longrightarrow E\\[4pt]&z\longmapsto\Bigl(\wp(z),\ \tfrac12\wp'(z)\Bigr)\ (z\notin\Lambda)\\[4pt]&0\longmapsto O\end{aligned}

は全単射で、群の同型である。とくに、nP=OnP=O となる点 PP の全体は Z/n×Z/n\mathbb{Z}/n\times\mathbb{Z}/n と同型である。

ハーツホーンの式は y2=4x3−g2x−g3y^2=4x^3-g_2x-g_3 です。yy を 2y2y に置き換え、g2=−4a, g3=−4bg_2=-4a,\ g_3=-4b とすると、この記事の形になります。

C/Λ\mathbb{C}/\Lambda は、0,ω1,ω2,ω1+ω20,\omega_1,\omega_2,\omega_1+\omega_2 を頂点とする平行四辺形の向かい合う辺を貼り合わせたものです。横の辺どうしを貼ると筒になり、筒の両端を貼るとトーラス(穴が1つの浮き輪の面)になります。

例24 y2=x3−xy^2=x^3-x の格子

(x,y)↦(−x, iy)(x,y)\mapsto(-x,\ iy) は E ⁣:y2=x3−xE\colon y^2=x^3-x を自分自身に移す((iy)2=−y2=(−x)3−(−x)(iy)^2=-y^2=(-x)^3-(-x))。これは C/Λ\mathbb{C}/\Lambda では ii 倍に当たり、Λ\Lambda は正方形の格子 Λ=ω Z[i]\Lambda=\omega\,\mathbb{Z}[i] である。実の半周期は

ω2=∫1∞dx2x3−x=∫0π/2dθ1+sin⁡2θ=1.31102877…\frac\omega2=\int_1^\infty\frac{dx}{2\sqrt{x^3-x}}=\int_0^{\pi/2}\frac{d\theta}{\sqrt{1+\sin^2\theta}}=1.31102877\ldotsω2=∫1∞dx2x3−x=∫0π/2dθ1+sin⁡2θ=1.31102877…\begin{aligned}\frac\omega2 &= \int_1^\infty\frac{dx}{2\sqrt{x^3-x}}\\&= \int_0^{\pi/2}\frac{d\theta}{\sqrt{1+\sin^2\theta}}\\&= 1.31102877\ldots\end{aligned}

4つの点 0, ω2, iω2, (1+i)ω20,\ \tfrac\omega2,\ \tfrac{i\omega}2,\ \tfrac{(1+i)\omega}2 が、O, (1,0), (−1,0), (0,0)O,\ (1,0),\ (-1,0),\ (0,0) に移る。実数の点は、Im⁡z=0\operatorname{Im}z=0 の線(OO と x≥1x\geq1 の枝)と、Im⁡z=ω2\operatorname{Im}z=\tfrac\omega2 の線(卵形)である。

ii 倍については、ハーツホーンも例4.23.5で y2=x3−xy^2=x^3-x が ii による虚数乗法をもつと述べています[3, 例4.23.5, p.59]。半周期の積分は、x=1/sin⁡2θx=1/\sin^2\theta と置き換えると右の形になります。

どの点がどこに移るかは、℘\wp が実数の値をとる線から分かります。℘\wp は実軸の上で実数で、z→0z\to0 のとき ∞\infty になります。zz が 00 から ω/2\omega/2 まで動くと、x=℘(z)x=\wp(z) は ∞\infty から最大の根1まで減ります。また ℘(iz)=−℘(z)\wp(iz)=-\wp(z) なので、iω/2i\omega/2 は x=−1x=-1 に移ります。

ドラッグで回せます

複素数の点 E(C)E(\mathbb{C}) を、平面 C\mathbb{C} を正方形の格子 Λ\Lambda で割った C/Λ\mathbb{C}/\Lambda として描いています。正方形の横の辺どうし、縦の辺どうしを貼ると、穴が1つのトーラスになります。オレンジは横の方向(実の周期)、紫は縦の方向(虚の周期)のループです。

実数の点は、外側と内側の2つのループ(オレンジ)です。外側が OO と (1,0)(1,0) を通る枝、内側が (−1,0)(-1,0) と (0,0)(0,0) を通る卵形です。真上から見ると別々の円ですが、回すと、紫のループが2つをつなぐトーラスの上に乗っていることが分かります。4つの点は 2P=O2P=O となる点です。

図5概念図y2=x3−xy^2=x^3-x の複素数の点 E(C)≅C/ΛE(\mathbb{C})\cong\mathbb{C}/\Lambda を、標準的なトーラスとして描いた図です。C2\mathbb{C}^2 の中の実際の形ではなく、つながり方だけが意味をもちます。オレンジは実の周期の方向、紫は虚の周期の方向のループです。「実数の点」では、図1左上の2つの部分が、外側と内側の2つのループになります。真上から見ると別々の円ですが、回すと、紫のループで1つにつながった面の上に乗っていることが分かります。

図1では2つに分かれていた実数の点が、複素数の点では1つの面の上の2本のループになります。x≥1x\geq1 の枝は、OO を通って閉じた1本のループです。

穴の数1は、楕円曲線の種数が1であることの表れです。種数は、曲線の上の関数や微分形式の数え方で、代数的にも定義できます。

有理点の群と暗号

専門的な話モーデルの定理

Q\mathbb{Q} 上の楕円曲線 EE について、E(Q)E(\mathbb{Q}) は有限生成アーベル群です(モーデルの定理)[3, p.60–61]。つまり、ある整数 r≥0r\geq0 と有限群 TT で E(Q)≅Zr×TE(\mathbb{Q})\cong\mathbb{Z}^r\times T となります。

有限個の点から足し算と引き算を繰り返して、すべての有理数の点が得られるということです。この記事の例では、y2=x3+1y^2=x^3+1 の TT は位数6の巡回群を含み、y2=x3−2y^2=x^3-2 では P=(3,5)P=(3,5) が位数無限なので r≥1r\geq1 です。

もう少し詳しく楕円曲線暗号

大きな素数 pp の Fp\mathbb{F}_p の上の楕円曲線では、点 PP と整数 nn から nPnP を計算するのは速くできます。2倍と足し算を組み合わせれば、公式の計算は多くても 2log⁡2n2\log_2n 回で済むからです。

逆に、PP と nPnP から nn を求める問題(離散対数問題)は、うまく選んだ曲線では非常に難しいと考えられています。楕円曲線暗号の鍵共有や署名は、この差を使っています。

まとめ:足し算を4つの見方で

見方P+QP+Q の決め方この記事の例
直線P,QP,Q を通る直線の3点目を xx 軸で折り返す(−2,3)+(−1,4)=(4,−9)(-2,3)+(-1,4)=(4,-9)(y2=x3+17y^2=x^3+17)
公式x3=λ2−x1−x2, y3=λ(x1−x3)−y1x_3=\lambda^2-x_1-x_2,\ y_3=\lambda(x_1-x_3)-y_12(3,5)=(129100,−3831000)2(3,5)=(\tfrac{129}{100},-\tfrac{383}{1000})(y2=x3−2y^2=x^3-2)
有限体同じ公式を Fp\mathbb{F}_p で計算するE(F5)≅Z/2×Z/4E(\mathbb{F}_5)\cong\mathbb{Z}/2\times\mathbb{Z}/4(y2=x3−xy^2=x^3-x)
因子[P−O]+[Q−O]=[(P+Q)−O][P-O]+[Q-O]=[(P+Q)-O]div⁡(y/z)=(0,0)+(1,0)+(−1,0)−3O\operatorname{div}(y/z)=(0,0)+(1,0)+(-1,0)-3O
複素数C/Λ\mathbb{C}/\Lambda の足し算2P=O2P=O の点 =12Λ/Λ=\tfrac12\Lambda/\Lambda

楕円曲線の点の足し算は、直線と3次曲線が3点で交わることから定義でき、公式で計算できます。結合法則は、点を因子の類 [P−O][P-O] に移すと、ピカール群の足し算として自然に分かります。

複素数の点は穴が1つのトーラスで、足し算は C/Λ\mathbb{C}/\Lambda の足し算そのものです。有理数の点や Fp\mathbb{F}_p の点は、その中の部分群として、数論の問題になります。

この先

楕円曲線では、OO で1位の極をもつ関数がないことが決め手でした。曲線の上に「決まった極をもつ関数」がどれだけあるかを数える定理が、リーマン・ロッホの定理です。その中に、トーラスの穴の数に当たる種数が現れます。

連載は、曲線の種数とリーマン・ロッホの定理、それを支える層のコホモロジーへ進む予定です。扱う順序や内容は変わることがあります。

参考文献

  1. J. H. Silverman, The Arithmetic of Elliptic Curves (2nd ed.), Graduate Texts in Mathematics 106, Springer, 2009.
  2. R. ハーツホーン(高橋宣能・松下大介 訳), 『代数幾何学 1』, 丸善出版, 2013.
  3. R. ハーツホーン(高橋宣能・松下大介 訳), 『代数幾何学 3』, 丸善出版, 2012.