この記事の要点
- 種数
- 非特異な射影曲線の種数 g は、正則な微分形式の空間の次元 ℓ(K) です。標準因子の次数は 2g−2 で、複素数の点がなす曲面では穴の数になります。
- 平面曲線
- 非特異な d 次の平面曲線の種数は (d−1)(d−2)/2 です。d=1,2,3,4,5 で 0,0,1,3,6 になり、種数2の曲線は現れません。
- 特異点で減る
- 特異点があると、種数は特異点ごとに δP だけ減ります。結節点と尖点では δP=1、タクノードでは 2 です。特異点をもつ既約な3次曲線は幾何種数0で、P1 で媒介変数表示できます。
- リーマン・フルヴィッツ
- n 次の射 X→Y では 2gX−2=n(2gY−2)+∑(eP−1) です。y2=x3−x の x 座標では 0=2⋅(−2)+4 となり、重根のない f なら y2=f(x) の種数は f の次数で決まります。
- 証明は、ステップの流れだけを短く書いています。「詳しく」の付いた行をクリックすると、そのステップの詳しい説明が開きます。説明の中にも開ける行があります。
- 定義・命題・定理には、記事全体で通し番号を振っています。
- もう少し詳しくは補足、専門的な話は先の回につながる話題です。どちらも開かずに読み進められます。
- 各ブロックの「AIに質問」を押すと、その部分の内容を入れた質問文で、お使いのAIを開けます。
前回の宿題
第15回では、曲線 X の上の因子 D について、関数の空間 L(D) の次元 ℓ(D) を数えるリーマン・ロッホの定理を見ました。
ℓ(D)−ℓ(K−D)=degD+1−gg=ℓ(K)ℓ(D)−ℓ(K−D)=degD+1−gg=ℓ(K)ℓ(D)−ℓ(K−D)g=degD+1−g=ℓ(K)
ここで K は標準因子、g は種数です。P1 では g=0、楕円曲線では g=1 でした。
第15回の最後に、種数を方程式から読むと予告しました。平面の d 次曲線の種数は (d−1)(d−2)/2 で、複素数の点で見ると穴の数になる、という話です。
この記事では、まず種数の3つの見方(ℓ(K)、degK、穴の数)を並べます。次に、平面曲線の種数の公式を導き、特異点があると種数が減ることを例で確かめます。最後に、射の分岐から種数を数えるリーマン・フルヴィッツの公式を使い、y2=f(x) の形の曲線の種数を求めます。
種数の3つの見方
この記事では k を代数閉体とします。ハーツホーンの第 IV 章にならい、曲線と言えば k 上の完備な非特異曲線、つまり非特異な射影曲線を指し、点は閉点を指します[1, §IV.1, p.2]。
特異点をもつ曲線や平面の中の曲線は、そのつど断ります。標数も、例ごとに断ります。
正則な微分形式と標準因子は第13回で扱いました。曲線 X の0でない有理微分形式 ω の因子 div(ω) の線形同値類が K で、正則な微分形式の空間は、ω を1つ決めると h↦hω で L(K) と同型になります。
定義1 種数 [1, 命題1.1, p.2]
X を曲線とする。X の上の正則な微分形式の空間 Γ(X,ΩX) は k 上有限次元である。その次元
g(X)=dimkΓ(X,ΩX)=ℓ(K)g(X)=dimkΓ(X,ΩX)=ℓ(K)
を X の種数と呼ぶ。
ハーツホーンは、この数が dimkH1(X,OX)(第14回のコホモロジー)とも、ヒルベルト多項式で定める算術種数とも一致することを示し、それをまとめて種数と呼んでいます。算術種数の話は、記事の後半の補足で触れます。
命題2 [1, 例1.3.3, p.6]
種数 g の曲線 X の標準因子の次数は degK=2g−2 である。
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リーマン・ロッホの
定理で D=K とおくと、ℓ(K)−ℓ(0)=degK+1−g。ℓ(K)=g、ℓ(0)=1 を代入すると g−1=degK+1−g で、degK=2g−2。詳しく閉じる
L(0) は X 全体で正則な関数の空間で、射影的な多様体の上では定数だけなので ℓ(0)=1 である[2, 定理3.4(a), p.24]。
逆に degK が分かれば、g=(degK)/2+1 で種数が決まります。この記事で種数を計算するときは、ほとんどこの形を使います。
例3 P1 と楕円曲線
(1) X=P1。座標を t、無限遠点のまわりの座標を s=1/t とする。dt は t が有限の点では零点も極ももたず、無限遠点では
dt=d(s1)=−s21dsdt=d(s1)=−s21ds
なので2位の極をもつ(第13回の定理11)。よって K=−2⋅∞、degK=−2 で、g=−2/2+1=0 である。
(2) k の標数は2でも3でもないとし、X を楕円曲線 y2=x3−x とする。微分形式 dx/2y は零点も極ももたない(第13回の定理13)。よって K=0、degK=0 で、g=0/2+1=1 である。
(1) で degK<0 なので、P1 には0でない正則な微分形式がありません。ℓ(K)=0 で、定義どおり g=0 です。(2) では ℓ(K)=ℓ(0)=1 で、正則な微分形式は dx/2y の定数倍だけです。
3つ目の見方は位相です。k=C のとき、曲線の複素数の点は複素1次元、実2次元の空間です。それがどんな曲面かは、種数だけで決まります。
定理4 複素数の点の形 [1, 付録B §5, p.215]
X を C 上の種数 g の曲線とする。X の複素数の点の全体 X(C) はコンパクトなリーマン面で、位相空間としては、球面に g 個の取っ手を付けた曲面(穴が g 個の閉じた曲面)と同相である。
この定理の証明には複素解析が要るので、この記事では引用にとどめます。逆に、コンパクトなリーマン面はすべて射影的な代数曲線から来ることも知られています[1, 付録B 定理3.1, p.207]。
穴が g 個の閉じた曲面のオイラー標数(頂点の数 − 辺の数 + 面の数)は 2−2g です。球面は 2、トーラスは 0、穴が2つの曲面は −2 です。これは degK=2g−2 の符号を変えたものになっています。
χ(X(C))=2−2g=−degKχ(X(C))=2−2g=−degK
このブラウザでは立体の図を表示できませんでした(WebGLが必要です)。
ドラッグで回せます
種数0:球面です。射影直線 P1 と、平面の円錐曲線(例えば x0x2=x12)の複素数の点がこの形です。
種数1:トーラスです。「真上」から見ると穴の開いた円板に見えますが、回すと中が空洞の管だと分かります。楕円曲線 y2=x3−x や、非特異な平面3次曲線の複素数の点がこの形です。
種数2:穴が2つの曲面です。y2=x5−x や y2=x6−1 の曲線がこの形です。2つのトーラスを少し重ねて描いた模式図で、外側の面だけが見えています。
種数3:穴が3つの曲面です。非特異な平面4次曲線(例えば x4+y4=z4)がこの形です。3つのトーラスを重ねた模式図です。
図1概念図定理4の、種数0〜3の曲面です。段階のボタンで種数を切り替えます。「真上」から見ると穴の開いた平らな図形に見えますが、回すと中が空洞の閉じた曲面で、穴の数が種数だと分かります。位相の形を表した模式図で、曲線の複素数の点を空間に置いたものではありません。種数2と3は、トーラスを少しずつ重ねて描いています。
平面曲線の種数
射影平面 P2(斉次座標 [x0:x1:x2])の非特異な曲線 C=V+(F) を考えます。F は d 次の既約な斉次式で、U0 の座標 x=x1/x0、y=x2/x0 では f(x,y)=F(1,x,y) です。非特異の判定は第6回の命題17のとおり、3つの偏微分で行います。
C の標準因子は、第13回の定理17とその後の補足で、次のように求めました。U0 の上の微分形式
ω=fydx=−fxdyω=fydx=−fxdy
は、U0 の中では零点も極ももちません(標数 p では fy が多項式として0になる座標もありますが、そのときは x と y を入れ替えます)。零点と極は無限遠直線 L∞=V+(x0) との交点にだけ現れ、その因子は、C と L∞ の交わりの因子 H(交点に交点重複度を付けたもの)の d−3 倍です(d<3 なら極)。
div(ω)=(d−3)HdegH=ddiv(ω)=(d−3)HdegH=ddiv(ω)degH=(d−3)H=d
degH=d は、第9回のベズーの定理(第5回の定理12)で、直線と d 次曲線の交点を重複度こみで数えたものです。したがって degK=d(d−3) です。
命題5 平面曲線の種数 [2, 演習7.2(b), p.74; 1, 例1.5.1, p.96–97]
k を代数閉体(標数は任意)とし、C⊆P2 を非特異な d 次曲線とする。C の種数は
g=2(d−1)(d−2)g=2(d−1)(d−2)
である。
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第13回の結果から degK=d(d−3)。詳しく閉じる
上で述べたとおり、div(dx/fy)=(d−3)H で degH=d である。ここは第13回の計算をそのまま使う。
命題2から
2g−2=d(d−3)。
よって g=(d2−3d+2)/2=(d−1)(d−2)/2。
ハーツホーンは、同じ公式を2通りに導いています。第 I 章ではヒルベルト多項式で定めた算術種数として、第 V 章では曲面の上の曲線の種数を求める随伴公式 2g−2=C⋅(C+K) から求めています。
| 次数 d | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
| degK=d(d−3) | −2 | −2 | 0 | 4 | 10 | 18 |
| 種数 g | 0 | 0 | 1 | 3 | 6 | 10 |
| 例 | 直線 | 円錐曲線 | 楕円曲線 | x4+y4=1 | x5+y5=1 | x6+y6=1 |
d=1,2 では g=0 です。直線は P1 そのもので、円錐曲線も P1 と同型でした(第5回の例19)。d=3 の g=1 は、非特異な平面3次曲線が楕円曲線であることと合っています。
種数は 0,0,1,3,6,10,… と飛び飛びで、種数2の曲線は非特異な平面曲線として現れません。種数2の曲線は、特異点をもつ平面曲線か、記事の後半の y2=f(x) の形で表します。
種数を ℓ(K) として直接確かめることもできます。p(x,y) を d−3 次以下の多項式とすると、pω は正則な微分形式です。そのような p の空間の次元は、ちょうど (d−1)(d−2)/2 です。
#{xiyj∣i+j≤d−3}=1+2+⋯+(d−2)=2(d−1)(d−2)
例えば d=4 なら ω, xω, yω の3つで、g=3 に合います。pω が正則なのは、p の無限遠での極が高々 (d−3)H で、ω の零点 (d−3)H で打ち消されるからです。
0でない p は d 次の既約な f で割り切れないので、C の上で0になりません。よって xiyjω(i+j≤d−3)は1次独立で ℓ(K)≥(d−1)(d−2)/2 です。命題と合わせると、正則な微分形式はこれで尽きています。
例6 フェルマー曲線
k の標数は d を割り切らないとし、C=V+(x1d+x2d−x0d)(U0 では xd+yd=1)とする。C は非特異で、種数は (d−1)(d−2)/2 である。d=3,4,5 では g=1,3,6 になる。
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F=x1d+x2d−x0d の
偏微分は −dx0d−1、dx1d−1、dx2d−1 である。標数が d を割り切らないので d=0 で、3つがすべて0になるのは x0=x1=x2=0 のときだけである。 F は既約である。詳しく閉じる
F=GH(G,H は次数1以上の斉次式)とする。G と H の既約因子 G1,H1 をとると、V+(G1) と V+(H1) は共通の点 P をもつ。2つが違う曲線ならベズーの定理(第5回の定理12)により、同じ曲線なら明らかである。
P では G=H=0 なので、∂F/∂xi=G∂H/∂xi+H∂G/∂xi はすべて0になり、前のステップに反する。
よって
第6回の命題17が
使え、偏微分が同時に0になる点はないので C は非特異である。
標数が d を割り切ると、話が変わります。標数 p で d=p なら xp+yp−1=(x+y−1)p なので、C は直線を p 重に数えたもので、すべての点が特異点です。
公式 (d−1)(d−2)/2 の形は、次のように見当を付けることもできます。証明ではなく、直観のための話です。
一般の位置にある d 本の直線の和集合は、d 次の平面曲線です。直線は P1 で、複素数の点では球面なので、d 個の球面が (2d) 個の交点でくっついた形です。
方程式を少し動かして非特異にすると、各交点が細い管に変わります。球面を頂点、管を辺とするグラフの「輪の数」が、できた曲面の穴の数です。
(2d)−d+1=2d(d−1)−d+1=2(d−1)(d−2)(2d)−d+1=2d(d−1)−d+1=2(d−1)(d−2)
図2概念図上は一般の位置にある3本と4本の直線、下は直線ごとの球面(丸)を交点ごとに管(灰色の帯)でつないだ図です。下の図の穴の数は、辺 − 頂点 + 1 で 3−3+1=1、6−4+1=3 になり、3次・4次曲線の種数と一致します。直線の位置には意味がなく、どの直線どうしが交わるかだけを描いています。
特異点で種数が減る
特異点のある平面曲線では、公式 (d−1)(d−2)/2 はそのままでは成り立ちません。結節点をもつ3次曲線 y2=x2(x+1) を見ます。この曲線の点は (t2−1, t3−t) と書けました(第1回の例16)。
この媒介変数表示は、t=±1 の2点を原点に重ねるだけで、ほかでは1対1です。つまり、この曲線は P1(穴なし)の2点を貼り合わせたものです。穴の数を数えるなら、貼り合わせる前の P1 の種数0を使うのが自然です。
そこで、特異点をもつ曲線には、関数体が同じ非特異な曲線を対応させます。
定義7 幾何種数 [2, 系6.12, p.62]
C を k 上の既約な射影曲線(特異点があってもよい)とする。関数体が C と同じ非特異な射影曲線 C が同型を除いてただ1つあり、双有理な射 C→C がある。C の種数を C の幾何種数と呼ぶ。
C→C を C の正規化と呼びます。C が非特異なら C=C です。結節点の3次曲線では、t=y/x が C の関数で、関数体は k(t) なので、C=P1 です。
定理8 特異点による種数の減り方 [1, 演習1.8, p.8; 1, 例3.9.2–3.9.3, p.140–141; 1, 注意3.11.1, p.31]
C⊆P2 を d 次の既約な曲線、C→C を正規化とする。C の各特異点 P に正の整数 δP が決まり、
g(C)=2(d−1)(d−2)−P∈SingC∑δPg(C)=2(d−1)(d−2)−P∈SingC∑δPg(C)=2(d−1)(d−2)=−P∈SingC∑δP
が成り立つ。δP は、P 自身と、ブローアップを繰り返したとき狭義変換に現れる P の上の特異点(P に無限に近い特異点)Q のすべてにわたる和 δP=∑QrQ(rQ−1)/2 である。rQ は Q での重複度である。
和の取り方を、第7回の例で確かめます。重複度は第6回の定義14のもので、2重点では r=2、r(r−1)/2=1 です。
- 結節点 y2=x2(x+1)(標数 =2):重複度2で、1回のブローアップで枝が分かれ、狭義変換は非特異になります(第7回の例11)。δ=1。
- 尖点 y2=x3:重複度2で、1回のブローアップで滑らかになります(第7回の例12)。δ=1。
- タクノード y2=x4(標数 =2):1回目の狭義変換 m2=x2 にまだ2重点が残り、2回目で分かれます(第7回の例13)。δ=1+1=2。
- r 本の枝が違う向きで交わる通常 r 重点:1回で分かれるので δ=r(r−1)/2。r=3 なら 3。
証明はハーツホーンに任せます。第 V 章では、ブローアップで重複度 r の点をほどくと算術種数が r(r−1)/2 減ることを、曲面の上の交点数で示しています[1, 系3.7, p.136]。
例9 特異点を1つもつ3次曲線は幾何種数0
次の3つはどれも、特異点が原点の1つだけの既約な3次曲線で、δ=1 である。定理の右辺は 1−1=0 で、実際どれも P1 で媒介変数表示できる。
(1) 結節点 y2=x2(x+1)(標数 =2):t↦(t2−1, t3−t)。
(2) 尖点 y2=x3:t↦(t2, t3)。
(3) デカルトの葉線 x3+y3=3xy(標数 =3):t↦(3t/(1+t3), 3t2/(1+t3))。
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媒介変数表示は、原点を通る直線 y=tx と曲線のもう1つの交点として求まる。詳しく閉じる
2重点を通る直線は、そこで曲線と2重以上に交わる。3次曲線と直線の交点は重複度こみで3個なので、残りはちょうど1点で、その座標は t の有理式になる。
(1) y=tx を代入すると t2x2=x2(x+1) で、x2 で割って x=t2−1、y=t3−t。(3) は x3(1+t3)=3tx2 から x=3t/(1+t3)、y=3t2/(1+t3)。(2) は t2x2=x3 から x=t2、y=t3。
x,y は
t の
有理式で、t=y/x は曲線の関数なので、関数体は k(t) である。よって正規化は P1 で、幾何種数は0である。 特異点が原点だけであること:(1)(2) は第6回の例4、(3) は第6回の例5(2) で平面の中を調べた。無限遠点も非特異である。詳しく閉じる
既約であること:(1)(2) は y の2次式で、x2(x+1)、x3 が k[x] の平方でないので既約である。(3) の既約性も第6回の例5で示した。
(1) の射影閉包 x0x22=x12(x1+x0) の無限遠点は x13=0 から [0:0:1] だけで、そこで ∂/∂x0 は x22−x12=1=0。(2) の射影閉包 x0x22=x13 の無限遠点も [0:0:1] だけで、∂/∂x0=x22=1=0(第5回の例11(2))。
(3) の無限遠点は x13+x23=0 をみたし、x1x2=0 である。そこで ∂(x13+x23−3x0x1x2)/∂x0=−3x1x2=0(標数 =3)。
k=Q で数を入れると、(1) の t=2 は (3,6)(36=9⋅4)、(3) の t=2 は (2/3, 4/3) です。8/27+64/27=72/27=8/3 と 3⋅(2/3)(4/3)=8/3 が一致します。
種数は負にならないので、定理から ∑δP≤(d−1)(d−2)/2 です。3次曲線なら右辺は1なので、既約な3次曲線の特異点は高々1つです。
これはベズーの定理からも分かります。2つの特異点 P,Q を通る直線は、P と Q でそれぞれ2重以上に交わり、交点の合計が 4>3 になります。すると直線が曲線の成分になり、既約性に反します。
例10 タクノードをもつ4次曲線
k の標数は2でないとし、C: y2=x4+y4(射影閉包は x02x22=x14+x24)とする。C は既約で、特異点は原点のタクノードだけで、δ=2 である。よって幾何種数は 3−2=1 である。
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f=x4+y4−y2 の平面の特異点は原点だけである。詳しく閉じる
fx=4x3=0 から x=0。すると f=y2(y2−1)=0 と fy=2y(2y2−1)=0 から y=0(y2=1 なら 2y2−1=1=0)。
無限遠点は
x14+x24=0、
x1=0 で、
∂/∂x1=4x13=0 なので
非特異である。原点は重複度2で、1回ブローアップすると狭義変換 m2=x2(1+m4) に結節点が残り、2回目で非特異になる。よって δ=1+1=2。詳しく閉じる
f(x,mx)=x2(x2+m4x2−m2) で、狭義変換の原点での最低次の部分は x2−m2(重複度2、接方向は2つ)。m=m′x とおくと x2(1+m′4x4−m′2) で、狭義変換 m′2=1+m′4x4 は x=0 の2点 m′=±1 で非特異である。
既約である。f=x4−y2(1−y)(1+y) は、k[y] の素元 1−y についてのアイゼンシュタインの判定法をみたす。詳しく閉じる
x の多項式として最高次の係数は1、途中の係数は0、定数項 −y2(1−y)(1+y) は 1−y で割り切れ、(1−y)2 では割り切れない。よって k[y][x]=k[x,y] で既約である。
実数の点では、y2(1−y2)=x4≥0 から ∣y∣≤1 で、上と下の2つの輪が原点で接した形です。幾何種数1の検算は、次の節のリーマン・フルヴィッツの公式でもできます。
専門的な話算術種数とヒルベルト多項式
特異点をもつ曲線にも、方程式だけから決まる種数があります。Y⊆Pn を r 次元の射影多様体、S(Y) をその斉次座標環とします。l 次の部分の次元 dimkS(Y)l は、l が十分大きいと l の多項式 PY(l) に一致します。これをヒルベルト多項式と呼びます[2, 定理7.5, p.70; 2, 定義, p.71]。
pa(Y)=(−1)r(PY(0)−1) を算術種数と呼びます[2, 演習7.2, p.74]。d 次の平面曲線では、S(Y)=k[x0,x1,x2]/(F) の l 次の部分の次元は、l 次の斉次式の空間の次元から、F の倍数(l−d 次の斉次式に F を掛けたもの)の空間の次元を引いたものです。よって l≥d で
PY(l)=(2l+2)−(2l−d+2)=dl−2d(d−3)pa=1−PY(0)=2(d−1)(d−2)PY(l)=(2l+2)−(2l−d+2)=dl−2d(d−3)pa=1−PY(0)=2(d−1)(d−2)PY(l)pa=(2l+2)−(2l−d+2)=dl−2d(d−3)=1−PY(0)=2(d−1)(d−2)PY(l)pa=(2l+2)=−(2l−d+2)=dl−2d(d−3)=1−PY(0)=2(d−1)(d−2)
です。例えば d=3 なら PY(l)=3l、pa=1、d=4 なら PY(l)=4l−2、pa=3 です。
この計算は F が特異点をもつかどうかによりません。結節点の3次曲線でも pa=1 です。一方、幾何種数は0でした。2つの種数の差が δP の和で、ハーツホーンは δP を、局所環 OP とその整閉包 OP の差の長さとして定義しています[1, 演習1.8, p.8]。
pa(C)=g(C)+P∑δPδP=length(OP/OP)pa(C)=g(C)+P∑δPδP=length(OP/OP)pa(C)δP=g(C)+P∑δP=length(OP/OP)
非特異な曲線では pa=g です[1, 命題1.1, p.2]。結節点 y2=x2(x+1) では、OP は t=y/x を加えた環で、OP/OP は t の類で張られる1次元の空間です。
分岐から種数を数える:リーマン・フルヴィッツの公式
楕円曲線 y2=x3−x の点 (x,y) に x を対応させる写像を考えます。ほとんどの x の上には2点 (x,±y) がありますが、y=0 になる x=0,1,−1 の上には1点しかありません。このように点が重なる場所を数えると、種数が分かります。
曲線の間の定数でない射 f:X→Y は有限射で、その次数は関数体の拡大次数 n=[K(X):K(Y)] です[2, §II.6, p.187]。K(X) が K(Y) の分離拡大のとき、f は分離的であると言います。標数0ならいつも分離的です。
定義11 分岐指数 [1, §IV.2, p.9]
f:X→Y を曲線の間の有限射、P∈X、Q=f(P) とする。t を Q での局所パラメータ(ordQ(t)=1 となる関数)とし、
eP=ordP(t∘f)eP=ordP(t∘f)
を P での分岐指数と呼ぶ。eP>1 のとき f は P で分岐していると言い、Q を分岐点と呼ぶ。標数が0か、標数が eP を割り切らないとき、分岐は馴(tame)であると言う。
各点 Q∈Y の上の分岐指数の和は、次数に等しくなります[2, 命題6.9, p.187–188]。
f(P)=Q∑eP=nf(P)=Q∑eP=n
n 個の点のうちいくつかが重なって、重なった点に重さ eP を付けたもの、と考えられます。第8回の x2=t の族の t=0 で見た「重なった点」(第8回の例11)と同じ現象です。
定理12 リーマン・フルヴィッツの公式 [1, 系2.4, p.12]
f:X→Y を曲線の間の有限で分離的な n 次の射とし、分岐はすべて馴であるとする。このとき
2g(X)−2=n(2g(Y)−2)+P∈X∑(eP−1)2g(X)−2=n(2g(Y)−2)+P∈X∑(eP−1)2g(X)−2=n(2g(Y)−2)=+P∈X∑(eP−1)
が成り立つ。右辺の和は、分岐している有限個の点だけが寄与する。
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Y の
0でない有理微分形式 ω をとる。f が分離的なので、引き戻し f∗ω も0でない有理微分形式である。 P∈X、Q=f(P) で、ordP(f∗ω)=ePordQ(ω)+(eP−1) である。詳しく閉じる
Q での局所パラメータを t、P での局所パラメータを u とすると、t∘f=aue(e=eP、a は P で値が0でない関数)と書ける。ω=hdt と書くと
f∗ω=(h∘f)d(aue)=(h∘f)(eaue−1+ueduda)duf∗ω=(h∘f)d(aue)=(h∘f)(eaue−1+ueduda)du
ordP(h∘f)=eordQ(h) である。馴なので k の中で e=0 で、括弧の中の位数は e−1 になる。
次数をとると degdiv(f∗ω)=ndegdiv(ω)+∑(eP−1)。詳しく閉じる
∑PePordf(P)(ω)=∑QordQ(ω)∑f(P)=QeP=n∑QordQ(ω) である。
両辺の
因子は KX と KY を表すので、命題2から 2g(X)−2=n(2g(Y)−2)+∑(eP−1)。
分岐が馴でないときも、∑(eP−1) をもっと大きい数に取り替えれば、同じ形の式が成り立ちます[1, 命題2.2, p.11]。分離的でないときは f∗ω=0 となり、この証明は使えません。
例13 楕円曲線の x 座標
k の標数は2でないとし、E を y2=x3−x の非特異な射影曲線、O を無限遠点とする。x 座標の射 x:E→P1 は2次で分離的である。
(1) a∈/{0,1,−1} の上には2点 (a,±b)(b2=a3−a=0)があり、どちらも e=1。
(2) 0,1,−1 の上にはそれぞれ1点 (0,0)、(1,0)、(−1,0) があり、e=2。
(3) ∞ の上には1点 O があり、e=2。
∑(eP−1)=4 で、リーマン・フルヴィッツの公式は 2⋅1−2=2⋅(0−2)+4、つまり 0=0 となる。
証明開く閉じる
x3−x は
k(x) で
平方でないので [k(x,y):k(x)]=2。T2−(x3−x) の根 ±y は異なる(標数 =2)ので分離的である。 (1) 2点
あり、分岐指数の和が2なので、どちらも e=1。(2)(3) 第10回の例19の div(x)=2(0,0)−2O から、ord(0,0)(x)=2、ordO(1/x)=2。x、1/x はそれぞれ 0、∞ での局所パラメータなので e=2。x∓1 も同様である。詳しく閉じる
x−1 については、y2=(x−1)⋅x(x+1) で、x(x+1) は (1,0) で値 2=0 をとる。よって ord(1,0)(x−1)=2ord(1,0)(y) は偶数で、分岐指数は2以下なので2である。x+1 も同じ。
k=C で数を入れると、x=2 の上には (2,±6) の2点、x=i の上には y2=i3−i=−2i から (i,±(1−i)) の2点があります。(1−i)2=−2i です。x が 0 に近づくと2点の距離が縮み、x=0 で1点に重なります。
RexImxRey01−1+y−y
このブラウザでは立体の図を表示できませんでした(WebGLが必要です)。
図3具体例例13を k=C で描いた図です。床の平面は x の複素平面(横が Rex、奥が Imx)で、各 x の上に y と −y の2点を、高さ 0.5Rey と −0.5Rey に置いています(青と緑)。「真上」から見ると2枚が重なり、これが2対1の射 x です。回すと2枚は上下に分かれ、分岐点 x=0,±1(黒)で1枚につながります。もう1つの分岐点 ∞ は図の外です。オレンジは実数の点で、「正面」から見ると第12回の図1の y2=x3−x を縦に半分に縮めた形です。Imy を捨てているので、Rey=0 となる曲線(x3−x が負の実数になる所)でも2枚が交わって見えますが、そこでは Imy が違い、本当は離れています。
同じ計算で、y2=f(x) の形の曲線の種数がすべて求まります。f の次数が4以上だと、平面の射影閉包は無限遠点で特異になります[1, 演習3.5, p.143]。そこで、射影閉包の正規化(定義7)、つまり関数体が k(x)[y]/(y2−f) の非特異な射影曲線を考えます。
例14 y2=f(x) の種数 [1, 演習2.2, p.16]
k の標数は2でないとし、f∈k[x] を重根をもたない m 次式(m≥1)、X を y2=f(x) の非特異な射影曲線とする。x:X→P1 は2次で、分岐点は
(1) f の m 個の根(それぞれ1点、e=2)と、
(2) m が奇数のときの ∞(1点、e=2)。m が偶数なら ∞ の上は2点で分岐しない。
よって分岐点は m が奇数なら m+1 個、偶数なら m 個で、
g(X)=⌈2m⌉−1g(X)=⌈2m⌉−1
である。言い換えると、m=2g+1 または m=2g+2 である。
証明開く閉じる
f は
重根をもたない1次以上の式なので k[x] で平方でなく、k(x) でも平方でない。よって T2−f は k(x) 上既約で、x は2次の射である。根 ±y は異なる(標数 =2)ので分離的である。 X のうち x=∞ の部分は、平面曲線 y2=f(x) そのものである。f が重根をもたないので、この平面曲線は非特異である。詳しく閉じる
特異点では 2y=0 かつ f′(x)=0 かつ y2=f(x) なので、f(x)=f′(x)=0 となり、x が f の重根になる。
根 a の上の点 P=(a,0) では eP=2。詳しく閉じる
f=(x−a)h(x)、h(a)=0 と書くと y2=(x−a)h で、h は P で値が0でない。よって eP=ordP(x−a)=2ordP(y) は偶数で、1≤eP≤2 から eP=2。
f(a)=0 なら、
a の
上には y=±f(a) の異なる2点があり、分岐しない。 ∞ では s=1/x、w=y/x⌈m/2⌉ とおくと w2=s2⌈m/2⌉−mh~(s)、h~(0)=0。m が偶数なら w=±h~(0) の2点、奇数なら w2=sh~(s) で、根の上の点と同じく e=2。詳しく閉じる
f=cmxm+⋯+c0 なら f/x2⌈m/2⌉=s2⌈m/2⌉−m(cm+cm−1s+⋯+c0sm) で、h~(0)=cm=0 である。
リーマン・フルヴィッツの
公式に代入して 2g−2=2⋅(−2)+2⌈m/2⌉、つまり g=⌈m/2⌉−1。
数を入れます。y2=x3−x は m=3 で g=1 です。y2=x5−x と y2=x6−1(標数3では x6−1=(x2−1)3 が重根をもつので除く)は m=5,6 で g=2、m=7,8 なら g=3 です。非特異な平面曲線には現れなかった種数2の曲線も、この形なら作れます。どの g についても、P1 の 2g+2 点で分岐する2重被覆として、種数 g の曲線が作れます。ただし、種数3以上の曲線がすべてこの形になるわけではありません。例えば非特異な平面4次曲線は、P1 への2次の射をもちません[1, 演習3.2, p.32]。
定理8とも比べられます。y2=x5−x の射影閉包は5次曲線で、(5−1)(5−2)/2=6 です。無限遠点 [0:0:1] は重複度3の特異点で、ブローアップすると重複度2の点が1つ現れるので、δ=3+1=4 です。6−4=2 となり、分岐から求めた種数と一致します。
y2=−(x2−1)(x2−4)(x2−9)
図4具体例種数2の曲線 y2=−(x2−1)(x2−4)(x2−9)(m=6)の実数の点です。右辺が0以上になるのは x が [−3,−2]、[−1,1]、[2,3] にあるときで、実数の点はその上の3つの輪になります。下の線は x 座標の P1 で、オレンジの6点 ±1,±2,±3 が分岐点です。x=0.5 の上には2点 (x,±y)、分岐点の上には1点があります。2⋅2−2=2⋅(−2)+6 です。
例15 フェルマー曲線を P1 に写す
k の標数は d を割り切らないとし、C を例6のフェルマー曲線 x1d+x2d=x0d とする。[x0:x1:x2]↦[x0:x1] は d 次の射 C→P1 で、xd=1 となる d 個の点の上ではそれぞれ1点(e=d)、ほかでは分岐しない。
2g−2=d⋅(−2)+d(d−1)=d(d−3)g=2(d−1)(d−2)2g−2=d⋅(−2)+d(d−1)=d(d−3)g=2(d−1)(d−2)2g−2g=d⋅(−2)+d(d−1)=d(d−3)=2(d−1)(d−2)2g−2g=d⋅(−2)=+d(d−1)=d(d−3)=2(d−1)(d−2)
証明開く閉じる
点
[0:0:1] は
C の
上にないので、この射影は C 全体で定義される。x=x1/x0 の上の点は yd=1−xd の解である。1−xd は
x=1 で
1位の零点をもつので、Td−(1−xd) は k(x) 上アイゼンシュタインで既約、次数は d。標数が d を割り切らないので分離的である。 xd=1 の
上には y が d 個、無限遠 x0=0 の上には x2d=−x1d の d 点がある。xd=1 の上は y=0 の1点で、分岐指数の和から e=d(馴)。
命題5は第13回の degK=d(d−3) から導きましたが、フェルマー曲線ではリーマン・フルヴィッツの公式から同じ値が出ました。2つの計算は独立なので、検算になります。
例10の4次曲線 y2=x4+y4 も、正規化 C を y 座標で P1 に写して確かめられます。x4=y2(1−y2) なので4次の射で、y=±1 の上は1点ずつ(e=4)です。y=0 の上は、タクノードの2本の枝にあたる2点で、どちらも e=2 です。∑(eP−1)=3+3+1+1=8 で、2g−2=4⋅(−2)+8=0、g=1 です。
もう少し詳しく位相で見たリーマン・フルヴィッツの公式
k=C なら、公式はオイラー標数の数え上げとして読めます。Y(C) を三角形に分け、分岐点が頂点に来るようにします。各三角形と各辺は、X(C) の中に n 個ずつの逆像をもちます。
頂点 Q の逆像は n 個ではなく、n−∑f(P)=Q(eP−1) 個です。よって
χ(X(C))=nχ(Y(C))−P∑(eP−1)χ(X(C))=nχ(Y(C))−P∑(eP−1)χ(X(C))=nχ(Y(C))=−P∑(eP−1)
χ=2−2g を代入し、符号を変えると、リーマン・フルヴィッツの公式になります。
y2=x3−x では、球面(χ=2)の2枚分 4 から、4つの分岐点の分 4 を引いて χ=0、つまりトーラスです。図3の青と緑の2枚の面に、図の外の部分と ∞ の上の点 O を加えた全体が、このトーラスにあたります。ただし2枚は分岐点だけでつながっているのではありません。Rey=0 の曲線を横切るように x を動かすと、y は青の面から緑の面へ連続に移ります。
まとめ:種数の求め方
| 求め方 | 式 | 例 |
| 正則な微分形式 | g=ℓ(K) | 4次曲線で ω, xω, yω:g=3 |
| 標準因子の次数 | degK=2g−2 | P1 で −2、楕円曲線で 0 |
| 複素数の点 | 穴の数、χ=2−2g | 球面、トーラス、穴2つの曲面 |
| 非特異な平面曲線 | (d−1)(d−2)/2 | d=1,…,5 で 0,0,1,3,6 |
| 特異点のある平面曲線 | (d−1)(d−2)/2−∑δP | 結節点・尖点の3次曲線で 0、タクノードの4次曲線で 1 |
| 射の分岐 | 2gX−2=n(2gY−2)+∑(eP−1) | y2=f(x)、degf=2g+1,2g+2 |
種数は、正則な微分形式の数、標準因子の次数、複素数の点の穴の数という3通りに見ることができました。平面曲線では次数から決まり、特異点があるとその分だけ減ります。射で別の曲線に写すと、分岐の数から種数が分かります。
同じ曲線の種数を、違う方法で求めて一致を確かめる場面が何度もありました。フェルマー曲線は標準因子とリーマン・フルヴィッツの公式で、y2=x5−x は特異点の δ と分岐で、タクノードの4次曲線は δ と分岐で計算しました。
第1回から第16回までを振り返る
連載はここで一区切りです。これまでの回で扱ったことを並べます。
- 第1回:零点集合 V とイデアル I の対応と零点定理。
- 第2回:素イデアルを点にした SpecA と生成点。
- 第3回:層・茎・芽と構造層。
- 第4回:スキームと貼り合わせ、射影直線。
- 第5回:射影平面と Proj、平行線が無限遠で交わること。
- 第6回:接空間と特異点、接錐。
- 第7回:ブローアップで特異点をほどく。
- 第8回:射とファイバー、族。
- 第9回:交点重複度とベズーの定理。
- 第10回:離散付値環、因子と主因子。
- 第11回:直線束(可逆層)と O(n)。
- 第12回:楕円曲線と弦と接線の足し算。
- 第13回:微分形式と標準因子。
- 第14回:チェック・コホモロジー。
- 第15回:リーマン・ロッホの定理。
- 第16回(この記事):種数を方程式と分岐から読む。
第1回の零点集合から始めて、曲線の種数という1つの数にたどり着きました。種数は、微分形式、因子、コホモロジー、位相のどれから求めても同じ数になり、この連載で扱った道具がすべて関わってきます。
次回からは曲線を離れ、射影空間の中の曲面や多様体を見ます。最初は、2方向の直線で編まれた2次曲面と、2つの射影直線の積を射影空間に入れるセグレ埋め込みです。
第13回の定理11
k を代数閉体とする。P1 の0でない微分形式 ω について degdiv(ω)=−2 である。標準因子は K=−2∞ にとれ、P1 には0でない正則な微分形式がない。
第13回の定理13
k を標数が2でも3でもない代数閉体、E を上の楕円曲線とする。ω=dx/2y はどの点でも零点も極ももたない。つまり div(ω)=0 で、E の標準因子は K=0、degK=0 である。
第6回の命題17
F∈k[x0,x1,x2] を d 次の既約な斉次式、C=V+(F)⊆P2 とする。点 P=[a0:a1:a2]∈C が C の特異点であることは、
∂x0∂F(a)=∂x1∂F(a)=∂x2∂F(a)=0(a=(a0,a1,a2))∂x0∂F(a)=∂x1∂F(a)=∂x2∂F(a)=0(a=(a0,a1,a2))∂x0∂F(a)=∂x1∂F(a)=∂x2∂F(a)=0(a=(a0,a1,a2))
と同値である。さらに標数が d を割り切らなければ、3つの偏微分が0になる点は自動的に C の上にある。
第13回の定理17
C⊆P2 を次数 d の非特異な平面曲線とする。標準因子は、C と直線の交点(重複度こみ、d 個)の d−3 倍と線形同値で、degK=d(d−3) である。
第5回の定理12 ベズーの定理
k を代数閉体とし、Y,Z を P2 の相異なる既約な曲線で、次数がそれぞれ d,e とする。交点を重複度こみで数えると、ちょうど de 個である。
第5回の例19 放物線の射影閉包は P1
k を体とし、T=k[x0,x1,x2]/(x0x2−x12) とする。ProjT は D+(x0) と D+(x2) で覆われ、
T(x0)=k[x,y]/(y−x2)≅k[x]T(x2)=k[a,b]/(a−b2)≅k[b]T(x0)=k[x,y]/(y−x2)≅k[x]T(x2)=k[a,b]/(a−b2)≅k[b]T(x0)T(x2)=k[x,y]/(y−x2)≅k[x]=k[a,b]/(a−b2)≅k[b]
である。重なりでは b=1/x となり、ProjT は t=x、s=b とした P1 と同型である。
第1回の例16 自分と交わる曲線
k を代数閉体とする。f=y2−x2(x+1) は既約多項式で、V(f)⊆A2 は既約である。
第6回の定義14 重複度と接錐
f∈k[x,y] が f(0,0)=0 をみたすとし、i 次の斉次式 fi を使って
f=fm+fm+1+⋯+fd(fm=0)f=fm+fm+1+⋯+fd(fm=0)f=fm+fm+1+⋯+fd(fm=0)
と書く。m を C=V(f) の原点での重複度と呼び、μ0(C) と書く。V(fm) を原点での接錐と呼ぶ。ほかの点では、平行移動でその点を原点に移して同じように定める。
第7回の例11 結節点のブローアップ
k を標数が2でない代数閉体とし、C=V(f)、f=y2−x2(x+1) とする。
(1) f(x,mx)=x2(m2−x−1) で、狭義変換は C=V(m2−x−1)⊆W0 である。
(2) C∩E は2点 m=1 と m=−1 で、接線 y=x、y=−x の傾きに当たる。
(3) C は非特異で、m↦(m2−1,m) によって直線 A1 と同型である。π を C に制限すると
m⟼(m2−1, m3−m)
となり、m=±1 の2点がともに O に移る以外は1対1である。
第7回の例12 尖点のブローアップ
k を代数閉体とし(標数は何でもよい)、C=V(f)、f=y2−x3 とする。
(1) f(x,mx)=x2(m2−x) で、狭義変換は C=V(x−m2)⊆W0 である。C は非特異で、m を座標とする直線と同型である。
(2) C∩E は1点 m=0 で、C はそこで E に接する。
(3) π を C に制限すると m↦(m2,m3) で、これは C から C への全単射である。
第7回の例13 タクノードのブローアップ
k を標数が2でない代数閉体とし、C=V(y2−x4) とする。C は2本の放物線 y=x2 と y=−x2 の和で、原点で同じ接線 y=0 をもつ。
(1) f(x,mx)=x2(m2−x2) で、狭義変換は C=V(m2−x2)⊆W0、つまり (x,m) の平面の2直線 m=x、m=−x である。C∩E は1点 m=0 で、C はそこに結節点をもつ。
(2) W0(座標 (x,m) の平面)の原点をもう一度ブローアップし、チャートで m=m′x とおくと、C の狭義変換は V(m′2−1)、つまり交わらない2直線 m′=1、m′=−1 である。これらは新しい例外曲線 E′ と別々の点で交わる。
第6回の例4 結節点と尖点
(1) k の標数は2でないとし、f=y2−x2(x+1)=y2−x3−x2 とする。
fx=−3x2−2x=−x(3x+2)fy=2yfx=−3x2−2x=−x(3x+2)fy=2yfxfy=−3x2−2x=−x(3x+2)=2y
特異点では y=0 かつ x(3x+2)=0 である。x=0 なら原点で、f(0,0)=0 なので C の上にある。x=−2/3(標数が3でないとき)では f(−2/3,0)=−94⋅31=−274=0 で、C の上にない。よって特異点は原点だけである。この原点を結節点と呼ぶ。
(2) f=y2−x3 とする。fx=−3x2、fy=2y で、特異点は原点だけである。この原点を尖点と呼ぶ。
(1)(2) の f はどちらも既約である。y の2次式 y2−g(x) が分解するのは g が多項式の平方のときだけで、x2(x+1) も x3 も平方ではない。
(3) 標数が3でもないとき、(1) の点 q=(3,6) は C の上にあり(36=9⋅4)、fx(q)=−33、fy(q)=12 なので非特異点で、接線は 11x−4y=9 である。
第6回の例5 タクノードと葉線
(1) k の標数は2でないとし、f=y2−x4+x6=y2−x4(1−x2) とする。fx=−4x3+6x5=2x3(3x2−2)、fy=2y で、特異点は原点だけである。この原点をタクノード(ハーツホーン和訳では接触節点)と呼ぶ。
(2) k の標数は3でないとし、f=x3+y3−3xy(デカルトの葉線)とする。fx=3(x2−y)、fy=3(y2−x) で、特異点は原点だけである。
第5回の例11 y=x3 と y2=x3 の無限遠点
k を体とし、U2 の座標を a=x0/x2=1/y、b=x1/x2=x/y とする。
(1) y=x3 の射影閉包は x02x2=x13 で、無限遠点は x13=0 から [0:0:1] だけである。x2=1 とおくと、U2 の中では
a2=b3a2=b3
となる。曲線の点 (t,t3)(t=0)は (b,a)=(t−2, t−3) に移る。
(2) y2=x3 の射影閉包は x0x22=x13 で、無限遠点はやはり [0:0:1] だけである。U2 の中では a=b3 となり、点 (t2,t3) は (b,a)=(t−1, t−3) に移る。
第8回の例11 x2=t
k を標数が2でない代数閉体とし、φ:k[t]→k[x]、t↦x2 が引き起こす射 f:Speck[x]→Speck[t] を考える。ファイバーの環は k[x]⊗k[t]κ(P)≅κ(P)[x]/(x2−t) で、
(1) c=0 の上では k[x]/(x2−c)≅k×k:2点 x=±c。
(2) c=0 の上では k[x]/(x2):重なった1点。
(3) 生成点の上では k(t)[x]/(x2−t):これは k(t) の2次の拡大体で、ファイバーは剰余体が2次に広がった1点。
第10回の例19 x と y の因子
Eˉ の上で、関数 x, y の位数と主因子は次のようになる。
ord(x)ord(x−1)ord(x+1)ord(y)(0,0)2001(1,0)0201ord(x)ord(x−1)ord(x+1)ord(y)(−1,0)0021O−2−2−2−3
div(x)=2(0,0)−2Odiv(y)=(0,0)+(1,0)+(−1,0)−3Odiv(x)=2(0,0)−2Odiv(y)=(0,0)+(1,0)+(−1,0)−3Odiv(x)div(y)=2(0,0)−2O=(0,0)+(1,0)+(−1,0)−3Odiv(x)div(y)=2(0,0)−2O=(0,0)+(1,0)+(−1,0)=−3Odiv(x)div(y)=2(0,0)−2O=(0,0)+(1,0)=+(−1,0)−3O
表にない点では、4つの関数の位数はすべて0である。
定数でない1変数多項式が、必ずその体の中に根をもつ体。例:C。R は代数閉体ではない(x2+1 に根がない)。代数閉体は必ず無限体である。
連結な複素1次元の多様体。各点のまわりが複素平面の円板と同じに見え、座標の取り替えが正則関数になっている。C 上の非特異な射影曲線の複素数の点はコンパクトなリーマン面で、リーマン球面 P1(C) はその例。
体の拡大 L/K が分離拡大とは、L の各元の K 上の最小多項式が重根をもたないこと。標数0ならいつも分離拡大。標数 p では、例えば Fp(t1/p)/Fp(t) は分離拡大でない。
体 k で 1+1+⋯+1(p 個)=0 となる最小の正の整数 p。そのような p がなければ標数0と言う。標数は0か素数で、Fp の標数は p、Q,R,C の標数は0。体でない環でも同じように定める(Z の標数は0、Z/6 の標数は6)。0か素数になるのは体や整域の場合。
次数1の元で生成される次数付き環 A(A0 はアルティン環)上の有限生成次数付き加群 M について、十分大きい n で Mn の長さに一致する n の多項式。例:k[x,y] では n+1、k[x,y,z]/(F)(F は e 次の斉次式)では en−e(e−3)/2。
位相空間 X のどんな開被覆からも、有限個を選んで X を覆えること。Rn の部分集合では、有界な閉集合であることと同値。例:球面はコンパクト、平面はコンパクトでない。
多様体 X の上の有理関数(空でない開集合の上の正則関数を、重なりで一致するものどうし同じとみなしたもの)全体の体 k(X)。アフィン多様体なら座標環の商体に等しい。例:k(A1)=k(t)。
極大イデアルがただ1つの可換環。極大イデアルに入らない元はすべて単元になる。例:素イデアル P での局所化 AP(極大イデアルは a/s(a∈P)の全体)、k[x]/(x2)、Z/4Z。
整域 A が整閉とは、商体の元 x が A 係数の最高次の係数1の多項式の根になるなら x∈A となること。例:Z や k[t] は整閉。k[t2,t3] は、t が x2−t2 の根なのに t を含まないので整閉でない。
既約な閉集合 Z に対して、閉包がちょうど Z になる点を Z の生成点と呼ぶ。Speck[x,y] では、素イデアル (0) に対応する点が平面全体の生成点になる。
どの点のまわりも、ある環 A の SpecA(素イデアル全体に位相と構造層を載せた空間)と同じ形をしている空間。SpecA を貼り合わせて作れる。零点集合では区別できない x=0 と x2=0 の違いも扱える。連載第4回で定義している。
素イデアルがちょうど2つ((0) と極大イデアル)の単項イデアル整域。例:Z(p)、k[x](x)。0でない元は πnu(π は極大イデアルの生成元、u は単元)と一通りに書け、n が「その点で何位の零点か」を表す。
各点の上に1次元のファイバー(直線)が乗り、局所的には直積 U×A1 の形をした空間。その切断の層が可逆層(局所的に OX と同型な OX 加群)で、2つはよく同じものとして扱われる。連載第11回で扱う。
定数でなく、定数でない2つの多項式の積に分解できない多項式。例:R[x] の x2+1。C[x] では (x+i)(x−i) と分解するので既約ではない。
参考文献
- R. ハーツホーン(高橋宣能・松下大介 訳), 『代数幾何学 3』, 丸善出版, 2012.
- R. ハーツホーン(高橋宣能・松下大介 訳), 『代数幾何学 1』, 丸善出版, 2013.