この記事の要点
- セグレ埋め込み
- 点の組 ([a0:a1],[b0:b1]) を、行列 atb の成分 [a0b0:a0b1:a1b0:a1b1] に送ります。これで P1×P1 が P3 の2次曲面 Q:z00z11=z01z10 と1対1に対応します。Q は階数1の 2×2 行列の集まりです。
- 2つの直線の族
- a を止めてできる直線 Lα と、b を止めてできる直線 Mβ が Q を覆い、Q に含まれる直線はこれで全部です。同じ族の2本は交わらず、違う族の2本はちょうど1点で交わります。
- 一葉双曲面
- 実数で座標を取り替えると、Q は x2+y2−z2=1 になります。曲がった曲面ですが、2通りの直線の族で覆われています。標数が2でない代数閉体の上では、非退化な2次曲面はすべて Q に移ります。
- 曲線の型
- Q の上の曲線は、双斉次式の2つの次数 (a,b) で分けられ、2曲線の交点の数は ab′+a′b です。ねじれ3次曲線は型 (1,2) で、因子類群は Cl(Q)≅Z⊕Z です。
- 証明は、ステップの流れだけを短く書いています。「詳しく」の付いた行をクリックすると、そのステップの詳しい説明が開きます。説明の中にも開ける行があります。
- 定義・命題・定理には、記事全体で通し番号を振っています。
- もう少し詳しくは補足、専門的な話は先の回につながる話題です。どちらも開かずに読み進められます。
- 各ブロックの「AIに質問」を押すと、その部分の内容を入れた質問文で、お使いのAIを開けます。
前回まで
第16回までは、曲線を調べてきました。第5回で射影平面 P2 を作り、平面曲線を射影閉包(第5回の定義7)で無限遠まで延ばしました。そのあと交点・因子・微分形式と進み、第16回で曲線の種数にたどり着きました。
第17回からの4回は、射影空間の中の多様体、とくに曲面を見ます。今回は P3 の2次曲面、つまり2次の斉次式1つで定まる曲面です。2次曲面は2つの射影直線の積 P1×P1 と同じものだ、というのがこの記事の中心です。
積はこれまでにも出てきました。第7回のブローアップは A2×P1 の中に作り、閉集合を「P1 の座標について斉次な式」で定めました(第7回の定義1)。第8回では、第8回の定義6の後の補足で、スキームの積にあたるファイバー積に触れました。すべてアフィンなら、ファイバー積は環のテンソル積の Spec です。
この記事では、まず P1×P1 を P3 の中に置くセグレ埋め込みを作り、像が2次曲面になることを示します。次に、その曲面に乗っている2つの直線の族を調べ、実数の点で一葉双曲面として眺めます。最後に、2次曲面の上の曲線を2つの次数 (a,b) で分け、交点の数と因子類群を求めます。
P1×P1 を P3 に入れる:セグレ埋め込み
この記事では k を代数閉体とし、ハーツホーンの第 I 章と同じく、多様体の点は k の点で考えます。標数は任意で、標数2を除く箇所はそのつど断ります。ハーツホーンの第 I 章は零点集合を Z と書きますが、この連載では V、射影空間では V+ と書きます。
P3 の点を [z00:z01:z10:z11] と書きます。添字が2つあるのは、4つの座標を 2×2 行列に並べたいからです。
ZQ=(z00z10z01z11),=V+(z00z11−z01z10)={[Z]∈P3∣detZ=0}
Z を0でない定数倍しても detZ=0 かどうかは変わらないので、Q は P3 の閉集合です。この記事で調べるのは、この2次曲面です。ハーツホーンの演習は同じ曲面を xy=zw と書いています[1, 演習2.15, p.18]。
定義1 セグレ写像 [1, 演習2.14, p.18; 1, 演習2.15, p.18]
a=(a0,a1)、b=(b0,b1) を縦ベクトルとみて、
σ:P1×P1→P3,([a0:a1],[b0:b1])⟼[a0b0:a0b1:a1b0:a1b1]
と定める。行列で書くと、σ(a,b) は行列 atb=(a0b0a1b0a0b1a1b1) の表す点である。σ をセグレ写像と呼ぶ。
代表の取り方によらないことを確かめます。a を λa に替えると4つの成分がすべて λ 倍になるので、同じ点です。ai=0、bj=0 となる i,j があるので aibj=0 で、成分がすべて0になることもありません。
例2 セグレ写像で点を送る
どんな体でも次が成り立つ。
(1) σ([1:2],[3:1])=[1⋅3:1⋅1:2⋅3:2⋅1]=[3:1:6:2]。3⋅2=1⋅6 なので Q の上にある。
(2) σ([1:0],[1:0])=[1:0:0:0]、σ([0:1],[0:1])=[0:0:0:1]。
(3) σ([1:s],[1:t])=[1:t:s:st]。
命題3 セグレ写像の像は Q [1, 演習2.14, p.18; 1, 演習2.15(a), p.18]
(1) σ の像は Q に一致する。
(2) σ は単射である。
したがって σ は P1×P1 から Q への全単射で、逆写像は Z を「0でない列 a」と「0でない行 b」の組 ([a],[b]) に送る。
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像が
Q に
入ること:det(atb)=a0b0⋅a1b1−a0b1⋅a1b0=0。Q の点が像に入ること:detZ=0 で zij=0 なら、zij を含む列 a と行 b について atb=zijZ となる。詳しく閉じる
例えば z00=0 なら a=(z00,z10)、b=(z00,z01) で、
atb=(z002z10z00z00z01z10z01)=z00(z00z10z01z11)
右下の成分では z10z01=z00z11(detZ=0)を使った。ほかの zij でも同じで、zij と同じ行・同じ列にない成分だけ detZ=0 を使う。
単射である
こと:atb の各列は a の定数倍で、0でない列がある。よって atb=λa′tb′ なら [a]=[a′]。行を見れば [b]=[b′]。
行列の言葉で言い直します。0でない 2×2 行列 Z について、detZ=0 は階数が1であることと同じです。階数1の行列は、縦ベクトルと横ベクトルの積 atb に書け、a と b は定数倍を除いて決まります。つまり、Q の点を P1 の点2つに分ける操作が σ−1 です。
例2(1) の点 [3:1:6:2] では、列 (3,6) と (1,2) はどちらも (1,2) の定数倍、行 (3,1) と (6,2) はどちらも (3,1) の定数倍です。こうして ([1:2],[3:1]) が読み取れます。
次に、P1×P1 の閉集合を決めます。第7回の A2×P1 と同じく、それぞれの P1 の座標について斉次な式を使います。
定義4 双斉次式と P1×P1 の閉集合
F∈k[a0,a1,b0,b1] が a0,a1 について d 次、b0,b1 について e 次の斉次式であるとき、F を双次数 (d,e) の双斉次式と呼ぶ。このとき
F(λa,μb)=λdμeF(a,b)(λ,μ∈k×)F(λa,μb)=λdμeF(a,b)(λ,μ∈k×)F(λa,μb)=λdμeF(a,b)(λ,μ∈k×)
なので、F=0 かどうかは点 ([a],[b]) だけで決まる。双斉次式の集合 S の共通の零点集合 V(S) の形の集合を、P1×P1 の閉集合と呼ぶ。
例えば a0b1−a1b0 は双次数 (1,1) で、その零点集合は対角線 Δ={([a],[a])} です。a0b12−a1b02 は双次数 (1,2) です。
命題5 σ は閉集合を閉集合に移す [1, 演習2.15(a), p.18]
P1×P1 の閉集合の σ による像は Q の閉集合で、Q の閉集合の逆像は P1×P1 の閉集合である。したがって σ は P1×P1 と Q の同相写像である。
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z の
m 次の
斉次式 G に zij=aibj を代入すると、双次数 (m,m) の双斉次式になる。よって Q の閉集合 Q∩V+(G) の逆像は閉集合である。 逆に、双次数 (d,e) の F の零点集合は、m=max(d,e) として、双次数 (m,m) の式 aim−dbjm−eF(i,j=0,1)の共通の零点集合に等しい。詳しく閉じる
各点で ai=0 となる i と bj=0 となる j があるので、F=0 と「4つの aim−dbjm−eF がすべて0」は同値である。
双次数
(m,m) の
単項式 ai1⋯aimbj1⋯bjm は zi1j1⋯zimjm の値に等しい。よって双次数 (m,m) の双斉次式は、z の m 次の斉次式 G を使って G(σ(a,b)) と書け、閉集合の像は Q の閉集合になる。
この命題から、以後は σ で P1×P1 と Q を同一視します。スキームとしても、ファイバー積 P1×kP1 は σ で Q と同型になり、ハーツホーンは Q≅P1×P1 をこの形で使っています[1, 例6.6.1, p.184]。
この位相は、2つの P1 の位相の積位相とは違います[1, 演習2.15(c), p.18]。積位相の閉集合は、全体を除くと、有限個の点と有限本の {α}×P1、P1×{β} の和集合です。対角線 Δ は Q の閉集合(平面 z01=z10 との交わり)ですが、そのどれでもありません。
Q の z00=0 の部分を見ておきます。アフィン座標 x=z01/z00、y=z10/z00、z=z11/z00 では Q の式は z=xy です。例2(3) から、点 ([1:s],[1:t]) は (x,y,z)=(t,s,st) に写ります。
A1×A1 ∼ Q∩{z00=0}={z=xy},(s,t)⟼(t, s, st)
Q のこの部分は、xy 平面の上の鞍形の曲面 z=xy のグラフです。真上から見た影 (x,y)=(t,s) は、A1×A1 の点そのものです。
定義6 一般のセグレ埋め込み [1, 演習2.14, p.18]
N=(m+1)(n+1)−1 とし、PN の斉次座標を zij(0≤i≤m、0≤j≤n)とする。
Pm×Pn→PN,([a0:⋯:am],[b0:⋯:bn])⟼[aibj]i,j
をセグレ埋め込みと呼ぶ。像は、(m+1)×(n+1) 行列 (zij) の 2×2 小行列式がすべて0になる点、つまり階数1の行列の集合 V+(zijzkl−zilzkj) である。
m=n=1 なら小行列式は detZ の1つだけで、Q に戻ります。m=1、n=2 なら P1×P2→P5 で、2×3 行列の3つの小行列式 z00z11−z01z10、z00z12−z02z10、z01z12−z02z11 が像を定めます。この記事では m=n=1 だけを扱います。
2つの直線の族
P1×P1 には、一方の成分を止めてできる曲線が2種類あります。これを σ で Q に送ります。
定義7 2つの直線の族 [1, 演習2.15(b), p.18]
α,β∈P1 について
Lα=σ({α}×P1)Mβ=σ(P1×{β})Lα=σ({α}×P1)Mβ=σ(P1×{β})LαMβ=σ({α}×P1)=σ(P1×{β})
とおく。Lα は b↦αtb という単射な線形写像 k2→k4 の像なので、P3 の直線である。Mβ も同様である。式で書くと、列が α に比例する、行が β に比例するという条件になる。
LαMβ=V+(α1z00−α0z10,=V+(α1z01−α0z11),=V+(β1z00−β0z01,=V+(β1z10−β0z11)
例2(1) で確かめます。L[1:2] は 2z00−z10=0、2z01−z11=0 で、[3:1:6:2] を代入すると 6−6=0、2−2=0 です。M[3:1] は z00−3z01=0、z10−3z11=0 で、3−3=0、6−6=0 です。
鞍形の曲面 z=xy では、L[1:s] は「y=s、z=sx」、M[1:t] は「x=t、z=ty」という直線です。真上から見ると、横の線 y=s と縦の線 x=t の格子になります。
命題8 Q の上の直線 [1, 演習2.15(b), p.18; 2, 例1.4.3, p.96]
(1) α=α′ なら Lα∩Lα′=∅、β=β′ なら Mβ∩Mβ′=∅。
(2) Lα∩Mβ={σ(α,β)}。
(3) Q に含まれる直線は、ある Lα かある Mβ である。
(4) Q の各点 σ(α,β) を通り Q に含まれる直線は、Lα と Mβ の2本だけである。
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(1)(2) は
σ が
単射であることから従う。例えば Lα∩Mβ=σ(({α}×P1)∩(P1×{β}))={σ(α,β)}。(3) 直線 ℓ⊆Q の相異なる2点 p=σ(α,β)、q=σ(α′,β′) をとる。行列として det(p+q)=det(α α′)det(β β′) である。詳しく閉じる
(α α′) は α,α′ を並べた 2×2 行列である。次の分解から、行列式の積の公式で従う。
sαtβ+tα′tβ′=(αα′)(s00t)t(ββ′),det=det(α α′)⋅st⋅det(β β′)
s=t=1 とおけばよい。
p=q なので
p+q は
0でないベクトルで、ℓ の点を表す。ℓ⊆Q から det(p+q)=0 で、det(α α′)=0 か det(β β′)=0。 det(α α′)=0 なら
[α]=[α′] で、
p,q は
どちらも直線 Lα に乗る。2点を通る直線は1本なので ℓ=Lα。もう一方の場合は ℓ=Mβ。 (4)
σ(α,β) を
通る Lα′ は α′=α のものだけで、Mβ′ も β′=β だけである。(2) から Lα=Mβ。
P3 の2本の直線が交わらないとき、2本はねじれの位置にあると言います。P3 では、同じ平面に乗る2本の直線は必ず交わるので、ねじれの位置の2本は同じ平面に乗りません。Q には、互いにねじれの位置にある直線の族が2つあることになります。
例9 接平面で切ると2本の直線
どんな体でも、f=z00z11−z01z10 の偏微分は (z11, −z10, −z01, z00) で、すべてが0になるのは z=0 のときだけである。よって Q のどの点でも接平面が1つに決まる。
p=[1:0:0:0]=σ([1:0],[1:0]) では偏微分は (0,0,0,1) で、接平面は z11=0 である。これと Q の交わりは
Q∩{z11=0}={z11=z01z10=0}={z10=z11=0}∪{z01=z11=0}=L[1:0]∪M[1:0]
で、p を通る2本の直線である。
ほかの点でも同じです。正則な 2×2 行列 A,B について Z↦AZtB は P3 の射影変換で、det(AZtB)=detAdetZdetB なので Q を Q に移します。σ(α,β) は σ(Aα,Bβ) に移るので、A,B を選べばどの点も p に移せます。
xyzy=0x=0x=yxy=1(t,t2,t3)
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ドラッグで回せます
青い曲面は鞍形の曲面 z=xy で、2次曲面 Q のうち z00=0 の部分です。オレンジは y が一定の直線(族 L)、緑は x が一定の直線(族 M)です。「真上」から見ると A1×A1 の正方形の格子に見えますが、回すと、格子の線がどれも曲面に乗った空間の直線だと分かります。
原点での接平面 z=0(灰色)と曲面の交わりは、xy=0、つまり原点を通る2本の直線 y=0(族 L)と x=0(族 M)です。回すと、接平面が曲面を2本の直線に沿って切っているのが見えます。
型 (1,1) の曲線の例です。青は平面 x=y との交わりで放物線 (t,t,t2)、紫は平面 z=1 との交わりで双曲線 xy=1 です。「真上」から見ると、青は格子の対角線、紫は xy=1 のグラフです。どちらも、縦の線・横の線の1本1本とちょうど1点で交わります。紫と x=0、y=0 の線の交点は無限遠にあり、図の外で交わる線もあります。
赤は第1回のねじれ3次曲線 (t,t2,t3) で、t⋅t2=t3 なので曲面 z=xy に乗っています。「真上」から見ると放物線 y=x2 で、横の線 y=0.64(濃いオレンジ)とは2点、縦の線とは1点で交わります。これが型 (1,2) です。
図1具体例Q の z00=0 の部分、鞍形の曲面 z=xy です(k=R)。最初の段階は定義7の2つの族で、オレンジが L(y が一定)、緑が M(x が一定)です。「真上」から見ると A1×A1 の正方形の格子に見え、回すと格子の線がどれも曲面に乗った空間の直線だと分かります。2つ目の段階は例9の接平面です。3つ目と4つ目の段階は、後の節で扱う型 (1,1) と (1,2) の曲線です。
実数の点で見る:一葉双曲面
鞍形の曲面に見えるのは、Q の一部だけです。Q のほぼ全体を目で見るために、実数の範囲で座標を取り替えます。
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z00z11−z01z10=(w+x)(w−x)−(y+z)(y−z)=w2−x2−y2+z2。
この取り替えは正則である。逆は w=(z00+z11)/2、x=(z00−z11)/2、y=(z01+z10)/2、z=(z01−z10)/2 で、2で割るので標数 =2 を使う。詳しく閉じる
(x,y,z,w) から (z00,z01,z10,z11) への行列の行列式は −4 で、標数が2でなければ0でない。
一葉双曲面には、次の2つの族の直線が乗っています。θ を実数とし、t を動かします。
ℓθ: (cosθ−tsinθ, sinθ+tcosθ, t)mθ: (cosθ+tsinθ, sinθ−tcosθ, t)ℓθ: (cosθ−tsinθ, sinθ+tcosθ, t)mθ: (cosθ+tsinθ, sinθ−tcosθ, t)
どちらも x2+y2=(cosθ∓tsinθ)2+(sinθ±tcosθ)2=1+t2=1+z2 をみたします。t=0 では、どちらもくびれの円 x2+y2=1 の点 (cosθ,sinθ) を通ります。
例11 一葉双曲面の直線は Lα と Mβ
k=R、c=cos(θ/2)、s=sin(θ/2) とする。命題10の座標で、
ℓθ=L[c:s]mθ=M[c:s]ℓθ=L[c:s]mθ=M[c:s]ℓθmθ=L[c:s]=M[c:s]
θ が 0 から 2π まで動くと [c:s] は P1(R) をちょうど1周するので、2つの族は {Lα} と {Mβ} の実数の直線をすべて尽くす。
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ℓθ の点で z00=1+x、z10=y−z を半角の公式で書くと、(z00,z10)=2(c−ts)(c,s)。詳しく閉じる
1+cosθ=2c2、1−cosθ=2s2、sinθ=2sc を使う。
z00=2c2−2tsc=2c(c−ts)z10=2sc+t(cosθ−1)=2sc−2ts2=2s(c−ts)z00=2c2−2tsc=2c(c−ts)z10=2sc+t(cosθ−1)=2sc−2ts2=2s(c−ts)z00z10=2c2−2tsc=2c(c−ts)=2sc+t(cosθ−1)=2sc−2ts2=2s(c−ts)
同じく (z01,z11)=(y+z, 1−x)=2(s+tc)(c,s)。2つの列が (c,s) に比例するので、ℓθ の点は L[c:s] に乗る。詳しく閉じる
z01=2sc+t(cosθ+1)=2c(s+tc)、z11=2s2+2tsc=2s(s+tc)。点は σ([c:s],[c−ts:s+tc]) である。
mθ では2つの行が (c,s) に比例し、mθ⊆M[c:s] となる。どちらも直線なので等しい。詳しく閉じる
(z00,z01)=(1+x, y+z)=2(c+ts)(c,s)、(z10,z11)=(y−z, 1−x)=2(s−tc)(c,s) である。
違う族の2本の交点を計算します。ℓθ1 と mθ2 の点の z 座標がそろうのは同じ t のときで、残りの2つの座標の式を解くと t=−tan((θ1−θ2)/2) です。例えば ℓπ/2 と mπ は t=−tan(−π/4)=1 で、点 (−1,1,1) で交わります。
θ2=θ1+π のときは tan が定義されず、2本は平行です。例えば ℓ0 と mπ の向きはどちらも (0,1,1) です。射影空間では、平行な2本は無限遠で交わります(第5回の第5回の例6と同じです)。どちらも [x:y:z:w]=[0:1:1:0] を通り、命題8(2) のとおり1点で交わっています。
xyzx2+y2=1(−1,1,1)
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ドラッグで回せます
一葉双曲面 x2+y2−z2=1 です。黒い円は高さ 0 の切り口(くびれの円)x2+y2=1 です。曲面は曲がっていますが、次の段階で見るように、直線だけでできています。
1つ目の族(オレンジ):直線 (cosθ−tsinθ, sinθ+tcosθ, t) です。「真上」から見ると、どの直線もくびれの円の接線に見えます。回すと、どれも反時計回りに傾いて上っていきます。同じ族の2本は、どこでも交わりません(ねじれの位置)。
2つ目の族(緑):直線 (cosθ+tsinθ, sinθ−tcosθ, t) です。「真上」から見ると1つ目の族とまったく同じ接線に見えますが、回すと逆向きに傾いていて、別の直線だと分かります。
違う族の2本は1点で交わります。緑の直線(θ=π)は、オレンジの θ=π/2 の直線と点 (−1,1,1) で交わります。オレンジの θ=0 の直線とは平行で、この図の中では交わりませんが、射影空間では無限遠の1点で交わります。
図2具体例一葉双曲面 x2+y2−z2=1 と、その上の2つの族 ℓθ(オレンジ)と mθ(緑)です。θ は 30∘ ずつ動かしています。「真上」から見ると、どちらの族の直線もくびれの円の接線で、2つの族はまったく同じ線に重なります。回すと、オレンジは反時計回り、緑は時計回りに傾いて上っていて、曲がった曲面が2通りの直線の族で覆われていると分かります。最後の段階で、違う族の2本の交わり方を見ます。
「真上」で2つの族が重なるのは、ℓθ と mθ の (x,y) 座標が、t の符号を変えただけの同じ直線を描くからです。高さ z=t を見れば、2本は逆向きに上っています。
もう少し詳しく実数の点の全体はトーラス
P1(R) は円なので、Q の実数の点 P1(R)×P1(R) は円と円の積、つまりトーラスです。一葉双曲面は、そこから無限遠の部分 w=0 を除いたものです。
無限遠の部分は x2+y2=z2(w=0)で、平面 w=0 との交わりなので、次の節の言葉では型 (1,1) の曲線です。w=(z00+z11)/2 なので、式は a0b0+a1b1=0 です。
トーラスから、両方の向きに1周する円を1本除くと、筒(円柱)が残ります。一葉双曲面が筒の形をしているのはこのためです。
非退化な2次曲面は1種類
Q は特別な2次曲面に見えますが、標数が2でない代数閉体の上では、非退化な2次曲面はすべて Q に移ります。P3 の2次曲面とは、0でない2次の斉次式 f∈k[x0,x1,x2,x3] の零点集合 V+(f) のことです。
標数が2でないとき、f は対称行列 A を使って f(x)=txAx と書けます。対角成分は xi2 の係数、(i,j) 成分(i=j)は xixj の係数の半分です。detA=0 のとき f は非退化であると言います。
Q の式 z00z11−z01z10 の行列は、成分が ±1/2 の反対角の行列で、行列式は 1/16=0 です。
座標の取り替えは、第5回と同じく正則行列 g で [x]↦[gx] と移す射影変換です(今は 4×4 行列)。
定理12 非退化な2次曲面は Q に移る [1, 演習5.12, p.52]
k を標数が2でない代数閉体とし、f を4変数の非退化な2次形式とする。このとき、射影変換で V+(f) を Q=V+(z00z11−z01z10) に移せる。
証明開く閉じる
変数を線形に取り替えて、f=c0y02+c1y12+c2y22+c3y32(ci=0)の形にする。詳しく閉じる
B(u,v)=(f(u+v)−f(u)−f(v))/2=tuAv とおく。f=0 なので f(v)=0 となる v がある(すべての v で f(v)=0 なら B=0 で A=0)。
W={u∣B(v,u)=0} は3次元で、B(v,v)=f(v)=0 から v∈/W。v と W の基底 w1,w2,w3 を新しい基底にすると、B(v,wj)=0 なので f=f(v)y02+fW(y1,y2,y3) の形になる。fW は f を W に制限した2次形式で、W の上で同じことをくり返す(fW=0 になったら、残りの係数を0として止める)。
取り替えの行列を g とすると、新しい行列は tgAg で、行列式は detA⋅(detg)2=0。対角行列の行列式は c0c1c2c3 なので、どの ci も0でない。
k は
代数閉体なので
ci が
ある。yi を yi/ci に替えると f=y02+y12+y22+y32。 i2=−1 となる i∈k をとり、z00=y0+iy1、z11=y0−iy1、z01=y2+iy3、z10=−(y2−iy3) とおくと、z00z11−z01z10=y02+y12+y22+y32。詳しく閉じる
(y0+iy1)(y0−iy1)=y02+y12、(y2+iy3)(y2−iy3)=y22+y32 である。この取り替えの行列式は 4 で、標数が2でなければ0でない。
ハーツホーンの演習5.12 は、同じ対角化から、2次超曲面が非特異であることと f が非退化であることが同値だと示させています。第5回の補足で見た「非退化な円錐曲線は1種類」と同じ議論を、変数を1つ増やして行ったことになります。
証明の2つ目と3つ目のステップは、実数では使えません。ci や i がないからです。実数では、正の ci と負の ci の個数で形が分かれます(シルベスターの慣性法則)。
| 符号 | 式(w=1 で見る) | 実数の点 | 実数の直線 |
| ++++ | x2+y2+z2=−1 | なし | なし |
| +++− | x2+y2+z2=1 | 球面 | なし |
| ++−− | x2+y2−z2=1 | 一葉双曲面(Q) | 2つの族 |
符号を全部入れ替えても同じ曲面なので、これで全部です。二葉双曲面 x2−y2−z2=1 は、w と x の役割を入れ替えると球面と同じ式になり、射影空間では球面と同じ種類です。
例13 球面の上の直線
球面 S:x2+y2+z2=w2 を考える。
(1) S の実数の点は、実数の直線を含まない。
(2) k=C では、S は直線 (1, it, t) と (1, −it, t)(w=1、t∈C)を含む。どちらも点 (1,0,0) を通り、実数の点はこの1点だけである。
証明開く閉じる
(1) 実数の
直線は、実数の2点 p,q で sp+tq と書ける。w(sp+tq)=sw(p)+tw(q)=0 は0でない実数の解 (s,t) をもつので、直線は平面 w=0 と実数の点で交わる。ところが
S の
実数の点で w=0 なら x2+y2+z2=0 で x=y=z=0 となり、点にならない。よって S に実数の直線は乗らない。(2)
12+(it)2+t2=1−t2+t2=1。
実数の点になるには t と it がともに実数でなければならず、t=0。
(2) は (1) と矛盾しません。実数の点を2つ含む直線は、その2点を通る実数の直線になります。だから、実数でない直線が含む実数の点は高々1つです。球面の各点には、互いに複素共役な2本の直線が通っていて、実数の図には点としてしか見えません。
(2) の2本は平面 x=1 に乗っています。これは点 (1,0,0) での S の接平面で、例9のとおり、接平面との交わりが2本の直線になっています。実数の図では、接平面は球面に1点で触れているだけに見えます。
2次曲面の上の曲線の型
P2 の曲線は、次数1つで大まかに分けられました。Q=P1×P1 の上の曲線には、次数が2つあります。
定義14 曲線の型 [1, 例6.6.1, p.184; 1, 例6.6.2, p.185]
F を双次数 (a,b) の既約な双斉次式とする。Q の上の曲線 C=σ(V(F)) を型 (a,b) の曲線と呼ぶ。
Q の上の既約な曲線はどれも、既約な双斉次式 F の零点集合として書け、F は定数倍を除いて決まります(この記事では証明しません)。ハーツホーンは型を因子類群 Cl(Q)≅Z⊕Z を使って定めていて、{α}×P1 が型 (1,0) です。この記事の約束と一致します。
例15 型の計算
(1) 直線 Lα=σ(V(α1a0−α0a1)) は型 (1,0)、Mβ は型 (0,1)。
(2) 平面 ∑cijzij=0 との交わりは、∑cijaibj=0 なので双次数 (1,1)。例えば平面 z01=z10 との交わりは対角線 a0b1−a1b0=0、平面 z00=z11 との交わりは a0b0−a1b1=0。
(3) ねじれ3次曲線 C={[s3:s2t:st2:t3]} は Q に乗り、C=σ(V(a0b12−a1b02)) で型 (1,2)。
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(2) 逆に、
双次数 (1,1) の式 ∑cijaibj は z の1次式 ∑cijzij から来る。よって型 (1,1) の曲線は、平面との交わりとして書ける。(3)
s3⋅t3=s2t⋅st2 なので
C⊆Q。
[s3:s2t:st2:t3] の
列は (s2,t2) に、行は (s,t) に比例するので、この点は σ([s2:t2],[s:t]) である。([s2:t2],[s:t]) は
a0b12=a1b02 を
みたす。逆にこの式をみたす (a,b) は、b=[s:t] とおくと a0t2=a1s2 から a=[s2:t2]。 a0b12−a1b02 は
a に
ついて1次なので、因数分解するなら b だけの式で b12 と b02 をともに割るものが要るが、それは定数だけである。よって既約。
(3) のねじれ3次曲線は、鞍形の曲面 z=xy では (t,t2,t3) です(s=1)。第1回の図6や第6回の例9で扱った曲線そのもので、t⋅t2=t3 なので確かに z=xy に乗っています。図1の4つ目の段階がこの曲線です。
平面との交わりで見ると、P3 の中の曲線の次数も型から読めます。型 (a,b) の曲線と一般の平面(型 (1,1))の交点は、次の定理から a+b 個です。ねじれ3次曲線なら 1+2=3 です。
定理16 Q の上の交点の数 [2, 例1.4.3, p.96]
C,D を Q の上の型 (a,b)、(a′,b′) の曲線で、共通の成分をもたないとする。交点を重複度こみで数えると、ちょうど
C⋅D=ab′+a′bC⋅D=ab′+a′b
個である。
交点重複度は第9回と同じく、点のまわりの座標で dimkOp/(f,g) として数えます(第9回の定義1)。特別な場合として、同じ族の2本の直線は (1,0)⋅(1,0)=0、違う族の2本は (1,0)⋅(0,1)=1 で、命題8の (1)(2) と一致します。
一般の場合の証明はハーツホーンに任せ、直線との交点だけ確かめます。
命題17 直線との交点
D を型 (a′,b′) の曲線で、Lα を含まないものとする。Lα∩D は重複度こみで b′ 個である。
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D=V(F) と
する。F(α,b) は b0,b1 の b′ 次の斉次式で、Lα⊆D なので0でない。 k は代数閉体なので、F(α,b) は b′ 個の1次式の積に分かれる。その根が Lα∩D の点 σ(α,β) で、根の重複度が交点重複度である。詳しく閉じる
点のまわりで、a の座標を u(α で u=0)、b の座標を v とすると、Lα は u=0 である。交点重複度は dimkk[u,v](u,v)/(u,f)=dimkk[v](v)/(f(0,v)) で、f(0,v) の根 v=0 の重複度に等しい。
(1,0)⋅(a′,b′)=1⋅b′+a′⋅0=b′ なので、定理と合っています。
例18 交点を数える
k=C とし、C を鞍形の曲面の上のねじれ3次曲線 (t,t2,t3)(型 (1,2))とする。
(1) 直線 y=c(L の1本、c=0)とは t=±c の2点、直線 x=c(M の1本)とは t=c の1点。(1,2)⋅(1,0)=2、(1,2)⋅(0,1)=1。
(2) 平面 z00=z11(鞍形の曲面では z=1)とは t3=1 の3点 t=1, ω, ω2(ω=e2πi/3)。(1,2)⋅(1,1)=3。
(3) 平面 z01=z10(鞍形の曲面では x=y)とは、t=t2 の2点 t=0,1 と、無限遠の点 [0:0:0:1] の3点。
(4) C と型 (1,2) の曲線 C′:a1b02=a0(2b02−b12)(a=2−b2)は、(a,b)=(1,±1) の2点と、(∞,∞) で重複度2の点で交わり、合計 4=(1,2)⋅(1,2)。
証明開く閉じる
(1)(2) は
代入するだけである。(2) の3点は t3−1 の相異なる根で、実数の点は t=1 だけである。(3)
t=∞ の
点は [s3:s2t:st2:t3] の s=0、つまり [0:0:0:1] で、z01=z10=0 をみたす。(4) a と b が有限の所では b2=2−b2 から b=±1。無限遠では a0=0 か b0=0 で、どちらの式からも a0=b0=0、つまり点 (∞,∞) だけ。詳しく閉じる
C は a1b02=a0b12 である。b0=0 なら a0b12=0 で a0=0。a0=0 なら a1b02=0 で b0=0。C′ も同じである。
(∞,∞) のまわりの座標 u=a0/a1、v=b0/b1 では、C は u=v2、C′ は v2=u(2v2−1)。u=v2 を代入すると 2v2(v2−1) で、v=0 は2重根である。詳しく閉じる
(1,±1) では C の傾き da/db=2b と C′ の傾き −2b が違う(標数 =2)ので、重複度は1である。合計は 1+1+2=4。
(2) で、実数の図(図1)に見える交点は t=1 の1点だけです。残りの2点は複素数の点です。(3) と (4) では、無限遠の点まで数えて初めて ab′+a′b に届きます。第9回のベズーの定理で見たことが、Q の上でも起きています。
横の線
{α}×P1:型
(1,0)縦の線
P1×{β}:型
(0,1)(∞,∞) a=b:型
(1,1) a=b2:型
(1,2)
図3概念図P1(R)×P1(R) を正方形で描いた図です。横に b、縦に a をとり、±∞ を正方形の辺に置いています(目盛りは arctan で縮めています)。向かい合う辺は同じ ∞ なので貼り合わせて考え、四隅はすべて同じ点 (∞,∞) です。左は2つの族で、横の線が Lα(型 (1,0))、縦の線が Mβ(型 (0,1))です。右は対角線 a=b(型 (1,1))と放物線 a=b2(型 (1,2)、ねじれ3次曲線)です。放物線は横の線と2点、縦の線と1点で交わります。対角線との交点は 0、1 と隅の (∞,∞) の3点で、(1,1)⋅(1,2)=3 です。
交点の数が ab′+a′b という双線形の式になるのは、型が因子類群の元を表しているからです。
定理19 Q の因子類群 [1, 例6.6.1, p.184; 1, 例6.6.2, p.185]
Cl(Q)≅Z⊕Z で、型 (a,b) の曲線の類は (a,b) に対応する。平面との交わりの類は (1,1) である。
P1 では次数が同型 Cl(P1)≅Z を与えました(第10回の系15)。Q では「a についての次数」と「b についての次数」の2つが独立に残ります。同じ双次数の F,G の比 F/G は Q の有理関数で、その因子の類は (0,0) です。
例20 ねじれ3次曲線は1つの曲面では切り出せない [1, 例6.6.3, p.185]
P3 のどんな曲面 Y についても、Y∩Q はねじれ3次曲線 C と集合として一致しない。一方、2次の錐 Y0:z012=z00z10 との交わりは Y0∩Q=C∪L[0:1] である。
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Y⊇Q なら
Y∩Q=Q で、
C とは
違う。Y を Q を含まない d 次の曲面とすると、Y∩Q は因子として型 (d,d) の類をもつ(平面との交わりの d 倍と同じ類)。 Y∩Q=C が
集合として成り立つなら、因子として Y∩Q=rC(r>0)で、型は (r,2r)。(d,d)=(r,2r) から r=0 となり矛盾。 Y0∩Q:
z00=0 の
所では z10=z012、z11=z01z10=z013 で C の点。z00=0 の所では z01=0 で、{z00=z01=0}=L[0:1]。型は (2,2)=(1,2)+(1,0) で合っている。
同じ議論で、型 (a,b) が a=b の既約な曲線は、Q と別の曲面1つの交わりとしては書けません。ねじれ3次曲線を式で切り出すには、Q と Y0 の交わりから余分な直線 L[0:1] を除くか、2次曲面 z102=z01z11 を加えて3つの2次曲面の交わりにします。
型から曲線の種数も読めます。型 (a,b)(a,b≥1)の非特異な曲線の種数は (a−1)(b−1) です[2, 例1.5.2, p.97]。
| 型 | (1,1) | (1,2) | (2,2) | (2,3) | (3,3) |
| P3 での次数 a+b | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
| 種数 (a−1)(b−1) | 0 | 0 | 1 | 2 | 4 |
| 例 | 円錐曲線 | ねじれ3次曲線 | 2次曲面2つの交わり | 平面曲線にない種数 | 3次曲面との交わり |
型 (2,2) の曲線は Q ともう1つの2次曲面の交わりで、非特異なら種数1の曲線(楕円4次曲線)です[1, 演習5.11, p.51–52]。型 (2,3) の種数2の曲線は、第16回で非特異な平面曲線には現れないと見た種数です。平面曲線の種数 (d−1)(d−2)/2(第16回の命題5)と比べると、Q の上では種数の現れ方が違います。
専門的な話型 (a,b) の直線束と埋め込み
第11回の O(n) の類似として、Q には型 (a,b) の可逆層 O(a,b) があります。a,b≥0 なら、大域切断は双次数 (a,b) の双斉次式で、次元は (a+1)(b+1) です。O(1,1) の切断 aibj を並べたものがセグレ埋め込みです。
ハーツホーンは、a,b>0 なら O(a,b) が非常に豊富であることを、2つの P1 をそれぞれ次数 a、b の単項式で埋め込み、その積をセグレ埋め込みで送って示しています[1, 例7.6.2, p.211–212]。次数の高い単項式で埋め込む方法は、次回のヴェロネーゼ埋め込みです。
2次曲面と射影平面
Q と P2 は、どちらも「A2 に無限遠の部分を足した曲面」です。違うのは足し方です。
命題21 Q から2本の直線を除くと平面
p=[0:0:0:1]=σ([0:1],[0:1]) を通る2本の直線を L=L[0:1]={z00=z01=0}、M=M[0:1]={z00=z10=0} とする。
Q∩{z00=0}=L∪MQ∖(L∪M) ≅ A2 ≅ P2∖V+(u0)Q∩{z00=0}=L∪MQ∖(L∪M) ≅ A2 ≅ P2∖V+(u0)Q∩{z00=0}Q∖(L∪M)=L∪M≅A2≅P2∖V+(u0)
証明開く閉じる
z00=0 なら
Q の
式は z01z10=0 で、z01=0 か z10=0。それぞれ L と M である。 z00=0 の
部分は鞍形の曲面 z=xy で、(x,y,z)↦(x,y) とその逆 (x,y)↦(x,y,xy) で A2 と同型である。
この同型は、点 p から平面への射影 [z00:z01:z10:z11]↦[z00:z01:z10] で書けます。逆向きは、P2 の座標 [u0:u1:u2] で
[u0:u1:u2]⟼[u02:u0u1:u0u2:u1u2]
です。右辺は u02⋅u1u2=u0u1⋅u0u2 なので Q に乗ります。
ただし、どちらの写像も全体では定義されません。射影は p で定義されず、L を点 [0:0:1] に、M を点 [0:1:0] に潰します。逆向きの写像は、右辺がすべて0になる2点 [0:1:0]、[0:0:1] で定義されず、直線 u0=0 を点 p に潰します。
Q と P2 は同型ではありません。P2 では、ベズーの定理(第5回の定理12)により、どの2曲線も交わります。一方、Q には交わらない2本の直線 Lα、Lα′ があります。
因子類群も Z と Z⊕Z で違います。
専門的な話ブローアップで見た Q と P2
潰される曲線と定義されない点は、ブローアップで整理できます。第7回で扱ったのは平面の原点でのブローアップ(第7回の定義2)ですが、曲面の点でも同じように定義できます[1, §II.7, p.221–222]。
Q を点 p でブローアップした曲面と、P2 を2点 [0:1:0]、[0:0:1] でブローアップした曲面は同型です[2, 演習4.1, p.161]。
Q の側では p が例外曲線に替わり、P2 の側では2点がそれぞれ例外曲線に替わります。Q の L,M が P2 の側の2本の例外曲線に、P2 の直線 u0=0 が Q の側の例外曲線に対応します。
逆向きの写像の成分 u02, u0u1, u0u2, u1u2 は、2点 [0:1:0]、[0:0:1] を通る円錐曲線の式の基底です。ハーツホーンの演習は、この「2点を通る円錐曲線の線形系」で写像を作っています。
まとめ:2次曲面の表
| 見方 | 式・対応 | 例 |
| セグレ埋め込み | ([a],[b])↦[atb]、像は detZ=0 | ([1:2],[3:1])↦[3:1:6:2] |
| 2つの直線の族 | Lα(列が α に比例)、Mβ(行が β に比例) | 接平面 z11=0 で切ると L[1:0]∪M[1:0] |
| アフィンの部分 | z00=0 で z=xy | 格子 x=t、y=s |
| 実数の点 | x2+y2−z2=1(標数 =2 の取り替え) | ℓθ=L[c:s]、mθ=M[c:s] |
| 分類 | 代数閉体・標数 =2 で非退化なら Q に移る | 球面は実数の直線をもたず、複素数の直線 (1,±it,t) をもつ |
| 曲線の型 | 双次数 (a,b)、C⋅D=ab′+a′b | ねじれ3次曲線 (1,2)、平面切断 (1,1) |
| 因子類群 | Cl(Q)≅Z⊕Z | ねじれ3次曲線は1つの曲面では切り出せない |
2次曲面 Q は、行列式が0の 2×2 行列の集まりで、行列を縦と横のベクトルに分けることが Q=P1×P1 という同一視でした。2つの直線の族は2つの成分の座標の線で、曲線の型や因子類群も「2つの次数」として現れました。
次回:次数を上げて埋め込む
今回のセグレ埋め込みは、2つの P1 の座標の積を並べて P3 に入れました。次回は、1つの P1 の座標の d 次の単項式を並べる写像 [s:t]↦[sd:sd−1t:⋯:td] を考えます。
d=2 なら円錐曲線、d=3 なら今回 Q の上で型 (1,2) として見たねじれ3次曲線になります。こうしてできる曲線を有理正規曲線と呼びます。P2 を2次の単項式で P5 に埋め込むヴェロネーゼ曲面も扱います。
第5回の定義7 斉次化と射影閉包
k を体、f∈k[x,y] を次数 d≥1 の多項式とする。
F(x0,x1,x2)=x0df(x0x1, x0x2)F(x0,x1,x2)=x0df(x0x1, x0x2)
を f の斉次化と呼ぶ。F は次数 d の斉次多項式である。F=0 をみたす点 [x0:x1:x2] の全体を、曲線 f=0 の射影閉包と呼ぶ。
第7回の定義1 A2×P1 の閉集合
多項式 F∈k[x,y,u0,u1] が u0,u1 について d 次の斉次式であるとは、各項の u0,u1 の次数の和がすべて d であることをいう。このとき λ∈k について
F(x,y,λu0,λu1)=λdF(x,y,u0,u1)
なので、F が0になるかどうかは斉次座標の取り方によらない。そのような斉次式の集合 S について、
V(S)={((a,b),[c0:c1])∈A2×P1F(a,b,c0,c1)=0 (F∈S)}
の形の集合を A2×P1 の閉集合と呼ぶ。
第8回の定義6 ファイバー
φ:B→A を環の準同型、f:SpecA→SpecB を対応する射とする。P∈SpecB について、B→κ(P) を値をとる写像とし、
XP=Spec(A⊗Bκ(P))XP=Spec(A⊗Bκ(P))
を f の点 P の上のファイバーと呼ぶ。P が SpecB の生成点のとき(例えば B が整域で P=(0) のとき)、XP を生成ファイバーと呼ぶ。
第5回の例6 交点の計算
(1) k=R。平行な2直線 y=2x+1、y=2x−3 は α=(1,2,−1)、β=(−3,2,−1) で、
α×β=(2⋅(−1)−(−1)⋅2,(−1)(−3)−1⋅(−1),1⋅2−2⋅(−3))=(0,4,8)
なので、交点は [0:4:8]=[0:1:2] である。
(2) k を任意の体、b1=b2 とする。y=mx+b1 と y=mx+b2 は
(−b1,−m,1)×(−b2,−m,1)=(0, b1−b2, m(b1−b2))
より、無限遠点 [0:1:m] で交わる。
(3) k=R。縦の2直線 x=1、x=3 は (−1,1,0)×(−3,1,0)=(0,0,2) より [0:0:1] で交わる。平行でない y=x と y=−x+2 は (0,−1,1)×(−2,1,1)=(−2,−2,−2) より [1:1:1]、つまり平面の点 (1,1) で交わる。
(4) k=F5。y=2x+1 と y=2x+3 は (2) より [0:1:2] で交わる。y=x+1 と y=3x は
(−1,−1,1)×(0,−3,1)=(2,1,3)[2:1:3]=[3⋅2:3⋅1:3⋅3]=[1:3:4]
より、平面の点 (3,4) で交わる(2−1=3 を掛けた)。実際 4=3+1、4≡3⋅3(mod5) である。
第6回の例9 ねじれ3次曲線とその影
ねじれ3次曲線 C=V(y−x2, z−x3)⊆A3 は1次元で、ヤコビ行列は
J(p)=(−2x−3x21001)
である。右の2列から階数はどの点でも 2=3−1 で、C は非特異である。原点での接空間は T0C=KerJ(0)={(v1,0,0)}、つまり x 軸の方向である。
一方、影 D=V(y3−z2)⊆A2(座標 y,z)では、偏微分 (3y2, −2z) が原点で0になる。よって原点は D の特異点で、例4(2) と同じく、どの標数でもこれが唯一の特異点である。
第9回の定義1 交点重複度
f,g∈k[x,y] を、共通の因子(定数でない共通の約数)をもたない多項式とする。点 p∈A2 について
Ip(f,g)=dimk Op/(f,g)OpIp(f,g)=dimk Op/(f,g)Op
を、曲線 V(f) と V(g) の p での交点重複度と呼ぶ。
第10回の系15
次数は同型 deg:Cl(P1)→Z を引き起こす。とくに、どの因子 D も (degD){∞} と線形同値である。
第16回の命題5 平面曲線の種数
k を代数閉体(標数は任意)とし、C⊆P2 を非特異な d 次曲線とする。C の種数は
g=2(d−1)(d−2)g=2(d−1)(d−2)
である。
第5回の定理12 ベズーの定理
k を代数閉体とし、Y,Z を P2 の相異なる既約な曲線で、次数がそれぞれ d,e とする。交点を重複度こみで数えると、ちょうど de 個である。
第7回の定義2 原点でのブローアップ
A2×P1 の閉集合
A2=V(xu1−yu0)={((x,y),[u0:u1])xu1=yu0}
を、A2 の原点 O=(0,0) でのブローアップと呼ぶ。第1成分への写像を π:A2→A2、((x,y),[u0:u1])↦(x,y) と書き、E=π−1(O) を例外曲線と呼ぶ。
定数でない1変数多項式が、必ずその体の中に根をもつ体。例:C。R は代数閉体ではない(x2+1 に根がない)。代数閉体は必ず無限体である。
体 k で 1+1+⋯+1(p 個)=0 となる最小の正の整数 p。そのような p がなければ標数0と言う。標数は0か素数で、Fp の標数は p、Q,R,C の標数は0。体でない環でも同じように定める(Z の標数は0、Z/6 の標数は6)。0か素数になるのは体や整域の場合。
どの点のまわりも、ある環 A の SpecA(素イデアル全体に位相と構造層を載せた空間)と同じ形をしている空間。SpecA を貼り合わせて作れる。零点集合では区別できない x=0 と x2=0 の違いも扱える。連載第4回で定義している。
環の準同型 B→A、B→C から作る環 A⊗BC。a⊗c の形の元の和からなり、b∈B について (ba)⊗c=a⊗(bc) とみなす。例:B[x]⊗BC≅C[x]、A⊗B(B/J)≅A/JA。加群 M,N についても同じように M⊗BN を作る。
位相空間の間の全単射 f で、f も逆写像も連続なもの。開集合を開集合にちょうど移すので、位相空間として同じものとみなせる。
行列から行と列を同じ数ずつ選び、その交わりの成分でできる正方行列の行列式。例えば 2×4 行列の第 i,j 列からなる 2×2 小行列式は uivj−ujvi。行列の階数は、0でない小行列式の最大のサイズに等しい。
アフィン空間 An(や射影空間)の中で、定数でない1つの多項式 f の零点 V(f) として表される集合。単項イデアル定理から、各既約成分の次元は n−1 である。例:A3 の錐面 xy=z2。
既約な閉集合 Z に対して、閉包がちょうど Z になる点を Z の生成点と呼ぶ。Speck[x,y] では、素イデアル (0) に対応する点が平面全体の生成点になる。
0 でない元どうしの積が0にならない可換環(ab=0 なら a=0 または b=0)。例:Z、体上の多項式環。A/P が整域であることと、P が素イデアルであることは同値。
参考文献
- R. ハーツホーン(高橋宣能・松下大介 訳), 『代数幾何学 1』, 丸善出版, 2013.
- R. ハーツホーン(高橋宣能・松下大介 訳), 『代数幾何学 3』, 丸善出版, 2012.