数学ビジュアライズ

代数幾何図で読む代数幾何第17回

2本の直線で編まれた曲面:2次曲面とセグレ埋め込み

セグレ埋め込みで ℙ¹×ℙ¹ を ℙ³ の2次曲面と同一視し、曲面に乗る2つの直線の族を、一葉双曲面と鞍形の曲面の回せる立体図で確かめます。非退化な2次曲面が1種類であること、曲線の型 (a,b) と交点の数 ab′+a′b、因子類群 ℤ⊕ℤ も扱います。

目次
  1. 前回まで
  2. を に入れる:セグレ埋め込み
  3. 2つの直線の族
  4. 実数の点で見る:一葉双曲面
  5. 非退化な2次曲面は1種類
  6. 2次曲面の上の曲線の型
  7. 2次曲面と射影平面
  8. まとめ:2次曲面の表
  9. 次回:次数を上げて埋め込む
  10. 参考文献
この記事の要点
セグレ埋め込み
点の組 ([a0:a1],[b0:b1])([a_0:a_1],[b_0:b_1]) を、行列 a tba\,{}^t b の成分 [a0b0:a0b1:a1b0:a1b1][a_0b_0:a_0b_1:a_1b_0:a_1b_1] に送ります。これで P1×P1\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1 が P3\mathbb{P}^3 の2次曲面 Q ⁣:z00z11=z01z10Q\colon z_{00}z_{11}=z_{01}z_{10} と1対1に対応します。QQ は階数1の 2×22\times2 行列の集まりです。
2つの直線の族
aa を止めてできる直線 LαL_\alpha と、bb を止めてできる直線 MβM_\beta が QQ を覆い、QQ に含まれる直線はこれで全部です。同じ族の2本は交わらず、違う族の2本はちょうど1点で交わります。
一葉双曲面
実数で座標を取り替えると、QQ は x2+y2−z2=1x^2+y^2-z^2=1 になります。曲がった曲面ですが、2通りの直線の族で覆われています。標数が2でない代数閉体の上では、非退化な2次曲面はすべて QQ に移ります。
曲線の型
QQ の上の曲線は、双斉次式の2つの次数 (a,b)(a,b) で分けられ、2曲線の交点の数は ab′+a′bab'+a'b です。ねじれ3次曲線は型 (1,2)(1,2) で、因子類群は Cl⁡(Q)≅Z⊕Z\operatorname{Cl}(Q)\cong\mathbb{Z}\oplus\mathbb{Z} です。
  • 証明は、ステップの流れだけを短く書いています。「詳しく」の付いた行をクリックすると、そのステップの詳しい説明が開きます。説明の中にも開ける行があります。
  • 定義・命題・定理には、記事全体で通し番号を振っています。
  • もう少し詳しくは補足、専門的な話は先の回につながる話題です。どちらも開かずに読み進められます。
  • 各ブロックの「AIに質問」を押すと、その部分の内容を入れた質問文で、お使いのAIを開けます。

前回まで

第16回までは、曲線を調べてきました。第5回で射影平面 P2\mathbb{P}^2 を作り、平面曲線を射影閉包(第5回の定義7)で無限遠まで延ばしました。そのあと交点・因子・微分形式と進み、第16回で曲線の種数にたどり着きました。

第17回からの4回は、射影空間の中の多様体、とくに曲面を見ます。今回は P3\mathbb{P}^3 の2次曲面、つまり2次の斉次式1つで定まる曲面です。2次曲面は2つの射影直線の積 P1×P1\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1 と同じものだ、というのがこの記事の中心です。

積はこれまでにも出てきました。第7回のブローアップは A2×P1\mathbb{A}^2\times\mathbb{P}^1 の中に作り、閉集合を「P1\mathbb{P}^1 の座標について斉次な式」で定めました(第7回の定義1)。第8回では、第8回の定義6の後の補足で、スキームの積にあたるファイバー積に触れました。すべてアフィンなら、ファイバー積は環のテンソル積の Spec です。

この記事では、まず P1×P1\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1 を P3\mathbb{P}^3 の中に置くセグレ埋め込みを作り、像が2次曲面になることを示します。次に、その曲面に乗っている2つの直線の族を調べ、実数の点で一葉双曲面として眺めます。最後に、2次曲面の上の曲線を2つの次数 (a,b)(a,b) で分け、交点の数と因子類群を求めます。

P1×P1\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1 を P3\mathbb{P}^3 に入れる:セグレ埋め込み

この記事では kk を代数閉体とし、ハーツホーンの第 I 章と同じく、多様体の点は kk の点で考えます。標数は任意で、標数2を除く箇所はそのつど断ります。ハーツホーンの第 I 章は零点集合を ZZ と書きますが、この連載では VV、射影空間では V+V_+ と書きます。

P3\mathbb{P}^3 の点を [z00:z01:z10:z11][z_{00}:z_{01}:z_{10}:z_{11}] と書きます。添字が2つあるのは、4つの座標を 2×22\times2 行列に並べたいからです。

Z=(z00z01z10z11),Q=V+(z00z11−z01z10)={ [Z]∈P3∣det⁡Z=0 }\begin{aligned} Z&=\begin{pmatrix}z_{00}&z_{01}\\ z_{10}&z_{11}\end{pmatrix},{}\\[4pt] Q&=V_+(z_{00}z_{11}-z_{01}z_{10})\\ &=\{\,[Z]\in\mathbb{P}^3\mid\det Z=0\,\}\end{aligned}

ZZ を0でない定数倍しても det⁡Z=0\det Z=0 かどうかは変わらないので、QQ は P3\mathbb{P}^3 の閉集合です。この記事で調べるのは、この2次曲面です。ハーツホーンの演習は同じ曲面を xy=zwxy=zw と書いています[1, 演習2.15, p.18]。

定義1 セグレ写像 [1, 演習2.14, p.18; 1, 演習2.15, p.18]

a=(a0,a1)a=(a_0,a_1)、b=(b0,b1)b=(b_0,b_1) を縦ベクトルとみて、

σ ⁣:P1×P1→P3,([a0:a1],[b0:b1])⟼[a0b0:a0b1:a1b0:a1b1]\begin{aligned} &\sigma\colon\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1\to\mathbb{P}^3,{}\\ &\bigl([a_0:a_1],[b_0:b_1]\bigr)\\ &\quad\longmapsto[a_0b_0:a_0b_1:a_1b_0:a_1b_1] \end{aligned}

と定める。行列で書くと、σ(a,b)\sigma(a,b) は行列 a tb=(a0b0a0b1a1b0a1b1)a\,{}^t b=\begin{pmatrix}a_0b_0&a_0b_1\\ a_1b_0&a_1b_1\end{pmatrix} の表す点である。σ\sigma をセグレ写像と呼ぶ。

代表の取り方によらないことを確かめます。aa を λa\lambda a に替えると4つの成分がすべて λ\lambda 倍になるので、同じ点です。ai≠0a_i\neq0、bj≠0b_j\neq0 となる i,ji,j があるので aibj≠0a_ib_j\neq0 で、成分がすべて0になることもありません。

例2 セグレ写像で点を送る

どんな体でも次が成り立つ。

(1) σ([1:2],[3:1])=[1⋅3:1⋅1:2⋅3:2⋅1]=[3:1:6:2]\sigma([1:2],[3:1])=[1\cdot3:1\cdot1:2\cdot3:2\cdot1]=[3:1:6:2]。3⋅2=1⋅63\cdot2=1\cdot6 なので QQ の上にある。
(2) σ([1:0],[1:0])=[1:0:0:0]\sigma([1:0],[1:0])=[1:0:0:0]、σ([0:1],[0:1])=[0:0:0:1]\sigma([0:1],[0:1])=[0:0:0:1]。
(3) σ([1:s],[1:t])=[1:t:s:st]\sigma([1:s],[1:t])=[1:t:s:st]。

命題3 セグレ写像の像は QQ [1, 演習2.14, p.18; 1, 演習2.15(a), p.18]

(1) σ\sigma の像は QQ に一致する。
(2) σ\sigma は単射である。

したがって σ\sigma は P1×P1\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1 から QQ への全単射で、逆写像は ZZ を「0でない列 aa」と「0でない行 bb」の組 ([a],[b])([a],[b]) に送る。

証明
  1. 像が QQ に入ること:det⁡(a tb)=a0b0⋅a1b1−a0b1⋅a1b0=0\det(a\,{}^t b)=a_0b_0\cdot a_1b_1-a_0b_1\cdot a_1b_0=0。
  2. QQ の点が像に入ること:det⁡Z=0\det Z=0 で zij≠0z_{ij}\neq0 なら、zijz_{ij} を含む列 aa と行 bb について a tb=zijZa\,{}^t b=z_{ij}Z となる。

    例えば z00≠0z_{00}\neq0 なら a=(z00,z10)a=(z_{00},z_{10})、b=(z00,z01)b=(z_{00},z_{01}) で、

    a tb=(z002z00z01z10z00z10z01)=z00(z00z01z10z11)\begin{aligned} a\,{}^t b&=\begin{pmatrix}z_{00}^2&z_{00}z_{01}\\ z_{10}z_{00}&z_{10}z_{01}\end{pmatrix}\\ &=z_{00}\begin{pmatrix}z_{00}&z_{01}\\ z_{10}&z_{11}\end{pmatrix}\end{aligned}

    右下の成分では z10z01=z00z11z_{10}z_{01}=z_{00}z_{11}(det⁡Z=0\det Z=0)を使った。ほかの zijz_{ij} でも同じで、zijz_{ij} と同じ行・同じ列にない成分だけ det⁡Z=0\det Z=0 を使う。

  3. 単射であること:a tba\,{}^t b の各列は aa の定数倍で、0でない列がある。よって a tb=λ a′ tb′a\,{}^t b=\lambda\,a'\,{}^t b' なら [a]=[a′][a]=[a']。行を見れば [b]=[b′][b]=[b']。

行列の言葉で言い直します。0でない 2×22\times2 行列 ZZ について、det⁡Z=0\det Z=0 は階数が1であることと同じです。階数1の行列は、縦ベクトルと横ベクトルの積 a tba\,{}^t b に書け、aa と bb は定数倍を除いて決まります。つまり、QQ の点を P1\mathbb{P}^1 の点2つに分ける操作が σ−1\sigma^{-1} です。

例2(1) の点 [3:1:6:2][3:1:6:2] では、列 (3,6)(3,6) と (1,2)(1,2) はどちらも (1,2)(1,2) の定数倍、行 (3,1)(3,1) と (6,2)(6,2) はどちらも (3,1)(3,1) の定数倍です。こうして ([1:2],[3:1])([1:2],[3:1]) が読み取れます。

次に、P1×P1\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1 の閉集合を決めます。第7回の A2×P1\mathbb{A}^2\times\mathbb{P}^1 と同じく、それぞれの P1\mathbb{P}^1 の座標について斉次な式を使います。

定義4 双斉次式と P1×P1\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1 の閉集合

F∈k[a0,a1,b0,b1]F\in k[a_0,a_1,b_0,b_1] が a0,a1a_0,a_1 について dd 次、b0,b1b_0,b_1 について ee 次の斉次式であるとき、FF を双次数 (d,e)(d,e) の双斉次式と呼ぶ。このとき

F(λa,μb)=λdμeF(a,b)(λ,μ∈k×)F(\lambda a,\mu b)=\lambda^d\mu^eF(a,b)\qquad(\lambda,\mu\in k^\times)F(λa,μb)=λdμeF(a,b)(λ,μ∈k×)\begin{gathered}F(\lambda a,\mu b)=\lambda^d\mu^eF(a,b)\\(\lambda,\mu\in k^\times)\end{gathered}F(λa,μb)=λdμeF(a,b)(λ,μ∈k×)\begin{aligned}F(\lambda a,\mu b) &= \lambda^d\mu^eF(a,b)\\[4pt]&(\lambda,\mu\in k^\times)\end{aligned}

なので、F=0F=0 かどうかは点 ([a],[b])([a],[b]) だけで決まる。双斉次式の集合 SS の共通の零点集合 V(S)V(S) の形の集合を、P1×P1\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1 の閉集合と呼ぶ。

例えば a0b1−a1b0a_0b_1-a_1b_0 は双次数 (1,1)(1,1) で、その零点集合は対角線 Δ={([a],[a])}\Delta=\{([a],[a])\} です。a0b12−a1b02a_0b_1^2-a_1b_0^2 は双次数 (1,2)(1,2) です。

命題5 σ\sigma は閉集合を閉集合に移す [1, 演習2.15(a), p.18]

P1×P1\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1 の閉集合の σ\sigma による像は QQ の閉集合で、QQ の閉集合の逆像は P1×P1\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1 の閉集合である。したがって σ\sigma は P1×P1\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1 と QQ の同相写像である。

証明
  1. zz の mm 次の斉次式 GG に zij=aibjz_{ij}=a_ib_j を代入すると、双次数 (m,m)(m,m) の双斉次式になる。よって QQ の閉集合 Q∩V+(G)Q\cap V_+(G) の逆像は閉集合である。
  2. 逆に、双次数 (d,e)(d,e) の FF の零点集合は、m=max⁡(d,e)m=\max(d,e) として、双次数 (m,m)(m,m) の式 aim−dbjm−eFa_i^{m-d}b_j^{m-e}F(i,j=0,1i,j=0,1)の共通の零点集合に等しい。

    各点で ai≠0a_i\neq0 となる ii と bj≠0b_j\neq0 となる jj があるので、F=0F=0 と「4つの aim−dbjm−eFa_i^{m-d}b_j^{m-e}F がすべて0」は同値である。

  3. 双次数 (m,m)(m,m) の単項式 ai1⋯aimbj1⋯bjma_{i_1}\cdots a_{i_m}b_{j_1}\cdots b_{j_m} は zi1j1⋯zimjmz_{i_1j_1}\cdots z_{i_mj_m} の値に等しい。よって双次数 (m,m)(m,m) の双斉次式は、zz の mm 次の斉次式 GG を使って G(σ(a,b))G(\sigma(a,b)) と書け、閉集合の像は QQ の閉集合になる。

この命題から、以後は σ\sigma で P1×P1\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1 と QQ を同一視します。スキームとしても、ファイバー積 P1×kP1\mathbb{P}^1\times_k\mathbb{P}^1 は σ\sigma で QQ と同型になり、ハーツホーンは Q≅P1×P1Q\cong\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1 をこの形で使っています[1, 例6.6.1, p.184]。

この位相は、2つの P1\mathbb{P}^1 の位相の積位相とは違います[1, 演習2.15(c), p.18]。積位相の閉集合は、全体を除くと、有限個の点と有限本の {α}×P1\{\alpha\}\times\mathbb{P}^1、P1×{β}\mathbb{P}^1\times\{\beta\} の和集合です。対角線 Δ\Delta は QQ の閉集合(平面 z01=z10z_{01}=z_{10} との交わり)ですが、そのどれでもありません。

QQ の z00≠0z_{00}\neq0 の部分を見ておきます。アフィン座標 x=z01/z00x=z_{01}/z_{00}、y=z10/z00y=z_{10}/z_{00}、z=z11/z00z=z_{11}/z_{00} では QQ の式は z=xyz=xy です。例2(3) から、点 ([1:s],[1:t])([1:s],[1:t]) は (x,y,z)=(t,s,st)(x,y,z)=(t,s,st) に写ります。

A1×A1→ ∼  Q∩{z00≠0}={z=xy},(s,t)⟼(t, s, st)\begin{aligned} &\mathbb{A}^1\times\mathbb{A}^1\\ &\xrightarrow{\ \sim\ }\ Q\cap\{z_{00}\neq0\}=\{z=xy\},{}\\[4pt] &(s,t)\longmapsto(t,\ s,\ st)\end{aligned}

QQ のこの部分は、xyxy 平面の上の鞍形の曲面 z=xyz=xy のグラフです。真上から見た影 (x,y)=(t,s)(x,y)=(t,s) は、A1×A1\mathbb{A}^1\times\mathbb{A}^1 の点そのものです。

定義6 一般のセグレ埋め込み [1, 演習2.14, p.18]

N=(m+1)(n+1)−1N=(m+1)(n+1)-1 とし、PN\mathbb{P}^N の斉次座標を zijz_{ij}(0≤i≤m0\leq i\leq m、0≤j≤n0\leq j\leq n)とする。

Pm×Pn→PN,([a0:⋯:am],[b0:⋯:bn])⟼[ aibj ]i,j\begin{aligned} &\mathbb{P}^m\times\mathbb{P}^n\to\mathbb{P}^N,{}\\ &\bigl([a_0:\dots:a_m],[b_0:\dots:b_n]\bigr)\\ &\quad\longmapsto[\,a_ib_j\,]_{i,j} \end{aligned}

をセグレ埋め込みと呼ぶ。像は、(m+1)×(n+1)(m+1)\times(n+1) 行列 (zij)(z_{ij}) の 2×22\times2 小行列式がすべて0になる点、つまり階数1の行列の集合 V+(zijzkl−zilzkj)V_+\bigl(z_{ij}z_{kl}-z_{il}z_{kj}\bigr) である。

m=n=1m=n=1 なら小行列式は det⁡Z\det Z の1つだけで、QQ に戻ります。m=1m=1、n=2n=2 なら P1×P2→P5\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^2\to\mathbb{P}^5 で、2×32\times3 行列の3つの小行列式 z00z11−z01z10z_{00}z_{11}-z_{01}z_{10}、z00z12−z02z10z_{00}z_{12}-z_{02}z_{10}、z01z12−z02z11z_{01}z_{12}-z_{02}z_{11} が像を定めます。この記事では m=n=1m=n=1 だけを扱います。

2つの直線の族

P1×P1\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1 には、一方の成分を止めてできる曲線が2種類あります。これを σ\sigma で QQ に送ります。

定義7 2つの直線の族 [1, 演習2.15(b), p.18]

α,β∈P1\alpha,\beta\in\mathbb{P}^1 について

Lα=σ({α}×P1)Mβ=σ(P1×{β})L_\alpha=\sigma\bigl(\{\alpha\}\times\mathbb{P}^1\bigr)\qquad M_\beta=\sigma\bigl(\mathbb{P}^1\times\{\beta\}\bigr)Lα=σ({α}×P1)Mβ=σ(P1×{β})\begin{gathered}L_\alpha=\sigma\bigl(\{\alpha\}\times\mathbb{P}^1\bigr)\\M_\beta=\sigma\bigl(\mathbb{P}^1\times\{\beta\}\bigr)\end{gathered}Lα=σ({α}×P1)Mβ=σ(P1×{β})\begin{aligned}L_\alpha &= \sigma\bigl(\{\alpha\}\times\mathbb{P}^1\bigr)\\[4pt]M_\beta &= \sigma\bigl(\mathbb{P}^1\times\{\beta\}\bigr)\end{aligned}

とおく。LαL_\alpha は b↦α tbb\mapsto\alpha\,{}^t b という単射な線形写像 k2→k4k^2\to k^4 の像なので、P3\mathbb{P}^3 の直線である。MβM_\beta も同様である。式で書くと、列が α\alpha に比例する、行が β\beta に比例するという条件になる。

Lα=V+(α1z00−α0z10,=V+(α1z01−α0z11),Mβ=V+(β1z00−β0z01,=V+(β1z10−β0z11)\begin{aligned} L_\alpha&=V_+\bigl(\alpha_1z_{00}-\alpha_0z_{10},{}\\ &\phantom{{}=V_+\bigl(}\alpha_1z_{01}-\alpha_0z_{11}\bigr),{}\\[4pt] M_\beta&=V_+\bigl(\beta_1z_{00}-\beta_0z_{01},{}\\ &\phantom{{}=V_+\bigl(}\beta_1z_{10}-\beta_0z_{11}\bigr)\end{aligned}

例2(1) で確かめます。L[1:2]L_{[1:2]} は 2z00−z10=02z_{00}-z_{10}=0、2z01−z11=02z_{01}-z_{11}=0 で、[3:1:6:2][3:1:6:2] を代入すると 6−6=06-6=0、2−2=02-2=0 です。M[3:1]M_{[3:1]} は z00−3z01=0z_{00}-3z_{01}=0、z10−3z11=0z_{10}-3z_{11}=0 で、3−3=03-3=0、6−6=06-6=0 です。

鞍形の曲面 z=xyz=xy では、L[1:s]L_{[1:s]} は「y=sy=s、z=sxz=sx」、M[1:t]M_{[1:t]} は「x=tx=t、z=tyz=ty」という直線です。真上から見ると、横の線 y=sy=s と縦の線 x=tx=t の格子になります。

命題8 QQ の上の直線 [1, 演習2.15(b), p.18; 2, 例1.4.3, p.96]

(1) α≠α′\alpha\neq\alpha' なら Lα∩Lα′=∅L_\alpha\cap L_{\alpha'}=\varnothing、β≠β′\beta\neq\beta' なら Mβ∩Mβ′=∅M_\beta\cap M_{\beta'}=\varnothing。
(2) Lα∩Mβ={σ(α,β)}L_\alpha\cap M_\beta=\{\sigma(\alpha,\beta)\}。
(3) QQ に含まれる直線は、ある LαL_\alpha かある MβM_\beta である。
(4) QQ の各点 σ(α,β)\sigma(\alpha,\beta) を通り QQ に含まれる直線は、LαL_\alpha と MβM_\beta の2本だけである。

証明
  1. (1)(2) は σ\sigma が単射であることから従う。例えば Lα∩Mβ=σ(({α}×P1)∩(P1×{β}))={σ(α,β)}L_\alpha\cap M_\beta=\sigma\bigl((\{\alpha\}\times\mathbb{P}^1)\cap(\mathbb{P}^1\times\{\beta\})\bigr)=\{\sigma(\alpha,\beta)\}。
  2. (3) 直線 ℓ⊆Q\ell\subseteq Q の相異なる2点 p=σ(α,β)p=\sigma(\alpha,\beta)、q=σ(α′,β′)q=\sigma(\alpha',\beta') をとる。行列として det⁡(p+q)=det⁡(α α′)det⁡(β β′)\det(p+q)=\det(\alpha\ \alpha')\det(\beta\ \beta') である。

    (α α′)(\alpha\ \alpha') は α,α′\alpha,\alpha' を並べた 2×22\times2 行列である。次の分解から、行列式の積の公式で従う。

    s α tβ+t α′ tβ′=(αα′)(s00t)t ⁣(ββ′),det⁡=det⁡(α α′)⋅st⋅det⁡(β β′)\begin{aligned} &s\,\alpha\,{}^t\beta+t\,\alpha'\,{}^t\beta'\\ &=\begin{pmatrix}\alpha&\alpha'\end{pmatrix}\begin{pmatrix}s&0\\0&t\end{pmatrix}{}^t\!\begin{pmatrix}\beta&\beta'\end{pmatrix},{}\\[4pt] &\det=\det(\alpha\ \alpha')\cdot st\cdot\det(\beta\ \beta')\end{aligned}

    s=t=1s=t=1 とおけばよい。

  3. p≠qp\neq q なので p+qp+q は0でないベクトルで、ℓ\ell の点を表す。ℓ⊆Q\ell\subseteq Q から det⁡(p+q)=0\det(p+q)=0 で、det⁡(α α′)=0\det(\alpha\ \alpha')=0 か det⁡(β β′)=0\det(\beta\ \beta')=0。
  4. det⁡(α α′)=0\det(\alpha\ \alpha')=0 なら [α]=[α′][\alpha]=[\alpha'] で、p,qp,q はどちらも直線 LαL_\alpha に乗る。2点を通る直線は1本なので ℓ=Lα\ell=L_\alpha。もう一方の場合は ℓ=Mβ\ell=M_\beta。
  5. (4) σ(α,β)\sigma(\alpha,\beta) を通る Lα′L_{\alpha'} は α′=α\alpha'=\alpha のものだけで、Mβ′M_{\beta'} も β′=β\beta'=\beta だけである。(2) から Lα≠MβL_\alpha\neq M_\beta。

P3\mathbb{P}^3 の2本の直線が交わらないとき、2本はねじれの位置にあると言います。P3\mathbb{P}^3 では、同じ平面に乗る2本の直線は必ず交わるので、ねじれの位置の2本は同じ平面に乗りません。QQ には、互いにねじれの位置にある直線の族が2つあることになります。

例9 接平面で切ると2本の直線

どんな体でも、f=z00z11−z01z10f=z_{00}z_{11}-z_{01}z_{10} の偏微分は (z11, −z10, −z01, z00)(z_{11},\ -z_{10},\ -z_{01},\ z_{00}) で、すべてが0になるのは z=0z=0 のときだけである。よって QQ のどの点でも接平面が1つに決まる。

p=[1:0:0:0]=σ([1:0],[1:0])p=[1:0:0:0]=\sigma([1:0],[1:0]) では偏微分は (0,0,0,1)(0,0,0,1) で、接平面は z11=0z_{11}=0 である。これと QQ の交わりは

Q∩{z11=0}={z11=z01z10=0}={z10=z11=0}∪{z01=z11=0}=L[1:0]∪M[1:0]\begin{aligned} &Q\cap\{z_{11}=0\}\\ &=\{z_{11}=z_{01}z_{10}=0\}\\ &=\{z_{10}=z_{11}=0\}\\ &\qquad\cup\{z_{01}=z_{11}=0\}\\ &=L_{[1:0]}\cup M_{[1:0]} \end{aligned}

で、pp を通る2本の直線である。

ほかの点でも同じです。正則な 2×22\times2 行列 A,BA,B について Z↦AZ tBZ\mapsto AZ\,{}^tB は P3\mathbb{P}^3 の射影変換で、det⁡(AZ tB)=det⁡Adet⁡Zdet⁡B\det(AZ\,{}^tB)=\det A\det Z\det B なので QQ を QQ に移します。σ(α,β)\sigma(\alpha,\beta) は σ(Aα,Bβ)\sigma(A\alpha,B\beta) に移るので、A,BA,B を選べばどの点も pp に移せます。

ドラッグで回せます

青い曲面は鞍形の曲面 z=xyz=xy で、2次曲面 QQ のうち z00≠0z_{00}\neq0 の部分です。オレンジは yy が一定の直線(族 LL)、緑は xx が一定の直線(族 MM)です。「真上」から見ると A1×A1\mathbb{A}^1\times\mathbb{A}^1 の正方形の格子に見えますが、回すと、格子の線がどれも曲面に乗った空間の直線だと分かります。

原点での接平面 z=0z=0(灰色)と曲面の交わりは、xy=0xy=0、つまり原点を通る2本の直線 y=0y=0(族 LL)と x=0x=0(族 MM)です。回すと、接平面が曲面を2本の直線に沿って切っているのが見えます。

型 (1,1)(1,1) の曲線の例です。青は平面 x=yx=y との交わりで放物線 (t,t,t2)(t,t,t^2)、紫は平面 z=1z=1 との交わりで双曲線 xy=1xy=1 です。「真上」から見ると、青は格子の対角線、紫は xy=1xy=1 のグラフです。どちらも、縦の線・横の線の1本1本とちょうど1点で交わります。紫と x=0x=0、y=0y=0 の線の交点は無限遠にあり、図の外で交わる線もあります。

赤は第1回のねじれ3次曲線 (t,t2,t3)(t,t^2,t^3) で、t⋅t2=t3t\cdot t^2=t^3 なので曲面 z=xyz=xy に乗っています。「真上」から見ると放物線 y=x2y=x^2 で、横の線 y=0.64y=0.64(濃いオレンジ)とは2点、縦の線とは1点で交わります。これが型 (1,2)(1,2) です。

図1具体例QQ の z00≠0z_{00}\neq0 の部分、鞍形の曲面 z=xyz=xy です(k=Rk=\mathbb{R})。最初の段階は定義7の2つの族で、オレンジが LL(yy が一定)、緑が MM(xx が一定)です。「真上」から見ると A1×A1\mathbb{A}^1\times\mathbb{A}^1 の正方形の格子に見え、回すと格子の線がどれも曲面に乗った空間の直線だと分かります。2つ目の段階は例9の接平面です。3つ目と4つ目の段階は、後の節で扱う型 (1,1)(1,1) と (1,2)(1,2) の曲線です。

実数の点で見る:一葉双曲面

鞍形の曲面に見えるのは、QQ の一部だけです。QQ のほぼ全体を目で見るために、実数の範囲で座標を取り替えます。

命題10 QQ を一葉双曲面の形にする

kk を標数が2でない体とする。P3\mathbb{P}^3 の座標を

z00=w+xz11=w−xz01=y+zz10=y−zz_{00}=w+x\qquad z_{11}=w-x\qquad z_{01}=y+z\qquad z_{10}=y-zz00=w+xz11=w−xz01=y+zz10=y−z\begin{gathered}z_{00}=w+x\\z_{11}=w-x\\z_{01}=y+z\\z_{10}=y-z\end{gathered}z00=w+xz11=w−xz01=y+zz10=y−z\begin{aligned}z_{00} &= w+x\\[4pt]z_{11} &= w-x\\[4pt]z_{01} &= y+z\\[4pt]z_{10} &= y-z\end{aligned}

で取り替えると、QQ の式は x2+y2−z2=w2x^2+y^2-z^2=w^2 になる。k=Rk=\mathbb{R} で w=1w=1 の部分を見ると、一葉双曲面 x2+y2−z2=1x^2+y^2-z^2=1 である。

証明
  1. z00z11−z01z10=(w+x)(w−x)−(y+z)(y−z)=w2−x2−y2+z2z_{00}z_{11}-z_{01}z_{10}=(w+x)(w-x)-(y+z)(y-z)=w^2-x^2-y^2+z^2。
  2. この取り替えは正則である。逆は w=(z00+z11)/2w=(z_{00}+z_{11})/2、x=(z00−z11)/2x=(z_{00}-z_{11})/2、y=(z01+z10)/2y=(z_{01}+z_{10})/2、z=(z01−z10)/2z=(z_{01}-z_{10})/2 で、2で割るので標数 ≠2\neq2 を使う。

    (x,y,z,w)(x,y,z,w) から (z00,z01,z10,z11)(z_{00},z_{01},z_{10},z_{11}) への行列の行列式は −4-4 で、標数が2でなければ0でない。

一葉双曲面には、次の2つの族の直線が乗っています。θ\theta を実数とし、tt を動かします。

ℓθ ⁣: (cos⁡θ−tsin⁡θ,  sin⁡θ+tcos⁡θ,  t)mθ ⁣: (cos⁡θ+tsin⁡θ,  sin⁡θ−tcos⁡θ,  t)\ell_\theta\colon\ (\cos\theta-t\sin\theta,\ \ \sin\theta+t\cos\theta,\ \ t)\qquad m_\theta\colon\ (\cos\theta+t\sin\theta,\ \ \sin\theta-t\cos\theta,\ \ t)ℓθ ⁣: (cos⁡θ−tsin⁡θ,  sin⁡θ+tcos⁡θ,  t)mθ ⁣: (cos⁡θ+tsin⁡θ,  sin⁡θ−tcos⁡θ,  t)\begin{gathered}\ell_\theta\colon\ (\cos\theta-t\sin\theta,\ \ \sin\theta+t\cos\theta,\ \ t)\\m_\theta\colon\ (\cos\theta+t\sin\theta,\ \ \sin\theta-t\cos\theta,\ \ t)\end{gathered}

どちらも x2+y2=(cos⁡θ∓tsin⁡θ)2+(sin⁡θ±tcos⁡θ)2=1+t2=1+z2x^2+y^2=(\cos\theta\mp t\sin\theta)^2+(\sin\theta\pm t\cos\theta)^2=1+t^2=1+z^2 をみたします。t=0t=0 では、どちらもくびれの円 x2+y2=1x^2+y^2=1 の点 (cos⁡θ,sin⁡θ)(\cos\theta,\sin\theta) を通ります。

例11 一葉双曲面の直線は LαL_\alpha と MβM_\beta

k=Rk=\mathbb{R}、c=cos⁡(θ/2)c=\cos(\theta/2)、s=sin⁡(θ/2)s=\sin(\theta/2) とする。命題10の座標で、

ℓθ=L[c:s]mθ=M[c:s]\ell_\theta=L_{[c:s]}\qquad m_\theta=M_{[c:s]}ℓθ=L[c:s]mθ=M[c:s]\begin{gathered}\ell_\theta=L_{[c:s]}\\m_\theta=M_{[c:s]}\end{gathered}ℓθ=L[c:s]mθ=M[c:s]\begin{aligned}\ell_\theta &= L_{[c:s]}\\[4pt]m_\theta &= M_{[c:s]}\end{aligned}

θ\theta が 00 から 2π2\pi まで動くと [c:s][c:s] は P1(R)\mathbb{P}^1(\mathbb{R}) をちょうど1周するので、2つの族は {Lα}\{L_\alpha\} と {Mβ}\{M_\beta\} の実数の直線をすべて尽くす。

証明
  1. ℓθ\ell_\theta の点で z00=1+xz_{00}=1+x、z10=y−zz_{10}=y-z を半角の公式で書くと、(z00,z10)=2(c−ts)(c,s)(z_{00},z_{10})=2(c-ts)(c,s)。

    1+cos⁡θ=2c21+\cos\theta=2c^2、1−cos⁡θ=2s21-\cos\theta=2s^2、sin⁡θ=2sc\sin\theta=2sc を使う。

    z00=2c2−2tsc=2c(c−ts)z10=2sc+t(cos⁡θ−1)=2sc−2ts2=2s(c−ts)z_{00}=2c^2-2tsc=2c(c-ts)\qquad z_{10}=2sc+t(\cos\theta-1)=2sc-2ts^2=2s(c-ts)z00=2c2−2tsc=2c(c−ts)z10=2sc+t(cos⁡θ−1)=2sc−2ts2=2s(c−ts)\begin{gathered}z_{00}=2c^2-2tsc=2c(c-ts)\\z_{10}=2sc+t(\cos\theta-1)=2sc-2ts^2=2s(c-ts)\end{gathered}z00=2c2−2tsc=2c(c−ts)z10=2sc+t(cos⁡θ−1)=2sc−2ts2=2s(c−ts)\begin{aligned}z_{00} &= 2c^2-2tsc\\&= 2c(c-ts)\\[4pt]z_{10} &= 2sc+t(\cos\theta-1)\\&= 2sc-2ts^2\\&= 2s(c-ts)\end{aligned}
  2. 同じく (z01,z11)=(y+z, 1−x)=2(s+tc)(c,s)(z_{01},z_{11})=(y+z,\ 1-x)=2(s+tc)(c,s)。2つの列が (c,s)(c,s) に比例するので、ℓθ\ell_\theta の点は L[c:s]L_{[c:s]} に乗る。

    z01=2sc+t(cos⁡θ+1)=2c(s+tc)z_{01}=2sc+t(\cos\theta+1)=2c(s+tc)、z11=2s2+2tsc=2s(s+tc)z_{11}=2s^2+2tsc=2s(s+tc)。点は σ([c:s],[c−ts:s+tc])\sigma\bigl([c:s],[c-ts:s+tc]\bigr) である。

  3. mθm_\theta では2つの行が (c,s)(c,s) に比例し、mθ⊆M[c:s]m_\theta\subseteq M_{[c:s]} となる。どちらも直線なので等しい。

    (z00,z01)=(1+x, y+z)=2(c+ts)(c,s)(z_{00},z_{01})=(1+x,\ y+z)=2(c+ts)(c,s)、(z10,z11)=(y−z, 1−x)=2(s−tc)(c,s)(z_{10},z_{11})=(y-z,\ 1-x)=2(s-tc)(c,s) である。

違う族の2本の交点を計算します。ℓθ1\ell_{\theta_1} と mθ2m_{\theta_2} の点の zz 座標がそろうのは同じ tt のときで、残りの2つの座標の式を解くと t=−tan⁡((θ1−θ2)/2)t=-\tan\bigl((\theta_1-\theta_2)/2\bigr) です。例えば ℓπ/2\ell_{\pi/2} と mπm_\pi は t=−tan⁡(−π/4)=1t=-\tan(-\pi/4)=1 で、点 (−1,1,1)(-1,1,1) で交わります。

θ2=θ1+π\theta_2=\theta_1+\pi のときは tan⁡\tan が定義されず、2本は平行です。例えば ℓ0\ell_0 と mπm_\pi の向きはどちらも (0,1,1)(0,1,1) です。射影空間では、平行な2本は無限遠で交わります(第5回の第5回の例6と同じです)。どちらも [x:y:z:w]=[0:1:1:0][x:y:z:w]=[0:1:1:0] を通り、命題8(2) のとおり1点で交わっています。

ドラッグで回せます

一葉双曲面 x2+y2−z2=1x^2+y^2-z^2=1 です。黒い円は高さ 00 の切り口(くびれの円)x2+y2=1x^2+y^2=1 です。曲面は曲がっていますが、次の段階で見るように、直線だけでできています。

1つ目の族(オレンジ):直線 (cos⁡θ−tsin⁡θ, sin⁡θ+tcos⁡θ, t)(\cos\theta-t\sin\theta,\ \sin\theta+t\cos\theta,\ t) です。「真上」から見ると、どの直線もくびれの円の接線に見えます。回すと、どれも反時計回りに傾いて上っていきます。同じ族の2本は、どこでも交わりません(ねじれの位置)。

2つ目の族(緑):直線 (cos⁡θ+tsin⁡θ, sin⁡θ−tcos⁡θ, t)(\cos\theta+t\sin\theta,\ \sin\theta-t\cos\theta,\ t) です。「真上」から見ると1つ目の族とまったく同じ接線に見えますが、回すと逆向きに傾いていて、別の直線だと分かります。

違う族の2本は1点で交わります。緑の直線(θ=π\theta=\pi)は、オレンジの θ=π/2\theta=\pi/2 の直線と点 (−1,1,1)(-1,1,1) で交わります。オレンジの θ=0\theta=0 の直線とは平行で、この図の中では交わりませんが、射影空間では無限遠の1点で交わります。

図2具体例一葉双曲面 x2+y2−z2=1x^2+y^2-z^2=1 と、その上の2つの族 ℓθ\ell_\theta(オレンジ)と mθm_\theta(緑)です。θ\theta は 30∘30^\circ ずつ動かしています。「真上」から見ると、どちらの族の直線もくびれの円の接線で、2つの族はまったく同じ線に重なります。回すと、オレンジは反時計回り、緑は時計回りに傾いて上っていて、曲がった曲面が2通りの直線の族で覆われていると分かります。最後の段階で、違う族の2本の交わり方を見ます。

「真上」で2つの族が重なるのは、ℓθ\ell_\theta と mθm_\theta の (x,y)(x,y) 座標が、tt の符号を変えただけの同じ直線を描くからです。高さ z=tz=t を見れば、2本は逆向きに上っています。

もう少し詳しく実数の点の全体はトーラス

P1(R)\mathbb{P}^1(\mathbb{R}) は円なので、QQ の実数の点 P1(R)×P1(R)\mathbb{P}^1(\mathbb{R})\times\mathbb{P}^1(\mathbb{R}) は円と円の積、つまりトーラスです。一葉双曲面は、そこから無限遠の部分 w=0w=0 を除いたものです。

無限遠の部分は x2+y2=z2x^2+y^2=z^2(w=0w=0)で、平面 w=0w=0 との交わりなので、次の節の言葉では型 (1,1)(1,1) の曲線です。w=(z00+z11)/2w=(z_{00}+z_{11})/2 なので、式は a0b0+a1b1=0a_0b_0+a_1b_1=0 です。

トーラスから、両方の向きに1周する円を1本除くと、筒(円柱)が残ります。一葉双曲面が筒の形をしているのはこのためです。

非退化な2次曲面は1種類

QQ は特別な2次曲面に見えますが、標数が2でない代数閉体の上では、非退化な2次曲面はすべて QQ に移ります。P3\mathbb{P}^3 の2次曲面とは、0でない2次の斉次式 f∈k[x0,x1,x2,x3]f\in k[x_0,x_1,x_2,x_3] の零点集合 V+(f)V_+(f) のことです。

標数が2でないとき、ff は対称行列 AA を使って f(x)=t ⁣x Axf(x)={}^t\!x\,Ax と書けます。対角成分は xi2x_i^2 の係数、(i,j)(i,j) 成分(i≠ji\neq j)は xixjx_ix_j の係数の半分です。det⁡A≠0\det A\neq0 のとき ff は非退化であると言います。

QQ の式 z00z11−z01z10z_{00}z_{11}-z_{01}z_{10} の行列は、成分が ±1/2\pm1/2 の反対角の行列で、行列式は 1/16≠01/16\neq0 です。

座標の取り替えは、第5回と同じく正則行列 gg で [x]↦[gx][x]\mapsto[gx] と移す射影変換です(今は 4×44\times4 行列)。

定理12 非退化な2次曲面は QQ に移る [1, 演習5.12, p.52]

kk を標数が2でない代数閉体とし、ff を4変数の非退化な2次形式とする。このとき、射影変換で V+(f)V_+(f) を Q=V+(z00z11−z01z10)Q=V_+(z_{00}z_{11}-z_{01}z_{10}) に移せる。

証明
  1. 変数を線形に取り替えて、f=c0y02+c1y12+c2y22+c3y32f=c_0y_0^2+c_1y_1^2+c_2y_2^2+c_3y_3^2(ci≠0c_i\neq0)の形にする。

    B(u,v)=(f(u+v)−f(u)−f(v))/2=t ⁣u AvB(u,v)=\bigl(f(u+v)-f(u)-f(v)\bigr)/2={}^t\!u\,Av とおく。f≠0f\neq0 なので f(v)≠0f(v)\neq0 となる vv がある(すべての vv で f(v)=0f(v)=0 なら B=0B=0 で A=0A=0)。

    W={u∣B(v,u)=0}W=\{u\mid B(v,u)=0\} は3次元で、B(v,v)=f(v)≠0B(v,v)=f(v)\neq0 から v∉Wv\notin W。vv と WW の基底 w1,w2,w3w_1,w_2,w_3 を新しい基底にすると、B(v,wj)=0B(v,w_j)=0 なので f=f(v)y02+fW(y1,y2,y3)f=f(v)y_0^2+f_W(y_1,y_2,y_3) の形になる。fWf_W は ff を WW に制限した2次形式で、WW の上で同じことをくり返す(fW=0f_W=0 になったら、残りの係数を0として止める)。

    取り替えの行列を gg とすると、新しい行列は t ⁣g Ag{}^t\!g\,Ag で、行列式は det⁡A⋅(det⁡g)2≠0\det A\cdot(\det g)^2\neq0。対角行列の行列式は c0c1c2c3c_0c_1c_2c_3 なので、どの cic_i も0でない。

  2. kk は代数閉体なので ci\sqrt{c_i} がある。yiy_i を yi/ciy_i/\sqrt{c_i} に替えると f=y02+y12+y22+y32f=y_0^2+y_1^2+y_2^2+y_3^2。
  3. i2=−1i^2=-1 となる i∈ki\in k をとり、z00=y0+iy1z_{00}=y_0+iy_1、z11=y0−iy1z_{11}=y_0-iy_1、z01=y2+iy3z_{01}=y_2+iy_3、z10=−(y2−iy3)z_{10}=-(y_2-iy_3) とおくと、z00z11−z01z10=y02+y12+y22+y32z_{00}z_{11}-z_{01}z_{10}=y_0^2+y_1^2+y_2^2+y_3^2。

    (y0+iy1)(y0−iy1)=y02+y12(y_0+iy_1)(y_0-iy_1)=y_0^2+y_1^2、(y2+iy3)(y2−iy3)=y22+y32(y_2+iy_3)(y_2-iy_3)=y_2^2+y_3^2 である。この取り替えの行列式は 44 で、標数が2でなければ0でない。

ハーツホーンの演習5.12 は、同じ対角化から、2次超曲面が非特異であることと ff が非退化であることが同値だと示させています。第5回の補足で見た「非退化な円錐曲線は1種類」と同じ議論を、変数を1つ増やして行ったことになります。

証明の2つ目と3つ目のステップは、実数では使えません。ci\sqrt{c_i} や ii がないからです。実数では、正の cic_i と負の cic_i の個数で形が分かれます(シルベスターの慣性法則)。

符号式(w=1w=1 で見る)実数の点実数の直線
+ + + ++\,+\,+\,+x2+y2+z2=−1x^2+y^2+z^2=-1なしなし
+ + + −+\,+\,+\,-x2+y2+z2=1x^2+y^2+z^2=1球面なし
+ + − −+\,+\,-\,-x2+y2−z2=1x^2+y^2-z^2=1一葉双曲面(QQ)2つの族

符号を全部入れ替えても同じ曲面なので、これで全部です。二葉双曲面 x2−y2−z2=1x^2-y^2-z^2=1 は、ww と xx の役割を入れ替えると球面と同じ式になり、射影空間では球面と同じ種類です。

例13 球面の上の直線

球面 S ⁣:x2+y2+z2=w2S\colon x^2+y^2+z^2=w^2 を考える。

(1) SS の実数の点は、実数の直線を含まない。
(2) k=Ck=\mathbb{C} では、SS は直線 (1, it, t)(1,\ it,\ t) と (1, −it, t)(1,\ -it,\ t)(w=1w=1、t∈Ct\in\mathbb{C})を含む。どちらも点 (1,0,0)(1,0,0) を通り、実数の点はこの1点だけである。

証明
  1. (1) 実数の直線は、実数の2点 p,qp,q で sp+tqsp+tq と書ける。w(sp+tq)=s w(p)+t w(q)=0w(sp+tq)=s\,w(p)+t\,w(q)=0 は0でない実数の解 (s,t)(s,t) をもつので、直線は平面 w=0w=0 と実数の点で交わる。
  2. ところが SS の実数の点で w=0w=0 なら x2+y2+z2=0x^2+y^2+z^2=0 で x=y=z=0x=y=z=0 となり、点にならない。よって SS に実数の直線は乗らない。
  3. (2) 12+(it)2+t2=1−t2+t2=11^2+(it)^2+t^2=1-t^2+t^2=1。実数の点になるには tt と itit がともに実数でなければならず、t=0t=0。

(2) は (1) と矛盾しません。実数の点を2つ含む直線は、その2点を通る実数の直線になります。だから、実数でない直線が含む実数の点は高々1つです。球面の各点には、互いに複素共役な2本の直線が通っていて、実数の図には点としてしか見えません。

(2) の2本は平面 x=1x=1 に乗っています。これは点 (1,0,0)(1,0,0) での SS の接平面で、例9のとおり、接平面との交わりが2本の直線になっています。実数の図では、接平面は球面に1点で触れているだけに見えます。

2次曲面の上の曲線の型

P2\mathbb{P}^2 の曲線は、次数1つで大まかに分けられました。Q=P1×P1Q=\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1 の上の曲線には、次数が2つあります。

定義14 曲線の型 [1, 例6.6.1, p.184; 1, 例6.6.2, p.185]

FF を双次数 (a,b)(a,b) の既約な双斉次式とする。QQ の上の曲線 C=σ(V(F))C=\sigma(V(F)) を型 (a,b)(a,b) の曲線と呼ぶ。

QQ の上の既約な曲線はどれも、既約な双斉次式 FF の零点集合として書け、FF は定数倍を除いて決まります(この記事では証明しません)。ハーツホーンは型を因子類群 Cl⁡(Q)≅Z⊕Z\operatorname{Cl}(Q)\cong\mathbb{Z}\oplus\mathbb{Z} を使って定めていて、{α}×P1\{\alpha\}\times\mathbb{P}^1 が型 (1,0)(1,0) です。この記事の約束と一致します。

例15 型の計算

(1) 直線 Lα=σ(V(α1a0−α0a1))L_\alpha=\sigma(V(\alpha_1a_0-\alpha_0a_1)) は型 (1,0)(1,0)、MβM_\beta は型 (0,1)(0,1)。
(2) 平面 ∑cijzij=0\sum c_{ij}z_{ij}=0 との交わりは、∑cijaibj=0\sum c_{ij}a_ib_j=0 なので双次数 (1,1)(1,1)。例えば平面 z01=z10z_{01}=z_{10} との交わりは対角線 a0b1−a1b0=0a_0b_1-a_1b_0=0、平面 z00=z11z_{00}=z_{11} との交わりは a0b0−a1b1=0a_0b_0-a_1b_1=0。
(3) ねじれ3次曲線 C={[s3:s2t:st2:t3]}C=\{[s^3:s^2t:st^2:t^3]\} は QQ に乗り、C=σ(V(a0b12−a1b02))C=\sigma\bigl(V(a_0b_1^2-a_1b_0^2)\bigr) で型 (1,2)(1,2)。

証明
  1. (2) 逆に、双次数 (1,1)(1,1) の式 ∑cijaibj\sum c_{ij}a_ib_j は zz の1次式 ∑cijzij\sum c_{ij}z_{ij} から来る。よって型 (1,1)(1,1) の曲線は、平面との交わりとして書ける。
  2. (3) s3⋅t3=s2t⋅st2s^3\cdot t^3=s^2t\cdot st^2 なので C⊆QC\subseteq Q。[s3:s2t:st2:t3][s^3:s^2t:st^2:t^3] の列は (s2,t2)(s^2,t^2) に、行は (s,t)(s,t) に比例するので、この点は σ([s2:t2],[s:t])\sigma([s^2:t^2],[s:t]) である。
  3. ([s2:t2],[s:t])\bigl([s^2:t^2],[s:t]\bigr) は a0b12=a1b02a_0b_1^2=a_1b_0^2 をみたす。逆にこの式をみたす (a,b)(a,b) は、b=[s:t]b=[s:t] とおくと a0t2=a1s2a_0t^2=a_1s^2 から a=[s2:t2]a=[s^2:t^2]。
  4. a0b12−a1b02a_0b_1^2-a_1b_0^2 は aa について1次なので、因数分解するなら bb だけの式で b12b_1^2 と b02b_0^2 をともに割るものが要るが、それは定数だけである。よって既約。

(3) のねじれ3次曲線は、鞍形の曲面 z=xyz=xy では (t,t2,t3)(t,t^2,t^3) です(s=1s=1)。第1回の図6や第6回の例9で扱った曲線そのもので、t⋅t2=t3t\cdot t^2=t^3 なので確かに z=xyz=xy に乗っています。図1の4つ目の段階がこの曲線です。

平面との交わりで見ると、P3\mathbb{P}^3 の中の曲線の次数も型から読めます。型 (a,b)(a,b) の曲線と一般の平面(型 (1,1)(1,1))の交点は、次の定理から a+ba+b 個です。ねじれ3次曲線なら 1+2=31+2=3 です。

定理16 QQ の上の交点の数 [2, 例1.4.3, p.96]

C,DC,D を QQ の上の型 (a,b)(a,b)、(a′,b′)(a',b') の曲線で、共通の成分をもたないとする。交点を重複度こみで数えると、ちょうど

C⋅D=ab′+a′bC\cdot D=ab'+a'bC⋅D=ab′+a′b\begin{aligned}C\cdot D &= ab'+a'b\end{aligned}

個である。

交点重複度は第9回と同じく、点のまわりの座標で dim⁡kOp/(f,g)\dim_k\mathcal{O}_p/(f,g) として数えます(第9回の定義1)。特別な場合として、同じ族の2本の直線は (1,0)⋅(1,0)=0(1,0)\cdot(1,0)=0、違う族の2本は (1,0)⋅(0,1)=1(1,0)\cdot(0,1)=1 で、命題8の (1)(2) と一致します。

一般の場合の証明はハーツホーンに任せ、直線との交点だけ確かめます。

命題17 直線との交点

DD を型 (a′,b′)(a',b') の曲線で、LαL_\alpha を含まないものとする。Lα∩DL_\alpha\cap D は重複度こみで b′b' 個である。

証明
  1. D=V(F)D=V(F) とする。F(α,b)F(\alpha,b) は b0,b1b_0,b_1 の b′b' 次の斉次式で、Lα⊈DL_\alpha\not\subseteq D なので0でない。
  2. kk は代数閉体なので、F(α,b)F(\alpha,b) は b′b' 個の1次式の積に分かれる。その根が Lα∩DL_\alpha\cap D の点 σ(α,β)\sigma(\alpha,\beta) で、根の重複度が交点重複度である。

    点のまわりで、aa の座標を uu(α\alpha で u=0u=0)、bb の座標を vv とすると、LαL_\alpha は u=0u=0 である。交点重複度は dim⁡kk[u,v](u,v)/(u,f)=dim⁡kk[v](v)/(f(0,v))\dim_k k[u,v]_{(u,v)}/(u,f)=\dim_kk[v]_{(v)}/(f(0,v)) で、f(0,v)f(0,v) の根 v=0v=0 の重複度に等しい。

(1,0)⋅(a′,b′)=1⋅b′+a′⋅0=b′(1,0)\cdot(a',b')=1\cdot b'+a'\cdot0=b' なので、定理と合っています。

例18 交点を数える

k=Ck=\mathbb{C} とし、CC を鞍形の曲面の上のねじれ3次曲線 (t,t2,t3)(t,t^2,t^3)(型 (1,2)(1,2))とする。

(1) 直線 y=cy=c(LL の1本、c≠0c\neq0)とは t=±ct=\pm\sqrt c の2点、直線 x=cx=c(MM の1本)とは t=ct=c の1点。(1,2)⋅(1,0)=2(1,2)\cdot(1,0)=2、(1,2)⋅(0,1)=1(1,2)\cdot(0,1)=1。
(2) 平面 z00=z11z_{00}=z_{11}(鞍形の曲面では z=1z=1)とは t3=1t^3=1 の3点 t=1, ω, ω2t=1,\ \omega,\ \omega^2(ω=e2πi/3\omega=e^{2\pi i/3})。(1,2)⋅(1,1)=3(1,2)\cdot(1,1)=3。
(3) 平面 z01=z10z_{01}=z_{10}(鞍形の曲面では x=yx=y)とは、t=t2t=t^2 の2点 t=0,1t=0,1 と、無限遠の点 [0:0:0:1][0:0:0:1] の3点。
(4) CC と型 (1,2)(1,2) の曲線 C′ ⁣:a1b02=a0(2b02−b12)C'\colon a_1b_0^2=a_0(2b_0^2-b_1^2)(a=2−b2a=2-b^2)は、(a,b)=(1,±1)(a,b)=(1,\pm1) の2点と、(∞,∞)(\infty,\infty) で重複度2の点で交わり、合計 4=(1,2)⋅(1,2)4=(1,2)\cdot(1,2)。

証明
  1. (1)(2) は代入するだけである。(2) の3点は t3−1t^3-1 の相異なる根で、実数の点は t=1t=1 だけである。
  2. (3) t=∞t=\infty の点は [s3:s2t:st2:t3][s^3:s^2t:st^2:t^3] の s=0s=0、つまり [0:0:0:1][0:0:0:1] で、z01=z10=0z_{01}=z_{10}=0 をみたす。
  3. (4) aa と bb が有限の所では b2=2−b2b^2=2-b^2 から b=±1b=\pm1。無限遠では a0=0a_0=0 か b0=0b_0=0 で、どちらの式からも a0=b0=0a_0=b_0=0、つまり点 (∞,∞)(\infty,\infty) だけ。

    CC は a1b02=a0b12a_1b_0^2=a_0b_1^2 である。b0=0b_0=0 なら a0b12=0a_0b_1^2=0 で a0=0a_0=0。a0=0a_0=0 なら a1b02=0a_1b_0^2=0 で b0=0b_0=0。C′C' も同じである。

  4. (∞,∞)(\infty,\infty) のまわりの座標 u=a0/a1u=a_0/a_1、v=b0/b1v=b_0/b_1 では、CC は u=v2u=v^2、C′C' は v2=u(2v2−1)v^2=u(2v^2-1)。u=v2u=v^2 を代入すると 2v2(v2−1)2v^2(v^2-1) で、v=0v=0 は2重根である。

    (1,±1)(1,\pm1) では CC の傾き da/db=2bda/db=2b と C′C' の傾き −2b-2b が違う(標数 ≠2\neq2)ので、重複度は1である。合計は 1+1+2=41+1+2=4。

(2) で、実数の図(図1)に見える交点は t=1t=1 の1点だけです。残りの2点は複素数の点です。(3) と (4) では、無限遠の点まで数えて初めて ab′+a′bab'+a'b に届きます。第9回のベズーの定理で見たことが、QQ の上でも起きています。

bb
aa
∞\infty
00
bb
aa
∞\infty
00
(α,β)(\alpha,\beta)
横の線 {α}×P1\{\alpha\}\times\mathbb{P}^1:型 (1,0)(1,0)
縦の線 P1×{β}\mathbb{P}^1\times\{\beta\}:型 (0,1)(0,1)
(∞,∞)(\infty,\infty)
a=ba=b:型 (1,1)(1,1)
a=b2a=b^2:型 (1,2)(1,2)
図3概念図P1(R)×P1(R)\mathbb{P}^1(\mathbb{R})\times\mathbb{P}^1(\mathbb{R}) を正方形で描いた図です。横に bb、縦に aa をとり、±∞\pm\infty を正方形の辺に置いています(目盛りは arctan⁡\arctan で縮めています)。向かい合う辺は同じ ∞\infty なので貼り合わせて考え、四隅はすべて同じ点 (∞,∞)(\infty,\infty) です。左は2つの族で、横の線が LαL_\alpha(型 (1,0)(1,0))、縦の線が MβM_\beta(型 (0,1)(0,1))です。右は対角線 a=ba=b(型 (1,1)(1,1))と放物線 a=b2a=b^2(型 (1,2)(1,2)、ねじれ3次曲線)です。放物線は横の線と2点、縦の線と1点で交わります。対角線との交点は 00、11 と隅の (∞,∞)(\infty,\infty) の3点で、(1,1)⋅(1,2)=3(1,1)\cdot(1,2)=3 です。

交点の数が ab′+a′bab'+a'b という双線形の式になるのは、型が因子類群の元を表しているからです。

定理19 QQ の因子類群 [1, 例6.6.1, p.184; 1, 例6.6.2, p.185]

Cl⁡(Q)≅Z⊕Z\operatorname{Cl}(Q)\cong\mathbb{Z}\oplus\mathbb{Z} で、型 (a,b)(a,b) の曲線の類は (a,b)(a,b) に対応する。平面との交わりの類は (1,1)(1,1) である。

P1\mathbb{P}^1 では次数が同型 Cl⁡(P1)≅Z\operatorname{Cl}(\mathbb{P}^1)\cong\mathbb{Z} を与えました(第10回の系15)。QQ では「aa についての次数」と「bb についての次数」の2つが独立に残ります。同じ双次数の F,GF,G の比 F/GF/G は QQ の有理関数で、その因子の類は (0,0)(0,0) です。

例20 ねじれ3次曲線は1つの曲面では切り出せない [1, 例6.6.3, p.185]

P3\mathbb{P}^3 のどんな曲面 YY についても、Y∩QY\cap Q はねじれ3次曲線 CC と集合として一致しない。一方、2次の錐 Y0 ⁣:z012=z00z10Y_0\colon z_{01}^2=z_{00}z_{10} との交わりは Y0∩Q=C∪L[0:1]Y_0\cap Q=C\cup L_{[0:1]} である。

証明
  1. Y⊇QY\supseteq Q なら Y∩Q=QY\cap Q=Q で、CC とは違う。YY を QQ を含まない dd 次の曲面とすると、Y∩QY\cap Q は因子として型 (d,d)(d,d) の類をもつ(平面との交わりの dd 倍と同じ類)。
  2. Y∩Q=CY\cap Q=C が集合として成り立つなら、因子として Y∩Q=rCY\cap Q=rC(r>0r>0)で、型は (r,2r)(r,2r)。(d,d)=(r,2r)(d,d)=(r,2r) から r=0r=0 となり矛盾。
  3. Y0∩QY_0\cap Q:z00≠0z_{00}\neq0 の所では z10=z012z_{10}=z_{01}^2、z11=z01z10=z013z_{11}=z_{01}z_{10}=z_{01}^3 で CC の点。z00=0z_{00}=0 の所では z01=0z_{01}=0 で、{z00=z01=0}=L[0:1]\{z_{00}=z_{01}=0\}=L_{[0:1]}。型は (2,2)=(1,2)+(1,0)(2,2)=(1,2)+(1,0) で合っている。

同じ議論で、型 (a,b)(a,b) が a≠ba\neq b の既約な曲線は、QQ と別の曲面1つの交わりとしては書けません。ねじれ3次曲線を式で切り出すには、QQ と Y0Y_0 の交わりから余分な直線 L[0:1]L_{[0:1]} を除くか、2次曲面 z102=z01z11z_{10}^2=z_{01}z_{11} を加えて3つの2次曲面の交わりにします。

型から曲線の種数も読めます。型 (a,b)(a,b)(a,b≥1a,b\geq1)の非特異な曲線の種数は (a−1)(b−1)(a-1)(b-1) です[2, 例1.5.2, p.97]。

型(1,1)(1,1)(1,2)(1,2)(2,2)(2,2)(2,3)(2,3)(3,3)(3,3)
P3\mathbb{P}^3 での次数 a+ba+b2233445566
種数 (a−1)(b−1)(a-1)(b-1)0000112244
例円錐曲線ねじれ3次曲線2次曲面2つの交わり平面曲線にない種数3次曲面との交わり

型 (2,2)(2,2) の曲線は QQ ともう1つの2次曲面の交わりで、非特異なら種数1の曲線(楕円4次曲線)です[1, 演習5.11, p.51–52]。型 (2,3)(2,3) の種数2の曲線は、第16回で非特異な平面曲線には現れないと見た種数です。平面曲線の種数 (d−1)(d−2)/2(d-1)(d-2)/2(第16回の命題5)と比べると、QQ の上では種数の現れ方が違います。

専門的な話型 (a,b)(a,b) の直線束と埋め込み

第11回の O(n)\mathcal{O}(n) の類似として、QQ には型 (a,b)(a,b) の可逆層 O(a,b)\mathcal{O}(a,b) があります。a,b≥0a,b\geq0 なら、大域切断は双次数 (a,b)(a,b) の双斉次式で、次元は (a+1)(b+1)(a+1)(b+1) です。O(1,1)\mathcal{O}(1,1) の切断 aibja_ib_j を並べたものがセグレ埋め込みです。

ハーツホーンは、a,b>0a,b>0 なら O(a,b)\mathcal{O}(a,b) が非常に豊富であることを、2つの P1\mathbb{P}^1 をそれぞれ次数 aa、bb の単項式で埋め込み、その積をセグレ埋め込みで送って示しています[1, 例7.6.2, p.211–212]。次数の高い単項式で埋め込む方法は、次回のヴェロネーゼ埋め込みです。

2次曲面と射影平面

QQ と P2\mathbb{P}^2 は、どちらも「A2\mathbb{A}^2 に無限遠の部分を足した曲面」です。違うのは足し方です。

命題21 QQ から2本の直線を除くと平面

p=[0:0:0:1]=σ([0:1],[0:1])p=[0:0:0:1]=\sigma([0:1],[0:1]) を通る2本の直線を L=L[0:1]={z00=z01=0}L=L_{[0:1]}=\{z_{00}=z_{01}=0\}、M=M[0:1]={z00=z10=0}M=M_{[0:1]}=\{z_{00}=z_{10}=0\} とする。

Q∩{z00=0}=L∪MQ∖(L∪M) ≅ A2 ≅ P2∖V+(u0)Q\cap\{z_{00}=0\}=L\cup M\qquad Q\setminus(L\cup M)\ \cong\ \mathbb{A}^2\ \cong\ \mathbb{P}^2\setminus V_+(u_0)Q∩{z00=0}=L∪MQ∖(L∪M) ≅ A2 ≅ P2∖V+(u0)\begin{gathered}Q\cap\{z_{00}=0\}=L\cup M\\Q\setminus(L\cup M)\ \cong\ \mathbb{A}^2\ \cong\ \mathbb{P}^2\setminus V_+(u_0)\end{gathered}Q∩{z00=0}=L∪MQ∖(L∪M)≅A2≅P2∖V+(u0)\begin{aligned}Q\cap\{z_{00}=0\} &= L\cup M\\[4pt]Q\setminus(L\cup M) &\cong \mathbb{A}^2\\&\cong \mathbb{P}^2\setminus V_+(u_0)\end{aligned}
証明
  1. z00=0z_{00}=0 なら QQ の式は z01z10=0z_{01}z_{10}=0 で、z01=0z_{01}=0 か z10=0z_{10}=0。それぞれ LL と MM である。
  2. z00≠0z_{00}\neq0 の部分は鞍形の曲面 z=xyz=xy で、(x,y,z)↦(x,y)(x,y,z)\mapsto(x,y) とその逆 (x,y)↦(x,y,xy)(x,y)\mapsto(x,y,xy) で A2\mathbb{A}^2 と同型である。

この同型は、点 pp から平面への射影 [z00:z01:z10:z11]↦[z00:z01:z10][z_{00}:z_{01}:z_{10}:z_{11}]\mapsto[z_{00}:z_{01}:z_{10}] で書けます。逆向きは、P2\mathbb{P}^2 の座標 [u0:u1:u2][u_0:u_1:u_2] で

[u0:u1:u2]⟼[u02:u0u1:u0u2:u1u2]\begin{aligned} &[u_0:u_1:u_2]\\ &\longmapsto[u_0^2:u_0u_1:u_0u_2:u_1u_2] \end{aligned}

です。右辺は u02⋅u1u2=u0u1⋅u0u2u_0^2\cdot u_1u_2=u_0u_1\cdot u_0u_2 なので QQ に乗ります。

ただし、どちらの写像も全体では定義されません。射影は pp で定義されず、LL を点 [0:0:1][0:0:1] に、MM を点 [0:1:0][0:1:0] に潰します。逆向きの写像は、右辺がすべて0になる2点 [0:1:0][0:1:0]、[0:0:1][0:0:1] で定義されず、直線 u0=0u_0=0 を点 pp に潰します。

QQ と P2\mathbb{P}^2 は同型ではありません。P2\mathbb{P}^2 では、ベズーの定理(第5回の定理12)により、どの2曲線も交わります。一方、QQ には交わらない2本の直線 LαL_\alpha、Lα′L_{\alpha'} があります。

因子類群も Z\mathbb{Z} と Z⊕Z\mathbb{Z}\oplus\mathbb{Z} で違います。

専門的な話ブローアップで見た QQ と P2\mathbb{P}^2

潰される曲線と定義されない点は、ブローアップで整理できます。第7回で扱ったのは平面の原点でのブローアップ(第7回の定義2)ですが、曲面の点でも同じように定義できます[1, §II.7, p.221–222]。

QQ を点 pp でブローアップした曲面と、P2\mathbb{P}^2 を2点 [0:1:0][0:1:0]、[0:0:1][0:0:1] でブローアップした曲面は同型です[2, 演習4.1, p.161]。

QQ の側では pp が例外曲線に替わり、P2\mathbb{P}^2 の側では2点がそれぞれ例外曲線に替わります。QQ の L,ML,M が P2\mathbb{P}^2 の側の2本の例外曲線に、P2\mathbb{P}^2 の直線 u0=0u_0=0 が QQ の側の例外曲線に対応します。

逆向きの写像の成分 u02, u0u1, u0u2, u1u2u_0^2,\ u_0u_1,\ u_0u_2,\ u_1u_2 は、2点 [0:1:0][0:1:0]、[0:0:1][0:0:1] を通る円錐曲線の式の基底です。ハーツホーンの演習は、この「2点を通る円錐曲線の線形系」で写像を作っています。

まとめ:2次曲面の表

見方式・対応例
セグレ埋め込み([a],[b])↦[a tb]([a],[b])\mapsto[a\,{}^t b]、像は det⁡Z=0\det Z=0([1:2],[3:1])↦[3:1:6:2]([1:2],[3:1])\mapsto[3:1:6:2]
2つの直線の族LαL_\alpha(列が α\alpha に比例)、MβM_\beta(行が β\beta に比例)接平面 z11=0z_{11}=0 で切ると L[1:0]∪M[1:0]L_{[1:0]}\cup M_{[1:0]}
アフィンの部分z00≠0z_{00}\neq0 で z=xyz=xy格子 x=tx=t、y=sy=s
実数の点x2+y2−z2=1x^2+y^2-z^2=1(標数 ≠2\neq2 の取り替え)ℓθ=L[c:s]\ell_\theta=L_{[c:s]}、mθ=M[c:s]m_\theta=M_{[c:s]}
分類代数閉体・標数 ≠2\neq2 で非退化なら QQ に移る球面は実数の直線をもたず、複素数の直線 (1,±it,t)(1,\pm it,t) をもつ
曲線の型双次数 (a,b)(a,b)、C⋅D=ab′+a′bC\cdot D=ab'+a'bねじれ3次曲線 (1,2)(1,2)、平面切断 (1,1)(1,1)
因子類群Cl⁡(Q)≅Z⊕Z\operatorname{Cl}(Q)\cong\mathbb{Z}\oplus\mathbb{Z}ねじれ3次曲線は1つの曲面では切り出せない

2次曲面 QQ は、行列式が0の 2×22\times2 行列の集まりで、行列を縦と横のベクトルに分けることが Q=P1×P1Q=\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1 という同一視でした。2つの直線の族は2つの成分の座標の線で、曲線の型や因子類群も「2つの次数」として現れました。

次回:次数を上げて埋め込む

今回のセグレ埋め込みは、2つの P1\mathbb{P}^1 の座標の積を並べて P3\mathbb{P}^3 に入れました。次回は、1つの P1\mathbb{P}^1 の座標の dd 次の単項式を並べる写像 [s:t]↦[sd:sd−1t:⋯:td][s:t]\mapsto[s^d:s^{d-1}t:\cdots:t^d] を考えます。

d=2d=2 なら円錐曲線、d=3d=3 なら今回 QQ の上で型 (1,2)(1,2) として見たねじれ3次曲線になります。こうしてできる曲線を有理正規曲線と呼びます。P2\mathbb{P}^2 を2次の単項式で P5\mathbb{P}^5 に埋め込むヴェロネーゼ曲面も扱います。

参考文献

  1. R. ハーツホーン(高橋宣能・松下大介 訳), 『代数幾何学 1』, 丸善出版, 2013.
  2. R. ハーツホーン(高橋宣能・松下大介 訳), 『代数幾何学 3』, 丸善出版, 2012.